笑いながら泣くって一番好きなんです!『洗骨』照屋年之監督

洗骨 照屋年之監督 ガレッジセール ゴリ

“笑いながら泣くって一番好きなんです”
2/9公開『洗骨』
照屋年之監督インタビュー

先月の18日から沖縄県で先行公開されると県内トップの大ヒットスタート。世界中の映画祭で絶賛され、沖縄県でも観客の心をつかんでいる笑って泣ける至極のヒューマンドラマが映画『洗骨』です。
監督は毎年短編映画を制作し、今回長編映画2作目となるお笑いコンビ ガレッジセールのゴリさんこと、照屋年之監督。沖縄諸島の西に位置する粟国島などに一部残っている洗骨という風習を通じて、命の繋がりを照屋監督らしく私たちに届けてくださいました。
今週末2月9日(土)からの全国公開を前に、照屋監督に本作への熱い想いをたっぷりと伺いました。

重くしたくなかった

―― 映画を観て笑い転げてしまいました。
照屋監督
そう、結構海外でも同じところで笑ってくれて。笑いのツボって案外みんな一緒なんだなって安心しました。
洗骨 照屋年之監督 ガレッジセール ゴリ
―― 優子のお腹を見た、父・信綱の一言がたまりません。
照屋監督
そのあとに当たり前のことを言って返すのが、またたまらなく僕の中では好きなんですよね。好きですね、あそこ。

洗骨 奥田瑛二

父・信綱役の主演・奥田瑛二さん

―― ところで、「洗骨」というのは風習であり伝統的な儀式だと思うのですが、ここに笑いを入れた狙いを教えてください。
照屋監督
僕自身があんまり重くしたくなかったんです。洗骨自体は神秘的に一切ふざけることなく撮りましたけど、それ以外の部分では(重くしたくはなかった)。
うちの母親が亡くなった時もそうなんです。お通夜でいろんな方がうちに来てくれました。最初やっぱりみんな悲しむんですよ、うちの母親の顔を見て。でも、ビールを出して段々と酔っ払ってくると普通にケラケラ笑って話し始めるわけですよ、実は。案外その印象が僕の中では強くて、結構酔っ払う奴もいたし。「いや、お通夜なのに居酒屋と勘違いしてない?」って思うような人もいると思うと、僕としてはおかしくて。「まだビールある?」みたいな、それが一番最初のオープニングの脚本に活かされているわけです。

洗骨

ただ悲しいだけじゃなくて、僕の知り合いの家にお通夜に行った時も、横でお酒でもどうぞって出されたら、その人との思い出とか面白い話とか、ケラケラ笑って話すので、案外そこまで重く描かなくてもいいんじゃないかなっていうのが僕の中にはあったんです。

―― 亡くなられた方の話題で盛り上がって、次第に話に花が咲くことがありますよね?
照屋監督
結構途中から笑い話になるんですよ。“生きている時にさぁ、ああいうこと言ってヘマして”“そう!分かる、分わかる”って。“天国で聞いているんじゃない?”って、ケラケラ笑って言ったりするじゃないですか。ああいうのが僕好きなんです。

洗骨 照屋年之監督 ガレッジセール ゴリ

それから、悲しい時に悲しい曲を聴くよりも、悲しい時に楽しい曲を聴いた方が余計に辛くなることもあるじゃないですか。だから、悲しい時こそ明るくふるまったりする方が、観ているお客さんが悲しく感じたりすることがあるので、それは結構意識して作りました。

母ちゃんのおかげで描けた脚本

―― 信子(役:大島蓉子さん)が、非常にしっかりとしたものの言い方で、いくつか大切なことを伝えてくれています。これはどういうきっかけで生まれた言葉なのでしょうか?
照屋監督
うちの母親が亡くなったことが大きいです。もう3年前になりますけど、母親のお通夜の時、母親の遺体を見ながら、ずっと僕が付き添ったことがあって。お通夜が2日間続いたので、48時間ずっと横で寝ていたんです。だいたい2時間毎に確認して、線香が消えかかったらまた長い線香に変えて火を点けて。
そうすると起きる度に母親を見るじゃないですか。ああこの人も死ぬんだなあと改めて思って。自分の親って生まれた時からいるし、いつも構ってきて鬱陶しい存在でもあったりするけど、パワフルな存在でもあったから、死ぬイメージがなかったんですよ。でもやっぱり死ぬんだなっていうのが不思議だったし、この人が産んでくれたから、今俺は存在できているんだよなって、うーん有難いなあって。
それでうちの母ちゃんがいるのは、ばあちゃんが産んでくれたからか。ばあちゃんがいるのは…ってドンドン先祖を遡り始めるんですよ。はるか昔に存在した人間が生きることを諦めずに一生懸命生き抜いてきて、命をつないできてくれたから今の自分があるんだって思った時に、その「命は女がつなぐんだ」っていうセリフが出てきたんですよね。そういう部分でうちの母ちゃんの遺体がそのセリフを描かせた気がします。母ちゃんのおかげで描けた脚本なので、母の死っていうのはとても大きかったですね。

洗骨 照屋年之監督 ガレッジセール ゴリ

―― お母様が亡くなられた後なので、思い出しながら脚本作りを進められたのですね?
照屋監督
そうですね、なので、うちの母親と同じ病の設定にしました。
それと、母親は、自分の子供たちをまとめないといけないこととかあるので、そういう部分で母ちゃんからヒントを得て描いた部分も大きいですね。

―― さらに、剛(役;筒井道隆さん)も先祖や家族、そして自分自身について大局観というか宇宙観のような言葉を伝えてくれます。
照屋監督
そのまさにお通夜の2日間というのがとても僕には大きかったんです。
おかあがいるから俺がいる、おばあがいるからおかあがいるってずっとつなげていくと、祖先から自分までが長くつながった一人の体に感じたんです。亡くなってもまた新しい命が生まれて、全部つながっているから、結局、先祖も自分も同じじゃないかと。長い人間のルーツは、金太郎飴のようにどこを切り取っても全部同じ人間が出てくるような感じがして。そういうことがワーッと頭の中に浮かんだんですよね。

洗骨 筒井道隆

信綱の息子・新城剛役の筒井道隆さん

―― 剛と信子の言葉がスゥーと染み込んできて頭に残りました。
照屋監督
僕は、ラストカット、あれを表現したかった。あれが絶対マストです。あれを最後に持ってくるんだって思いながら逆算して作っていました。
あの場面が大好きですね。“良かった、撮れた”って思いました。

―― そうした監督の想いを見事に表現された大島さんは、どのような経緯でキャスティングされたのでしょうか?
照屋監督
大島さんとの出会いは(秘密の)ケンミンSHOW(読テレのバラエティー番組)ですね。

―― 秘密のケンミンSHOWだったんですか!
照屋監督
大島さんの話す雰囲気が好きでした。
迫力が必要だったんです。その一方で、廊下などで話している時は優しさがあったり、あっ!これ大島さんだったら絶対信子を演じられるなって思った。
本当にお見事に演じてくださいましたね。

―― 監督が思い描く信子にピッタリだったんですね。
照屋監督
もう怖いし、怒るし、でも根底には包み込むような愛がある。それをお見事に演じてくださいまして。要所要所で笑いを取る。僕の中ではたまらない存在でしたね。

洗骨 照屋年之監督 ガレッジセール ゴリ

笑いながら泣くって一番好きなんです

―― 監督がおっしゃったように笑いが涙に通じているみたいです。
照屋監督
案外、表裏一体だと思います。笑いと泣きって。
泣けるけど一瞬でも笑っちゃうシーン、笑いながら泣くって僕一番好きなんですよ。ただ悲しい映画も嫌だし、ただ笑って何も残らない映画も嫌だったので、笑って泣けるように意識しました。

―― さすがにもう笑いはないだろうと思っている場面でも、優子(役:水崎綾女さん)と亮司が笑わせてくれます。
照屋監督
そう言ってもらえるとホッとしますけど、もし感情が冷めたら?ってことになる可能性もあったわけじゃないですか。だから、全てが計算づくですよってさすがに言えなくて、こうであったら嬉しいなって。この(編集部が指摘したシーン)笑いやボケのバランスは時間をかけて考えました。

洗骨 水崎綾女

信綱の娘・新城優子役の水崎綾女さん

―― 現実の世界でも「実は、あの人にも映画と似たような話があってね(笑)」とか。この笑いによって話題が膨らみます。
照屋監督
僕も、自分の嫁の出産に立ち会った経験が活きていて、実は信子のセリフ、まさにそのまま(体験談)なんですよ!

洗骨 照屋年之監督 ガレッジセール ゴリ

―― ところで、先日の舞台挨拶ですが、奥田さんと水崎さんの偽不倫ネタ、筒井真理子さんといい、めちゃくちゃ面白かったです!それと、笑いが多い挨拶だったけれど、終盤は涙、涙になったそうですね。
照屋監督
みんな泣いちゃってね、古謝さんが生で歌ったもんだから(主題歌「童神」)、もう奥田さんも水崎さんも泣き出してね、もう泣かないでよって(笑)。




死は自然な行為

―― 火葬はお葬式の一部だと思われるのですが、洗骨というのはお葬式とは違ったもう一つの世界です。この違った世界観・風習を理解するのは、とても勉強になります。
女子大の先生から、大学の授業で映画を使わせてもらえないかってお話があるそうです。

照屋監督
違う意味で行きたいですそこ(女子大)。ティーチ・インじゃなくてデート・インで行きたいです(笑)。

洗骨 照屋年之監督 ガレッジセール ゴリ

火葬って一瞬で終わるじゃないですか。うちの母親は火葬だったんですけど、お通夜があって葬儀があって、一瞬で骨になって、その場で骨壷に入れられて、お墓に入るって忙しいじゃないですか。悲しみに浸ると辛くなるから、それを忘れるために葬式を忙しくするって話も聞いたことありますが、洗骨は、改めて死と向き合うんですよ。本当に変わり果てた姿になってから、1本1本骨を洗って手で感じるわけです。ここが腕か、ここが脚か、ここが肩かとか、これが頭かとかって。洗いながらその人の思い出を振り返ることができるので、改めて死というものを体に染み込ませるすごい体験だなって思うんですよ。
粟国島の人に聞くと、あまりにも大変な作業なので、ほとんどの人はもうやらないと。遺体を船で本島に運んで、火葬して骨壷だけ持って帰ることが多くなっているようですが、生前にお願いだから燃やさないでくれと言われたりとか、自分の親を燃やしたくないって人は今でも洗骨を続けているそうです。

洗骨

―― ある人物が亡くなった事実をこうした過程をもって、生きている人が感覚的に受け止めるということは、非常に特別な風習です。
照屋監督
こんなに骸骨が怖くない映画ってないと思うんです。愛おしいし、全然おどろおどろしくないですよね。僕らは生きているから死が怖かったり死の世界に凄く不安を抱いていますけど、粟国島では劇中のセリフにもあるように「こんなもんなんだよ、死の世界って」って感じで。死は僕たちが怖がっているだけで、自然な行為、生きているものはいずれ死ぬっていう、ただそれだけのことではないかと。

―― 徳之島(鹿児島県)には、今でもドクロがそのまま地表に置かれた状態の埋葬場所が残っているそうですが(今は火葬)、今おっしゃったような生と死が近いっていう感覚を、ひょっとして島の方々は感じているかもしれません。
照屋監督
僕もそういう風になれたらいいなって思いますね。でも自分が半年後に死ぬってなったら、やっぱり怖いでしょうね。多分やりたいことがいっぱいあって未練があるからなのかな。一度お坊さんに言われたことがあるんです。もう80何歳のお坊さんで、つい最近心臓病で入院されていたんですけど、その時“死ぬのって怖かったですか?”って聞いたら、“ぜんぜん”って。“いいかい、なぜ人は死が怖いと感じるかっていうと未練があるからだよ。”って。“今日1日やりきったっていう気持ちで毎日生きていたら死なんて怖くないよ。だから私は怖くない、今日やるべきことはやってきたから。”って言うんですよ。
これは、、、難しいよね。
だから今度、自分の死と向き合うものを撮るとしたら、そこはもうちょっと勉強すべきとこなのかもしれないですね、僕自身が。

洗骨 照屋年之監督 ガレッジセール ゴリ

映画ファンの皆さんへメッセージ

―― 最後に映画ファンへのメッセージをお願い致します。

照屋監督:
そうですね、もちろん納得のいく映画を創ったつもりなんですけど、観てもらったお客さんにこれだけ嬉しい反応をいただけるとは思っていなかったです。自分が予想していた以上のお褒めの言葉、感動のお言葉をいただけるので、“嬉しい”って感じる半面“ヤバイ”っていう気持ちも芽生えてきて。人に影響を与えることって、生半可にやっちゃ本当に怖いなって、改めて思ったんです。本当に何か人の心の役に立つ作品を一切妥協することなく創っていかなきゃならないなって思いますよね。この映画を観て、次の僕の作品をまた楽しみにして頂ける方の為にもこれからも映画は撮りたいなと思っています。

洗骨 照屋年之監督 ガレッジセール ゴリ

編集部より

この映画を観て「洗骨」という言葉に、とても深い世界観を感じました。
死の全体像から「物理的な死」を徹底的に洗い出し清め尽くすことで、文字通りの死が変容し、別のものが顔を出してくる。それは改めて故人に与えられた新しい命なのではないか、それが「洗骨」なのでは、と感じました。
そうであるとするならば、この風習が、粟国島をはじめとする先人たちの知恵であり、故人への愛情であり、これからも生きていく人たちへの支えになっている。失った者の内に宿った感情の納め方として『洗骨』があるとするならば、これほど生を光らせる死の扱い方はないのではないでしょうか。
これらの島々に行くと不思議と癒される経験はありませんか?それは、これらの島が代々これほどの愛情でつながっているからなのだと、照屋監督が一番分かっていることなのだと、感じることができると思います。皆さんも、楽しくて涙してみませんか?


洗骨(せんこつ)

1月18日(金)よりシネマQ、シネマライカム、ミハマ7プレックス、サザンプレックスにて沖縄先行公開中
2月 9日(土)より丸の内TOEI他全国公開
(C)『洗骨』製作委員会
配給:ファントム・フィルム
奥田瑛二
筒井道隆 水崎綾女 / 大島蓉子 坂本あきら
山城智二 前原エリ 内間敢大 外間心絢
城間祐司 普久原明 福田加奈子 古謝美佐子
鈴木Q太郎 筒井真理子

監督・脚本:照屋年之(プロフィール
音楽:佐原一哉
主題歌:「童神」(歌:古謝美佐子)
公式HP:http://senkotsu-movie.com/

洗骨





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