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アニメーションの可能性に未来を託す『トゥルーノース』【感想】第33回東京国際映画祭
- 2020/11/4
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世界が注目するアニメーション映画
『トゥルーノース』【感想】
あっという間に中盤に差し掛かった第33回東京国際映画祭からワールドフォーカス部門で上映されているアニメーション映画『トゥルーノース』をご紹介!本作は最終日の11月9日(月)14:20からTOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN1で上映される。
アニメーションといってもファンタジーではなく、入念なリサーチをもとに制作された北朝鮮を舞台にした衝撃の社会派ヒューマンドラマとなっている。それでは映画ログスタッフの感想レポートです!(日時・場所・チケットは映画祭公式HPでご確認下さい)
映画『トゥルーノース』True North 感想
※この感想には一部ネタバレが含まれます。鑑賞前の方はご注意ください。
冒頭、TED(カンファレンス)で脱北者だと打ち明け会場に緊張が走ると、彼は「政治の話はしない、家族の物語だ」と会場を和ませ、北朝鮮での生活を語り始める。
当局に目をつけられた父親が数日間無言のまま帰宅しない。そして、ある日の晩、母、妹とともにヨハンも強制労働収容所に連行される。その場に一歩足を踏み入れると、飢えで苦しみ少ない食料を奪い合う人々を目の当たりにする。
過酷な労働、限られた配給の食事、人権が無視された差別や残虐な行為の数々。エンドロールで今なお12万人が収容されていると紹介される悪名高き収容所の現実。しかし、本作は悲劇のみを描くのではなく、ヨハンが家族、インスら友人、仲間と共に日常を生き、過酷な状況の中で懸命に毎日を乗り越えていく姿が描かれている。中でも母親と妹のユリの人間としての愛情の深さはとても美しい。
そんな家族と共に生きるヨハンについて、特に印象的だったのは聡明なヨハンと変貌してしまったヨハン、両極端の姿。
前者は唄いながら労働すれば効率が上がると提案して、その通りに皆が生き生き働けるようになったシーン。後者は、収容者の中から監視役に抜擢されるが自分の利益のために仲間を裏切ってしまうシーン。どんな人間であっても完璧な人間はいないと思い知らされる。そして、本作は人間が絶望から再び立ち直れることも教えてくれるのである。
ヨハンが下した決断は、解決の道は”争い”ではなく”知恵”にある。それは本作を構想し、多くのリサーチを行った監督自身の想いなのだと思う。既に、アニメーションで描かれたこのヒューマンドラマはアヌシー国際アニメーション映画祭、ナッシュビル映画祭、ワルシャワ国際映画祭など世界各国の映画祭で話題となり、今回の東京国際映画祭でついに日本プレミアを迎え、多くの人に現在進行形の問題を問いかけている。
「トゥルーノース=北の真実」に対して、私たちはどんな知恵を持って関わることが出来るのか、この映画を観て一緒に考えてみませんか?
『トゥルーノース』予告動画
あらすじ・解説
絶望の淵で人は「生きる意味」を見つけられるのか? 生存者証言を参考に、北朝鮮の政治犯強制収容所に生きる日系家族の10年にわたる人間性の探求をアニメ化。
監督
清水ハン栄治
キャスト
ヨハン:ジョエル・サットン
インス:マイケル・ササキ
ヨハン(子供時代):ブランディン・ステニス
ユリ:エミリー・へレス
94分カラー英語日本語字幕2020年日本/インドネシア
©すみません
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