飯田橋ギンレイホールで開催中の「ギンレイピアノ映画祭」(11/11-11/17)にて、連日ピアノの生演奏をしているサイレント映画ピアニスト柳下美恵さんに“サイレント映画”の本当の姿について色々と語って頂きました。
サイレント映画とは
そもそもサイレント映画とは、音響やセリフがない映画ですが、実は本当にサイレントで上映されていたわけではありません。これは意外と知らない方も多いのではないでしょうか。日本では活動弁士という解説者がスクリーンの横に立ち、ナレーション付きのスタイルで上映されることが一般的でした。一方、欧米ではピアノやオーケストラの生演奏の音楽とともに鑑賞するスタイルで楽しまれていたのです。「当時は、シネマやムービーとして親しまれていた映画ですが、現代映画と区別するために“サイレント映画”と呼ばれ、サイレントのイメージが皆さんに定着してしまっていますよね。実は違うのです!」と教えて下さいました。
映画館にピアノって必要!?
生演奏が映画上映の必要最低条件だった欧米では、ピアノやオルガンは映画館の構成要素として最低限必要なもの。そのため、柳下さんもまず映画館にピアノを置いてもらうことからアピールしているそうです。「近年、映写機が減っていていつか『映画館には映写機があったんだよ』と語り継がれる日がくると思います。“フィルム映画”と呼ばれるかもしれません。それと同じことで、ピアノが映画館にあったことも忘れられて、ピアノがなぜ必要なのかもわからない時代になっていますね」と映写機を例えに、時代の変化とともに私たちの無意識のうちに生まれる解釈について言及して下さいました。

当時の欧米では、映画館で演奏することを職としていたピアニストが無数にいました。日本では上映の合間の休憩時間にピアニストやバイオリニストなどの楽士が音楽を奏でていたそうです。芸術家が活動する『場』があったと言えます。柳下さんは、多目的ホールにお勤めの際、色々な芸術文化に触れあう中で映画に魅了され、自身が培ってきたピアノ演奏の経験を活かすことができるのではないかと、サイレント映画ピアニストになったそうです。「サイレント映画ピアニストを目指していたのですか?とよく聞かれますが、実はそんなことはありません。音が全くない上映を体験する中で、逆に集中できなくて音が欲しいなと思ったのがきっかけです。職業にできるかどうかもわからなかったのですが、フットワーク軽く始めてみたら、少しずつ広がってきて、今では5人くらいになりました!」と、徐々に仲間が増えている現状を嬉しそうに語って下さいました。
映画が楽譜
サイレント映画の演奏に楽譜が存在するのか否かについては、全スコアを作っていることはまれで、たいていは映画館の楽士に任されていました。そのため基本的には演者自身の映画の解釈で演奏が行われているそうです。

そして、「自身の音楽を演奏するのではなく、映画を楽譜として、映画そのものを表現しています。音楽的な文法というより、映像を音にしています。テーマを決めて演奏するケースもありますが、テーマを作ると音楽が映像よりも立ってしまうことがあります。自分の音楽を主張しすぎると、映画とどんどんかい離してしまう。映画館で上映する時は、お客様は映画を見に来ている、と考えています」と理念を語って下さいました。そして、「サイレントから新作まで幅広く上映できる映画館が増えるといいな」との想いで様々な活動をされているそうです。
古い映画も良いですよ!
新作映画が幅広いジャンルで多数公開され、なかなか古い映画を観てもらう機会がないのは仕方がないこと、と前置きを加えつつ、「映画によって、当時の生活や風景を感じることができます。当時は今より規制が少ない分、自由でのんびりした気分になれることもあります。もちろんアバンギャルドな激しい作品もありますけどね。色々な作品があり、監督や役者さんの演技力、そして観客のわたしたちも考えることが多いかもしれません。感覚的には、海外の映画を字幕や吹き替え無で鑑賞するようなイメージかもしれません。全ては理解できないけど、想像することで十分楽しむことができるのではないでしょうか」と、サイレント映画を楽しむポイントも教えて下さいました。
イベント情報!
まずは古い映画を体験して欲しいと願う柳下さんの演奏を鑑賞できるイベントはこちら。

ギンレイピアノ映画祭

アイアン・ホース
11/15(水)19:30-21:55
大陸横断鉄道を舞台にした西部開拓劇。お約束のインディアンとの戦いや男の友情、ロマンがぎっしり詰まった傑作史劇。

第七天国
11/16(木)19:30-21:40
涙なくしては見られない最高のメロドラマ。主演ジャネット・ゲイナーは本作品などで第1回アカデミー賞主演女優賞を受賞。

散り行く花
11/17(金)19:30-21:15
巨匠D・W・グリフィス監督の作品で、とにかく女優リリアン・ギッシュの演技が素晴らしい。詩的で美しさにあふれ、今なお多くの人に愛され続ける作品。

横浜ジャック&ベティ

荒武者キートン
12/9(土)-12/15(金)15:00
喜劇王バスター・キートンが“ロミオとジュリエット”をアレンジした笑いと感動のスペクタクル映画、身体を張ったラストシーンは必見。


職業としては、ピアノで音を奏でる柳下さんですが、軽快なトークも抜群で、その表現力の豊かさを存分に感じることができました。今後のご活躍に益々期待が膨らみます。柳下さん素敵なお話の数々ありがとうございました。
柳下美恵さん(Mie Yanashita)プロフィール
武蔵野音楽大学ピアノ専攻卒業。1995年朝日新聞社主催『光の誕生 リュミエール!』でデビュー以来、国内外で活躍。全ジャンルの伴奏をこなす。欧米スタイルの伴奏者は日本初。2006年度日本映画ペンクラブ奨励賞受賞。DVD『裁かるゝジャンヌ』『魔女』((株)紀伊國屋書店)、『日曜日の人々』『アイアン・ホース 完全版』((株)ブロードウェイ)、Blue-ray『裁かるゝジャンヌ』(英Eureka)他、原一男、篠崎誠、西原孝至監督など新作映画の音楽も手掛ける。好きな映画は成瀬巳喜男監督の『浮雲』、好きな本は橋本治の『桃尻娘』

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主題歌
「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」

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