
マリ役・陸夏(ルシア)さん
オンラインインタビュー
2月18日(金)公開の映画『ホテルアイリス』は、永瀬正敏さん演じる翻訳家の男と、台湾の新人女優陸夏(ルシア)さん演じるマリの禁断の愛を描いた物語。原作は、芥川賞作家・小川洋子氏の同名小説です。
今回は本作がデビュー作となる陸夏さんにオンラインインタビュー!本作出演の喜びから、露出が多いシーンへの不安とその克服、永瀬さんをはじめ監督・キャスト・スタッフに支えられた撮影現場の思い出、日本語で演技をする際に大変だったことなどを語っていただきました。

©️Zoe Chiu
―― “原作・脚本の深み”そしてマリという若い女性を演じる“陸夏(ルシア)さんの美しさ”など、どれをとってもとにかく素晴らしい作品だと思いました。陸夏(ルシア)さんの映画初出演作として語り継がれる作品だとも思うのですが、出演が決まった時や、撮影に入る時のお気持ち、そして完成版を見ての今のお気持ちを聞かせてください。
陸夏(ルシア)さん(以下、陸夏さん)
この作品の出演が決まった時はやはり、とても光栄という気持ちと共にすごく嬉しかったです。
この作品は、皆さんご存知の通り、露出のシーンが高い作品であるという点で若干の不安がありました。でも実際は現場の撮影に入る前に、そのシーン対しての方向性であったり、どこまでをボーダーラインにするのかという丁寧な話し合いが行われました。
そして新人として、すごい先輩方と共演出来るというのは、何よりも光栄でした。
加えて、私はこれまでも日本の文化に触れる機会が多くありましたので、一般の台湾の人達と比べると日本文化への理解度が少し高かったのではないかな、と思います。
元々「お芝居をしたい」というフツフツと込み上げる気持ちを抱えていたので、やっと今回このような機会を得られて本当にずっと興奮状態だったんです。22歳で大学を卒業して、25歳でこの作品のヒロインを射止めるまでには3年あったわけですが、幸運にも役をいただけたということでとても興奮しました。
また、撮影現場も良かったです。翌日の撮影の内容を前日に予め練習したり準備したりして、当日になればその日に行われる撮影の内容をちゃんとこなしていくわけですが、これは新人として日々新しい挑戦の連続でした。
全ての撮影が終わった後、スタッフの方からは「露出度の高い情熱的なシーンが最もスムーズに撮れた」と仰ってくださいました。
一番最初のシーンだけリハーサルを行ったのですが、思った以上にスムーズに進められたので、その後の挑戦的なシーンというのは、事前に簡単な動きなどを確認するに留めて、すぐ本番に挑んでいきました。
でもそのようにスムーズに撮影を進められたのも、何より相手役の永瀬さんが、大先輩として、ベテランの俳優さんであったからこそ、自分をリードしてくださったからだと思います。
ただ、最初の完成版を大スクリーンで見た時なのですが、特に挑戦的な露出度の高いシーンは、実は自分の演技を自分の眼で見ることが出来なかったんです。顔を下にして、手で耳を塞いでいました。
挑戦的なシーンを、演じる勇気は持てるのに、それを見る勇気は持てなかったんです。
これまで自分がスクリ―ン上で皆様に演技を見ていただくために頑張ってきたのに、でも実際、自分がそのシーンを見ることに対しては抵抗といいますか、居心地の悪さは未だにあります。
―― その居心地の悪さはどこからくるものなのでしょうか?
陸夏さん
配給会社の方には申し訳ないのですが…
実は、予告編も見終えることが出来なかったんです。
最初の1秒で、「あ!このシーンも予告編に入ってるなんて…!!」と見た瞬間、画面をクローズしてしまったので、予告編を未だに全て見終えていないような状態です(笑)。
スクリーンで見る自分というのは、そのシーンを撮るために挑んだ自分自身や、それまでの思い出が色々と脳裏に浮かぶんですよね。
自分の演技に没頭してしまって、ストーリーをエンジョイ出来ずに、今まで起こったことが走馬灯のように頭に浮かぶので、スクリーンで見る時に何処か居心地の悪さを感じるのは、そこにも由来していると思います。
―― 奥原監督とは撮影前に二人三脚でかなり準備をされたと伺いました。日本語の習得も含めて大変だったと思うのですが、陸夏(ルシア)さんにとっては一番何が大変でしたか?
陸夏さん
日本語を学ぶ上で一番苦労したのは、発音のアクセントやイントネーションの矯正でした。
台詞を覚えるのは、何百回、何千回と数えきれないほど、自分の血肉となるくらいしっかり覚えこんだものの、発音が間違っていると、何回も何回もやり直さなければなりませんでした。例えば、「ホテルアイリス」という7文字であっても、アクセントの違いだけで何百回と言い直したほどです。
中国語はちゃんと音声記号があって、一声、二声、三声、四声と、どこで語尾を上げるのか下げるのかが明確に見てわかるのですが、日本語の場合は、学ぶ上でもよく分からない。
先生に教えてもらったりしながら、自分の台本に1つ1つ書き込んでいったんです。でも、書き込んでいけばいくほど、逆にその台詞を自然に読めなくなってしまったり。そうして煮詰まってしまった時には、監督から「他愛もない話でもしましょう」と声をかけていただいて、一旦演技から離れて、休んで、なるべくその台詞を日常の会話らしくするための工夫をしたり。そういった部分でとても苦労しました。
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―― 奥原監督は優しかったですか?(笑)
陸夏さん
優しいですが、演技がダメな場合はやり直さないといけない…!
(陸夏さんが日本語で)キビシイ、サイコー!
私のミューズはティルダ・スウィントン
―― 監督は陸夏(ルシア)さんを「直観的に映画の女優さんだと感じ、撮影が進むにつれて反抗心が出てきて、やっぱり本当の女優さんだと思いました」と称賛していらっしゃいました。ご自身の中で、憧れている女優さんや、または意識した作品や役柄はあったのでしょうか?
陸夏さん
私にとってのミューズは、ティルダ・スウィントンです。
彼女の魅力はスクリーンから溢れ出ていると思いますし、私にとっては役者を超えた存在です。もし彼女に会えたら、ひざまずいて彼女の靴にキスしたいくらい、彼女の歩いたカーペットにキス出来るくらい大好きです!
日本の女優さんですと、満島ひかりさん、安藤サクラさんが好きです。それから、フランスの女優さんでイザベル・ユペール、あと、ケイト・ブランシェット、フランシス・マクドーマンドも好きです。
女性だけど凛々しい、とても個性をもっている方に惹かれます。

©️listchang
自分探しの物語
―― ホテルで出会った人物・翻訳家は、ある意味では自身を投影する幻だったのかと思います。でも彼の存在を通して、マリは自分の気持ちに向き合うことが出来て、人生が動き出したのではないかと感じました。特に「私はあなた、あなたは私」という世界観には圧倒されて、マリが過去のトラウマから一気に解放された気さえしました。
マリが抱えていたもの、そしてマリの変化についてどんなことを感じながら演じられましたか?
そして、マリになりきることは、ルシアさんにとっては難しかったですか?
陸夏さん
この映画を撮影した時、何を撮っているのか確信が持てなかった時がありました。その時に監督に「このシーンはこういう意味なのですか?」「こういうことなのですか?」と質問をしたことがありました。でも回答をいただけるのではなく、「あなたはどう思うの?」と逆に質問を質問で返されたのですが、このご質問に関しても、私も質問で返そうかな、と思ってしまいました(笑)。
この作品というのは、見る側によって、さまざまな解釈が出来る作品だと思いますし、ご質問の解釈に関しても、私自身が感じていた部分と重なる部分や、共感できる部分もあります。
この作品は、私の中では、自分探しの物語でもあると思っています。「自分とはどういう人間なのか?」という問いを語り掛けている映画なのではないかと思います。
―― あの美しい金門島と波の音などで、見ている側としては常に非日常を感じることができました。美しいロケーションの中で、ルシアさんはどんなことを感じながら演技をしていたのですか?
陸夏さん
金門島というのは、大自然と人が素晴らしいと思いました。
私は幼少期から海辺に行くことがとても好きで、何かあったら海辺に行ったり、散歩したり、写真を撮ったり。
海辺というのは自分の人生においても特別な意味を持ち、今回の作品も海辺に建っているホテルが舞台ということで意義深さを感じました。
金門島は歴史がある島で素敵だなと思いました。歴史が継承されていないと文化というものは生まれない、文化の花は咲かないと思うんです。
しかし、金門島はこれまで歩んできた歴史的なものが、きちんと島の人達によって保存されている。だから『ホテルアイリス』を観て、皆さんが何処か幻想的に感じたり、建物に特色を感じるのも、金門島ならではのカルチャーがあるからだと思います。
撮影の中で、(翻訳家が住む)孤島に長い橋がかかっているのですが、そこに永瀬さんと行って撮ったシーンは、夕日が沈むところだったんですが、今でもその美しいシーンが脳裏に焼き付いています。
また、金門島の食事が本当においしくて!台湾の本土で慣れ親しんでいる同じ食材でも、全然鮮度が違いますし、調理の方法が違いました。同じ食材でこんなにもおいしさが違うんだ、と驚きました。自分にとって食事というのはすごく大事にしているので、撮影の励みになりました。
金門島の人々は本当に情熱的で、とてもおおらかなんです。この作品の中でも沢山お手伝いをしていただきました。例えば、エキストラであったり、皆さんの手をお借りして撮影を進めることができました。
撮影が終わった日だったと思うのですが、ブランチで私達だけでなくスタッフの分まで全員に食事をふるまってくださったことが印象に残っています。人との交流という部分がとても印象深かったです。
―― ルシアさんが今注目する中国語圏の監督はいらっしゃいますか?
陸夏さん
たくさんの方がいらっしゃいますけれど、あえて1人と言うなら、アン・リー監督ですね。私の中で彼は唯一無二の監督です。特に『ブロークバック・マウンテン』が好きです。
―― 今はコロナ禍でなかなか自由な行き来が出来ませんが、是非、いつか来日して日本の映画ファンと交流してください。ちなみに、その時日本で行ってみたい場所はありますか?(笑)
陸夏さん
東京でしょうか。
東京に行けば、私が最も会いたい人達に会えるからです。永瀬さんがいる場所なら何処にでも行きたいと思っています!
あと、何よりも日本のおいしい食事を楽しみたいなと思います。
―― 最後に日本の映画ファンに本作の見所も含めてメッセージをお願いします。

©️listchang
陸夏さん
日本の映画ファンの皆様、私もこの映画が公開されることをずっと待ち望んでおりました。
やっと公開を迎えることができて大変嬉しく思っております。
私のみならず監督も含め、スタッフ一同、皆で頑張って創り上げてきた『ホテルアイリス』という架空の世界観がありますし、また刺激的なシーンに目が奪われがちだと思うのですが、その描写は、背後にある繊細な気持ちのブレであったり、奥底に伝えたいメッセージ性があったりするものなので、その辺にも注目していただけたら嬉しいです。
「鏡の中の鏡」という本作のコンセプトもすごく面白いと思っているのですが、この作品を観ると、自分以外の他人の物語かもしれないけれど、本編を見ることでご覧いただいた皆さんが、自分自身が何者か、ということを知るきっかけとなって、ご自身との対話が深まれば嬉しく思います。
―― ありがとうございました!!
『ホテルアイリス』官能の予告編
公式HP :http://hoteliris.reallylikefilms.com/
キャスト
永瀬正敏
陸夏 (ルシア)
菜 葉 菜 寛 一 郎
マー・ジーシャン(馬志翔)
パオ・ジョンファン (鮑正芳)
大島葉子 リー・カンション (李康生)
監督・脚本:奥原浩志
原作 : 小川洋子(「ホテル・アイリス」© 幻冬舎)
2021年日本・台湾合作 | 100分 |日本語・中国語 | ビスタサイズ | 5.1ch
配給 : リアリーライクフィルムズ + 長谷工作室
© 長谷工作室
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