声優内海賢二に感謝を込めて。 映画『その声のあなたへ』榊原有佑監督インタビュー

声優内海賢二に感謝を込めて。映画『その声のあなたへ』榊原有佑監督インタビュー

「北斗の拳」ラオウ役、「ドラゴンボール」神龍役、「鋼の錬金術師」アレックス・ルイ・アームストロング役など長年に渡り活躍、声優業界を牽引し、2013年に亡くなった内海賢二さん。

現在大ヒット公開中の映画『その声のあなたへは、声優仲間たちへのインタビューを通して声優業界のレジェンド内海賢二に迫っています。さらに、人気職業として確固たる地位を築いた声優のこれまでの軌跡を知るドキュメンタリーにもなっており、アニメファン必見の作品です。

今回は、皆に愛された人間・内海賢二と声優業界の軌跡を丁寧に掘り下げた榊原有佑監督(「栞」)にお話を伺いました。

声優内海賢二に感謝を込めて。映画『その声のあなたへ』榊原有佑監督インタビュー

映画『その声のあなたへ』榊原有佑監督

新人声優・葵あずさに託した想い!

―― 劇中では葵あずささん演じるアニメイトタイムズのライター武田結花が取材の中で内海賢二さんを知り、興味を持っていきます。彼女の体験は制作段階での監督の実体験に近いのでしょうか?

榊原有佑監督(以下、榊原監督)

まさにおっしゃる通りです。

撮影前の2019年に内海さんに関係する方々に取材をしました。その時に自分の中に芽生えた感情や感動した部分をフィルムに込めたいと思いました。

加えて、インタビューでもらった声だけを紡いでいくだけのドキュメンタリーではなくて、プラスαで自分の気持ちも入れたい。だから、自分の投影として武田結花を登場させて、彼女に2019年に僕が感じたことをそのまま感じてもらう構成にしました。

武田結花役の葵あずささん

武田結花役の葵あずささん

―― 葵さんのリアクションが自然なので、本物のライターさんのようにも感じました。

榊原監督
あの役はお芝居パートもあるのでオーディションをしています。彼女は当時賢プロダクションの養成所に所属していたのですが、候補を絞っていく中で感覚的に彼女に同じ話を聞いてもらったらきっと僕と同じ感情になってくれると感じたんです。

自分の感情を凄く表に出しやすいというか、表情で伝わってくる方でした。

台本でもなるべく彼女のドキュメンタリーになるようにしました。

幼少期の結花が声優さんのことを魔法使いだと思っていて、「私は声優さんになりたい」と言うシーンがあります。あれは葵さんの実話です。彼女が幼少期に「魔法陣グルグル」を見て声優さんになりたいと思ったエピソード。それを彼女に言ってもらうことで、彼女自身のドキュメンタリーにしています。

演出もお芝居を教え込むというよりは、なるべく素に近い感情で現場に入ってもらえるようにしました。

―― インタビューパートは実際に彼女が質問を考えているようにも見えました。どう作られているのですか?

榊原監督
進め方としては構成台本を作り、おおよその質問と回答、その先の展開というような流れは作っています。ただ、葵さん本人には「自分で考えた質問をしてください」とお願いしました。喫茶店へ行き「僕をインタビュイーだと思って自分で考えた質問をして」という形でインタビューの練習もしました。

当時の彼女は声優の卵だったので、「こんな機会はないから皆さんに自分が本当に聞きたいことを聞いていいよ。映画は気にしなくていいから」と伝え、彼女が本当に興味のあること、内海さんについて聞きたい事を自身で考えて聞いてもらいました。

声優界のレジェンドが続々登場!ロケ地にもこだわりが!

―― 浪川大輔さんには少し踏み込んだ内容の質問もされていました。

榊原監督
あの質問も本人からだったと思います。

浪川さんは映画で描かれているように声優を辞めようと思った時に内海さんに救ってもらった方。

そういう経験も踏まえて、ご自身も後進の育成や、後輩たちに何かをしたいという思いを持って活動されている方だったので、そういう視点の質問は聞こうという話をしている中で考えてくれた質問だったと思います。

―― インタビューのロケーションも色々な場所で行われていました。

榊原監督
シーンによって色々な意図がありました。

まず、柴田秀勝さんのシーンは新宿ゴールデン街の「突風」です。あの柴田さんのお店に内海さんも実際に住んでいたので選びました。

野村道子さんはドンファンというスタジオです。実は内海さんが亡くなる数年前に「けんぷファー」という夫婦共演作があり、お二人が夫婦でお芝居をしているんです。その収録を行った思い出のスタジオがドンファンです。

野沢雅子さんはドラゴンボールを録っているいつものスタジオです。

賢プロダクションの皆さんは、僕が最初にかないみかさん、谷山紀章さん、内海賢太郎さんとお話したのが飲み屋でその時の雰囲気が凄く良かったんです。1対1でかしこまって話すのではなく、みんなで内海賢二さんについて語り合う空間を作りたくて2019年の再現のような形でシーンを作りました。

―― さらに、劇中では多くのアニメ作品の素材が登場しています。各アニメーション会社が内海さんの作品なので快く素材を提供してくださったのですか?

榊原監督
ここは裏事情ですがかなり苦戦しました。

全部で300以上の素材リストを作ったのですが、問い合わせをしてNGのものも多く、最終的に使ったのは30くらいです。それくらい使えない素材がありました(笑)。

アニメの素材や使える映像によって、使えるインタビューも変わるので、編集では「その素材がNGならこのシーンもダメだな」とか。

でも、内海さんの作品だから使えた素材も沢山あります。

―― 苦労の末に集まった貴重な素材なのですね。

今、内海賢二を語る喜び!

―― インタビューでは、声優の皆さんが話すトーンが明るくて、まさに内海さんの明るさやエネルギーが伝承されているようにも感じました。

榊原監督
そうですね。皆さん、お話がメチャクチャ聞き易いですし、話に引き込まれてしまいます。

羽佐間道夫さんが「声優は役者だけど噺家の一つでもあるから、落語家や漫談家と同じように声や話し方で人を魅了していく側面もある」と仰っていたのですが、まさに普通に話すということだけでも上手です。

加えて、今回は撮影前にご挨拶をすると、皆さん「こちらこそ内海さんについて話せる機会をいただいてありがとうございます!」という形だったので、“内海さんのことを話すのが楽しい!”みたいな感情もあったのだと思います。

声優内海賢二に感謝を込めて。映画『その声のあなたへ』榊原有佑監督インタビュー

―― 本作では「声優」という職業がなかった時代、レジェンドの方々がゼロから創りあげてきた声優の歴史も描かれています。

榊原監督
「声優」という言葉が辞書にもなかったし、劇中で永井一郎さんの新聞記事が登場しますが、あの時代ですらワープロの変換で「声優」という単語は出てこなかったでそうです。

―― 台詞では色々な声を出すけど、会ってみると皆さん凄く「優しい声」をしている。だから、「声優」という呼び方が定着していったのかもしれないなぁと感じました。

榊原監督
そう言われてみれば皆さん本当に優しい声です。

悪役をやっている方でも目の前で話すと、優しくて親しみを感じる方たちです。

ナレーションのシーンは内海賢二さんの人柄が詰まったお気に入りのシーン

声優業界はみんなファミリー!内海賢二の愛

―― ところで、内海さんが水樹奈々さんのライブへ行ったエピソードもスゴイですよね!

榊原監督
(笑)

―― ただライブに行っただけではなく…(笑)。内海さんは自分の事務所所属に限らず、声優のみんなをファミリーだと思っていたんですね。

榊原監督
賢プロ所属の新人だから優しくするとかではなく、もう所属は関係ないらしいんです。この業界の新人であれば、誰でも優しくする。

それはスタッフさんにもそうなので、賢太郎さんが賢プロダクションに入った時も、周りが凄く良くしてくれたそうです。

「お父さんに良くしてもらったから。何か困ったことがあったら助けてやるから」と。

―― 内海さんの生い立ちに触れると、内海さんが声優ファミリーを築いたことも感慨深いです。

榊原監督
道子さんは「人に気に入られないと生きていけなかったから、人に良くすることが沁みついているんだと思う」というような考察をしていました。

家族を知らずに育ったからこそ、賢太郎さんのことは本当に溺愛していたそうです。

声優内海賢二に感謝を込めて。映画『その声のあなたへ』榊原有佑監督インタビュー

神が宿った伝説の喉仏!

―― 監督が一番印象に残っているエピソードを教えてください。

榊原監督
内海さんのエピソードで一番ビックリしたのは最後の言葉でした。

僕らが取材をしていても内海賢二さんのその時代のことはよく分からなかったので、最後にその言葉が出たということによって映画の構成も変えました。

あと、感動というか“これは伝説だ!”と思ったのは、最期の内海さんは病気で骨がボロボロだったようで、火葬場でも骨がなかなかつかめないような状態だったそうです。にもかかわらず、喉仏だけが火葬後も綺麗な状態だったそうです。

住職さんも「神様からいただいた喉仏そのもの、神が宿っていました」と。谷山紀章さんらも号泣で「さすが、内海さん!」という逸話がありました。本編の中には入れなかったのですが、語り継ぐべきエピソードだと思いました。

―― まさに伝説ですね!葬儀場から出発されるシーンだけでも大感動でした。

榊原監督
葬儀場の映像はワンズワンさんから提供していただきました。

作品では途中でカットしたのですが、実はスタンディングオベーションで皆さんが拍手を送り「ありがとうございました!」という声が響くあの光景は、車が出て行った後も1分くらいずっと続いていたんです。車が見えなくなっても拍手が鳴りやまなかった。

あの映像を見るだけでもどれだけの人に内海さんが愛されていたのか、慕われていたのかが分かる映像でした。

―― インタビュー後、ラストシーンについて伺うと「この作品の制作を通じて、たくさんの出会いを与えてくれた内海賢二さんに対して、わたしたちからの感謝の気持ちです」と、ラストのドラマパート、そしてタイトルに込めた想いを明かしてくれました。その想いは是非、劇場で確かめてみてください!
榊原監督、ありがとうございました!!

声優内海賢二に感謝を込めて。映画『その声のあなたへ』榊原有佑監督インタビュー


配給:ナカチカ/ティ・ジョイ
監督・脚本:榊原有佑
制作:and pictures
企画:株式会社CURIOUSCOPE

逢田梨香子 伊藤昌弘 内海賢太郎 勝杏里 かないみか 神谷明 柴田秀勝
杉山里穂 谷山紀章 戸田恵子 浪川大輔 野沢雅子 野村道子 羽佐間道夫
水樹奈々 三間雅文 山寺宏一 和氣あず未 (五十音順)

公式HP:sonokoe.com
公式Twitter:@SonoKoe_0930

©映画「その声のあなたへ」製作委員会

映画『その声のあなたへ』

 友だち追加

コメント

注目映画

  1. トム・クルーズを一躍スターダムに押し上げた1986年公開の世界的ヒット作「トップガン」の続編が誕生!…
  2. これが天下の大将軍への第一歩だ―― 。信は、漂の想いを胸に初陣に挑む! 原泰久の人気漫画を実写化…
  3. 映画沈黙のパレード,画像
    「ガリレオ」シリーズ最高傑作、誕生!! 福山雅治演じる、変人だけど天才的頭脳を持つ物理学者・湯川学…
  4. 映画余命10年,画像
    悲しくても笑った。 悔しくても笑った。 小松菜奈×坂口健太郎、ダブル主演、RADWIMPS書下ろ…
  5. ブータン 山の教室,画像
    世界で最も幸せな国から本当の”幸せ”や”豊かさ”を問いかける ハートフルな人間ドラマ誕生! ブー…
  6. たのしいこともさびしいこともーあみ子が教えてくれるのは、私たちが“かつて見ていたはずの世界” 芥川…
  7. ここから始まる殺し屋生活。コイツら、全員めんどくせぇ!! 「ベイビーわるきゅーれ」「ある用務員」の…

映画ログプラス Youtubeチャンネル

映画の予告動画など多数掲載!
映画ログスタッフによる、キャストや監督さんへのインタビュー動画も!!
映画『グリーンバレット』【初日舞台挨拶】
ページ上部へ戻る