幻の劇場未公開作品が2022年ついにスクリーンへ!矢野瑛彦監督インタビュー

前編:『pinto』&『賑やか Neon City』

Promotion

日本のインディーズ・シーンの将来有望な映画作家にフォーカスする、【ReallyLikeFilms SHOWCASE】第一弾として、矢野瑛彦監督の長編・短編三作品がアップリンク吉祥寺で3月25日(金)より公開です。俳優陣の真剣勝負がそれぞれの作品で繰り広げられ、キャラクターの表情や台詞の一つ一つにとても力強さを感じることができる注目のラインナップとなっています!

主人公の由紀子(役:小野寺ずるさん)が悩み苦しみながら自分と向き合い、新たな人生を歩みだす。ラストの彼女の表情からは清々しさと、これまでとは別の人生が始まることに対する“希望”を感じる『pinto』。矢野監督自身の映画人生で感じた苦しみや孤独を込めた短編『賑やか Neon City』。そして、大切な家族の死やいのち、生きることの意味と真正面から向き合った最新作『yes,yes,yes』(2021年)。

今回は、それぞれの作品が誕生したきっかけや印象的なシーンについて振り返っていただき、今後の飛躍が大いに期待される矢野監督の世界観に迫りました!

矢野瑛彦監督,画像

矢野瑛彦監督

―― アップリンク吉祥寺での特集上映を控えていますが、今のお気持ちをお聞かせください。

矢野瑛彦監督(以下、矢野監督)
『yes,yes,yes』だけの劇場公開だと思ったので、特集上映という形になったのは嬉しかったです。過去作品たちは今まで日の目を見ていなかったので、スタッフ・キャストに恩返しというか、協力していただいたみんなの仕事ぶりが世の中に出ることが一番嬉しいです。

―― 過去作はどのように上映されていたのですか?

矢野監督
『pinto』は、福岡インデペンデント映画祭と新人監督映画祭で上映されました。『賑やか』は、札幌国際短編映画祭のみだったので、上映する機会をいただけたことに心から感謝しています。

―― 当時のお客さんのリアクションは覚えていますか?

矢野監督
『pinto』は、新人監督映画祭でとても手応えがありました。上映が終わった後にも色んな役者さんがプロフィールを持ってきてくれたり、お褒めの言葉を沢山いただきました。映画祭側からも凄く好印象の感想をいただけて嬉しかったです。

札幌での『賑やか』もスタッフの方々が言うには、「プログラムの中で一番拍手が大きかった」と言われました。

―― まず、『pinto』(2016年)ですが、窮屈な世界で育ち、なかなか愛に恵まれない由紀子の物語を描こうと思ったきっかけを教えてください。

矢野監督
友達の女の子との他愛のない会話の中で、「昔、好きだった人にこういうことをされた」と。笑い話なんですけど、それが劇中の由紀子が一番傷つくシーン(恋人京介から性器を扱くように求められる)です。

あのシーンを軸に物語をどう紡いでいくか考えた時に、シチュエーションや彼女の生い立ちをもっともっと掘り下げていきました。あのシーンがこの映画の軸というか、そこから派生して広がった物語です。

矢野瑛彦監督作品選,画像

―― 先日、小野寺さんにお話を伺った時に、矢野監督があのシーンで“上手く撮れた!”という表情をしてくれたことが印象に残っているとおっしゃっていました。

矢野監督
このシーンが一番大事だという核となるシーンに対しての演出なので、やっぱり力が入っていたのかな(笑)。

―― 俳優さんの気持ちを持っていくためにどんな演出で導かれたのですか?

矢野監督
現場を緊張させたという表現が一番正しいと思います。

大事なシーンの時に僕が必ずやることは、スタッフ・キャストを集めて「このシーンが一番大事だ。これを撮るためにこの映画を撮ってます」ということを伝えて、自分の緊張感を相手に伝えることで全体的な緊張感が増していく。そういう風に集中力を高めました。

―― 主演の小野寺ずるさんは、独特な由紀子の世界観を見事に表現されていましたが、由紀子のキャラクターについて意見は交わしましたか?

矢野監督
ずるちゃんとはプライベートな会話を結構したと思います。彼女は独創的な感受性を持っている女性だと感じていました。

―― 人とは少し違う感性を持っているような?

矢野監督
脚本の中の由紀子も凄く変わった子なので、脚本の中の由紀子と小野寺ずるのお互いが持っている個性というか独自性に“ズレ”があったんです。脚本の中の由紀子に合わせてもらうところと、演技の中で小野寺ずるの良さを引き出すために小野寺ずるの独特な部分をカメラに収める。それを使い分けた感じですけど、ずるちゃんの中では脚本の中の由紀子とのギャップにスゴイ苦しんでいたみたいです。

『pinto』を撮った時は自分の演出スタイルも確立されていなくて、試し試しにやったところもあったので、俳優さんは本当に大変だったのかなと。特に主演の2人は撮影も長かったので。その分、新人監督グランプリを獲れたことは恩返しが出来たという思いがあります。

―― 小野寺さんは矢野監督や共演者の大橋さんとのコミュニケーションが支えになったとも仰っていました。

矢野監督
『pinto』以降の演出スタイルは、役者さんたちに一番最初に2つのことを伝えるんです。一つは「俳優は役を100%なりきれるものではないと思っているので、完璧ではなくてもその役に見えればいいと。そのシーンに適した演技が見えればOKです」ということ。内面はカメラに写らないので、「見え方の修正と見せ方の提案をします」と伝えます。

もう一つは「現場で出来ないことはやりません。やれることを100点でやりましょう」ということです。

その演出スタイルは、小野寺ずると大橋一輝と一緒に長い期間をかけて『pinto』を作り上げた中で確立出来たので、ディスカッションやコミュニケーションは僕にとっても凄くありがたかったです。

―― 続いて、『賑やか Neon City』(2017年)は、美しいようで寂しさに溢れる都会の夜と、夢を持って上京したものの孤独で最悪な夜を迎える優作が描かれています。この作品の背景には、監督ご自身の経験や感情がエッセンスとして含まれているのでしょうか。

矢野監督
都会の喧騒の中で感じている“孤独”を映画にしたいと思って撮った映画です。

この時期が僕自身、映画人生で一番辛かったんです。

『pinto』が評価してもらえなかった時期で、“なんで評価してもらえないんだろう、夢を諦めなければならないのかな”って、本当に瀬戸際まで追い詰められていました。

だから、自分の中の葛藤や世の中の人が感じている理不尽なこと、人の愚痴とか色んな負の部分にすごく敏感になっていた。その世の中の理不尽さと重ねて映画を作ろうと思いました。

矢野瑛彦監督,画像

―― そんな“孤独”を描いた作品の中で、母親との電話のシーンが温かくて切なくて、とても印象的なシーンでした。

矢野監督
ありがとうございます。

あのシーンは、僕の母との電話をそのまま書き下ろしたシーンです。リアルだからそう感じていただけたのかなと思います。

―― 題材については、その時点でのご自身の感情が映画を撮りたい欲求に変わっていく感じですか?

矢野監督
そうですね、怒りだとか、悲しみが一番前に進むエネルギーになるというか。

いつか喜びや幸せを起爆剤にしたい、明るい映画を撮りたいと思っているんですけど、今はまだ自分自身もそこまで成熟しきれていないというか。

―― 今は、ネガティブな面をキャッチしちゃう?

矢野監督
自分自身が負の部分が大きいからだと思うのですが、拾っちゃいます。

―― それは今回の上映がヒットして、次回作のオファーが届いたら変わるものですか?

矢野監督
その時にならないと何とも言えないですけど、変わらないと思います。

劇場公開が決まって色んな人に「おめでとう」「良かったね」「報われたね」と言われるんですけど、上には上がいるので。その人達と比べたらまだ何者でもない。早く自分が目標にしている人達が見ている景色を見てみたいです。

昔から満足することがあまりないんです。10代の頃、従姉に「あなたのポケットは大きすぎて、幸せをどんなに入れても埋まらないんだろうね」って言われました。本当にその表現が一番正しい。周りが客観的にみたら結構幸せそうな人生らしいんですけど(笑)。

―― どの作品にも家族が見え隠れしますが、矢野監督の生い立ちも影響しているのでしょうか?

矢野監督
親に対しては感謝しかないので、負のイメージはないんです。

ただ、学校の先生の言うことは聞かなかったので、大人に対しての不満とか怒りはすごく大きかったのかもしれません。

(後編では最新作『yes,yes,yes』(2021年)についてお話を伺いました)


『pinto』予告動画

アップリンク吉祥寺での上映スケジュール
A プログラム
『yes,yes,yes』(75 分)
上杉一馬 瓜生和成 井上みなみ 川隅奈保子  矢野瑛彦監督・脚本作品

『賑やか』(26 分)
武谷公雄 奥津裕也 岩瀬亮 木村知貴 藤野晴彦 矢野瑛彦監督・脚本作品

B プログラム
『pinto』(118 分)
小野寺ずる 大橋一輝 永峰絵里加 木村知貴 坊薗初菜 岡野康弘 矢野瑛彦
富永敬太  矢野瑛彦監督・脚本作品

配給 : リアリーライクフィルムズ + アルミード
www.reallylikefilms.com/yesyesyes
© 矢野瑛彦

3 月 25 日 ( 金 ) よりアップリンク吉祥寺にて 3 作連続上映

 友だち追加

コメント

注目映画

  1. カンヌ開幕中!日本映画で唯一のコンペ部門出品作『ドライブ・マイ・カー』90秒予告初公開!
    家福(西島秀俊)の辿る運命から目を逸らせない― 主演に西島秀俊を迎え、村上春樹の短編を映画化した濱…
  2. 『スウィート・シング』日本版ポスター&場面写真解禁
    ⽶インディーズのアイコン、アレクサンダー・ロックウェル監督、25 年ぶりの⽇本劇場公開作 『イン・…
  3. GG_coda,画像
    ⼀歩踏み出す勇気が すべてを⼒に変えていく アカデミー賞前哨戦として名高い第79回ゴールデン・グ…
  4. 決戦は日曜日
    事なかれ主義の議員秘書と政界に無知な熱意空回り候補者が 日本を変えるため、選挙落選を目指す!? 新…
  5. 映画余命10年,画像
    悲しくても笑った。 悔しくても笑った。 小松菜奈×坂口健太郎、ダブル主演、RADWIMPS書下ろ…
  6. ブータン 山の教室,画像
    世界で最も幸せな国から本当の”幸せ”や”豊かさ”を問いかける ハートフルな人間ドラマ誕生! ブー…
  7. 映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかり
    社会不適合者な“元女子高生”殺し屋コンビが頑張って社会に馴染もうと頑張る異色の青春映画誕生! 阪元…

映画ログプラス Youtubeチャンネル

映画の予告動画など多数掲載!
映画ログスタッフによる、キャストや監督さんへのインタビュー動画も!!
ディーン・フジオカさん×蒔田彩珠さんPure Japanese』【スペシャルメッセージ】
ページ上部へ戻る