『ポルトの恋人たち 時の記憶』出演・中野裕太さんインタビュー

『ポルトの恋人たち 時の記憶』中野裕太

明日11月10日(土)より公開の『ポルトの恋人たち 時の記憶』。主演は柄本佑、そしてアナ・モレイラ(『熱波』)。18世紀ポルトガルと21世紀日本の2国にまたがる壮大な愛憎物語で、三人の俳優が一人二役に挑む意欲作です。
今回は本作品で、四郎(18世紀)と幸四郎(21世紀)の二役を見事に演じた中野裕太さんに作品の魅力をたっぷりと伺いました! 

―海外、日本それぞれのセッティング、そして一人二役といった仕掛けがふんだんにあり、非常に素晴らしい映画でした。特に一人二役という点では全然違う人物に見えてくるのですが、どの辺を意識されて演じられたのですか?
嬉しいですね。細かな部分で言うと、「18世紀の方(前半のストーリー)」は、召使いから始まって奴隷にいくという流れに対して、説得力のある‟動き方”とか‟腰の曲がり方”や‟歩き方”そういうことも含めての変遷といった点を意識はしました。

『ポルトの恋人たち 時の記憶』「現代版ブラジル移民(後半のストーリー)」の方では、移民の方の独特な空気感というのはやっぱりあると思っていて、その空気感をどう出すのか?を意識したのですが、日本語がそこまでネイティブじゃない感じというか、日本自体がネイティブじゃなくてアウトサイダーとしてその土地にいる、立っているんだけど土地自体が揺れているような感じっていうのでしょうか。移民の人達が(移民ゆえに)独特に排斥されていく過程を、自分の中で気づいていく感情とかを含めて、複雑さがでるように。

『ポルトの恋人たち 時の記憶』映画全体を通して言うと、全体を見たときに寓話的になっているといいなと思っていて、今回においては、与えられた設定内での色々な情景に演じ手がリアルにそして素直に順応していればいる程、お客さんにとっては寓話的に観られる結果になるんじゃないかと思って。目の前にあることに、ものすごくリアルに反応するということは意識していました。
あと、役柄的には傍観者なんです。愛憎劇に直接絡まずに、それをずっと傍観していて。現代版の方では一旦主軸に見えるけど、結果霊的な存在として周りでずっと浮遊している。全体を通して浮遊している空気。そういった匂いみたいなものがちゃんと出たらいいなと思って、少し存在の仕方のさじ加減を調整するように気を付けていました。

仲間を救おうとする宗次(役:柄本佑さん)を、中野さんが一生懸命制止するシーンがありますが、すごく動きが機敏でした。運動は何かされていらっしゃるんですか?
はははっ(笑)小さい時はずーっと空手をやっていまして、学生の頃は部活でバスケをやっていました。
大人になってこの仕事をやり始めてから、体の使い方を学ぶためにクラシックバレエを学んで。最近は自分の家で、クラシックバレエを空手とちょっと混ぜたようなエクササイズをやったりと、習ったりはしていないです。
空手家に見えていたのだったらだめですけどね(笑)

ところで、外国人のスタッフの方々が随分といらっしゃったそうですが、文化は違うけれどそれなりに楽しめた感があり、力を抜いて演技に臨めたといった雰囲気があったのでしょうか?
そうですね、それはあったかもしれないですね。
向こうへいって、ポルトガルのスタッフさんとすっごく仲良くなって、わきあいあいとコミュニケーションをとっていました。国境とか人種や言葉が違うとか、そういうことを感じさせるような現場ではなかったです。素直に向こうも受けいれてくれたし、こちらも馴染みやすかったし。

『ポルトの恋人たち 時の記憶』

ー撮影までの1ヶ月半でポルトガル語を吸収し、難しいハードルを超えていかれたということですが、外国語を習得する際に文字で覚えるのか、聞いて覚えられるのか?中野さんなりの覚え方というのはあるのですか?
もう全部ですね、使える物は使う。読んで書いてしゃべりながら聞いている、というのを一緒にやるっていう感じです。

ー集中して言語習得にとりかかっているということでしょうか?
今回は時間がなかったのでそうですけど、ずっと日本で生まれ育っているわけだから、頭が日本語で回転するように、言語って道具だと思うんですけど、その道具を使っていることに脳が慣れているというか、日本語っていう道具でシステマイズされているっていう感じなんですよね。
それを一回ガーンってデフォルトに戻してリセットして、他の道具を使うっていうプログラミングをしなきゃいけないってなると、やっぱりあんまりダラダラやっていると無理なんですよね。だから一気に溺れるみたいな、すごい情報量で脳をつけ込まないと、本当の意味ではしゃべれるようにはならないっていうのがあって、特に今回時間もなかったし、まぁゆっくりやっていくような環境でもなかったんで、とにかく、書きながら、しゃべりながら、聞きながら、ひたすら流して書いて読んでいってしゃべって。

多言語を操れる日本人はあまりいませんし、おっしゃられたことがコツなのでしょうね。日本語が抜けてくる様なタイミングってあったのでしょうか?
向こうで喋っていて、いつの間にかポルトガル語で言いたいことが全部言えているなみたいな。そんな瞬間はありましたね。
いつのまにか全部ニュースも聞けるし、しゃべれるし「あれっ?できるな」という。撮影途中でそうなっていて、終わる頃には何の問題もなくポルトガル語でみんなと会話していました。
僕は、たまたま留学していたこともあって、その時にすごく真面目にやったというのが大きかったと思うんですけどね。高校の時にアメリカ留学して、最初に英語を3か月徹底的にやったんですよ。それがやっぱり大きかったかなと。そのあと大学でイタリアに行って、ステップバイステップで外国語(のレパートリー)がたまたま増えたっていう状況でしょうか。

ー外国語を操れる俳優さんというのは少ない分、俳優としてはかなりの武器になると思います。感情表現も、英語を中心にのせていくこともできるでしょうし、将来的にはどんな俳優になりたいと?そこは、正直あんまり考えてないですね。
最近海外の作品(への出演)が多いのも、狙ってるわけではないし。ただ、もちろん、こちら側から志向しないまでも、こちらから壁を作ることもないようにとは思っています。たまたま出会ったり、たまたま広がっていって、ということだったりすれば、良いと思います。
それがヨーロッパであろうがアジアであろうが、アメリカであろうが、わからないですけど、どこでも良い作品と良い出会い、良いものがあればやるっていう心持ちでいたいなと。日本も好きだから日本を離れるつもりもないし。

ー武器が多ければ多いほど、オープンでいられる。どんな役でもどんとこいと、いくらでもやるぞと?
そうですね、映画が好きだから。良い作品で良いものであればやりたいなと。

ーこの映画のように、愛する人を失うような悲しみは、経験した人にしか分からないものがあると思うのですが、中野さんがこういった状況で悲しんでいる人達を元気づけてあげるとしたら何ができると思いますか?

『ポルトの恋人たち 時の記憶』本当にリアルに悲しみに打ちひしがれている人が隣にいるとして、元気づける事なんてできないと思います。そんな力はないだろうというかそんな権利もないし、寄り添う事はできるかもしれないですけど。
それ(悲しみに打ちひしがれている人)が家族とかだったら、悲しみの質にもよると思うんです。僕がそれを知っていたりすれば、救ってあげれることも出来るのかもしれないですけど、基本、他人に対してできる事ってすっごい少ないと思うんですよね。なんかこう「元気になろうよ」とかいう言葉で元気になるものじゃないというか、自分がめっちゃ悲しい時ってそれがプレッシャーになるときもある。だから寄り添ってあげる、もしそれが必要でそれがプラスになるんだったら寄り添ってあげることはできる。なので、個人で立ち直るしかない、という突き放した感じともちょっと違います。

―今お伝え頂いたことって、とても大事な事ですね。
一言では言えないですけど、元気づけるっていうのはちょっとおこがましいかなって思います。
ただ自分にとって本当に大事な人が悲しんでいたら、寄り添ってみるという優しさは持っていたいなと思います、という事しか言えないかな。
で、逆に映画の中で言えば、例えばイギリス人ってアガサ・クリスティが好きだったりするじゃないですか。僕もアガサ・クリスティをとにかく読んだ時期があるんですけど、毎日殺人の夢を見るんですよ、どぎついんですよ(笑)。でもイギリスって、ブラックジョークがあったりして、そういうのを寓話として読むとカウンターの力で自分が元気になったり楽しめたりするっていう、そういう不思議な力を映画とかエンターテイメントってもってるなって思うので、悲しんでる時に、ものすごく元気な映画を見るっていうのも一つだし、悲しんでる時にあえてどうしようも救いがない映画を見ると逆に元気になるみたいな、そういう事っていうのは映画の持っている力としてはあるかもしれないなとは思います。

『ポルトの恋人たち 時の記憶』中野裕太

ーそうですね、映画を観たり小説を読んだり、例えばストーリーに備わった寓話性かなにか不思議な力で自分が変わっていくとか、そういうものを与えてくれるよ、ということはありますよね。
エンターテイメントとか芸術と呼ばれるものって、人間にとって必要なものではないけれど、意外と寄り添ったり、きっかけになったりする中で、元気をもらったりとか人それぞれでとり方はあると思うんですよ。そういうものじゃないかなと思います、存在感として。

ーなるほど、聞いていてとても勉強になります。今、芸術という話があったのですが、芸術についてはどう考えていらっしゃいますか?
芸術をどう捉えるかっていうのは、時代にもよると思うんです。芸術と商業って、切っても切り離せないものがどの時代にもあると思うんですけど、ただ、何をもってして、これを芸術だって言えるかどうかっていうのはある程度確実に基準がある気がしていて。
それはどういう事かいうと、人間って日々生きていると忙しいじゃないですか。それで、さまざまな感覚とか想いとかが日常生活の忙しい中で雲散霧消しがちになる。そうやって普段は消えていくけど、皆それぞれ持ってる‟真実のカケラ”みたいなのってあると思うんですよ。
例えばですけど、めっちゃ失恋して切ない気持ちが心の中のどこかに気づかずに隠れていて、たまたま渋谷を歩いていたら、店から流れてきた音楽が「あの時(失恋した時)の曲だー」ってなって、悲しみが甦ってきてしまう。その瞬間ここにベッドがあって、ウィスキーでもあればその感傷に浸りたいんだけど、次の瞬間には仕事の電話とかがかかってきて、そうやってみんな忙しくて。皆、‟真実に浸りきる”ことって、生きてる中でなかなかできないと思うんです。
芸術ってそのカケラを集めてギューッとして、実際にお客さんにお届けする時にはそれを増幅した形でその“真実”の原体験をさせてあげることができる。日々忙しく生きている人が、絵でも映画でも音楽でもなんでもいいんですけど、芸術に触れた時に「これこれ!」っていう、普段はさーっと流れていっちゃう”真実”を浴びる感覚。それがその結果、リアクションとして笑ったり泣いたり喜んだりなんでもいいと思うんですけど、そういう装置かなと思いますね。
なので、”人間生活の真実”ってものがちゃんとそこにないと芸術とは言えないかなと思いますね。

『ポルトの恋人たち 時の記憶』中野裕太

ーそういった表現で、芸術とは何か?というのものにお答え頂いたのは初めてですね。”真実のかけら”のようなもの・・・ですか。
その原体験って、水風船のようなものでしょうか。水が入った風船をバーンってぶつけられて、真実が増幅した形でビッショビショになって「ウッッ・・・」てなる、それが芸術。その時に水がバーンって飛び散ってしぶきがあって、光にあたってキラキラしてる、これが美。
いい映画とかもそうですけどね。

ーベッドがあってお酒があったら浸りたい・・・!
みんなそんなできないから、生きてるって大変だし、やんなきゃいけないことも多いし、日々雑多な雑務だったり実務に追われるのが当たり前で、それが生活だと思うんですけど、たまにはそういう装置があるとバーンっと、やっとそうやって「うわぁ、人生!」って思えるものっていう、そういう装置なんじゃないかな。

ーそれを追求して、こうして演じていただいているというのが聞けると、もっと知りたいなと思いますね。そこにドップリと浸かりたいなという気持ちになってきますね。
そういうものづくりに携わっていく中で、僕自身としては、なんかこう寒い時に春一番がバーンと、偏西風がふいてフワーってなるあの時のような、そういう芝居がしたいなと思います。

ー最後に映画ファンへのメッセージをお願い致します。
映画ってハブステーションみたいな感じになれると僕は思っています。さっきは芸術という観点でややこしい話をしましたけど、そういうことだけじゃなく、単純にこれをきっかけにポルトガルを知るとか、ポルトガルってこんななんだとか、ファドってこんな響きなんだとか、なんでもいいんで、それを知るきっかけ、知識との出会いもあれば、ポルトガル自体との出会いもあれば、そういうきっかけを生み出すものにもなるなと思っていて。あと、単純に映画があるからデートしようよとか、そういう誘い文句のきっかけでもいいし、そういう風に「きっかけ」として映画を捉えて、まずはその映画館の扉をチョット開いて覗いて見てくれるといいなと思っています。

『ポルトの恋人たち 時の記憶』

映画『ポルトの恋人たち 時の記憶』は、11月10日よりシネマート新宿・心斎橋ほかロードショーです!


<編集部より>
一つの命を全うして、別の命として生まれたのだと実感している人はいない筈ですが、命の輪廻がまさにこの作品で表現されているような仕組みなのだと、自然に受け入れることができます。異なる時代と国を舞台に、業を背負った人間たちが導くそれぞれの結末に不思議な共感を得る作品です。
インタビューを通して、中野さんのエネルギッシュでもあり鋭い洞察力を背景とした演技力が、作品全体のまろやかな寓話性を引き出す力として大いに影響していることが分かります。
また、一見すると似たような表現である「芸術」と「美」の違いを、「自分の言葉」で表現しきることは、問題意識の結晶であると同時に、演者として表現するにあたって自己鍛錬を欠かしていないことの証とも言えるのではないでしょうか。
中野さんが、太陽のようにサンサンと内に秘める力を輝かして、作品に関わる人たちはもちろん、映画ファンを照らし続けてくれることを大いに期待しています!!

■中野裕太(なかの・ゆうた)さんプロフィール(四郎、幸四郎 役)
1985年、福岡県出身。08年、テレビ朝日系「仮面ライダー キバ」で俳優として活動開始。2011年、佐々部清監督『日輪の遺産』で映画デビュー。その後、佐々部監督の映画『ツレがうつになりまして』 (11)、長澤雅彦監督『遠くでずっとそばにいる』 (13)、園子温監督『新宿スワン』 (15)、『新宿スワン2』(17)、ドラマ「ウロボロス~この愛こそ、正義。」(TBS)、「探偵の探偵」(CX)などに出演。2012年には「レンタル彼女」で舞台初主演。『もうしません!』 (15)で映画初主演。高校時代に米国、早稲田大学時代にイタリア・ミラノ大学に留学し、英語、イタリア語、フランス語を話せるマルチリンガル。日本・台湾合作の主演映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメというけれど。』では北京語セリフに挑戦し、日常会話レベルを話せるほどに。本作ではポルトガル語を習得。2013年に音楽集団「GAS LAW」を結成し、ボーカルと詩を担当している。




■予告動画

■キャスト
柄本佑 (『きみの鳥はうたえる』『素敵なダイナマイトスキャンダル』『追憶』)
アナ・モレイラ
アントニオ・ドゥランエス
中野裕太 (『新宿スワンII』)
■スタッフ
【監督】
舩橋淳 (『道頓堀よ、泣かせてくれ! DOCUMENTARY of NMB48』『フタバから遠く離れて 第二部』『桜並木の満開の下に』『フタバから遠く離れて Nuclear Nation』)
【脚本】
舩橋淳
村越繁
【配給】
パラダイス・カフェ フィルムズ
【配給協力】
朝日新聞社

■公開情報
2018年11月10日

■公式サイト
http://porto-koibitotachi.com/

■コピーライト
©2017 『ポルトの恋人たち』製作委員会




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