東京国際映画祭 石坂健治氏

『東南アジア映画の巨匠たち』開催記念
東京国際映画祭プログラミング・ディレクター
石坂健治氏【インタビュー】

7月3日(水)から10日(水)まで有楽町スバル座・東京芸術劇場にて、国際交流基金アジアセンター主催、公益財団法人ユニジャパン(東京国際映画祭)共催の特集上映「東南アジア映画の巨匠たち/響きあうアジア2019」が開催されました。期間中は、巨匠たちの原点から最新作、注目の若手監督の意欲作の上映に加えて、連日シンポジウムやトークショーが行われるなど、集大成に相応しいイベントになりました。
今回は特集上映の開催を記念し、東京国際映画祭のプログラミング・ディレクターであり、さらに今回の「東南アジア映画の巨匠たち」では作品選定に携わり、長年に渡り日本映画とアジア映画の橋渡し役を担ってこられた石坂健治氏に、東京国際映画祭でのこれまでの取り組みや本特集上映に集結した巨匠達の素顔、さらには黄金期を迎えつつあるフィリピン映画界についてたっぷりとご紹介いただきました。

東京国際映画祭「アジアの未来」部門とは

―――― 石坂さんは東京国際映画祭の「アジアの未来」部門でプログラミング・ディレクターを務められています。まず、これまでの成果を含めて、振り返っていただけますか?

東京国際映画祭 石坂健治氏

東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの石坂健治氏

石坂健治
2013年に創設された東京国際映画祭「アジアの未来」部門は、“作品賞”と“国際交流基金アジアセンター特別賞”の2つの賞を競ってもらっています。以前の東京国際には、“メイン”と“ヤングシネマ”の2部門のコンペがありました。ヤングシネマがなくなってずいぶん経ちますが、アジアに特化してみただけでも沢山の作家がいるし、新人のアジアの監督たちを応援するような部門としてこの「アジアの未来」部門を新設しました。

アジアから中東まで守備範囲にしておりますが、デジタル時代になってこれまでよりは低予算で映画を作れるようになりましたので、とにかく色々な若い監督が登場しています。少数民族の世界など、これまでだったらあまり映画で表現することが難しかった作品が増えています。大きな枠としてはマイノリティーというか、LGBTQの作品も多いですし、女性の監督も非常に増えています。「アジアの未来」は、結果としてその辺りのスモールボイス、小さな声を拾い上げる場にもなっています。今日的には、それが映画祭の一つの意義、役割ではないかと思います。

直近ですと昨年の作品賞を獲った『はじめての別れ』(リナ・ワン監督)は、中国映画ですけど、まさに今お伝えしたような女性監督で、しかも新疆ウイグル自治区の映画でした。これは本当に美しい映画で、ウイグルといえば政治的な話ばかりがニュースに取り上げられますけども、子供を主人公にして、ある時期のイラン映画のように全部子供の世界に落とし込んでいて、“きっと色々なメッセージがあるんだろうな”って観客に思わせてくれる作りで、これは見事ですよね。
若干複雑なのは監督自身はウイグル人ではないんです。漢民族だけど親の代から移住しているので2世です。彼女はウイグルが故郷になっているようで、現地ウイグル族の子供たちと一体化して撮っていました。
そういう意味では我々が知るニュース報道だけでは分からないことが、映画には映し出されている。そういう面は非常に大きいと思っていて、映画には色々な情報が入っていて、しかもそれをうまくドラマで見せてくれる。だからこそ、映画はこれからもメディアとして残っていくんじゃないかなと思います。まだ日本での公開が決まっていないので、もうちょっと応援していきたいですね。

一方の、アジアセンター特別賞は『武術の孤児』(ホアン・ホアン監督)でした。
あの作品は北京電影学院を卒業した映画のエリート集団が撮った作品です。マーシャルアーツというか、中国武術やブルース・リーへのオマージュも入っているのと、物語が相当ゴツゴツしているのが特徴的でした。裏話をすると審査会議でも意見が分かれた作品で、将来性を評価しての受賞でした。よく理解できない部分も含めて、若い人にはそういう部分があっていいじゃないか、と。実際、もっとスマートな映画は幾つもあったんですけど、『武術の孤児』が選ばれました。

私自身も観た後にその場でスッと消えてしまうのではなく、考えさせてくれる映画が好きです。その辺りは無意識に選定する時に意識しているのかもしれません。

―――― 世の中がある意味では画一化されてきています。テクノロジーで画一化されているようにも思えますが、アジアに目を向けてみればまだ我々が知らない世界と、もしくは近しいと思えるような世界があって、そこに価値があるのではないでしょうか。

石坂健治
確かに映画を作ることの敷居は下がりました。だからこそ、出来た作品の真価が問われているのです。
例えば、去年の上映作品では『海だけが知っている』(ツイ・ヨンフイ監督)は台湾の離島の少年が伝統舞踊の訓練をしてチャレンジしていく物語です。
ミス・ペク』(イ・ジウォン監督)は児童虐待の物語で、過去に家庭内で虐待を受けていた女性がかつての自分と重ねて被虐待児童を助けるような内容で、『万引き家族』をもっと過激にしたような物語。
ソン・ランの響き』(レオン・レ監督)は、ベトナムの伝統芸能の話なのですがLGBTQのテーマが出てきます。歌舞伎でいうところの女形と、それに恋する男性。
トレイシー』(ジュン・リー監督)もLGBTQものです。長年連れ添った夫婦の夫が同性愛者だと今になってカムアウトして家庭が揺れていく。

こうして改めて振り返ってみますと「アジアの未来」は“アジアの現在進行形とその多様性”が表現されているといえるでしょう。

巨匠が勢ぞろい!特集上映「東南アジア映画の巨匠たち」

―――― 今回の特集上映「東南アジア映画の巨匠たち」では、巨匠監督の7作品、次世代の巨匠たち3作品が選ばれています。国際交流基金アジアセンター主催ですが、開催の経緯などについてお話いただけますか。

東京国際映画祭 石坂健治氏石坂健治
2014年以降、その年に開設された国際交流基金アジアセンターと共に「国際交流基金アジアセンターpresents CROSSCUT ASIA」をはじめ、さまざまな切り口で東南アジア映画を紹介してきました。今回は、その集大成として、東南アジアの地域を越えて世界に挑戦し映画ファンを魅了し続ける巨匠たちの原点から最新作、注目の若手監督の意欲作を一挙上映します。
しかも、最新作品やプレミア上映ではないのにも関わらず、ワールドクラスの監督達が来日してくださいました。これは国際交流基金の人脈的な強さだと思います。各国に事務所があり、日本文化の紹介や日本語教室を運営したり、逆にその国の文化を日本に紹介する拠点として活動されています。幅広く監督達とも日頃から付き合っているからこそ、このような機会に繋がっているのだと思います。

―――― それぞれの監督についてご紹介いただけますでしょうか。

石坂健治
本当にこの5人は全員が各国のNo.1です。カンヌをはじめとして、世界各地の映画祭はもちろん、三大映画祭でほぼ全員が受賞か入選をしています。日本の場合は、一般公開が少ないので、映画ファンなら知る人ぞ知るという事かもしれませんが、お国にいけば…。いずれこのうち誰か一人くらいは大統領になるかもしれません。それだけ知名度は抜群に高いですよ、中には反体制的な尖がっている人もいますが(笑)。

ガリン・ヌグロホ監督(インドネシア)
ヌグロホさんは25年以上に渡りインドネシア社会をずっと見据えている方です。ご存知の通り、インドネシアは90年代まではスハルトの独裁体制でした。今はだいぶ風通しがよくなってきていますが、彼は独裁時代から今日までずっと第一線で活躍されています。
映画の特徴はジャンルを広くまたがる方で、今回も『サタンジャワ』という映画と舞台芸術がミックスされた作品を持ってきてくれました。サイレント映画を作って、それにその都度ライブ演奏をのせるというちょっと新しい試みです。演劇や踊りにも精通していて、美術作品もつくる方なんです。まさにジャンル横断型の万能なアーティストです。

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督(タイ)
彼もジャンルをまたいで活躍している方で、今回は『フィーバー・ルーム』という、人間は出てこなくて光だけで出来ている舞台作品を持ってきています。彼は映画、演劇、美術、写真と何でもやります。今回のこのテーマにはこのやり方でやっていこう、となるみたいで、まず映画ありきじゃないみたいです。今回の面々の中ではアピチャッポンさんが一番知名度があるかもしれません。彼の作品で『ブンミおじさんの森』(2010年)はタイそして東南アジアで唯一のカンヌ映画祭パルムドール受賞作品です。現実と非現実が入り混じっていて、そのくせ出てくるサルは『スター・ウォーズ』のチューバッカのぬいぐるみにちょっと手を加えたような感じのものでした。行方不明だった息子が帰ってきたら人間からサルに変わっちゃったというお話で、独特の世界観を持っている方です。

ブリランテ・メンドーサ監督(フィリピン)
メンドーサ監督はフィリピンの第一人者です。下積みが長かったというか、美術監督やCMディレクターを20年くらいやってから劇映画を撮り始めた人です。だから、監督としてデビューして10年ちょっとですが、とにかく早撮りです。手持ちのカメラでガンガン撮っていくので、毎年1~2本とかすごいペースで撮って、撮ったものがほぼ三大映画祭に行くということをこの10年で成し遂げています。
東南アジア映画の巨匠たち フィリピンの巨匠!ブリランテ・メンドーサ監督

関連記事:特集上映「東南アジア映画の巨匠たち/響きあうアジア2019」ブリランテ・メンドーサ監督インタビュー!

エリック・クー監督(シンガポール)
エリック監督はシンガポールのトップランナーです。
国が小さいので映画産業を成立させるのはなかなか大変なのですが、ほぼ彼がシンガポール映画界を創ってきたと言っても過言ではないです。
基本的にはヒューマニズムの人で、そこにシンガポールの抱える問題をうまく取り入れています。こぶしをあげるのではなく、一人一人の人間の中に入っていく、そこに特徴として食文化へのこだわりがあります。デビュー作の『ミーポック・マン』からどの作品にも食べ物が登場しますし、前作『TATSUMI マンガに革命を起こした男』は辰巳ヨシヒロ原作の劇画をシンガポール人の彼が映画化しました。食べ物にこだわり、日本が大好きな監督なので来日すると、ラーメン屋をハシゴされています(笑)。
シンガポールの巨匠・エリック・クー監督3/9公開『家族のレシピ』関連記事:『家族のレシピ』シンガポールの巨匠エリック・クー監督が食にこだわった理由!

リティ・パン監督(カンボジア)
リティさんは、家族がポル・ポト派に殺されてしまいますが、ご自身はタイの難民キャンプからフランスに逃れて映画作家になりました。カンボジア自体がまだ復興の途中で国内の映画産業が事実上ない頃から、フランスをベースにしてドキュメンタリーを撮っている方です。だから、テーマもクメール・ルージュが何をやったのか、といった作品が多かったです。最近になってやっと自分の家族とか自分の周りのことをテーマにしています。逆に言うと、それだけ時間が必要だったといえるでしょう。
日本ではカンヌの「ある視点」部門で最高賞を受賞した『消えた画 クメール・ルージュの真実』が2014年に公開されています。実写で表現するには厳しい内容を人形を使ったアニメーションで柔らかく演出している作品です。今回の作品は大江健三郎の小説『飼育』のアダプテーションというか、骨格は大江さんのお話です。オリジナルは太平洋戦争中にアメリカの黒人兵士の乗った爆撃機が撃墜され、兵士が空から堕ちてきたのを軍国少年たちが檻に入れて飼うという芥川賞受賞作。舞台をカンボジアに移して、ベトナム戦争の空爆にきていたアメリカの黒人兵がカンボジア領内に堕ち、彼をクメール・ルージュの少年兵たちが飼育するのです。リティさんもエリックさん同様、日本文学を読み込まれているようですし、皆さんそれぞれ日本との関わりが深いです。

ちなみに、今回上映する『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』の「Beyond The Bridge」を撮ったソト・クォーリーカー監督はリティ・パンに続く世代です。リティさんがフランスで撮っていた自国の悲劇をやっとカンボジアの中で撮り、デビューをした世代の代表格で女性監督です。彼女も自分のお父さんが殺されているのですが、日本でも公開された『シアター・プノンペン』は、女子大生が自分の家の歴史を色々と知っていく中で、父親が元ポル・ポト派だったと知る。果たしてお父さんを許せるものなのか?という、若い世代が年上のお父さん世代をどう考えるかといった新しいテーマでした。『シアター・プノンペン』がTIFFの「アジアの未来」部門で国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞し、その副賞としての日本滞在の機会があり、その次に抜擢されて撮ったのが日本人とカンボジア人の恋を描いた「Beyond The Bridge」です。
このように「アジアの未来」、「クロスカットアジア」、「アジア三面鏡プロジェクト」は全部リンクして考えていて、ここからTIFFのコンペに出ることは勿論、世界に羽ばたいていって欲しいと考えています。

カミラ・アンディニ監督&エドウィン監督(インドネシア)
彼らはヌグロホの次を担う世代です。
ヌグロホの娘さんのカミラ・アンディニ監督はデビュー作の『鏡は嘘をつかない』が、当時、TIFFでエコロジーを考える優れた作品を表彰していた“TOYOTA Earth Grand Prix”を受賞しています。彼女もどちらかと言えば、現実と幻想が入り混じった作風です。
エドウィン監督も独特の美学を持ったアーティストです。シュールな作風で知られていましたが、器用な方で今やヒットメーカーになり、女子高生のラブコメみたいな学園ドラマで大ヒットを飛ばしています。『アジア三面鏡2018:Journey』は久しぶりにシュールな作品でした。倦怠期のインドネシア人夫婦が東京にきてウロウロするみたいな話(笑)。エドウィンは興行的にもヒットしますが、二人とも色々な映画祭でも活躍されています。

ナワポン・タムロンラタナリット監督(タイ)
ナワポン・タムロンラタナリット監督はタイの若手で、SNSではカリスマのような存在になっています。映画の中にも新しいメディアを張り巡らせていたりします。例えば『マリー・イズ・ハッピー』は女子高生が卒業式までの3か月をダラダラと過ごすだけの作品です。話を進めていくのは彼女がやっているLINEとかTwitterで、そのメッセージやら投稿がやたらと画面を埋め尽くすんです。全部で400以上のツイートが使われているので、スクリーンをみていますけど、ひたすら自分の手元を見ているような不思議な感覚。それなのに卒業を控えた女子高生の気持ちに“キュン”となったりするんです、オジサンでも(笑)。ネットを使った発信も含め、まさに「アジアの未来」といった感じがします。

フィリピン映画界の「王・長嶋」2人の巨匠に注目!!

ブリランテ・メンドーサ監督を徹底解説!

―――― 続いて、石坂さんにたっぷりとフィリピン映画を語り尽くしていただきたいと思っています。まず、『アルファ 殺しの権利』はスバ抜けてスゴイ作品だと感じたのですが、メンドーサ監督についてお話いただけますか。

石坂健治
最初の頃はセックス産業、闇世界、黒社会をテーマにした作品を多数撮っていました。それが段々とよりフィリピンの下層社会や恵まれない人たちが抱える問題をテーマにするようになってきて、ここ2、3年の主題は麻薬戦争です。それはロドリゴ・ドゥテルテ氏が大統領になる前から撮っていて、庶民がいかに麻薬の罠にハマっていくかと。前作『ローサは密告された』も、わずかな取引に雑貨屋のお母さんが加担し見つかってしまう。拘束された母のために子供たちが保釈金集めに奔走するストーリーでした。『アルファ』はもうちょっとガンファイトがある潜入捜査ものです。ジャンルとすれば『インファナル・アフェア』(香港)に近い。どれも背景にあるのは今のフィリピンの現実なので、フィリピン社会を常に庶民の目線で見ている方です。

東京国際映画祭 石坂健治氏

―――― 『アルファ 殺しの権利』はドキュメンタリーチックで、俳優さんも俳優チックな演技ではありません。このドキュメンタリーのような作風が凄く響きました。

石坂健治
まず、撮影に特徴があります。劇映画を撮るにしては少人数、10人未満のスタッフで、小型のビデオカメラで撮影をしています。三脚を使うこともなく、ブレたとしてもそれも表現だと考えている。さらに照明もたかず、ほぼ自然光で撮ります。今はカメラの性能もいいから、それで十分という考え方。スラムの路地はデカい機材を担いでいくより、手持ちでやった方が良いに決まっていると。
加えて、演出も驚きました。俳優を使うけど、台本を渡さないんです。「この場面、君はどういう台詞を言うの?」みたいな会話から始まっていって、非常に独特な手法で役者との関係を作っていく方です。
私は『アジア三面鏡2016』のメンドーサ作品「DEAD HORSE Shiniuma」にプロデューサーとして参加しましたが、その時もそうでした。不法滞在のフィリピン人が雪の中を逃げ回る話で、主役のルー・ヴェローソはフィリピンの大俳優ですが、彼に対しても「考えろ!」と。役者に対するリアリズム、徹底したリアリティの追及ですね。
他にもリアル警官が登場したり、リアル警察署で撮影したり、全部本物を使うのです。撮影のリアリティと演技のリアリティが両方合わさって、あの独特のメンドーサ・スタイルが出来上がっています。

―――― 作品から感じる得体の知れない気持ち悪さと、にも関わらずずっと見ていたくなる感覚を植え付けられる。あの迫力はどこからきているのかなと思っていたことが、明確になってきたように感じます!

石坂健治
彼の映画で居心地のいい映画は一本もないです(笑)。ところが、リアリティとか、怖いもの見たさとか、居心地の悪さも楽しめる人にとってはたまらない。私なんかは中毒みたいなものです。
カンヌのコンペで監督賞を撮った『キナタイ マニラ・アンダーグラウンド』は日本でもDVDが発売されていますが、バラバラ殺人の物語で凄まじいですよ(笑)。とにかく、これほど臨場感に溢れた作家は世界でもそれほどいないです。

もう一人の巨匠 ラヴ・ディアス

―――― フィリピン映画=ブリランテ・メンドーサ監督と言っても過言ではないということでしょうか。

石坂健治
実は、フィリピンにはもう一人ラヴ・ディアスというトップ監督がいます。メンドーサと二人で牽引していますが、全く対照的な作り方です。長い作品を撮る方で、以前TIFFで上映した映画は8時間の作品がありました。日本ではヴェネツィア国際映画祭のグランプリ受賞作『立ち去った女』が一昨年に公開されましたが、これは4時間で彼にしては短い作品でしたね(笑)。
物凄い長回しをする方で、演劇のように一つの場面を切らずに撮っています。扱っている題材は、メンドーサとも近い、フィリピンの庶民の話や歴史映画も撮ります。
メンドーサは動き回るカメラと臨場感溢れるマニラの映像が特徴で、ラヴ・ディアスは静かで台詞もあまりなくてモノクロです。ヨーロッパの映画、たとえばテオ・アンゲロプロス監督や『ROMA/ローマ』のアルフォンソ・キュアロン監督と比較されることもあります。
同時代に全く違うスタイルの天才が同じジャンルに二人いるという意味で、私はメンドーサとディアスを王貞治と長嶋茂雄だと例えています。最近学生に話しても王と長嶋を分かってもらえないし、先日大阪でそのお話をしたら、「何でジャイアンツなんだ、タイガースの例えでやってくれ!」と言われまして、そこじゃないだろうって(笑)。

東京国際映画祭 石坂健治氏アジア映画は、台湾のホウ・シャオシェンとエドワード・ヤンとか、中国のチェン・カイコーとチャン・イーモウとか、2大監督が並び立っているというのがこれまでも結構ありましたが、今フィリピンがそうですね。
二人に共通していることはデジタル時代の申し子であることです。手持ちのカメラでスラムに入っていくメンドーサ、気の遠くなるような長回しのモノクロで撮るディアス。モノクロの長回しの映画は増えています。ヴェネツィアのグランプリは2016年に『立ち去った女』、2018年に『ROMA/ローマ』が受賞していて、ある流れを感じます。

―――― メンドーサ監督の作品に是非、日本人の俳優さんを使っていただきたいです!

石坂健治
メンドーサ監督作品の『囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件』にはあのフランスの大女優イザベル・ユペール(『沈黙の女』『ピアニスト』『エル ELLE』など)が出演しています。ヨーロッパの観光客がミンダナオ島でテログループに襲撃されて山奥に連れていかれる物語。イザベル・ユペールが泥だらけになり、死にそうになって演じていますが、それもメンドーサの世界になっているんです。大女優がメンドーサの世界に溶け込んでいて、あれは凄いですね。
編集にも特徴があって相当音を足すんです。街のノイズを入れるわけですが、その入れ方が尋常じゃない。とにかくメンドーサは引き出しが多い!
フィリピンの学生とか若手が作った作品を観ると、みんなメンドーサのように撮っています。でも、実は手持ちカメラで撮っただけじゃ彼の作品は生まれないので、音の調節とか、役者の使い方とか、一見アマチュアが撮れる気になるのですが、やっぱり唯一無二!
私も一ファンとして、是非日本人俳優を起用した彼の作品を観たいです!

■ 『東南アジア映画の巨匠たち』予告動画

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ローサは密告された(字幕版)

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囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件(字幕版)

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