「葛藤、不安、悩みは絶対幸せに繋がる」『シスターフッド』兎丸愛美さん、西原孝至監督

シスターフッド 兎丸愛美 うさまるまなみ 西原孝至監督

「葛藤、不安、悩みは絶対幸せに繋がる」
映画『シスターフッド』
兎丸愛美さん、西原孝至監督インタビュー

西原孝至監督が、2015年から4年間撮り貯めてきたヌードモデルの兎丸愛美(うさまるまなみ)さんと、シンガーソングライターのBOMIさんの生活を追ったドキュメンタリーに、新たに撮影した劇映画の部分を加えて1本の映画にまとめた、“多様性”を肯定するモノクロ映画『シスターフッド』。
4月13日(土)から横浜シネマリンにて2週間公開ほか全国順次公開となる本作について、主演の兎丸愛美さんと西原孝至監督にお話を伺いました。

兎丸愛美

主演の兎丸愛美さん

―― 劇中のドキュメンタリー部分で“自分には何もない”つまり“無価値だ”ということを仰っていると思います。
“自分には何もない”という感覚をあえて言葉で表現するならば、どんな言葉にできますか?

兎丸愛美

兎丸愛美さん
そうですね。うーん。
私は女ばかりの大家族で育ったんです。小さい頃から女性の中で生きている感覚が強く、末っ子なので常に姉や兄と自分とを比べて生きていたんだと思います。その中で何を頑張っても姉に追いつけない苦しみがあって。小さい頃って運動で賞を獲ったり、勉強でいい学校に進学したり、いい成績をとったりすることが自分の中で存在価値みたいに思っていて。でも、どうあがいても追いつけなかったんです。何をやっても姉の真似事にしか感じることができず“自分にしか出来ないことがないんじゃないかな”って。もちろん親が比較するわけでもないですし、お姉ちゃんに「あなたはどうせ出来ない」とか言われたわけでもなく、何となく自分の中でずっとそう思っていたのが大きくて。自分と人を比べて生きていくことしかできず“自分にしか出来ないものがないんじゃないか”って、それが辛かったですね。

―― 自分を認識するよりも周りに目がいってしまう。そういう幼少期をずっと過ごしていらっしゃったのかもしれませんね。その自分なりの悩みが、知らず知らずに大きくなって。

兎丸愛美さん
当時は分からなかったんです。なんでこんなに満たされないのか。大人になった時に、取材を受けた時とかに考えると、そういう苦しみを無意識に抱えていたんじゃないかなって思います。

―― 死のうと思うこと、本作の表現を借りれば、生きづらさを感じて詰まっていく。その状態から今は全く違う自分を見つけたような状態かなと思いますが、死ぬほどまで追い詰めた状態があったからこそ兎丸さんは違った自分を見つけることができたとも思われます。思い詰めて悩むことって大切なのかもしれません。

兎丸愛美

兎丸愛美さん
2017年に初写真集『きっとぜんぶ大丈夫になる』を発表したのですが、このタイトルにしたきっかけが、その時凄く辛いこと、苦しいこと、死にたくなることがあっても生きていて何年間か経った時に当時の自分を振り返ってみると“あの時の自分がいたから、今の自分がいるんだ”って思えるようになって…。
だから、きっとそういう人、死にたい気持ちになっている子…。その時幸せじゃなくても、その時の葛藤とか、不安とか、悩みとかは絶対に幸せに繋がると思っていて。生き続けてみないと分からないから、苦しいけど最後に、死ぬ間際に幸せか、そうじゃなかったか判断することができると思うんです。

―― 今の自分も悩んだ自分がいたからこそいるわけで、そこで死ぬ選択をしてしまったら途切れてしまいます。この苦しく悩んでいる自分も将来の自分の糧に確実になっていると?

兎丸愛美

兎丸愛美さん
はい、なっています。凄く、凄く。

―― 続いて監督に一番お聞きしたかったのは東京の若者の生きづらさをテーマにしていると思いますが、この生きづらさを監督はどこで具体的に感じたのでしょうか。

西原孝至監督

西原孝至監督

西原孝至監督
この映画を撮り始めた時は漠然と感じていたんです。
僕自身が18歳で富山県から上京してきまして、大学進学からそのままずっと10年間くらい東京で暮らしていました。目に見える形ではないのかもしれないですが、会社で出世争いをする上司をみたりとか、バイト先でマウンティングするような状況をみていたり、そういうのがなんとなく残像としてあって、僕のこの思いを感じている人は他にもいるんじゃないかなって。それを映画を通して自分ももう一回考えてみたいなというのがありました。それで2015年から兎丸愛美さんと歌手のBOMIさんのドキュメンタリーの撮影を始めました。
途中、二つ前の作品で学生団体「SEALDs」のドキュメンタリー映画『わたしの自由について』を撮ったんですけど、彼らは大学生や大学院生が中心で二十歳前後、十代もいました。「SEALDs」のみんなに出会い、若者と接していくと、具体的なことでいえば奨学金をどうするとか、新卒で入社できればいいけど、失敗してしまうとなかなか契約社員で給与も上がらずとか。
そういった状況というか、ちょっとした違和感って皆さん生きていれば必ず感じることはあると思うんですけど、それを映画で形に現してみたかったんだと思います。

―― そしてもう一つ、言葉がこの映画を走らせている面があり“セルフリスペクト”という言葉が何回か使われていました。自分を大切にするということは、監督の言葉にするとどう表現されますか?

西原孝至監督

西原孝至監督
本作とは別の話になるのですが、こども映画教室という小中学生向けの映画を作るワークショップをやっているんです。そこでは、当初自信がなかった子供たちが3日目辺りになると映画作りを通して自分から発信するようになるんです。それってカメラワークを褒められたり、演技に対して「上手かったね!」と言われたり、作品を上映した時に拍手をされたり。他者から認められるってこともそうなんですけど、自己肯定感を持つことが若い子には足りていないって教育関係の本にも書いてあって、それは子どもだけじゃなくて今の若い世代にはきっとあるんじゃないかなって。他者を尊重するのは当然大前提として、自分を認めていく自己肯定感を高めていくっていうことを、4年間撮影してきた中で最後はテーマにしたいなって思いました。“セルフリスペクト”っていう台詞は、去年劇映画部分を撮影する際に、脚本で加えました。

―― さらにBOMIさんご自身の言葉だと思いますが「幸せを感じる力、感度の問題だ」と。これは凄いなって。幸せって求めて得られるものではなくて「幸せは感じるものでしょう」って。監督もBOMIさんと同じように幸せを定義されているのか?そのことを知ってほしくて終盤にこのセリフを持ってきたのか、その狙いを教えてください。

西原孝至監督

西原孝至監督
まずこの言葉は仰る通りBOMIさんが言ってくれた、BOMIさんの言葉です。
BOMIさんは、ライブシーンや自宅での楽曲風景をドキュメンタリーで撮っていて、映画としてまとめるにあたり、兎丸さんには劇映画にも出演していただき、BOMIさんにはインタビューをさせていただきました。事前に女性が感じる生きづらさや何を幸せと感じるかなど幾つか質問を送っていました。当日にあの台詞を聞いて、僕も打ちのめされたというか、凄いことを言うなって。
ただ、僕も30歳を過ぎてから何がきっかけというわけではないですが、例えば、今日の窓から射す光がキレイだなとか、はたまた弟は最近何しているかなとか、そういういわゆる日常っていうんですかね、そういうことをちゃんと生きていくことが映画にも繋がるんじゃないかなって。どうしてもこういう仕事をしていると、そっち一辺倒というか、画家が画を描いたり、作曲家が歌を作ったり、でも生きている所から日常から作品って生まれるんじゃないのかなって。何かのきっかけがあったわけではないですが、30歳を過ぎてからそう思うようになりました。
だからあの言葉にはすごく共感ができましたし、あのBOMIさんへのインタビューを撮ったあとで、僕自身を投影させている池田という人物があの言葉を聞いて、どう行動するかというシーンを脚本に組み入れました。

兎丸愛美

―― シスターフッドというタイトルですがこの意味は?

西原孝至監督
フェミニズムの世界にある言葉で、女性同士の結びつきとか、女性同士の連帯、恋愛感情ではない精神的な結びつきという意味からです。映画自体がフェミニズムとか、女性同士ってことではないかもしれないですけど、兎丸さんと遠藤新菜さん演じる美帆が公園で向かい合って同じ方向を見ている所であったり、最後に空港で秋月三佳さん演じるユカと栗林藍希さん演じる後輩の梓が写真を撮り合ったりとか、ああいう女性同士の結びつきみたいなものを脚本を書いている時に考えました。
実は当初『トーキョーガールズブラボー』という仮タイトルでした。漫画家・岡崎京子さんが1990年代に発表した作品の響きが凄く良いなと思って。あの作品は漢字の“東京”なんですけど、全部カタカナで『トーキョーガールズブラボー(仮)』って。でも、みんなから反発があり、兎丸さんにも「絶対に違う!」って言われて。

兎丸愛美

兎丸愛美さん
言ってた、言ってた(笑)。

西原孝至監督
それでゼロから考え直した時に、女性同士の結びつきを感じてこのタイトルがこの映画に合っているだろうとつけました。

―― 表現者として兎丸愛美さんとBOMIさんがいらっしゃって、この二人が歩んできた人生が映画の中に表現されていると思います。それを踏まえ映画ファンにメッセージをお願いできますでしょうか。

西原孝至監督 兎丸愛美

西原孝至監督
自分自身の幸せだったり、セルフリスペクトって言葉だったり、自己肯定感であったり、そういうキーワードを頭の中に描きながら作った作品なので、何か観終わった後に幸せについて考えたり、自分をもっと大切にしていいんだよとか、そういう想いを何か持ってもらえたら嬉しいです。特に若い人に観て欲しいです。

兎丸愛美さん
女性だけの映画ではないなって思っていて、生きづらさって女性に限らず男性も抱えていると思うし、若者だけじゃなくて年配の方も抱えていると思うから、今を生きている人みんなに観てもらいたい作品だなって思っています。

編集部より

物事には原因と結果があります。
さらに、結果自体が何らかの原因になり、そして別の結果を生んでいくこともあります。どうやら私たち人間は、目の前にある結果に捉われてしまうと、それが既になんらかの原因へと変化しつつあることになかなか気付けない様です。
でも、兎丸さんが心の旅で教えてくれたことは、正体不明の葛藤や、不安、悩みに苦しんだとしても、その結果は「全部大丈夫になった」ということではないでしょうか。
人それぞれに苦しみの状況は違いますが、世の中に永遠に続くものは無いように、苦しみも続きはしません。西原監督のように、若い人たちの生きづらさをテーマにしてくれる映画人がいれば尚更です!
キャストの皆さんの生き様から、「幸せを感じる力」は誰にも備わっていて、発揮するのは自分次第なのだと、きっと気付ける作品です。

兎丸愛美さんフォトギャラリー

映画『シスターフッド』は、
4月13日(土)~横浜シネマリンにて2週間公開ほか全国順次

4月13日(土) 13:50〜の回上映後トークイベントゲスト:兎丸愛美、西原孝至 (本作監督)
4月14日(日) 13:50〜の回上映後トークイベントゲスト:RINA (SCANDAL)、西原孝至(本作監督)





■予告

■あらすじ
東京で暮らす私たち。
ドキュメンタリー映画監督の池田(岩瀬亮)は、フェミニズムに関するドキュメンタリーの公開に向け、取材を受ける日々を送っている。池田はある日、パートナーのユカ(秋月三佳)に、体調の悪い母親の介護をするため、彼女が暮らすカナダに移住すると告げられる。
ヌードモデルの兎丸(兎丸愛美)は、淳太(戸塚純貴)との関係について悩んでいる友人の大学生・美帆(遠藤新菜)に誘われて、池田の資料映像用のインタビュー取材に応じ、自らの家庭環境やヌードモデルになった経緯を率直に答えていく。
独立レーベルで活動を続けている歌手のBOMI(BOMI)がインタビューで語る、“幸せとは”に触発される池田。
それぞれの人間関係が交錯しながら、人生の大切な決断を下していく。

【出演】
兎丸愛美 BOMI 遠藤新菜 秋月三佳 戸塚純貴 栗林藍希 SUMIRE 岩瀬亮

【スタッフ】
監督・脚本・編集:西原孝至  撮影:飯岡幸子、山本大輔  音響:黄永昌  助監督:鈴木藍
スチール:nao takeda  音楽:Rowken
製作・配給:sky-key factory
(c) 2019 sky-key factory   2019 / 日本 / モノクロ / 87分 / 16:9 / 5.1ch
公式サイト:https://sisterhood.tokyo   Twitter:@sisterhood_film
facebook: @sisterhood.film.2019   instagram:@sisterhood.film

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