映画『ごっこ』主演・千原ジュニアさんインタビュー

映画ごっこ主演_千原ジュニア

2016年10月20日にこの世を去った早世の鬼才・小路啓之さんの原作「ごっこ」は、一見ほのぼの子育て漫画のようで、社会の暗部をファンタジックに描いた名作として知られています。今回、実写映画化にあたり、『凶悪』の脚本家・髙橋泉さんと、『ユリゴコロ』で新境地を切り開いた熊澤尚人監督、そして、役が憑依したかのような渾身の演技をみせる城宮役の千原ジュニアさんと、子どもながらに強い意志を持った眼差しのヨヨ子役の平尾菜々花さんを迎え、狂気を内包する不器用な父性愛と自己犠牲の連鎖を描いた映画『ごっこ』が誕生。
今回は10月20日(土)の公開を目前に控え、主演の千原ジュニアさんに本作の魅力から千原さんの視点などたっぷりとお話を伺いました。千原さんが”これは紛れもない天才が現れた”と絶賛の平尾菜々花さんにも是非注目してください!

―号泣しました、千原さんに泣かされました。どの様に演じようと意識すると、あの様な鬼気迫る表情になるのでしょうか?
ほぼ、順撮りでやっていただいたので、その流れでという感じで。あれをいきなり、“じゃあ最初にやってください”とか“途中であれ撮影するよ”といったら、ちょっとね。もしかしたら、その辺はスケジューリングの妙じゃないでしょうか。

―やりやすかったということですね
はい、そのままの時間軸でできたんで。

―涙を流すシーンはまるで鬼のような形相でした
なんか、わかんないですけどね、脚本読んで、こういう感じかなということをまず自分の好きなように動かさせてもらって。それで違ったら監督さんが違ったと言いはるやろうし、なんも言われなかったら、それでいいのかな、ぐらいの感じでずっとやってたんで。あのシーンが特別何かということもなく、そのままの感じでやらしていただいてという感じですね。僕の芝居がだめだと思われた方は、それは僕じゃなく監督の演出です。すべての責任は監督にあるということです(笑)

―今回の主演作は千原さんにとってどの様な位置づけの作品だったのですか?
若い頃はたくさん色々、もうちょっとやらせてもらっていたと思いますけど、ちょっと久しぶりと言うか、やってなかったんで、こういう流れに非常に不安な部分もありつつやらせていただきました。まあ、でもほんとに、平尾菜々花ちゃんに助けられたということじゃないですかね。

―喧嘩しそうなシーンでは‟素”が出ているようにも見えました
それは自分ではよくわかんないんですけど、自然にやれたらなとは思ってやってました。

―自然に演技ができたということはキャストやスタッフの皆さんの雰囲気が良かった?
カメラが回っていない所で菜々花ちゃんと色々喋ったり、そんなことで映画の時間軸と実際の時間軸が、同時に進んでいってる感じはありましたね。それでだんだん、距離が近くなっていって、それを映画の中に落とし込んでいったかなというかんじでしょうか。

―原作で主人公は“ひきこもり”です。何処か千原さんの過去と通じるところがあってこの配役になったのでしょうか?
というよりは、キャスティングされた方が、そういう情報を知った上で選ばれたのかなというのは何となく思いましたけどね、はい。

―ひきこもり役を演じるのとご自身の体験とは勿論違うと思いますが、どこか共感するようなところはありますか?
引きこもりというよりは、衝動的に行動してしまうということの方が、、、結構大きな決断を衝動的に行動して決めてしまう部分があるんで、そっちの方がなんか共感というか、はい。

―2年前の撮影になりますが、プライベートでも結婚の直後ぐらいだったでしょうか?
結婚なんかもすごく衝動的でしたし、僕自身も結婚するなんて思ってなかったんで、そうしたことの方がなにか共通していると思います。

―子役の平尾菜々花さん演じるヨヨ子の親を演じるということに対してはどういった役作りを意識されたのでしょうか?
役作りはしてないですよ。今考えるとあのタイミングでよかったな、というのはありますね。実際、子供がいない時に撮ってよかったなというのと、あと、平尾菜々花という人と演じた瞬間に“あ、もうこれは紛れもない天才が現れたな”という感じがしました。なんか、全部俺が引き出されてるというか、引っ張ってもらってるというか、なかなかどえらい大型新人が現れたな、という感じですね。

―もし、お子さんが出来てから撮ったとしたら演技も変わっていた?
多少なりとも、(子供に対する接し方が)こ慣れている部分が出てきてしまうかも知れませんね。そういう意味でも良い時期にやらせていただいたな、と思います。

―この撮影を通じて、“子供っていいな”など気持ちの変化はありましたか?
子供はもともと好きだったので。まあでも、平尾菜々花ちゃんは格別に可愛かったですね、カメラ回っていない所でも。

―菜々花ちゃんとは演技についての話はしたのですか?
全然話さないですよ。例えば、基本的にこのシーンはこうしてとか、そんなことは一切ないですし。

―リハーサル?
いやあ、僕の記憶ではなかったです。現場でそれはもちろんテストして、ということですけど、(特別に)リハーサルとかほんとにした記憶はないですけど。

―菜々花ちゃんも台詞を丸暗記して?
はい、凄いよもう。(リハーサルは)なかったですね。

―ところで、本作では城宮とヨヨ子との出会いは一瞬で心を通じ合わせたような化学反応を起こしたように見えますが、これは“寂しさ”の共鳴なのでしょうか?
寂しさと言うよりは一筋の光が見えたんでしょうね、そこに。その瞬間に(さらいに)行ったということじゃないでしょうか。

―自分(城宮)の状況を打破するような意味での光ですね
はい、そうですね。

―ひきこもりは社会がつくり上げた問題かと思いますが、そうしたことへの怒りや鬱積した気持ちが、終盤、城宮を追い込んだのではないでしょうか?
“衝動”に“愛情”が乗っけられたら、ああいう行動をとってしまうんだろうな、ということでしょうね。

―衝動的であることは、表面的には悪いようにもみえますが、本作のラストもそうであるように、単なる“良し悪し”でもないように思えます
真正面から見るとただの悪ですけど、カメラ位置を変えるとそれが正義やったりとかっていう。それはね、報道や事件なんか見てても、片側からしか我々見てないから。一方で、カメラパン(※カメラを横にふる)したら、そういう原因があるからこうなってねん、みたいなことかなと思いますけどね。

映画ごっこ主演_千原ジュニア

“引越しおばさん”(※注)の件も、おばさんが一方的に悪者扱いされたみたいですけど、おばさんの家族が病気で亡くなったことも原因の一つだったみたいやし、それを近所の方々も知っていて可愛そうだと思っていたこととか…、カメラパンせえへんから。そんなことですよね。

(※注)引越おばさん:騒音おばさん/奈良騒音障害事件(ウィキペディアより)

―千原さんは、元々裁判を傍聴されたりしていらっしゃるそうですが、カメラ位置を変えたら見えてくる、人間の違う側面などに興味があったりするのですか
まあ、そういう話聞いたり見たりするのは好きですけどね。

―一面だけを見ないというものの見方は小さい頃から身についていたものですか
芸人は、特にね、多かれ少なかれ、言い方変えるとひねくれた奴が多いというか、そうだと思いますね。

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-自然とそうなってくる?
はい、そう思います。

―ヨヨ子は城宮にとっては自分の鏡のように見えたのではないでしょうか。ヨヨ子を大事にすることは自分を大事にすることだと本能的に気付いていたのでしょうか
そこを僕が感じてやる(演じる)のは違うな、と思うので。だから、なんて言うんでしょう、読み込みすぎるのも違うし、読み込みすぎないのも違うし、その辺が難しい。勿論、僕は脚本読んで結末まで分かってますけど、ここのこいつ(城宮)はどうなるか分からずに生きてるわけですからね。そこまで考えて、これは僕の写し鏡でとかっていう風に考えてしまうのは違うなと思うんですけど。

―平尾菜々花さんは物怖じすることもないし、見ていて凄い演技だと思います。千原さんはどのシーンが印象的だったでしょうか
僕がヨヨ子の顔を叩くシーンがあって。そこが俺、「いけるかな?」みたいな感じがちょっとあって。自分自身の中で。それが結局バーンってもうフルでいってたんですけど、僕がいったんじゃなくて、完全に向こうにいかさせれてるというか、お芝居がですね、完全に乗っけられてる感じがありましたね。ハンドリングされてる感じがしましたね。

―あまり感じたことがない感覚?
今までいろんな役者さんが‟うまいことやってくれるな”みたいなのはありますけど、それもしくはそれ以上の感じがありましたね。

―ところで、本作と原作との違いについてはどのように受け止めていらっしゃいますか?
(原作とは)全然違うし、キャラクターをお借りして自由に脚本家の人が動かしているというイメージですね。

―天国へ旅立った原作者の小路啓之(しょうじひろゆき)さんへのメッセージをいただけますか?
お会いしたことはないので、どういった方かは分からないですけど、(映画を)創る人として、書かれたものをこうやって形にさせていただいて、これが世に出るということはほんとに素晴らしいなと思いますし、いいものに参加させていただいてほんとに有難うございました。

―実際完成した映画をご覧になってどう思いましたか?
何か大分前やったんで、‟こんなん撮ったな”とか‟こんなん撮ったっけ?”とか、映画の内容よりは、そっち追いかけんのが必死で。ほんで、ね、なかなか一緒にやった人が出家することないですからね。ほんで、読み方変えれば俺も‟センゲン”やし、(笑)何かしら因縁が色々とあったのかもしれませんね。

―これだけ心を揺さぶられる映画は数少ないです。映画ファンに向けてメッセージをお願いします。
そうですね、まず脚本が素晴らしいと思います。後は、もしかしたらそういう過去に虐待みたいなことを経験している方なんかが観てもらうと、かなりこの映画の色合いが濃くなるというか、いい面が強く出ると思いますし、最後ちゃんとゆだねていただけたら、気持ちいいところに落ち着きますんで、是非ご覧いただければと思います。

映画ごっこ主演_千原ジュニア

千原ジュニアさん主演!映画『ごっこ』は、2018年10月20日(土)よりロードショーです!


<編集部より>
冒頭から感動した理由を尋ねると、さらりと”スケジューリングの妙では”とかわしてくださったジュニアさん。役者として結末は知っているけど、どうなるかわからず生きている物語の主人公城宮(パパやん)役をありのままに演じたからこそ、私たち観客を釘付けにする究極の演技が生まれたことを明かしてくれました。俳優・千原ジュニアさんをもっと沢山スクリーンで観たい。映画関係者の皆様、是非たくさんの出演交渉をお願いします!!

■千原ジュニアさんプロフィール
1974年3月30日生まれ。京都府出身。
1989年に千原兄弟として実兄・千原せいじとコンビを結成。関西方面にて活躍していたころには”ジャックナイフ”と呼ばれていた。数多くのバラエティ番組に出演、人気お笑い芸人としての地位を確立している中で、俳優として映画やドラマにも出演している。映画主演作には1998年「ポルノスター」、2000年「HYSTERIC」、2017年「新・ミナミの帝王 劇場版」がある。

■予告動画

■キャスト
千原ジュニア (『岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇』『PORNOSTAR ポルノスター』『MOON CHILD』『ナイン・ソウルズ』『HYSTERIC』『劇場版 新・ミナミの帝王』)
優香 (『羊の木』)
平尾菜々花
ちすん
清水富美加 (『暗黒女子』『笑う招き猫』『東京喰種 トーキョーグール』)
秋野太作
中野英雄
石橋蓮司

■スタッフ
【監督】
熊澤尚人 (『ニライカナイからの手紙』『君に届け』『心が叫びたがってるんだ。』『ユリゴコロ』)
【原作】
小路啓之(集英社刊)

【脚本】
熊澤尚人
髙橋泉
【製作】
前田茂司

■関連商品

■公開情報
2018年10月20日

■公式サイト
http://gokko-movie.jp/

■コピーライト
©小路啓之/集英社
© 2017楽映舎/タイムズ イン/WAJA




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