ロリータファッションとダサ男。『スーパー戦闘 純烈ジャー』やドラマ「めぐる。」で活躍中のスタイリストが語る映画衣装の裏側
- 2021/12/16
- インタビュー, 映画の輪
- スーパー戦闘 純烈ジャー, スタイリスト, チバヤスヒロ, 自宅警備員と家事妖精
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映画『自宅警備員と家事妖精』
チバヤスヒロ氏インタビュー
突然ですが、皆さんはロリータファッションと聞いてどんなイメージを持ちますか?少女っぽさを想像する方、ビジュアル系バンドを連想する方、悪魔っぽい雰囲気を思い浮かべる方等それぞれではないでしょうか。そんなロリータファッションは日本独自のファッションスタイルで、実は世界各国から注目を集め世界中に広がっているのです。
今回注目するのは、『菊とギロチン』(2018年)、『鈴木家の嘘』(2018年)で高い評価を得た女優の木竜麻生さんが妖精役で見事にロリータファッションを着こなし、一方では自宅警備員つまり自宅に引きこもっているダサい中年男性を、『カメラを止めるな!』(2018年)出演の大沢真一郎さんが演じた映画『自宅警備員と家事妖精』(全国順次公開中)の「衣装」です。

純烈銀幕デビューが話題の映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』

FODで配信中!©️フジテレビ
本作の衣装のコンセプトやロリータファッションの着こなし術について、映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』(2022年2月16日DVD発売)や、現在フジテレビで放送中のめざましドラマ「めぐる。」のスタイリストを務めるなど活躍中のチバヤスヒロ氏にお話を伺いました。

スタイリストのチバヤスヒロ氏
―― まず、映画『自宅警備員と家事妖精』の衣装のコンセプトについて教えてください。
チバヤスヒロ氏(以下、チバ氏)
台本を読みながら決めていくのですが、小汚くしたかったんです。
稔(役:大沢真一郎さん)をどれだけボロ臭くして、堕落させるかがコンセプトとしてあり、それに対して木竜麻生さん演じる“絹”がどれだけ映えるかがポイントでした。
―― “絹”のドレスは最初は黒のドレスで最後は白のドレスに変わっていきます。妖精・絹の衣装について教えてください。
チバ氏
本作で唯一タイアップを取った【elements,H(エレメンツ,アッシュ)】というブランドです。幅広い年齢層が着用できるロリータ服を扱っています。ロリータは日本で生まれた特殊なテイストなので、好きな方は年齢を問わずずっと好きなんです。
―― 衣装を選ぶ時にはキャストさんのプロフィールや体型を確認されて合うものを選んでいくのですか?
チバ氏
そうですね。木竜さんはお写真をいただいた時に、“これはいけるぞ!”ってすぐに思いました。
―― 木竜さんが着ているとロリータっぽくなくて、どちらかと言うとドレスのような感覚でしたが、そういったコンセプトでしょうか?
チバ氏
ちょっと古い感じの妖精が良かったので、そういうコンセプトにしました。
さすがに【elements,H】の洋服で全身全部やってしまったら、テイストは出るけどあの感じは出ないんです。そこにプラスミックスさせて、ちょっと古い感じをイメージさせました。
―― 逆に今風のドレスを着ても違うでしょうし、絶妙なアレンジなのですね。洋館で働いているということで、昔テレビで放送されていたアニメ「愛の若草物語」なんかも連想しました(笑)
チバ氏
あのイメージです!木竜さんの顔立ちも声も凄く合っていたと思います。
―― 木竜さんに着こなしていただくために工夫された点もあったのでしょうか?
チバ氏
若くも見せたくなかったし、年齢不詳にさせたかったんです。だから、ちょっと広がるようにドレスの下に結婚式とかで着用するパニエを履いています。
パニエで少し古臭さを出して、ボリュームも出して。昔の西洋のドレスを見ていると、やっぱりパニエが大事なんです。
―― 逆にふっくらさせないバージョンのお写真も観てみたいです!
チバ氏
残念ながら撮っていないと思います、、、
【elements,H】さんに聞けばあるかもしれませんが、ほぼほぼ初期の衣装なので、、、サンプルはあると思います。

映画着用ワンピース(提供:【elements,H】)
―― 初期と言われるとなるほどですね。
例えば、“絹”のファッションを一般の方が楽しむ方法についてはいかがでしょうか?
チバ氏
ドレスに今っぽいアウターを合わせれば、ロリータ・ミックスみたいなものは出来ると思います。
―― ドレスは単色だったので、ちょっと違った物も入れるとよりアレンジが効くのでしょうか?
チバ氏
そうですね、なかなかあのテイストは崩しづらいですよね。だから、あえて上着のアウターを今っぽくしたり、スニーカーを履かせたりしてもカワイイかなと。派手過ぎないですし。
―― そういうファッションになるわけですね。ヒールを合わせるといかにも…?
チバ氏
やっぱりそっちになっちゃう。ロリータっぽくなっちゃう(笑)。
―― ロリータが好きな人たちは、その辺りも熟知されているのでしょうね。
チバ氏
好きな人は本当に好きなんです。特に今は中国もロリータファッションの人気がスゴイんです。
日本のロリータファッションが好きで、逆にここ2〜3年は中国のロリータ市場が日本を抜いていると言われているくらいです。チャイナ服をロリータ寄りにしているのが特徴で、僕も一度映画の撮影でお借りしたこともあります。
―― 中国の方にも是非この映画を観てほしいですね。
続いで、稔ですが、仕事がない人の服装であり、スーツを着た時もちょっと細身で着こなし慣れていない感が満載でした。稔のファッションを観ているだけても楽しませていただきましたが、どんなコンセプトなのですか?
チバ氏
スーツは勝手に設定を作りました。3年以上前に買ったスーツで、ちょっと細身というよりは、多分相当今っぽくはない(笑)三つボタンにして、袖のボタンも欠けたようにして、“いつの時代のスーツを出してきたんだよ!”みたいな(笑)
―― ボタンまでは気付きませんでしたが(笑)、全体的にそういう雰囲気だということは感じました。古い服を選ぶこと自体、今の流れとは違うので、今のファッションを分かっているからこそ選べるわけですよね。それって難しくないですか?
チバ氏
感覚ですかね。
北海道に送る時も、わざとクシャクシャにして送ったんです。シワクチャにしたかったので、現場でも「絶対にアイロンかけるな!このシワを活かせ!」って(笑)。
そこまで考えてやっているかどうかですね。いかに稔をダサく、大沢さんの芝居を活かして。
撮影期間中はアイロンをかけるのが僕らの仕事なので、ある意味こんな楽チンな仕事はないぐらいです(笑)。
―― まさに自宅にこもっている人の服装でしたが、意外とそういう汚らしい服を今のファッションとして取り込む方もいらっしゃるので、何らかのファッションを今風に崩したのでしょうか?
チバ氏
一切崩していないですね。逆にチグハグな組み合わせをさせました。今風を見せちゃうと稔のキャラが死んじゃうので。
フィッティングの時に、汚してほしいから本人にお渡して、「これで毎日ご飯食べください」、北海道の撮影でも「基本的にはこれを毎日着てください。ご飯をイッパイこぼしてOKですから」と(笑)。それぐらいやりました。
―― 大沢さんの体臭が染み付いているわけですね(笑)
チバ氏
そうです、体臭が染み付いたぐらいの方が(笑)
―― スタイリストさんが映像制作をする上での一つのテクニックですよね。選んでくるだけではなくて、撮影期間中の服との付き合い方も含めて、その人のモノにしていくのですね。
チバ氏
いかに考えているかですよね。
台本を何回も読んで、キャラクターを自分の中でイメージして、“この人間って何なんだろうな”みたいなことを考えられるか考えられないか。イメージ出来るか出来ないか。
“絶対こういう服は着ない”というコンセプトを自分の中で作って、“監督に言われたものだけを用意するのではなく、自分でいかに面白くさせるか”、それはいつも考えるようにしています。
後はキャストさんとのバイブスが合うというか、雰囲気が合うというか、そこに恵まれてきただけなのかなと思います。
―― ちなみに、冨和星一郎役の子役・田之下雅徳君は非常に重要な役割を果たしていましたが、彼の服も用意されたのですか?
チバ氏
用意しました。あまり目立つようにはしなかったです。
オール北海道ロケなので、東京にいるようなこ洒落た子どもにはしたくなかったから、抑え目にしました。
―― 最後に映画『自宅警備員と家事妖精』のファッションの注目ポイントをメッセージとしていただけますか?
チバ氏
僕の中では稔を観てくれ、あのダサさを観てくれということですかね(笑)。
おそらく木竜さんより時間がかかりました。本当はポーズもあんなに作りたくなかったんです。今日、明日、明後日で日替わりに洋服を変えていくけど、小規模な作品ほど日替わりでも同じ服を着させて、その人物の印象を引き立たせたい。それもある意味テクニックです。
バジェットも限られているからこそ、キャラクターを印象付けさせたいですよね。
だから、稔を観てください!(笑)
―― ありがとうございました!
ブランド紹介:elements,H
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映画『自宅警備員と家事妖精』
全国順次公開中
監督・編集:藤本匠
脚本:潮喜久知
出演:大沢真一郎 木竜麻生
田之下雅徳(子役) 中島トニー 林家たこ蔵 本城祐哉 巻島みのり 流山児祥
企画:函館港イルミナシオン映画祭実行委員会
エグゼクティブプロデューサー:横浜豊行 河井真也 三宅澄二 中島美浦子
統括プロデュ—サー:小林三四郎 プロデューサー:片嶋一貴
撮影:上野彰吾 照明:赤津淳一 録音・整音:鈴木昭彦 美術:松葉明子
ヘアメイク:清水美穂 スタイリスト:チバヤスヒロ 着付:寺澤陽子 スチール:佑木瞬 助監督:石川真吾
音楽:あがた森魚 Soulcolor テーマソング[マドロミ] soulcolor feat.小澤ちひろ
製作・配給:太秦
©「自宅警備員の家事妖精」製作者委員会
「スーパー戦闘 純烈ジャー」
2022年2月16日DVD発売
発売日:2022年2月16日DVD発売
価格:DVD3,800円+税 Blu-ray:8,800円+税
発売:東映ビデオ
©2021東映ビデオ
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