1.19(土)公開 『かぞくわり』 塩崎祥平監督インタビュー・後編

1.19(土)公開 『かぞくわり』
塩崎祥平監督インタビュー・後編
埼玉県の住宅地でも良かった。家族から辿り着いた奈良

民俗学者・折口信夫の「死者の書」から着想を得た映画『かぞくわり』が1月19日に公開されます。塩崎祥平監督インタビュー・前編では作品にこめた監督の想いをたっぷりと語っていただきました。それでは後編もお楽しみください。

埼玉県の住宅地でも良かった。家族から辿り着いた奈良

―― 先程、同じような画家さんがいた、とおっしゃってましたが?

塩崎監督:僕が脚本書いている時に、脚本を読んでもらっていた僧侶の方なんですが、その方は奈良にある吉野の山にある修験道の修行をするガチのお坊さんなんですけど、金峯山寺(きんぷせんじ)の住職だったんです。
金峯山寺は修行の本家みたいなところで、役行者(えんのぎょうじゃ)が開いたのですが、そこで完全に神と仏を一緒にしたみたいなところですね。
それで、その方も映画の組合の中に入って一緒にやってくれているんですけど、その方が脚本見てて「こんな人いるよ」って言って。「すっごい香奈に近いかも知れへん」と言って。その人に会って話を聞いてると、なんか香奈そのままやんって(笑)。

―― 仏教的な要素や昔の言い伝えもあって、神秘的でイメージは奈良そのものですね?

塩崎監督:奈良そのものというか、そもそも国にあるもの、神と仏みたいなものをどういう風に、仏教が入ってきた中でそれまでは神というものが居てて、それを融合させていくというプロセスを長い時間をかけて受け入れてきて、在り方みたいなものを追求してきた民族、そもそもの強さはある民族。
見方によっては特殊な独自の考え方を持っている民族なので、そもそも家族もそうですけど、そういう人たちの集まりなんだっていう。こうした原点みたいなところが、家族の物語をする時には必要なんだと脚本を描きながら僕も気付いていったので。
『死者の書(折口信夫著)』というエッセンスを入れていく中で、どんどん追求していくと結局は役行者に辿り着く。役行者のことを見ていくと、吉野山に辿り着きみたいなことになり、それが奈良だと。そもそも、そこから日本の社会は生まれてるので、自ずと奈良になっちゃう。だから奈良で作品を作るし、奈良でしか出来ないとか、映るものが奈良であることが一番説得力があるっていうことで。

―― 奈良が先にあったわけではないんですね?

塩崎監督:そうなんですよ。自分の家族の事を描き始めたところからスタートなんで、一番最初は、埼玉県のどこかの住宅地だったとしても全然ありな物語だったのが、そこに行き着いて、『死者の書』がこの物語に合うのでは?ってところからですね。

日本はルーツが辿れる民族

―― 逆に言うと、ルーツを辿った結果こうだということなのですね?

塩崎監督:はい、ルーツがあって、ルーツが辿れる民族ですよね。
世界の国見てても自分らのルーツは何処?って言ってるわけです。(日本は)ちゃんと辿っていこうと思ったらいけるみたいな。僕はアメリカに居てた時もあるので、ゴッチャになり過ぎて分からないような家族というか社会の形態なので、僕からするとすっごい極端、でもそれは普通だみたいな考え方もアメリカにはあるんで。そうなると日本はすごいんです。核家族がピタってはまってる社会ですよ。そうしないと続けていけない。アメリカは色んなものが混じり合う中で、自分たちは自分たちで、子供たちは子供たちとスポって切れるっていうか、あんたはあんたたちだからみたいなという考え方で完璧なんですよ。

それを、日本の家族も同じようなことを戦後やり始める中で、めちゃくちゃ違和感を感じる今までにないまったく新しいことをやろうとしてて。長男とかが、苗字を継承していくことであったりとか、家族・親族での墓参りとか、家族の集まりが、ずーっと続けているものがある。名前が変わる、変わらないっていう事にさえも、もの凄く敏感。

―― 不思議な神話でも、どこか日本人として受け入れられる要素がある。一つの家族の在り方を集約すると、自ずと答えが出て来るというのは、ルーツがあるからこそなのかも知れませんね。

塩崎監督:色々と意見を聞いていると、やっぱり“家族の物語だと思って観たら、ド頭からえらい凄いところから始まる展開になっていくから!”みたいなことをよく言わはられるんですけど、そういう昔の物が出てきて、神社のあれがとか、何なんだ!?みたいな。
でも、そうやって見ていく流れの中で受け入れながら観てもらえたらええな、と思いながら創ってました。

―― いつも怒ってる妹がマイルドになっていくし、浮気をばらされたお父さんは面白いし(笑)確かに受け入れ易いですね(笑)

塩崎監督:そこら辺がコメディタッチなんで、怒っていても受け入れられるし、最後は纏まってマイルドになっていくんで、ストーリー性として受け入れることができるんでしょうね。
そこには、ルーツである神仏習合ではないけれども、神話の物語でみんなが結び付けれられるヒントみたいなものがあって、それを暗に言葉っていうか、そういう解釈では無く感じているのかもしれませんね、心の中で。

―― 改めてこの映画のタイトル『かぞくわり』の由来を教えてください

塩崎監督:割れた家族ということで、家族の役割、それをなんかこう言葉ないかな、みたいなことで。
携帯の家族割というものがなかったら、“かぞくわり”って、“割る”みたいなことでわりとドキッとしたりしないかなと。(笑)
そうして、いろんなことが想像できたらいいなと思ってたんですけどね。
わかちあう、わけあう、とか。他にも、家族がわけあったなかで生きていくとか、いろんな事考えられへんかなと思って。

リアルな家族を引き出した塩崎監督の放置プレイ!?

―― キャストの方々へ何らかのアドバイスはされたのでしょうか?

塩崎監督:ないんですね、どの役者さんに対してもないですね(笑)

―― 木下彩音さん(松村樹月役)の“居心地の悪さは”観てる側にとても伝わってきました(笑)

塩崎監督:そりゃー怒るわなーっていうね(笑)
でも、彼女自身も別にこうしてああしてというのはないですし、だって初めての映画。
本格的なお芝居も初めてだったので。撮影をやっていく中でも、どうする?そうきたか、みたいな(笑)。どんな役者さんに対してもそうですし、皆さん自分の役は自分で読んで想像はしていく。それで“これでいいのか”という中で出していってやっていくんですけど、僕がずーっと、「それ、いいんじゃないっすかー」とか言ったら、「もっと言うてくださいよ、これでいいの?」とか(笑)

―― 皆さん凄く仲良くやってらっしゃったんでしょうね?

塩崎監督:なんか、凄く良い雰囲気にどんどんどんどんなっていくという感覚はありましたね。
事前にみんなで集まってじゃあ読みますか、みたいな事も“別にいいんじゃない”みたいな(笑)。“そんなことしないでよーいドンで行こうよ”
みたいにわりとみんな思ってたみたいで。僕は不安ですけど・・・(笑)
じゃあもうそれでいこうよ、いきますか!みたいな感じで。皆、同じ所で待機している中、小日向さんは父ちゃんみたいで、家そのものが控室みたいな感じで、それこそ料理できるようなところで、リビングでわちゃわちゃしてるのが、そのままリアルな家族みたいな感じになっていきました。


―― 竹下景子さんの役柄ですが、マルチ商法に騙されつつも最後まで信じてる、でもなんか憎めないおばちゃん役は結構難しかったのではないかとは思いましたが、それも普通に?

塩崎監督:そうですね。(笑)
普通にというか、ご本人も脚本読んでもらった時点で、面白さみたいなものは感じてもらってはいてたので、意外とグイグイやって頂きましたね。

―― 待機しているときは普通の竹下さんなんですか?

塩崎監督:そうなんですよ(笑)

「本物の奈良を感じてもらいたい」塩崎監督からメッセージ

―― 監督の方から奈良の方々、映画ファンの方々へのメッセージをお願いいたします。

塩崎監督:そうですね、お伝えしたいのは“本物が映っている”ということです。
それも凄く意識して撮影をしたので、絵の在り方や作っていく過程も物凄くリアルです。奈良という場所で、これまで残ってきた本物をそのまま使わせていただいて、撮影させてもらいました。特に當麻寺(たいまでら)とか、大神神社(おおみわじんじゃ)。その仏と神の両方の場所は、本当は撮影したら駄目な所ですね、今までそれは許されてこなかった。でも3年間ぐらいお寺さんとずっと話をさせてもらって、貴重な国宝まで撮影させてもらいました。映画の中であそこまでの映像は多分作ろうと思っても出来ないものなので、家族の原点を見つめるにあたって、本物の奈良を映画の中で感じてもらいたいです。

(撮影を許可するといった)そういう新しいこともお寺さん的にも受け入れてもらえたからこそ、更に残せていけるものもあるのだと思います。それは、なんか日本の家族とその在り方とも照らし合わせながら、これから1,000年先も残っていくであろう物も、今1,000年以上残っている物を見ながら、今後の在り方が想像できるように感じ取ってもらえたらな、と思いますね。

奈良の人たちの在り方って、よく大仏商法って言われるんですけど、動かなくても向こうから来てくれるから、何もしないんです(笑)。県外から家を購入して住み始める人もいるんですけど、そういった方々を含めて面白い縁だと思って、とんでもないところに居てるんだよ、と知ってほしいですね。見てみたらめちゃくちゃオモロイもんいっぱいあるから。消費社会においては、大切にされて残っている物って凄く少なくなってきてるから、本物がもう奈良には『ある』こと自体に面白さみたいなものを知ってほしいです。


編集部より

「とりあえず形にはまっていれば、とりあえずなんか生きていけるという社会」に順応するということは、逆に言えば、個性や能力が際立ち、特異である“異端児”ほど生きにくい社会になっているのかもしれません。家族がそして身近にいる仲間が一番の理解者でいてくれることが“異端児”にとっても、また「平和ボケしてしまった社会」にとっても大切な「還る場所」になるはずです。
そして、自然や歴史そして文化の代名詞としての奈良は、言葉と次元を超えて私たちに“癒し”や“知恵”を与えてくれる「還る場所」になっています。
私たちは、こんな多くの宝物に囲まれて生きているのだと気付かされたのと同時に、またそんな宝物を創り出すことも出来るんだな、と思いました。
皆さん、是非一度、堂下家を覗いて見ませんか!!




予告動画

『かぞくわり』
配給:日本出版販売株式会社
©2018かぞくわりLLP
2019年1月19日(土) 有楽町スバル座・TOHOシネマズ橿原ほか全国順次公開

■あらすじ
堂下香奈、38歳。画家になる夢を挫折し、両親の元で無気力な生活を送っていた。だが、妹の暁美と娘の樹月が家に住み着き、香奈を軽蔑したことで堂下家の生活が一変する。家に居づらくなった香奈は神秘的な男性と出会い、ふたたび絵を描くようになった。絵に没頭するようになり、香奈が内に秘めていた魂が目覚める時、家族、そして奈良の街に危機が降り掛かる——。


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