豪田トモ監督「特に日本人は彼女に共感しやすい」ドキュメンタリー映画『こどもかいぎ』インタビュー

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笑いや自信や勇気を、子どもにも大人にも

子どもたちが「かいぎ」をする保育園を1年間に渡って撮影したドキュメンタリー映画『こどもかいぎが、本日7月22日(金)から全国公開中です!

今回は、『うまれる』(‘10)、『ずっと、いっしょ』(’14)、『ママをやめてもいいですか!?』(‘20)で累計100万人以上を動員し、命・家族・絆をテーマにエンタメ性にこだわったドキュメンタリー映画を作り続けている豪田トモ監督に、子どもたちが主役の本作における面白さのポイントや<こどもかいぎ>の可能性について聞きました。

映画こどもかいぎ,豪田トモ監督,画像

―― とても楽しいドキュメンタリー映画でした!ソウタ君が怒りを抑えようとするあの表情も…(笑)。

豪田監督
(子どもは)笑顔を提供してくれる存在ですよね。
「僕が話してる時は…全部途中になっちゃうんだよ…」って。何とも言えない顔でした(笑)。

―― そして、トッキーのライオンクイズはもう最高でした!

豪田監督
映画の文脈と関係ないシーンなんですけど、面白すぎて!編集者と何回も意見交換したんですけど、最終的には僕が独断と偏見で残して(笑)。あんな最高なシーン、残さない選択はないですよね(笑)。

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マイケル・ムーアが教えてくれたこと

―― “作品を思いっきり楽しんで欲しい!”という監督の想いをヒシヒシと感じました。

豪田監督
“面白さ”はすごく大事にしています。

映画は観てもらってナンボですし、一番大事にしているのは観てくださった方の満足感。せっかくお金と時間をかけて観てもらったのに“つまんなかった”では申し訳ないんです。

ドキュメンタリーは面白いものだとあまり思ってもらえない。でも、作り方によっては面白くできるし、それはマイケル・ムーア監督(『ボーリング・フォー・コロンバイン』『華氏911』等)が教えてくれたんです。

どうすれば面白くなるのかは色々と試行錯誤しながらですが、今回の僕なりの方程式は子どもが子どもらしくしているところは面白いんです。ライオンクイズがまさに一番良い例。

逆に、子どもが大人ぶってるところも、このギャップがすごく面白いんです。それが女の子同士のピーステーブルの場面。「だから言ったでしょう!」みたいな。あれも撮影しながらニヤニヤして、カメラが震えちゃうんです(笑)。

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―― 彼女たちの会話は大人になりきっていました(笑)。
ドキュメンタリー作品が続いていますが、エンタメ性には相当こだわっているのですね?

豪田監督
メチャメチャこだわっています。

過去3作品『うまれる』、『ずっと、いっしょ』、『ママをやめてもいいですか!?』も実は全部エンタメなドキュメンタリー映画です。

僕は良い映画の条件の一つは、娯楽性と社会性のマッチしたものだと思っていて、それは笑えて、泣けて、ハラハラドキドキできるもの。その3つの要素を毎回入れようと思っています。

ハラハラドキドキは、今までの作品では出産シーンなどが多く担っていて、家族の繋がりや命の尊さで感動シーンを用意することができて、笑いは登場人物の人の面白さとか行動の面白さで表現しています。

―― ハラハラドキドキとも違いますが、この映画では喧嘩のシーンが何回か登場します。

豪田監督
喧嘩は、コミュニケーションが未熟な状態だと思うんです。自分には言いたいことがあり、伝えたいことがあり、やりたいことがあるという主張と主張のぶつかり合い。だけど、ああやって対話をすることによって、全部が重ならなかったとしてもお互いに第三の領域に持っていけたりはするわけです。

“ここは譲れるけどこっちは譲れない”とか“そのままでいいじゃん”とか。その場数を踏んでいかないと喧嘩することが億劫になってくる。そうなると、自分の意見や主張を我慢したり秘めたりすることになるけど、それは個人にとっても社会にとってもあまり良いことではありません。

喧嘩も対話の一つですから、小さい頃から対話を続けるということはすごく大事なことだと思います。

苦手克服につながった先生のコミュニケーション力

―― 続けることについては、発言が得意ではないサヤカちゃんの変化は印象的でした。

豪田監督
サヤカちゃんが<こどもかいぎ>に参加し続けたのは、この保育園の素晴らしさに依存するところがあります。普通は、普通って何が普通なのかって話なんですけど、話さない子がいたら多分先生が何も言わずに外すと思うんです。

“この子は多分嫌いだろうし、苦手にしてるから会議に呼ばない方が親切だろうな”って。でも、先生が素晴らしかったのはサヤカちゃんにわざわざ聞いたんです。「もしかして会議合わない?出たくなかったら出なくても良いんだよ。どうする?」って。それも先生とサヤカちゃんの対話なんですけど、サヤカちゃんは「出たい」って言ったんです。

大人の世界観だと、“苦手そうだし出たくないんだろうな”って決めつけちゃうけど、決めつけずにちゃんとコミュニケーションを取ったからこそ続けることになったんです。

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―― 監督もサヤカちゃんには注目していたのですか?

豪田監督
はい、僕も彼女にはすごく注目していました。

“いつかサヤカちゃんが喋るようになったらいいな……”と思いながら撮っていたんですけど、話せるようになってくれて撮りながら感動しました。

人がトランスフォーム(一変)する瞬間なんてなかなか見られなくないですか?

ドキュメンタリーはそういう人の人生でも貴重な瞬間をたまに見せてもらうことがあるのですが、撮影をしながら感動できるのは幸せなことです。

対話がテーマの映画の中に彼女が入ることによって奥深さも出るし、特に日本人は彼女に共感しやすいのかなと思います。

日本人は僕もそうですが、コミュニケーションベタだし、対話も苦手だし、会議での発言もうまく出来ない人の方がどちらかといえば多数派です。サヤカちゃんを自分に重ねる方が実は多いと思うので、その子が変わっていく姿を見ることで、大人にも勇気を与えられたらいいなと思いました。

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小学校では急に大人が厳しくなる!?

―― 自由な子どもたちを相手にすると先生も悩んだり、怒ったりしてしまうのではないですか?

豪田監督
常に悩みながらやられていましたけれど、こちらの園は「見守る保育」というコンセプトがあるので、先生方は迷ったら“自分は見守っているだろうか?”と自問をしながらやられていました。

当然、感情面が先に動いてしまう場面もありますけど、圧倒的に少ないです。唯一卒園式の練習の時にカオス状態になって、先生が思わず「ちょっと勘弁してよ」みたいな感じになってましたけど、あのくらいです。

最近気付いたのは、保育園の時はみんなイキイキしているけど、小学校に入ると勢いが削がれる子が沢山いる。この映画に出演した子どもたちも小4になったんですけど、先日企画で集まったら、「学校に行くと喋る場所がない」、「話を聞いてもらえない」、「喋ったら怒られる」とかそんな感じなんです。

―― 保育園とは正反対の環境ですね。

豪田監督
保育園は大人が本当にみんな優しいんです。見守ってくれて、可愛がってくれて。だから子どもにとっても最高の楽園、パラダイス。
ところが、卒園して学校という場に入ると、急に大人が厳しくなる。そのギャップにやられちゃう子がいるんじゃないかなって最近思います。

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―― 一方で、小学校入学後を考えると若干自由すぎるのかな?という印象も受けました。

豪田監督
どっちに合わせるのがいいのか?という議論も必要かもしれません。子どもなのか、大人なのか? 今は学校側に合わせようとしますよね。でも、果たして学校側に合わせることが、子どもたちにとっても良いことなのだろうか?

自分の意思を尊重されて、可愛がってもらえて、愛情表現してもらえて、話を聞いてもらえる環境が子どもにとって良いんじゃないかなとは個人的に思うんです。

大人に求められる質問力

―― 当然そうですよね。改めて、監督が考える「見守る」とは、どんなことになるのでしょうか?

豪田監督
映画の中で園長先生も仰っているんですけど、ぼんやり見ていることではなく、この子は何を求めているのか、何を考えているのか、しっかりと見た上で見るのが見守ることだと思います。

そして、いつ、どこで、どんな風に、どこまで介入するのかが大事です。これについては、介入は全般的には質問形式がいいようです。相手が気付くような質問を投げかける。

「これはどういうことなんだろうね?」「何でこういう行動をしたんだろうね?」というような質問を投げかけると、人間って考えるんです。会議の根本でもあるんですけど、「〇〇について話しましょう。あなたはどう思いますか?」と聞かれると、やっぱり脳は働き始める。

だから、どう質問していくかのスキルが大人側に必要ですし、大人は子どものために勉強し続けなければなりません。

<こどもかいぎ>の可能性

―― 日本の教育は100点満点を採ることを善しとし、正解があるものを教えていきます。でも、子どもにとっては分からないことを考えたり、友達と話し合ったり、自分の気持ちを伝えることの方が、教えられたことを正確に答えることよりも大事です。日本の教育にはまだまだ可能性があるように感じます。

豪田監督
メッチャあります!

『かいぎ』でテーマが振られると子どもの脳の中はどうなっていると思いますか?

例えば、「わたしたちはなんで生まれたんだろうね?」と質問すると、まずそれを理解しようとします。そこで考え始めるとシナプスがバチバチ、バチバチなるわけです。その中で、自分の記憶や色々なことを頼りにして自分なりの考えが浮かぶ。それを言葉にするために、自分が知っている言葉を紡いで言葉を作る。今度はそれをどのタイミングでどういう風に言うかを脳が考えて、表現するわけです。
表現したことに対して、他の人から質問されると、また同じように考えます。

お友達の発言を聞いた時に大きく分けると二つ方向性があると思うんです。まず、“自分と同じ考えだ!”ってなると、それは共感性が生まれるきっかけになる。“自分とは違う意見だなぁ”ってなると、それは多様性を知ることに繋がるんです。

<こどもかいぎ>をやると、聞く力と話す力だけじゃなくて、思考力から理解力から語彙力、創造力も妄想力もあるかもしれないし、共感力、多様性を育む力、共感性が積み重なると仲間意識にもなる。その仲間と一緒に話し合うことで問題を改善・解決すると自信にもなってくるし、自分の話を聞いてもらえたら受け入れてもらえた感覚が自己肯定感にも繋がる。

映画こどもかいぎ,画像 映画こどもかいぎ,画像

―― <こどもかいぎ>のポテンシャルは本当にスゴイですね!

豪田監督
何か問題が起きたときに、すべて改善・解決はできないかもしれないけど、話し合って改善していく経験を積み重ねていくと未来を信じる力になるし、自分たちの世界を自分で作れるという自信になっていきます。結果だけでなく、経過が大切です。

だから、<こどもかいぎ>は単純なおしゃべりではなくて、本当にメチャクチャ奥深い世界があり、様々な能力を開発できるんです。

一方で、子どもたちが今抱えているようないじめ、不登校、ひきこもり、虐待…。色々ありますけど、自分の気持ちを言葉にできない、SOSを発せられない、助けを求められないことが問題を複雑化している側面もあるんです。

もし週に一回でも<こどもかいぎ>のような場があれば、SOSを求めるきっかけも増えるし、助けてほしい気持ちを伝えやすくなる。そういう経験を積み重ねていくと、何か問題があった時に暴言と暴力という手段じゃなくて、まずは話し合う癖ができるんです。

そうすると暴力行為も減るし、暴言を吐くようなモンスター〇〇も絶対減っていくし、依存症とか精神疾患とかも減っていくし、そもそも児童虐待とDVも圧倒的に減ると思うんです。

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―― 対話の環境を用意するだけで多くの社会問題の解決にも繋がるわけですね。

豪田監督
自分の言葉でうまく対話が出来ないから暴力と暴言に訴えるので、今の多くの社会問題の予防になります。

国語、算数、社会、地理を勉強して、これができるか?すべて大切な教科ですけれど、そこまではできないですよね。でも対話をすることによって、現実社会の根底になるような大きな問題を改善できるんです。

だから、この映画を観てもらうだけではなく、絶対に社会に導入した方がいいと思っています。野田聖子大臣に会ったり、内閣府の人に会ったり、来年から設置されるこども家庭庁の準備室の人たちにも会いに行き、“『こどもかいぎ』を社会に導入するにはどうしたらいいんだろう?”という話をしているんです。

―― グローバル化が進む中で、自分の意見を主張することは益々必要ですよね。

豪田監督
特に日本は民主主義を与えられてしまったような部分があるから、対話して物事を決めていくことが民主主義の基本なのに、話し合いができない。だから国会でも多数決の強行採決があるわけで、あれは本来の民主主義ではあり得ません。

民主主義が一番進んでいるのは北欧なので、北欧についてかなり勉強したんですけど、彼らは強行採決をほぼしません。対話をずっとし続けて決めていくので、そういうことも含めて社会の根本を作る作業だと思っています。

―― 最後に映画ファンに向けてメッセージをお願いします。

豪田監督
ドキュメンタリー映画は退屈だと思われがちですが、娯楽として楽しみつつ、色んな気付きと学びがある映画です。是非、楽しみながら刺激を受けてください!

―― ありがとうございました!!


豪田トモ監督プロフィール

映画こどもかいぎ,豪田トモ監督,画像

1973年、東京都多摩市出身。中央大学法学部卒。6年間のサラリーマン生活の後、映画監督になるという夢を叶えるべく、29歳でカナダ・バンクーバーへ渡り4年間、映画製作の修行をする。

在カナダ時に制作した短編映画は、日本国内、バンクーバー、トロント等数々の映画祭にて入選。帰国後はフリーランスの映像クリエイターとして、テレビ向けドキュメンタリーやプロモーション映像などを制作。

命と家族をテーマとしたドキュメンタリー映画『うまれる』(2010年/ナレーション=つるの剛士)、『ずっと、いっしょ』(2014年/ナレーション=樹木希林)(文部科学省選定・厚生労働省社会保障審議会特別推薦)、『ママをやめてもいいですか!?』(2020年/ナレーション=大泉洋)は累計100万人以上を動員。ともにDVDを好評販売中。

2019年に初の小説『オネエ産婦人科』(サンマーク出版)を刊行。1児の父。

映画『こどもかいぎ』作品情報

監督・企画:豪田トモ
ナレーション:糸井重里
7月22日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
配給:AMGエンタテイメント
公式サイト:https://www.umareru.jp/kodomokaigi/
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