見上愛さん「辛くなるし、抱きしめたくなる」土井監督「まさにこれです!」映画『衝動』印象的なホテルのシーン振り返る!

アイ役見上愛さん映画『衝動』インタビュー,画像

見上愛さん&土井笑生監督
映画『衝動』インタビュー

池田エライザが原案・初監督の青春映画『夏、至るころ』で映画初主演を務め、『樹海村』(2021/清水崇監督)、『街の上で』(2021/今泉力哉監督)、『スパゲティコード・ラブ』(2021/丸山健志監督)など出演作が続く倉悠貴さんと、10月に公開された『プリテンダーズ』(2021/熊坂出監督)が第43回ぴあフィルムフェスティバル2021でクロージング上映され、NHK「きれいのくに」(2021)、ABEMA「箱庭のレミング」主演「不純ないいね」(2021)、映画『キャラクター』(2021/永井聡監督)などドラマ・映画と今後の活躍が期待される女優・見上愛さんのW主演映画『衝動』が12月10日(金)より全国順次公開となります。本作の公開を記念して、アイ役の見上愛さんと土井笑生監督にお話を伺いました。

本作は、東京で違法薬物の運び屋として働く少年・ハチ(倉悠貴さん)と、あるトラウマから声を出せなくなった少女・アイ(見上愛さん)が、出会い、ぶつかりながら、かけがえのない存在になっていく物語。自分の存在を否定されている少年と自分の存在を肯定出来ない少女。2人の出会いはどんな結末を迎えるのでしょうか。インタビューでは、撮影現場でのエピソードや、“愛”や“孤独”についてお二人が感じたことをお話していただきました。

見上愛さん&土井笑生監督インタビュー

見上愛さんフォトギャラリー(全5枚)

―― 非常にインパクトが強い内容で今でも様々なシーンが頭をよぎります。演じている見上さんも大変だったと思います。
まず土井監督にご質問なのですが、今、どんなお気持ちでこの作品を受け止めているのでしょうか?

見上愛さん&土井笑生監督映画『衝動』インタビュー,画像

終始温厚な雰囲気の土井笑生監督

土井笑生監督(以下、土井監督)
当初イメージしていたよりも、主人公のハチとアイが“人間”になったと思います。どちらもあまり何を考えているか分からないような子たちで、ずっとそういう風に(物語は)進んでいくんですけど、最後に実はこういうことがあったと分かる。

基本的には感情を表に出すのが苦手で、人からは“何を考えているか分からない”と見られたり、“本当に生きているのかな”と思われたりするような二人。でも、全部作り終わったら“メッチャ人間っぽいな”みたいな(笑)それは自分の中では意外でした。

お二人が息吹をかけてくれたからあそこまでになったのだと思います。

―― とても存在感のある二人で、まさにそこに存在していました。
見上さんは、演技している時に見えてきたもの、出来上がった作品を観て見えてきたものについて、どう感じていますか?

見上愛さん&土井笑生監督映画『衝動』インタビュー,画像

声を出せなくなったアイ役を熱演された見上愛さん

見上愛さん(以下、見上さん)
客観的に観ると、(監督の)“人間らしい”に繋がるかもしれないですけど、思ったより“可愛いな”と思いました、アイもハチも。人間というか動物っぽいなって。

土井監督
(笑)

見上さん
まだ若さも残っているというか、大人になったら隠しきれることが隠しきれていない。でも、隠そうとして生きている矛盾とか色んな矛盾の仕方が自分の想像以上に高校生だったし、動物っぽいというか、愛らしくなっていました。

―― 動物っぽさ、少年少女と大人の感覚の違いみたいなものを確かに感じました。
また、劇中のアイは声を出さないので、表情や動きで感情を伝えなければなりません。見上さんが心に残った、または難しかったなど一番印象に残っているシーンを教えてください。

衝動,画像

見上さん
ホテルのシーンは印象に残っています。

倉くんが役と自分が重なっている状態で、そのシーンでは限界状態。休憩時間も彼にとっては休憩になっていない。ただ辛いみたいな状態でした。

自分もその姿を見ると辛くなるし、今すぐアイとして抱きしめたくなるんです。だけど、それをしないし、泣かないし、ちゃんと引っ張っていく。それは声が出ないからどうこうではないのかもしれないですけど、押し殺しつつ。でも、やらないといけないみたいな葛藤がとても印象に残っています。

倉くんとは違うキツさがあった。あのシーンで彼が感じていたキツさと私が感じていたキツさは多分ちょっと違っていて、全員がちょっとずつ大変だったシーンだと思います。

―― 登場人物としてのアイの苦しさもあれば、見上さんとしての辛さもあったのですね?

見上さん
見ていて辛いというより役としての辛さ。でも、主演の2人がこの状況までいったら撮影的にも限界だと思ったので、自分だけはしっかりしなきゃ、逆に自分が引っ張らなきゃみたいな。その点は役と勝手に重なってくれていたところでした。

―― あのシーンは二人が会話をしているように見えるんです。喋っていないはずなのに、喋っていたような記憶として残っている。何か通じていたのだろうと思いますし、不思議な感覚が残っています。

見上さん
撮影も後半で2人の関係性も出来上がっている中での撮影だったので、何となく情が勝手に移っていたような。“私が監督から守らなきゃ!イジメないで、倉くんを!!”(笑)

土井監督
(笑)
僕がイジメているみたい。

見上さん
イジメてないんだけど、イジメているみたいに見えました(笑)

土井監督
僕はあのシーンを見ながら、2人の関係性がスゴイなって。“いつの間にこんなに近付いているんだろう”って思いつつ、“もっとやってください”という感じ。倉くんも凄くしんどそうでしたけど、“まさにこれです!”というか、嬉しかったです(笑)

見上さん
あえて突き放していく。彼の性格も状況も全部分かった状態で、もっと負荷をかけた方が良いからやっていると分かるんですけど、分かるけど、、、“やめてくれ!!”みたいな(笑)

―― (笑)あのシーンは本当に心を揺さぶられました。
そんなハチを演じた倉さんについて、見上さんはどんな俳優さんだと感じましたか?

衝動,画像

見上さん
本当に感性が鋭い。いつ壊れてもおかしくないと思う。凄く弱いし、脆いし、元々ハチと重なる部分が印象として多くて。だからこそ、自分が弱いからこそ人を守るということも知っているんですよね。

どんどん役と本人が重なっていて、休憩になっても泣いていたり。私がしっかりしなくちゃって思う気持ちがある反面、こうなれる倉くんは本当にスゴイなと思って。飛び込めてしまう勇気、“全部を預けてここまで懸けられる”ってスゴイなって、見習いました。

―― 倉さんは繊細だし、色んなことを吸収されているのですね。

見上さん
しすぎちゃうほどしていると思う。だから、辛いこともあるんじゃないかと勝手に想像して、本人に聞いてないので分からないですけど。

―― “監督、鬼だよね”って?(笑)

土井監督
(笑)

見上さん
それで監督が鬼になってまでこの作品を作っていなかったら、倉くんがあそこまで飛び込んだ勇気を無駄にすることになったと思うから、そこは監督のファインプレーだったと思います(笑)

土井監督
ありがとうございます(笑)

―― 監督から見た倉さんはどんな方ですか?

土井監督
本当に繊細で感受性が鋭い。それは一番最初に会った時から感じました。本を読んで「ここで勝手に涙が出てきちゃったんです」とか。本読みの時もあるシーンで泣いちゃったり。ト書きで“泣く”とは書いてないし、僕のイメージの中でもここでどうなんだろうと思ったところでボロボロ涙が出てきて。自分と役を限りなく近付けて演じるというか、入り込めちゃう。

―― 演者としてのハチが泣いていない時に泣いているというのは、逆に言うと自分と他人とを見分ける力がありつつも、感情移入しているのかもしれませんね。

土井監督
彼はこの映画で一番みんなと接するんです。彼とだけ接するキャラクターもいっぱいいるんですけど、相手によってお芝居が“キュン”と変わる。

それが見ていて“自然だな”と。人って「この人と接する時はこんな感じ」とか変わると思うんですけど、その変わることを自然と出来る。

―― 刑務所でのシーンも凄く印象的でした。

見上さん
怖かった。

―― ほんと、怖かったですよね。

土井監督
実は本読みの時に、倉さんが泣いたのはそのシーンです。怖くなっちゃって(笑)

(現場では)川郷司さん(ヒカル役)が喋り始めた時に寒くなりましたね、空気が。“スンッ”って。今、鳥肌が立った!みたいな。

―― そんな脚本を考えているのが監督だと思うとゾッとします(笑)

見上さん
ですよ、一番怖いのは実は監督なので(笑)

土井監督
いえいえ、平和な人間なので(笑)

見上さん
説得力、皆無です!!

―― ちなみに、倉さんや見上さんに対してのアドバイスや演出で印象に残っていることはありますか?

土井監督
本当にお2人の芝居がしっくりきたんです。“ハチとアイだ!”って。直感的にオファーをかけた段階からもうこの2人しかいないと思っていたんですけど、お芝居を見てもハチとアイにしか見えない。だから、お芝居に関してのアドバイスはあまりしていないです。

見上さん
基本一発OKなんです。だから逆に不安。

土井監督
そう、逆に不安がって(笑)

見上さん
「何も言われないよ」って。

―― 何回か撮り直したシーンはなかったのですか?

見上さん
基本的にはないです。でも、一箇所だけ「もう一回やらせてください」と初めて現場で言いました。自分から「もう一回、どうしてもやりたいです」と。

ホテルから出て来て、見てしまうシーンです。

土井監督
あれは正解でした(笑)

見上さん
自分で演じた瞬間に“違う”ってなっちゃったんです。せっかくあそこで積み上げたものが、違うという意識がある時点で大分違うんじゃないかと思って、急いでモニターを見に行って、“こんな髪色だったっけ”ってまずそこから(笑)

土井監督
あのシーンは光の加減もあるから余計に髪の毛が(笑)

見上さん
車通りも多いところだったので、もう一回がなかなか出来ない状況だったんですけど、監督もカメラマンさんも皆さん嫌な顔もせずに「やろう」って言ってくださって。

土井監督
基本は挙手制なんで(笑)

見上さん
それをその時に知りました。“言っても大丈夫なんだ”って(笑)

土井監督
ホテルの中もまさに挙手制でした。「何かあったら挙手してくださいね。どんどん進んでいきますから」って(笑)

見上さん
ホテルのシーンは逆に、倉くんが納得出来るところまで持っていけないところがあって、そこは本当に何回やったか分からない。多分、何十回レベルでやって、本人は最後まで納得のいかない顔をしていたけど、私的には凄い良かった。どんどん自分で自分を追い込んでいった時に出ちゃった表情を逃さず抑えられていて面白いシーンです。

―― 演技がとてもリアルでしたので、撮影中はなりきっていらっしゃったのだろうと想像していました。
自分を愛することはとても大切だけど難しいこともあるけれど「他人を愛することが、結局自分を愛することになる」。この作品からそんなメッセージも感じたのですが、見上さんは“救い”や“愛”についてこの作品からどんなことを感じられましたか?

見上さん
凄く作品の真意を突いていらっしゃる質問だと思います。だからこそ難しいですね(笑)

性的描写もある作品なのに、実はアイとハチが触れ合っているシーンは一箇所だけ。しかも、背中に手をちょっと触れているぐらいの触れ合い。

“愛する”というとすぐに、恋愛的な肯定のしあい方に繋がりがちですけど、これはそこを越えていると思っていて。だからと言って友情でもないんですけど、そういう関係に私はまだ出会ったことがないし、アイにとってのハチのような人は一生のうちに出会えるか分からない。

出会えているこの二人は、今まで過去にどんな不幸な道を辿ってきていてもやっぱり幸せだと思うし、出会ったからこそそれが幸せだということに気付けるようになっていると思うから。

ここで描かれている愛を実感を持って理解することって難しい。特にこの年齢だとなかなかそこにいきつける人はいないと思う。でも、それを感覚的に知っているだけでちょっと違うんじゃないかなって思いました。

―― この作品で描かれている愛は、性的な描写の中にそれを超えた何か“ひょっとするとこれが愛かもしれない”作品全体を通してそんなものが醸成されていくような感じを受けました。
一方で監督にお伺いしたいのは“孤独”についてです。監督が考える孤独とはどういうものなのでしょうか?

土井監督
生まれる時も一人だし、結局死ぬ時も一人だし、漠然と“人はそもそも孤独なものだ”という何となくの考えがあります。

でも、そこで終わらせたくない。孤独と孤独が一つになることもあるんじゃないかなって常々思っていて、それがこの作品の根幹です。元々孤独だけど、もしかしたら死ぬ時も孤独かもしれないけど、その間は決して孤独ではないんだろうなっていうのが、僕の答えです(笑)

「生まれてくる時は孤独で、死ぬ時も孤独かもしれないけど、あなたが歩んだ人生の中はずっと孤独でしたか?」と問いかけたい。

象徴的にしているのは名前がない主人公とか、店員が名前を聞いたり。ああいう本当に些細なことが、実は人が孤独じゃなくなる一つの瞬間じゃないのかなっていうのが何となく僕の中にはあって。そういうのを突き詰めた結果、意外と孤独じゃなくなる瞬間がこういうところに転がっているのかなとか。

例えば、コンビニの店員さんがスッといつものタバコを差し出してくれたりとか。それだけで、ちょっと自分の存在を認識されているのかなって思う瞬間でもある。それを作品の中に入れています。

―― ありがとうございました!!

見上愛さんフォトギャラリー

アイ役見上愛さん映画『衝動』インタビュー,画像 アイ役見上愛さん映画『衝動』インタビュー,画像 アイ役見上愛さん映画『衝動』インタビュー,画像 アイ役見上愛さん映画『衝動』インタビュー,画像 アイ役見上愛さん映画『衝動』インタビュー,画像

ヘアメイク:飯塚七瀬 スタイリスト:大石真未

〈アイテム/ブランド名/税抜価格〉
タートルニットドレス/NAKAGAMI /¥35,000
箔プリントニットスカート/NAKAGAMI/¥33,000
beads fringe イヤリング/Lily/¥9,400


映画『衝動』作品情報

倉悠貴 見上愛
見津賢 錫木うり 工藤孝生 池田朱那
川郷司駿平 山本月乃 佐久間祥朗 三村和敬
村上淳

監督・脚本・企画:土井笑生 音楽:Day on Umbrella
撮影:茅野雅央 照明:石川裕士 録音:黒沢秋(BLAZE LEGION) 美術:前田巴那子
スタイリスト:大石真未 ヘアメイク:飯塚七瀬 助監督:遠藤航哉 スチール:senobi
製作:映画「衝動」製作委員会 配給:SAIGATE
2021|日本|シネマスコープ|ステレオ|DCP|R15+|117分
©映画「衝動」製作委員会

公式HP:https://saigate.co.jp/shodo/
公式SNS:Twitter(@filmshodo2020)

12月10日(金) 池袋HUMAXシネマズほか全国順次公開

 友だち追加

コメント

注目映画

  1. 映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかり
    社会不適合者な“元女子高生”殺し屋コンビが頑張って社会に馴染もうと頑張る異色の青春映画誕生! 阪元…
  2. 偶然と想像,画像
    驚きと戸惑いの映画体験が、いまはじまる 映画『偶然と想像』 2020年のカンヌ映画祭では『ドライ…
  3. 決戦は日曜日
    事なかれ主義の議員秘書と政界に無知な熱意空回り候補者が 日本を変えるため、選挙落選を目指す!? 新…
  4. 最高の愛と友情がもたらした、心揺さぶる希望の実話 2015年に「Esquire」誌に掲載され全米雑…
  5. 『スウィート・シング』日本版ポスター&場面写真解禁
    ⽶インディーズのアイコン、アレクサンダー・ロックウェル監督、25 年ぶりの⽇本劇場公開作 『イン・…
  6. 護られなかった者たちへ,画像,佐藤健
    日本中を衝撃と感動で包み込む ヒューマン・ミステリー 「このミステリーがすごい!」受賞作家・中山…
  7. 黄龍の村,画像
    これ、村の決まりやから 山あいを迷った若者たちがたどり着いた見知らぬ村。 かってない驚愕の体験が…

映画ログプラス Youtubeチャンネル

映画の予告動画など多数掲載!
映画ログスタッフによる、キャストや監督さんへのインタビュー動画も!!
関口メンディーさん×小森隼さん昨日より赤く明日より青く』【インタビュー】
ページ上部へ戻る