1/25公開『ジュリアン』 グザヴィエ・ルグラン監督&トーマス・ジオリア インタビュー

1/25公開『ジュリアン』
グザヴィエ・ルグラン監督&トーマス・ジオリア
インタビュー

家族の関係を描いた繊細な人間ドラマでありながら、張り詰めた緊張感が観る者を襲う傑作サスペンス映画『ジュリアン』は、1月25日より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開いたします。

本作品で第74回ヴェネチア映画祭で最優秀監督賞を受賞したグザヴィエ・ルグラン監督と、映画初出演で主役ジュリアンを務めるトーマス・ジオリアさんに、映画制作についての想いをたっぷりと伺いました。

描きたかったのは日常の中に潜む恐怖

―― 今回、DVや親権問題など社会的なテーマを取り扱っていると思いますが、監督はそこにスリラーやサスペンスの要素を入れ込んでいると思います。それは、一歩間違えると中途半端になって非常に難しいと思います。そもそも、どうしてそういったアプローチをとったのか?その辺はどういう風に社会性とエンターテインメント的なスリラー・サスペンスとのバランスをとったのでしょうか?

ルグラン監督
今回、多くの被害女性の方々に会って、様々な証言などを得ました。

私は、日常の中に潜む恐怖を描きたかったんです。エンターテイメントによる大掛かりな、アメリカのホラー映画のようなスリラー、非常に暴力的なシーンが多い、モンスターが出て来るようなハリウッド映画を創るのではなくて、例えば森の中で殺人が起こるとか、本当に日常生活の中に潜む恐怖といったものをリアルに描きたかった。

そしてリアルを描くライン、ちょうど境界線なんですけど、それは日常生活の中において何が最も恐怖や、そういったテンション(緊張)をもたらすのか。
そういった張りつめた恐怖感をどのように表わすのかというのは、私の今回の映画での挑戦でした。

―― 家族それぞれいろんな視点で撮られているとように感じました。制作において気を付けたことを教えてください。

ルグラン監督
この映画というのは非常に構成をしっかり考え、様々な人の視点から撮りました。

一見、子供の視点からとられているようにも思えるのですが、実際の構成は、メインはアントワーヌで、夫の行動をフォローしているんです。

このアントワーヌという人物は自分の周りの者たちを操ることによって、自分の欲しいものを手に入れています。まずは判事を操り、それから子供を操る、そして最後は妻を手に入れようとする、と言う風に。アントワーヌを巡ってのいろんな動きをフォローしていくわけなんです。

冒頭に裁判シーンがあるんですが、観客は元夫と元妻のどちらが本当のことを言っているのかわからないと思います。
それは、観客には判事のように中立の立場を取って欲しいと思いそのような脚本にしました。

―― ジュリアンはお父さんのことをあの男という表現で呼んでいました、トーマスさんは演じている上でお父さんに対してどういういうお気持ちでしたか?

トーマスさん
勿論、パパと言う風には言えない程、父親のことを嫌っていて嫌悪感があるので、名前を発するのも嫌だという気持ちが「あの男」と呼ばせました。

―― 映画を観ていると各シーンで、早く警察を呼んだ方がいいという気持ちになりました。登場人物は家族だったからこそ警察を安易に呼べない環境にいたのでしょうか?

ルグラン監督
当然、危険な状況を見て見ぬふりをするよりも、何か通報する方がいいですけど、実際には難しいことなんです。主人公である父親のアントワーヌは、あらゆることを操ろうとし、欲しいものを手に入れようとします。最初は週末ごとに子供と会いたいという要求、それから子供達と話したい、だんだんエスカレートしてパーティでプレゼントを渡したい…。普通に考えたら父親だから普通のことなので、誰もこれを止めることは出来ないし、通報することは出来ないんです。通報したとしても、証拠がなければ警察は動いてくれないという難しい面があるんです。

一番怖いと感じたシーンは…

―― 子供でも、自分を守ろうという気持ちが働くし、特にジュリアンは一番危ないポジションでしたね。一番怖いと思ったシーンはどこですか?

トーマスさん
車のシーンなんですけど、たった一人で父親と一緒にいなければならない非常に緊張が張りつめるシーンなんです。
ジュリアンはこの先何が起こるのか?という恐怖から泣き出してしまうんです。
何が起きるか分からない、この二人きりの密室のシーンと言うのが最も怖かったシーンです。

―― トーマスさんの役作りについて教えていただけますか?ジュリアンの置かれている状況は中々理解が難しかったと思いますが。

トーマスさん
演技指導の女性のコーチがいたんです。撮影前に繰り返し役作りをして、リハーサルも何度もしたので、ジュリアンの役について、徐々に理解していくことが出来ました。
そして、映画が出来上った後でも、その人物について理解を深めるということが出来たと思います。

―― 監督は更にそこにどういった演出をしていったのでしょうか?

ルグラン監督
役を演じる上で、その人物がどんな状況に置かれているかを理解することがまず大切です。
どうやって泣いたらとか、そういう具体的なことよりも、まず役を理解することが何よりも大事だったんです。

このジュリアンが置かれている立場で、今何が起きているのかという状況を理解すること。そしてそれを受け入れた上で、抑えて、耐え忍ぶ演技、ジュリアンというのはこの映画全体の中で人質とかいけにえといったポジションに居るんです。
しかしながら、武器を持ってはいない、もろいジュリアンと言う存在が、母を守るために、そして父に真実を言わないようにするために、一生懸命に父親であるアントワーヌに立ち向かっているんです。そういった、感情の動きを、置かれている色んな状況を理解して、役を演じてもらうようにしました。

撮影現場は予想に反して楽しかった!?

―― トーマスさんは緊張感のある重いシーンが多かったと思いますが、そんな中でも撮影中面白かったことなどありましたか?

トーマスさん
撮影の合間の休み時間に限らず、撮影中ずっとチーム全体、スタッフ、キャスト全員でほんとに楽しく和気あいあいとしていたので、みんなで遊んでいたという思い出しかないです。みんなすごく仲が良かったです。

ルグラン監督
ちょっとこの映画を観ていて、想像するのとは逆だとは思うんですけど、予想に反して撮影現場は楽しくて楽しくて。あの大きな熊さんみたいなアントワーヌ役のドゥニ・メノーシェ、は、実はものすごい面白いですし、お笑い系の冗談ばかり言っているような人で最高でした。

―― 監督自身も俳優をやっていらっしゃると思いますが、現場の雰囲気づくりなどで、俳優として監督業に活かせる部分はどんなところでしたか?

ルグラン監督
現場の雰囲気づくりにはかなり気をつかいました。
実際、自分自身が俳優として難しいシーンを演じる時に、求められることって、肉体的にも感情的な部分でもそれを引き出すのは非常に難しいと思うんです。

そういう時に役者がリラックスして、自分の感情を思い切り出せる様にするには、安心して出来るような楽しい、和やかな雰囲気の中からしかそういうものは出せないと思っています。

フランス語で役を演じるというのは「ジュエ」と言って、「ジュエ」と言うのは子供が遊ぶ時の「play」と同じ言葉なんです。ほんとに役者が楽しみながら、遊びながら人物に命を与えるみたいに演じられるようにしたいなと。だから、現場が楽しくなるように心がけました。

―― 父アントワーヌは悪者に見えますが、姉が18歳ということは少なくとも18年間は家族として一緒に居たわけです。100%父親が悪いとも思いにくく、母ミリアムは妻として夫との向き合い方は十分だったのでしょうか?

ルグラン監督
やはり、例え女性が夫に対してひどい暴言を吐いたりあるいは裏切るような行為があったとしても、暴力という手段に出ることは許されないと思います。ミリアムはやはり悪くない。ほんとに死の恐怖にさらされますし。長女が18歳ということは、18年間そういう暴力にさらされてきた、ともいうことが伺えるわけです。

もし、妻が夫を裏切るような行為をしていたために暴力をふるっているのであれば夫が出て行けばいい話です。暴力によるということは、また別の側面があることですから、そこは容認することは出来ないと思います。

―― ジュリアンがこの先幸せを掴むために必要なことは?

トーマスさん
素敵な女性で出会うことですかね。僕はまだ若いからわからないですけど(笑)

映画ファンの皆さんへメッセージ

―― 最後に映画ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

ルグラン監督
皆さんがこの映画を気に入ってくださることを心から願っています。映画を観て、映画館から出ていくときに、観客の方が来た時とは違う何かを感じ、ちょっとでも変化が、私から何か影響を与えることが出来れば本望です。

例えば、それがコメディであれば、最初から最後まで笑い転げるということも十分立派な体験だと思うんです。あるいは衝撃的な内容でショックを受けたり。

映画を観ることで何かそういった実体験を得られればいいですし、この映画はほんとうにそれにはピッタリで、手に汗にぎる体験を一緒にすることが出来る、そして観る人それぞれが思い思いに感じていただければと思います。

トーマスさん
この映画は美しく、知的な映画で、観た人は学ぶことが多い、参考になることも多い映画なのでぜひ映画館に観に行ってほしいと思います。

因みにこのトレーナーは、純粋にこのトレーナーが気に入ったんです。このデザインがよくて、選んでみたらたまたま京都と書いてあった。

ルグラン監督
今日は、全部の取材で聞かれているね(笑)

編集部より

“DVとは何か?”と聞かれても、“家庭内暴力”という略語の範疇を超えず、普通の家庭で育った人ほど、そこで一体何が起きているのか理解が及ばないものです。

私たちは、他人の家庭を観察することはできませんが、グザヴィエ監督が多くの被害女性の様々な証言をもとにこの問題を分かり易く描いてくれました。
閉ざされた世界で起きている異変は、それが目に見える形となるまでは、世間の人達は中々気付いてくれません。つまり大ゴトになって、誰かが傷つけられるまでは。

そもそも暴力や怒りは歯止めが効きにくく、エスカレートする性質を持っているようです。そして、こうした罪を犯す人間は、残念ながら必ず世間のどこかにいるのでしょう。
私たちは、傍観者にならず、被害者にもならない、この作品を通してそんな知恵を身に付けられたらと感じます。

一度ジュリアンと同一の目線でこの恐怖を感じてみてください!!

2019年1月25日公開
映画『ジュリアン』

■ 予告動画

■ キャスト
レア・ドリュッケール
ドゥニ・メノーシェ
トーマス・ジオリア
マティルド・オネヴ

■ スタッフ
監督・脚本:グザヴィエ・ルグラン
製作:アレクサンドル・ガヴラス
撮影:ナタリー・デュラン

■ 公開情報
2019年1月25日(金)よりシネマカリテ・ヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次公開

■ 公式サイト
https://julien-movie.com/

■ コピーライト
©2016 – KG Productions – France 3 Cinéma




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