世界が注目濱口竜介監督!脚本開発や役者との関係性に迫る!映画『偶然と想像』【インタビュー後編】

映画『偶然と想像』濱口竜介監督インタビュー,画像

映画『偶然と想像』
濱口竜介監督インタビュー【後編】

12月17日(金)より全国公開中の濱口竜介監督最新作映画『偶然と想像』。

本作で第71回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞し、『ドライブ・マイ・カー』では第74回カンヌ国際映画祭で日本映画史上初となる脚本賞ほか全4冠を獲得するなど世界中が熱い視線を向けています。

そんな世界が注目する濱口監督へのインタビュー前編では、「偶然」と「想像」をテーマにした3話オムニバスから成る本作について、それぞれ第一話が三角関係をポップに描き、第二話はダークなちょっと嫌な物語、そして第三話が偶然のポテンシャルを描いていること等をお話していただきました。(関連記事:インタビュー前編

後編では、本作に出演されているキャストの皆さんの魅力をお伝えいただきながら、濱口竜介監督の脚本開発や役者の演技から感じていること、映画制作で大切にされていることなどを教えていただきました!

映画『偶然と想像』濱口竜介監督インタビュー,画像

映画『偶然と想像』濱口竜介監督

―― 役者さんの魅力についてですが、まず第一話の古川琴音さんはどんな魅力を持っている方ですか?

偶然と想像,画像

濱口竜介監督(以下、濱口監督)
声が凄く魅力的ですよね。ある意味幼い感じもしますけど、古川さん本人の性格は小悪魔的な性格ではなくて、もっと真面目というのが基本的な印象で、凄く前向きに何でも取り組んでくれる方という印象です。

芽衣子役は凄く難しい役なんですけど、飛び込んで、本当にこんな人なのかもしれないって思うようなレベルにまでやってくれました。本人と全然違うキャラクターなので、本当に素晴らしいと思います。

―― 確かに変なことを言っても少し流せてしまうような雰囲気で、隠されているというか纏っているというか、、、

濱口監督
確かに、どれだけ強く言っても強くなりきらないのが、あの会話を続けていける“肝”なんだと思います。

―― リズム感も絶妙でした。
続いて、第二話の森郁月さんの魅力についてはいかがでしょうか?

偶然と想像,画像

濱口監督
森さんは本当にイイ意味で受け身でした。元々は役の解釈を凄くされるタイプの役者さんだと思うのですが、「この人って恐らく何でここに来ているか分かっていないですよね?」というような話を森さんがされていて、実際そういう風にやっていただきました。

甲斐翔真君が演じる佐々木に使われて生きているわけですけど、彼女の中にも瀬川と話したい何かがあるのではないか?って森さんも感じていたようで、ただそれが何だか分からない。そういう状態のまま、過剰に解釈せずにその場で起きることに任せて演じていただいた感じがします。

終盤に瀬川と真正面で向き合って話すシーンがあるんですけど、そこで奈緒から涙がポロッとこぼれたりするんです。あれは全然脚本には書いていなくて、森さんが渋川さんとの関係性の中で辿り着いた感情だと思うんです。

その場にあるものを本当にちゃんと受け取って、役を積み上げていくのは素晴らしいと思います。

―― 自己肯定感が少ない奈緒というキャラクターが、認めてもらえたことに対して感情を思い切り出すのではなく、静かに佇んでいるような中で感情の機微が見えるところが画的にも素晴らしいかったです。森さんは監督との出会いがご自身にとって貴重なものになったとコメントされています。

濱口監督
とても嬉しいです。奈緒役は本当に難しい役だったと思いますが、森さんがちゃんと生きている人間にしてくれた気がするので、是非違う形でもお仕事がしたいと思っています。

―― そして、第三話の占部房子さん(役:夏子)と河井青葉さん(役:あや)の演技も素晴らしいかったと思いますが、お二人の魅力についてはいかがでしょうか?

偶然と想像_クレジット表記

濱口監督
どちらかと言うと占部さんは攻めの演技を出すタイプで、河井さんは受け止めるタイプですよね。それが本当に上手くいったんじゃないかなって思います。

過去に『PASSION』(2008年)で二人に出演していただいて、その時は二人の共演シーンはありませんでした。それが心残りではないけれども、この二人が一緒に演技をするとどういう感じになるんだろう?という想いもあったので、この役は是非お二人にということでお願いをしました。

この話もムチャクチャな話なんです(笑)。

映画『偶然と想像』濱口竜介監督インタビュー,画像

脚本のレベルでは“本当に大丈夫かな?”っていう話なんですけど、お二人ともやっていてお互いのことを好きになってくれた感じがして、やっていくうちに生まれてきたものがそのまま映っているような気がしています。

―― 「偶然」の受け止め方次第でここまで世界が変わるということで、「偶然」に対して興味が湧きますし、大切にしたいと思いました。監督の作品は本当にずっと心に残っていくのですが、「偶然」を扱うにしても色々なアプローチがあると思います。監督なりのこだわりやポイントにされていることはどんなことなのでしょうか?

濱口監督
「偶然」と「想像」にも関わると思うのですが、決めていないということだと思います。この話が何なのかを全然決めていないんです。

それは役者に頼り切ることでもあるんですけど、役者さんが持っている感情みたいなものもその全てが伝わるものではなくて、その人物の謎として残るわけです。

役者さんの役の解釈は本当に素晴らしいものだと思っていて、それがこの映画の厚みになっているんですけど、見えない部分も物凄く多くて、観客は“これってどういうことなんだろう”ということをずっとずっと考え続けることが出来る。

映画『偶然と想像』濱口竜介監督インタビュー,画像

実際、役者さんたちも決めずにやっていたんだと思うんです。その場その場で感じること、“何でこの人物はこういうことを言うんだろう?”ということを分からずにやっていたところがあると思うんですけど、言葉を口にした瞬間に“何か分かる”っていうような感覚が多分どの役者さんにもあったんじゃないかなと。

その分かるというのと、基本的には人間は分からないものなので、分かると分からないが揺れている感じが、多分この映画の魅力になっていると思います。それを可能にしてくれたのは本当に役者さんたちの力だと思います。

―― 今、若手の監督たちは濱口監督の脚本に非常に注目していると思います。例えば、ト書きが多いとか台詞が少ないとか、脚本開発におけるポイントについて教えていただけますか?

濱口監督
ほぼト書きがないことですかね。

もちろん、【駅まで走る】とかは書いてあるんですけど、極端に少ないと思います。基本的にはダイアログだけが書いてあるような感じで、動きも決めていないところはあると思います。

映画『偶然と想像』濱口竜介監督インタビュー,画像

ト書きは基本的にアクションが書いてありますが、アクションをこうしたからこういうものが伝わるとはあまり限定出来ないわけです。ただ台詞に関しては、それをどんな感情で言ったのかは未決定ですが、少なくともこの言葉を言うというのは決定的に決まるので、観客にどういう情報が与えられるかは、台詞だけでやってしまった方が調整し易いんです。

言葉面、文字面の情報としてはこれだけのものがあって、その文字面が一体どういう真意で言われたかは役者さんに任せる。アクションに関しても、その場で出てくる出来るだけ自然なものに任せようとしている。

だから、どういう意図で言ったのか分からないようなダイアログがひたすら続いていくような脚本になっています。それが良いのか悪いのかは分からないし、もうちょっとト書きを書いてみたい気持ちもあるんですけど、今のところはそういうやり方でやっています。

―― よく映画の撮影では1カットずつ影や角度にこだわって撮っていくと聞くのですが、逆にその辺りはあまりこだわらないのでしょうか?

映画『偶然と想像』濱口竜介監督インタビュー,画像

濱口監督
日本映画全体として言っていいことのような気がするのですが、余裕がないから優先順位を決めないといけないわけです。

学生時代に思ったことなんですけど、撮りたい画があると時間がかかるんです。撮りたい画に向けて照明を調整したり、撮りたい画に対して役者さんの動きが決まって、役者さんは動きが決まっているとやり難いので感情が出てこなくてNGが多くなったり。

今の限られた環境の中で優先順位を何にするかとなった時に、役者さんの演技なんじゃないかという選択になっているんです。

―― 時代に即した作り方を考えないといけないということですね。
最後に見所も含めて、映画ファンにメッセージをお願いします。

濱口監督
『偶然と想像』は、三話のオムニバスからなるんですけど、まさに「偶然」と「想像力」をテーマにした物語になっています。

見所は、本当に役者さんの演技です。僕自身はカメラの後ろで驚いたり、時にはつい笑ってしまったり、そういう場面ばかりで出来ています。

役者さんの魅力を堪能出来る映画になっていると思うので、是非映画館でご覧いただけたらと思います。よろしくお願いします。

―― ありがとうございました!


キャスト

古川琴音 中島歩 玄理 渋川清彦 森郁月 甲斐翔真 占部房子 河井青葉

監督・脚本

濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』(監督) / 『スパイの妻』(共同脚本)

プロデューサー:高田聡
撮影:飯岡幸子
録音:城野直樹 黄永昌
美術:布部雅人 徐賢先
スタイリスト:碓井章訓
メイク:須見有樹子
エグゼクティブプロデューサー:原田将 徳山勝巳
製作:NEOPA fictive
配給:Incline 
配給協力:コピアポア・フィルム 
宣伝:FINOR / メゾン
(2021年/121分/日本/カラー/1.85:1/5.1ch )
公式HP:https://guzen-sozo.incline.life/
©︎ 2021 NEOPA / fictive

全国公開中

 友だち追加

コメント

注目映画

  1. これが天下の大将軍への第一歩だ―― 。信は、漂の想いを胸に初陣に挑む! 原泰久の人気漫画を実写化…
  2. 中国映画『春江水暖~しゅんこうすいだん』,画像
    中国新世代の才能が描く驚嘆の傑作 2021年大注目作品誕生!! 長編第一作でありながら、2019…
  3. 映画余命10年,画像
    悲しくても笑った。 悔しくても笑った。 小松菜奈×坂口健太郎、ダブル主演、RADWIMPS書下ろ…
  4. たのしいこともさびしいこともーあみ子が教えてくれるのは、私たちが“かつて見ていたはずの世界” 芥川…
  5. トム・クルーズを一躍スターダムに押し上げた1986年公開の世界的ヒット作「トップガン」の続編が誕生!…
  6. きっと、誰かに伝えたい。劇場だからこそ味わえる“観るアウトドア”がここにある。 あfろの人気コ…
  7. ‛最悪‘な本音が‛最高’の共感を呼び、世界が絶賛!新時代を生きるすべての人に贈る、恋と成長の物語 …

映画ログプラス Youtubeチャンネル

映画の予告動画など多数掲載!
映画ログスタッフによる、キャストや監督さんへのインタビュー動画も!!
映画『グリーンバレット』【初日舞台挨拶】
ページ上部へ戻る