仮面ライダーになった男の挑戦!日本の殺陣を武器に夢追い続けるミチ・ヤマト氏にインタビュー

ミチ・ヤマト氏

2022年夏、アメリカから帰国した一人の日本人男性にインタビュー取材をしました。その名はミチ・ヤマト氏。アメリカを拠点に俳優、スタントマン、アクション監督等幅広く活躍しています。

日本のアクションドラマのアクション監督や自身が手掛けるヒーローシリーズ制作プロジェクトのために来日したミチ氏に、オリジナル作品「フジヤマイチバン」や「Ichiban Heroes」に込めた想い、仮面ライダーへの憧れからはじまった自身の原点、そしてまだまだ続く夢への挑戦について熱く語っていただきました!

オリジナルのヒーローを作りたい!

―― 「フジヤマイチバン」から始まり、今回の「Ichiban Heroes」に繋がるこのプロジェクトの全体像をお聞かせください。

ミチ・ヤマト氏(以下、ミチ氏)
僕はもともと大野剣友会という仮面ライダーのアクション事務所の出身です。その後、アメリカに渡って、ハリウッド版仮面ライダー「マスクド・ライダー」のアクション監督をやりました。

ただ、これは既にあるものなので“自らオリジナルのアクションヒーローを作りたい”という夢があった。それが一番最初の発端です。

数年前に実写版の「フジヤマイチバン」をYouTubeで12話まで配信し、最後の3本はかなり良い作品に仕上がりました。でも、やっぱりCGの部分が十分に出来なかったんです。

“このクオリティーでは厳しいな”と思ったので、仕事を休み5年かけてCGの技術を習得しました。そして、オープンソースの「Blender」を使ったCGだけの「フジヤマイチバン」をセカンドシーズンとして作ったのが「Ichiban Heroes」です。短編として2話まで完成したのですが、2話まではマニュアルでキャラを動かしています。今回の来日プロジェクトは、モーションキャプチャーでキャラのアクションを演出しました。それを3話目の「Ichiban Heroes」として、完結しようと思っています。

―― 完成作品のメインターゲットはアメリカですか?

ミチ
そうですね。特撮ヒーローは日本生まれのものなので、それを海外でやってみたらどういう風な色合いになるのか。つまり、<ハリウッドで特撮ヒーローを作る>という命題の中でオリジナリティを出すために誕生したのが「フジヤマイチバン」、そのCG版が「Ichiban Heroes」です。

やはり今までと同じことをやっても意味がありませんから。

CGで表現に幅を!

―― 「フジヤマイチバン」や「Ichiban Heroes」に挑戦されてどんな感触を持っていますか?

ミチ
今のアメリカのヒーローは、アベンジャーズ、マーベル、DCコミックスの流れが中心です。それは素面の顔の出ているヒーロー、かつCGIがあるという形です。

でも、やっぱり僕は面ものの特撮ヒーローにこだわりたい。仮面のヒーローは日本の文化だから。ただ、「フジヤマイチバン」を作って感じたのは、いわゆる日本の特撮だけとなるとちょっと自分のクリエイティビティに合わなくなってきた。つまり、表現の幅がすごく狭くなっちゃう。

だから、仮面ヒーローの特撮にきちっとCGIを載せた作品を作りたい。そのためには、CGIだけの作品を作らないと自分自身にも技術がつかないし、表現にも幅が広がってこない。自分自身の挑戦のためにもやったのが「Ichiban Heroes」です。

―― やはり現地のCGは相当レベルが高いのでしょうか?

ミチ
オープンソースの「Blender」を使うので、基本的な技術や表現は時間をかければ出来ます。だから、技術的なことよりもどう表現するかということなんです。

例えば、実写に爆発のシーンがあるとします。そこでリアルな爆発を使うのか、あるいはもうちょっとコミックっぽい画の爆発の世界観にするのか。全部がリアルな表現だと代り映えしないから、実写でももう少しアニメ的な表現も入った特撮ヒーローの方が面白いかなと最近は感じているところです。

日本人にしか描けない個性

―― ストーリーやキャラクター設定について、世界を意識した時に例えば「侍」は一つの武器になり得るのでしょうか。

ミチ
それが日本の文化だと思います。

僕は日本で生まれて日本で育ち、その後移住をしてアメリカ移民になっていますが、どこで個性を出すかと言えば、自分が日本人であるというアイデンティティじゃないですか。そこでアイデンティティを出せるか出せないかの問題だと思うんです。

忍者、芸者、茶道、歌舞伎はステレオタイプではなくて、それこそが個性だと思っています。忍者や侍は日本人でなければ描けないじゃないですか。それがオリジナリティであり、武器だと思うんです。

ミチ・ヤマト氏

ミチ・ヤマト氏

アメリカのヒーローは、アイアンマンやスパイダーマン以外はだいたい顔が出ていて、「私はヒーローです」と言っている。でも、日本のヒーローにはわび・さびの世界があって、そのアイデンティティを隠して正義を貫く。憧れのヒーローが一体誰なのかをみんなは知らないところが日本のヒーローの魅力。そこに家族の愛情や友情を乗せてストーリーラインを作りたいと思っているんです。

「フジヤマイチバン」の場合は、自然を守る科学者の父のもとで育ったサンという息子がいるんですけど、彼がアメリカから日本に帰国した時に見た富士山の光景、ビューがすごく美しかった。「僕はこの自然を守るんだ!」と子ども心に誓うわけです。だから「フジヤマイチバン」なんです。

アメリカでも「富士山」(フジヤマ)は日本の象徴であるというのがベースにあります。そして、やはり日本人の昔の文化というのは“絶対に1番になる!”ということだったと思うんです。それはソニーであり、トヨタであり。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ですよね。でも、今は1番じゃなくてもいいような空気を感じます。それ自体が良い悪いは別として、1番を目指さなかったら10番も15番もないと僕は思うんです。

だから、僕を含めて日本人はもっと頑張るべきだし、頑張るからこそ幸せな未来をつかめると思っているんです。日本一高い富士山(フジヤマ)に、単純なんですけどイチバンをつけた。イチバンという言葉はアメリカ人でも分かる人が結構いるので、あえて「フジヤマイチバン」というタイトルをつけることによって自己主張をする。

言葉には魂、言霊があると思うので、そういう意味合いを込めた名前が「フジヤマイチバン」です。

―― 力強い命名エピソードがとても励みになります!

殺陣と仮面の文化で勝負!

―― 次にアクションについて、国によるアクションの違いやミチさんが考える良いアクションについてのお考えを教えてください。

ミチ
アクションはそれぞれの人種が持っている文化だと思います。

例えば、アメリカのアクションといえばウエスタンなので、キックしたら大袈裟に吹っ飛んで、回転式扉に飛び込んでいくみたいな。
チャイナとかと香港アクションは武闘なので、1・2・3・4、バン・バン・バン・ドーン!というリズムです。

ハリウッドも一昔前は香港アクションが主流でしたが、今は随分戻っていてアベンジャーズのアクションなんかは大味になってきています。バーンって殴ると、敵がボカーンと爆発して吹っ飛ぶみたいな。あれはウエスタンのリズムなので、最近は1・2・3・4のリズムのアクションは随分消えているんです。

一方で、日本のアクションというのは歌舞伎が基本。つまりチャンバラです。

例えば、ゴレンジャーの変身ポーズとかは歌舞伎劇の「白浪五人男」から取っています。5人のヒーローがどう登場するか。それぞれ決めポーズがあり、歌舞伎の傘回しのようにやるじゃないですか。それで最後にポーズを決める。あれば歌舞伎の見得なんです。

さらに面の芝居は能とか狂言なんです。表情はないけど、能面は角度を変えて照明があるとちょっと悲しく見えるとか、ちょっと怒っているように見えるとか、あのテクニックというのは元々日本が持っている文化なんです。

香港アクションはハッキリ言ってしまえば、8ビートのリズムなので誰でもできるんです。ところが、日本の松平健さんとか大岡越前の加藤剛さんとかの殺陣というのは芸なんです。だから、相手を斬るのもその人が持っている稽古で磨き上げたテクニックです。

「フジヤマイチバン」や「Ichiban Heroes」では日本文化のアクションであるということをメインに押し出したい。チャンバラの殺陣、能楽の仮面の文化、それを僕は大切にしたアクションを作りたいと思っています。

―― 是非、そんな日本文化をベースにした作品を世界中に広めていただきたいです!

ミチ
どうしてもネットフリックスと契約したいんです。Amazonプライムでも良いですけど(笑)。

でも、今はYouTubeがあるので、自分たちの好きな世界を自分で発信できる凄くいい時代。人気が出るか出ないかはまた別の話としても、やっぱり自己主張はしなきゃいけないと思っています。その自己主張がいい意味で評価された時に、そういう人たちから声がかかると思っているので、とにかくやってみないことには何もできない。少なからず自分がやれる最大限のものをやりながら、そういう配信の会社と繋がっていくことが、今の僕の最大限の目標です。

自分の好きを極めよう!

―― 最後に、世界を舞台にアクションの世界でご活躍されているミチさんからメッセージをお願いします。

ミチ
僕の中ではアクションの世界ということよりも“自分の世界を持って生きたらどうかな”と思います。

僕の場合は仮面ライダーが子どもの頃から大好きで“仮面ライダーになりたい!!”と思って8ミリ映画を撮ったんです。実はそれを石ノ森章太郎先生のところに持って行って「85点だな」と言われた8ミリのビデオも残っているんです。

そのうちに大野剣友会という仮面ライダーの事務所に入門し、そこでアクションを学び、アメリカに旅行で行った時に“アメリカでアクションをやりたい”と思っていたら、紆余曲折を超えて、仮面ライダーのオーディションのチャンスを掴んでハリウッドに入った。

アメリカでは仮面ライダーのアクション監督とスーツアクターをやりつつ、自分でも映画を作りながら、殺陣空手という殺陣を基本にした空手の学校を経営しています。それは文化の伝承みたいなことなんですけど、アクション云々というよりも自分の武器を身につけることが自分の人生を生き抜けることだと思うんです。

ミチ・ヤマト氏

つまり、僕は大野剣友会に行っていなかったら、多分アメリカに行った段階で既に野垂れ死んでいた。今50代後半ですが、当時29歳でアメリカへ行った僕が今回、日本に戻って合同プロジェクトを出来るというある意味贅沢な地位を掴めた。それは日本で磨いた技術を持ってアメリカで勝負をしたことが、今の恵まれた地位を作ってくれたと思うので、とても感謝しています。

日米で故郷が二つあるのですが、根本の部分というのは大野剣友会で学んだ殺陣です。

だから、アクションや殺陣を頑張っている方にメッセージを伝えるとしたら、何よりも自分が好きでやっていることを思いっきりやってほしい。僕も全然まだその途中ですけど、自分の技術を磨き上げて個性にすることによって、どこの国へ行っても生活ができるようになってほしい。僕もこれから頑張りますという意味でも「フジヤマイチバン」をやり続けていきます。

来年には、USデジタル特撮ヒーローという形で全ての集大成のシリーズを作りたいと思っていますのでお楽しみに!

―― ありがとうございました!!


ミチ・ヤマト氏プロフィール

ミチ・ヤマト氏

大野剣友会 入門/スタントマンとなり、スーパー戦隊などにスタントマンで出演。その後、小学館てれびくん、編集者を経て1992年に渡米。

アメリカ版TV シリーズ仮面ライダー「マスクド・ライダー」アクション監督、スーツアクターや舞台「仮面ライダー、戦闘員日記」プロデューサーを務める傍ら、ハリウッド映画「オーシャンズ13」「ウルバリン」「ゴーストインザシェル」「GI ジョー、漆黒のスネークアイズ」などに俳優として出演。

USA特撮「フジヤマイチバン」とフルCGI バージョン「Ichiban Heroes」では原作、監督、脚本。CGI制作を担当。

2022 年末地上波放送予定、アマゾン・プライム作品の出演、ゲスト・アクション・ディレクター。

(日本マネジメント 問い合わせ先:株式会社YELLOW MARCH)
https://y-mog.com/

ミチ・ヤマト氏

(左:株式会社YELLOW MARCH 町氏)

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