祝公開!映画『台風家族』主演・草彅剛さん&市井昌秀監督【インタビュー】「僕はちょっと目を伏せているところがあるのかな」

映画『台風家族』

祝公開!映画『台風家族』
主演・草彅剛さん&市井昌秀監督【インタビュー】
「僕はちょっと目を伏せているところがあるのかな」

9月6日(金)から全国96館で公開を迎えた映画『台風家族。主演の草彅剛さんと、『箱入り息子の恋』『ハルチカ』などの市井昌秀監督がタッグを組み、一時公開延期となるものの、公開を待ち望むファンの声もあり3週間限定での公開決定に至りました。
今回は、主人公の小鉄を演じた草彅剛さん、市井昌秀監督に1年前の真夏に行われた撮影を振り返っていただきながら、本作品やお互いの人間性までたっぷりとお話を伺いました。

―― 映画の公開をファンの方は待っていたと思います。まず、ファンの方に向けてお二人から一言ずつコメントをお願いします。

映画『台風家族』

主演の草彅剛さん

草彅剛さん
皆さんの応援の声が届いて、それがなければ(公開が)実現できなかったと思います。特に監督もそうですし、キャストもスタッフの方も皆どうなるのかなって心配もしていました。去年の夏、ひと夏の僕らの情熱や、溢れ出る想いみたいなものをスクリーンを通して世の中に届けられないとスゴイ悔しいなと思っていたので、色んなことがありますけど、やっぱり僕は嬉しいです。待ってくれたファンの方に早く観てもらいたいということ、そして皆本当に色んなところに声を届けてくれて「ありがとう」という気持ちです。

市井昌秀監督
沢山の人の映画を観たいという気持ちの後押しが凄く有難いですし、嬉しいです。

―― 映画の大部分がワンシチュエーションで、キャストの熱い演技が繰り広げられていくので、あの場所に引き込まれるように観ることが出来ました。特に草彅さん演じる小鉄の熱演が凄かったです。監督は小鉄役に草彅さんを想定して書かれたとお聞きしたのですが、どのようにイメージを膨らませられたのか教えてください。

映画『台風家族』

市井昌秀監督

市井昌秀監督
台本自体はずっと書き溜めてきた原型がありました。それが段々と具体的になり、いざ草彅さんにご出演いただけるとなった時に「あっ!」って。そこで「小鉄」という名前も草彅さんの出演が決まってから決めさせていただいて…。

草彅剛さん
そうなんですか、今初めて聞きました!

市井昌秀監督
当初は「小鉄」じゃなかったんです。普通に「ノボル」とかで、「小鉄」という名前自体は草彅さんが決まってからです。ちなみに父親(役:藤竜也さん)の「一鉄」は昔からちょっとあったんです。
あえて草彅さんが、小さいことにこだわるズルさとか、なんか昔のことを引きずっているとか。でも、それって凄く人間臭いというか、そういう役を草彅さんの中にも僕はあると思っていたし、その中で草彅さんがこういう役を演じれば面白いなと想定しながら書かせてもらいました。

映画『台風家族』

―― 監督の狙いをお話いただきましたが、草彅さんは小鉄をどのような人物だと捉えて演じられましたか?

草彅剛さん
そうですね。本当に大変暑い中の撮影で、みんな一緒にリハーサルをしたのが懐かしいです。
監督からは一人ひとりのキャラクターは「みんなの気持ちから湧き出てくるものがないとつまらないものになる」とお伝えいただきました。台本を読んだ時にとても面白いなと思ったし、素直に監督が言うことに耳を傾けて、共演者の方と素直に心が通じ合えるように意識しました。もちろん色々と自分なりには演じてみたのですが、でもやっぱりスゴイ暑いです、実際。空調も効かない中、クラクラしてしまって、セミの音が段々遠のいていくんです。何て言うのかな…そういう面ではただ必死に台詞を言っているだけみたいな感じになってしまったんですけど、それが作られたような感情じゃなくて、生の二度とその瞬間にしか起こり得ないようなキャッチボールが出来たんじゃないかなと思います。そういうのを大事にして演じました。

―― 世の中の価値観や常識をうまく壊して、その上で大切なものをあぶり出しているように見えました。市井監督と草彅さんにとって、この作品を通じて見えてくる世の中の常識って何なのかなというのをお聞かせいただけますでしょうか。

市井昌秀監督
そうですね…。常識と言いますか、固定観念はいつも無くしたいと言いますか、決めつけはしたくないと思っています。それは対人(たいひと)でもそうですし、勝手に外見で決めないというか、何かしらのルールで縛られた時に“そのルールは本当に大事なのか?”ということは考えます。

映画『台風家族』

草彅剛さん
そうですね、常識…。家族にはそれぞれ、基本や普通ということは100通り家族があったら、多分100通り違うと思います。その家族内の決められたこととか常識の中で、大事にしていることとか、ぶつかり合うこととか、そういう中で見えてくるリアルティというか。この『台風家族』の家族は、メチャクチャ面白く見えたりするんですけど、でも実際本人たちは、ただ必死に生きているだけっていうか。一生懸命生きていると面白かったり、その中で常識が作られていくみたいな感覚はありました。

―― ほぼ順撮りだったと伺いました。長回しも素敵でした。順撮りと長回し、それぞれの良かった点と大変だった点をお話いただけますか。

草彅剛さん
仰る通り1シーン、1シーンほぼ順撮りでした。俳優さん、役者さんに対して凄く丁寧に接してくれる監督だったので、非常に感情も作れたので、“監督、ありがとう!”という感じです。
だけど、たまにその日の時間が押してくると、カット割りが急に無くなって“今日のうちに収めているんじゃないかな”って(笑)そういう日は僕が監督にチクチクと「今日は時間がなかったから長回ししていたんですか?」なんて言うと「いや、そんなことはない。最初から考えていました」って。

市井昌秀監督
(笑)

草彅剛さん
撮影は長丁場で、どこか妥協しないといけないところもあるけど、その中でやっぱり最善を尽くしていく。それはどのチーム、どの映画もそうだと思うんですけど、本当にこのチームは監督が引っ張ってくれました。やっぱりオリジナル作品で、細部に渡ってキャラクターの感情を俳優陣にもそうですし、他のスタッフ全員に上手く伝達していたので、それぞれの部署が役になりきって出来たかなと思っています。
長回しもそうですね。やっぱり感情をちゃんと持っていないと、見透かされる部分もあるので、そういう中ではまた話が戻るんですけど、メチャクチャ暑かったことが変なこと考える余裕をなくし、それが良かったのかなって(笑)。
クーラーが効いているスタジオだと、もうちょっと頭を働かせて、こういう演技をしようかなとか、思ってしまうところがあったのかな。繰り返しになるけど、本当に余裕がなかったことが良かったかなと思います。

映画『台風家族』

―― 撮影地の栃木県って暑いですよね。

草彅剛さん
栃木県の観測史上、1番暑い日を記録した時だったようです。
本当に監督もこだわって、偶然にもイメージ通りの民家を貸し切れたので、ちょっとした偶然が重なって撮れたシーンだったのかな、ロケ場所もそうだし。
長回しで中村君に僕が刺されそうになって追いかけ回されるシーンなんて、映っていないんだけど外でこう振り回して、炎天下の中、“俺は映ってないのになぁ。何をやってんのかなぁ”みたいな(笑)。でも、観たらすごい好きなシーンになっていますし、最後の長回しのシーンも、そこは途中の固定のカメラの感じが効いていて、そこは“監督良かったですね”という気持ちです。まあ、それを説明してくれるんですよ、暑い部屋の中で監督が。全く言っていることの意味が分からなくて、早く終わりにして欲しいんだけどなぁって。

市井昌秀監督
(爆笑)

草彅剛さん
ようやく上がったのを見て、監督がよく言っていたこと、ユズキ(役:甲田まひるさん)が「最低」って言葉を“途中”と“最後”に発するんだけど、その違いを一生懸命暑い民家の中で説明してくださって。覚えていますか?(笑)

市井昌秀監督
はい、覚えています!

草彅剛さん
監督は涙ぐんじゃって、何を泣いているんだよと思って!!

映画『台風家族』

市井昌秀監督
あの“最後”は僕の中で見えたというか!

草彅剛さん
僕ら全然見えなかったですよ、あの時点では。

(爆笑)

市井昌秀監督
珍しいですよね。全員終わったのに、キャストを全員集めて「ちょっと話したいんだけど、お願いします」と。

草彅剛さん
映画は監督のものなので、僕はとにかく聞いていたけど。監督なんか涙ぐんでいるんだけど、汗なのか何なのか分からなくなっちゃって(笑)。

映画『台風家族』

―― 具体的に監督はどんなことお伝えされたのですか?

市井昌秀監督
まさに草彅さんが仰ってくれたことなんです。人って笑顔でも、心がウキウキの笑顔もあれば、泣いている笑顔もあるじゃないですか。同じように「最低」の聞こえ方が変わるなと思って。

草彅剛さん
あの話って長いシーン撮った後、居間のシーンを撮った後でしたっけ?

市井昌秀監督
居間もまだ撮ってないです。

草彅剛さん
そうだよね、何を言っているのかなと思って。

市井昌秀監督
居間でも撮ってないし、海でも撮ってないし。

草彅剛さん
でも、監督の中で繋がっていたんですね。

市井昌秀監督
簡単に言うと、海もああいうラストじゃなかったんです。

―― 最初に小鉄が娘のユズキに声をかけられる、あの回想のシーンでなんかもう世界観が見えてくるというか、出来上がっているなと感じました。あのシーンについては、監督と草彅さんでお話をされたのでしょうか。

草彅剛さん
あそこは監督からモアモアするものが出ていて、目が血走っていて、寝てないのか、酒飲み過ぎていたのか、目がすごい充血していて、気合が入っていたのかなぁ。
すごい目が充血していて、なんかもう出ていたんでしょうね。家族が一鉄によってなんかちょっと崩壊している、当然、小鉄にも迷惑がかかってるし、ちょっとなんか負のオーラっていうか。その中で物語が始まるユズキ、ちょっと大きくなるとピアノを習っていて父と確執が出来ているんだけど、そうじゃないユズキが「お父さん守ってあげる」って言う。なんかそこに、短いシーンだけど、この映画の中の、僕(小鉄)はお父さんの一鉄となんかトラウマに近い確執があるし、ユズキと僕(小鉄)の中でもそれがある。だから、監督が熱くなっていて、小鉄に群がる記者役の人とかもグイグイ来て。僕が入る前から何度もリハーサルしているんです(笑)。“すげぇ、リハーサルやってんな!”って。圧がスゴイなと思って(笑)。

市井昌秀監督
確かにそうですね。初日はあまり喋った記憶がないです。どちらかというと、圧をかけることで小鉄が生まれるみたいな感じは凄くあった気がします。

草彅剛さん
エキストラの方々の動きもかなり緻密にリハーサルされていて「おおっ、こんな来るんだ」みたいな。だから、もしかしたらそういうのが台詞にも現れているのかもしれないです。

―― たった一言なのにすごく世界観が感じられました。

草彅剛さん
すごい緻密になっているんです。ちょっとふざけているような台詞だとか、そういう感じに聞こえたり見えたりするんだけど、実は監督の中で何周も練られている。でも、それが押し付けがましくなくて、なんかこうスッと入ってくるんです。
やっぱり実際に「台風家族」の本も僕はまだ読んでないんだけど、、、初日までにはちゃんと読んでおきますから(笑)だけど、台本も厚いけど、あの本一冊に書かれている物語が凝縮されているので、それはやっぱり監督も自慢もするわけですよ。「俺の方が緻密に計算している」って(笑)

市井昌秀監督
言ってない、言ってない!(笑)

草彅剛さん
そんな風に感じましたよ(笑)

―― ところで、 監督からみた草彅さんは役者として人間としてどのように映ったのか教えてください。

市井昌秀監督
今、起こっていることに対して、すごく素直にお芝居をされる方だと思います。勿論、リハーサルで僕の考えていることをお話させていただいたということもあるかと思うのですが、あくまで小鉄という着ぐるみではなく、草彅さんの中での小鉄を作っていただいて、その中で草彅さんがキャッチボールをするからこそ出てくるものが、凄く新鮮で素直で。
その上で、小鉄としての正解って言うとドライな言い方ですけど、その正解からはみ出すものも凄く出てくる。僕はそれに凄く魅力を感じていて、だから僕が想像していた小鉄以上のものを出していただけたというのが有難いですし、凄く新鮮でした。

―― その瞬間でしか撮れないですものね。逆に、草彅さんからみた監督は、監督として人間としてどのように感じましたか。

映画『台風家族』

草彅剛さん
メチャクチャ真面目な方ですよね、監督は。一つの台詞、一つのシーン、その一瞬にしか流れない空気、そういうのを真面目に真摯に受け止める姿勢が凄いなって思います。僕はそこまでなんて言うのかな、分析とかしないタイプなので、監督の中ではちゃんとその瞬間、瞬間で向き合っているのが、とても人間らしくて。
僕はちょっと目を伏せているところがあるのかな。
時間は流れていってしまうじゃないかって、ちょっと諦めているようなところがあったりするんですけど、監督は監督なので“そうはいかんぞ”と。一瞬一瞬を捉えている力というのが…。だから演じている僕らは結構緊張しました。

―― リラックスして演じることが出来たのかなとも思いましたが、やはり緊張もされていたんですね。

草彅剛さん
そうですね。
やっぱり監督が瞬きもせず、モニターを見ていて。モニターから離れても、カメラの横にいてね、一瞬一瞬を…。そこにいたら演技しにくいんだけどって思ったり。ちょっとどいてくれないかなって(笑)

市井昌秀監督
(笑)

草彅剛さん
当然それを言うわけにはいかないし、だからスゴイ緊張でした。そこも自分の緊張とかを乗り越えて、自分が見えなくなってくるとやっぱりその役になれるし。結構みんな監督に鍛えられました。

―― 具体的なディレクションで響いたこと、印象に残っていることを教えてください。

映画『台風家族』

草彅剛さん
僕が泣くシーンですかね、なかなか泣けなくて。2メートルくらいの所でずっと見ているから“どうにか泣かないとな”って思って。でも泣けなくて、なかなかOKが出なくて。僕の中ではこれならOKがもらえるかなと思ったカットもあったけど、それでは出なくて。
何回も何回も撮って、時間も遅くて、部屋の中も暑くて、後ろではみんなが集まって見ているから、もうプレッシャーで。“俺が泣かないと今日終わらないじゃん!”って(笑)。そうすると余計泣けないじゃないですか!
最後は結構“無”の状態になってきて、本当に何か分からないけど、悲しいのか何なのか、一鉄の(小鉄への)気持ちなのか、意味の分からないような感情が込み上げてきて号泣することが出来て、あそこは人の無垢の姿というか、監督がそれをおさえてくれて僕は凄く気に入っているシーンなんです。

―― 先程は「最低」という台詞についてお話もいただきましたが、監督が1番印象に残った演技、シーンについて改めてお聞かせください。

市井昌秀監督
いやっ、どうしよう、一緒なんですよね、今、草彅さんが挙げてくれたシーンと。
最後のシーンも(このシーンとは別に)ずっと撮りたいと思っていたのですが、このシーンは、僕自身が父との確執があって、オリジナルなのでそういうことを盛り込んでいるんです。やっぱり父と少し邂逅するあのシーンは凄く大事にしていたので、それを草彅さんが体現してくれたことが凄く嬉しかったし、有難かったです。
前もどこかのインタビューでお話したのですが、あの山とかも、“カツタケ・・・カツタケ・・・、カツタケヤマ!!”と何回か言った後に言葉が出てくる、あれこそが人間だなと思っているんです。泣いている時にそんなにスムーズに全部が言えるわけがないし。だからあのシーンにはどれだけフィルムを回す時間がかかっても“生きている時間”で良かったなと思うし、凄く良かったです。

―― “自分さえ良ければいいんだ”という空っぽの器の様な気持ちが、父からの愛情で満たされていく様(さま)が非常に伝わってきました。

映画『台風家族』

市井昌秀監督
良かったです。

草彅剛さん
伝わっているんですね、良かった良かった!

―― そして最後の音楽で現実に向けて力強く押し出してくれるような気持ちにもなりました!

映画『台風家族』

草彅剛さん
伝わっているんだと思うと、それは本当に嬉しいです!俺ふざけているだけだから、基本は。「金は俺のものだ!!!」って(笑)。良かった!!

映画『台風家族』
TOHOシネマズ他 祝!全国公開中!

映画『台風家族』

出演:草彅 剛 MEGUMI 中村倫也 尾野真千子
若葉竜也/甲田まひる 長内映里香 相島一之 斉藤暁/榊原るみ・藤竜也
監督・脚本:市井昌秀

主題歌:フラワーカンパニーズ「西陽」(チキン・スキン・レコード)
音楽:スパム春日井
製作:木下グループ
配給・制作:キノフィルムズ
©2019「台風家族」フィルムパートナーズ
PG-12

関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

   

CAPTCHA


注目映画

  1. 5月31日公開 映画『長いお別れ』 ■最新情報 ・【インタビュー】映画『長いお別れ』公開記念 …
  2. 無限ファンデーション
    8月24日公開 映画『無限ファンデーション』 ■イントロダクション 『キャッチボール屋』『お盆…
  3. 新海誠監督最新作! 7月19日公開 映画『天気の子』 ■イントロダクション 全世界待望 ― …
  4. 8月30日(金)公開 映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 ■最新情報 【レポ…
  5. 三谷幸喜監督最新作! 9月13日公開 映画『記憶にございません!』 ■イントロダクション 三…
  6. 8月16日公開 映画『ダンスウィズミー』 ■イントロダクション 『ウォーターボーイズ』『ハッピー…
  7. 9月6日公開 映画『台風家族』 ■作品紹介 草彅剛(くさなぎつよし)主演、『箱入り息子の恋』の市…

ツイッター

Facebook





ページ上部へ戻る