映画『初恋ロスタイム』河合勇人監督

映画『初恋ロスタイム』
河合勇人監督【インタビュー】

仁科裕貴の小説「初恋ロスタイム」を実写映画化した映画『初恋ロスタイムが9月20日(金)から全国公開中です。
毎日12時15分に1時間だけ起きる不思議な時間を“ロスタイム”と名付け、楽しむようになっていく主人公の浪人生・相葉孝司(役:板垣瑞生さん)と少女・篠宮時音(役:吉柳咲良さん)。しかし、その“ロスタイム”には、ある<秘密>が隠されていた…。
今回は、『俺物語!!』(2015)や『チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話』(2017)など数々の青春映画を手掛けた河合勇人監督が本作を通じて全世代に伝えたいことや撮影秘話などたっぷりと語っていただきました。

―― Netflix『全裸監督』、9月6日から公開されている『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』、そして本作の公開を迎え話題作が続いています。撮影はいつ頃おこなったのでしょうか。

河合勇人監督
本作の撮影は去年の夏でした。『全裸監督』がその後、さらにその後に『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』を撮っています。

―― 本作の方が先だったのですね。夏の撮影にも関わらず、ジャケットを着た竹内涼真さんは爽やかでした(笑)

河合勇人監督
屋上のシーンは特に暑かったです。緑がすごく映えていたので、緑が綺麗な時期を選んだのだと思います。

―― 原作小説の映画化までの経緯を振り返っていただけますか。

河合勇人監督
2016年のホリプロタレントスカウトキャラバンに審査員として参加させてもらいました。吉柳咲良さんはそこでグランプリを受賞したのですが、その時から「吉柳咲良さんといつか映画を作りたいね」と話していたんです。その後「こういう原作があるんです」とプロデューサーから相談をいただいて、「いいですね」ということで、とんとん拍子に映画化が決まっていきました。

―― 吉柳さんの演技も素晴らしかったです。

河合勇人監督
これがデビュー作になるので、彼女にとって一番フレッシュな相応しい作品はないかと探していた時に原作をいただいたので「まさにドンピシャじゃん!」と。ちなみに撮影の時は彼女自身も14歳とかでした。審査の時はさらに前なので12歳の小学6年生でした。
※吉柳咲良さんは歴代最年少で第41回ホリプロタレントスカウトキャラバングランプリ受賞。

―― 吉柳さんの撮影初日は“おうちデート”のシーンだったとのことですが、2人の緊張している姿がとても自然でした。素の緊張を引き出すような監督の狙いがあったのかなと思いました。

河合勇人監督
撮影の順番を選んだわけではなくて、撮影場所など色んな事情があり、あのシーンから入りました。孝司の実家なので孝司のキャラクターを掴んでもらうためにもあそこから入って良かったんじゃないかなと思います。それは2人にとって良かったんじゃないですかね。

―― 緊張感といい、初々しさといい、とても伝わってきました。吉柳さんの魅力を監督の言葉で表現していただけますか。

映画『初恋ロスタイム』河合勇人監督

河合勇人監督
覚悟を決めた時の「強さ」みたいな。

―― 女性らしくて、可愛らしいような感じを受け取りましたけど、演者としての吉柳さんはそういうものを持ってらっしゃるんですね。

河合勇人監督
子供っぽいところはいっぱい残っていてそこはすごく魅力的なんだけど、そういう時からやっぱり“本番行くぞ”となった時のスイッチというか、後には下がれないというか、背水の陣を構えた時の彼女の「強さ」みたいなものがやっぱり魅力ですよね。

―― 一方の板垣さんはNHKのファンタジードラマ「精霊の守り人」では大活躍で、将来も期待されていた俳優さんですね。板垣さんの魅力についてはいかがですか?

河合勇人監督
板垣さんは本当にフレッシュ。なかなかベタなピュアな役で、難しいと思うんです。だけど、割と素で、もちろん素ではなく役を演じているんだけど、嫌味なく、スッっとこういうピュアな、ある種真っ直ぐな直球をやれるっていうのが一番の魅力じゃないですかね。変に着飾ることなく、自分の持っている能力でスッと入ってこられる。それがなんかすごく自然な感じで、見ていても気持ち良いですよね。

―― 嫌らしさがないですし、フリをしていないと感じました。

河合勇人監督
そうですね。そこがやっぱり一番の魅力だと思います。

―― 色々な俳優さんが色々な演技をされますけど、これは感性の問題なのでしょうか。

河合勇人監督
というのはやっぱりありますよね。そこは大きいと思います。

―― この作品は“2人だけは動ける”というSF的な設定です。しかし、2人ともそれぞれ抱えている問題があり、その意味では本当に人生の時計の針が止まっていると感じました。時間が止まるという原作の設定につていて監督はどのように受け止めたのでしょうか。

映画『初恋ロスタイム』河合勇人監督

河合勇人監督
このファンタジー要素を映画の中で使うのは一長一短があるので非常に難しいんです。ある種禁じ手でもあるSFを使ってまで伝えたいことがあるのか?ということを作り手としては迫られる。「なぜ、時間を止めてまでやるの?」、「いや、原作がそうだから」って(笑)。
けどやっぱり、綺麗に言えば2人の想いが(時間)を止めたんだ、というある種の運命論に従えばそういうこともあってもいいじゃないかっていう風に思うところもあるんだけど、どこかやっぱりリアルに辛い話にするよりかは、色んなこと言われそうだけどファンタジーの綺麗な世界に包んであげたかったなぁという想いがありました。

―― なるほど、優しさがSFの設定を作ったのかもしれないと。

河合勇人監督
そんなこと有り得ないことは重々承知なんだけれども、フィクションの世界の中でこういう夢見的な世界があってもいいんじゃないかなぁ。若い2人の強い想いがこういう奇跡を生んだんだというストーリー。それが自然に見えれば、そっちの方がもしかしたら綺麗に伝わるんじゃないかなぁと思って、こんな大袈裟なフィクションにしました(笑)

―― 監督の話で逆に感動してきました。
時間が止まっている中で、2人が見つけたのは「諦めないこと」だったのかなと思うんです。何事も諦めなければ自分の意思で物事を掴んでいくことができる。その大切さを伝えてくれているように思いました。「諦めないことの大切さ」についてはいかがでしょうか。

河合勇人監督
諦めないっていうのは凄く大事なことだと思います。今風の言葉で言うと「グリット」ですよね、すごく大事。人間だから能力の差は多かれ少なかれあると思うんですけど、それより諦めないでやり切る意志というか力の方が、能力、個体差を超えると思っています。そっちの方が僕は好きなんです。最初から能力で決まっていると言われたら全て終わっちゃうから。そうじゃなくて、能力に多少の差はあるにせよ、やっぱり一番大事なのは最後まで諦めないでやり切る、その力が結果的に一番人間の能力を決めるって思った方がいいなと思っている。

―― 「自分には能力がなくて」と言って「諦める」のではなくて、そもそも、その順番が逆だということですよね。

河合勇人監督
なかなか難しいですけどね。
やり切れば何らかの形で返ってくるものがあるし、次へ何か繋がる。それは、やっぱり若い頃はなかなか判らないし、経験値が少ないのもあるんだけど、一つ一つ積み重ねていく中で、自分の求めているものに一歩近づけるっていうのは年を重ねれば経験値の中で判ってくる部分もあると思うんです。今回はこの若いうちの一歩を描きたかった。これからもっと大変なことが2人には色々と起きていくと思うんですけど、この一歩を歩み出せた2人だったら乗り越えられるんじゃないかという風に思える映画になればいいなと思います。

―― 観客側としては、例えば家族に対して愛情を持って接し切れているのか?突き付けらる思いも抱きました。

河合勇人監督
そうなんです。僕は一つも出来ていない。若い2人にしか出来ない、考えることから行動が出来るかを一人一人問われている。「言うは易く行うは難し」ですよね。それは本当にそう思います。

―― ところで、スタッフも皆さん全員が同じ方向を向いて制作されたと思うのですが、ストップモーションなんかは難しい面もあったのではないでしょうか。

河合勇人監督
動物とか猫とかは止めるのが難しかったです。猫がいたのを覚えていますか?

―― スミマセン、記憶が…。

河合勇人監督
一瞬だけ…。そこで猫は止まっているんです。そのシーンではCGを使ってないし、どうやって止めたのかはちょっと教えられない秘密です(笑)もちろん動物虐待はしていませんし、気合いで…。エンドロールを見ていただくと判ると思います。

―― 色々な工夫があったということですが、監督が一番感動したのはどのシーンだったのでしょうか。

河合勇人監督
最後の海のシーンかな、綺麗で。
色々乗り越えた2人が次のステップに行ける象徴的なシーンがあの海のシーンなので、結構いいなぁと思っているんです。

―― 若い2人のシーン、そして青年医師夫妻(竹内涼真さんと石橋杏奈さん)のシーン。どちらのシーンも凄く良かったです。

河合勇人監督
世代の違う2人のカップルが向き合う問題ですかね。大人のパートは凝縮していてちょっと短いシーンではありますけどね。

―― 時間を超えていくというか、現実と向き合っている2人には時間は止まらないという意味が伝わってくるようで、すごく意味が深いんだなと受け止めました。

河合勇人監督
深読みをしていただいて、すごい深く解釈していただいて嬉しいです(笑)

―― 緑黄色社会さんの主題歌「想い人」もいい曲でした。この作品をまとめてくれているような、まさに気持ちを代弁してくれました。緑黄色社会さんに依頼した経緯を教えてください。

映画『初恋ロスタイム』舞台挨拶

河合勇人監督
主題歌をお願いするにあたって、何曲かデモを推薦していただいて。その中でピッタリでした。デモの段階ではまだ数フレーズでしたが、本編を観ていただき私ともやりとりをさせていただきながら創っていただいて、スゴイいい曲です!

―― ジーンときましたし、エンドロールの写真と一緒に次へ繋がっていくという意味でも思わず応援したくなるような曲でした。

河合勇人監督
本当に一つ一つの歌詞が映画を観終わった後に響いてきますよね。メロディーも良いし、本当に僕は繰り返し聴きたくなる曲です。

―― 若い人たちがお互いを好きになる。そこで大切にするものは一体何か。言葉で表現するとどういうことなのですかね。

河合勇人監督
一言で言えばやっぱ「愛情」なんじゃないですか。月並みですが。
まあ、言うのは簡単だけど、実際に愛を行動で示せと言われたら難しいですよね。
すいませんでした…って(笑)

―― 「愛情とは」を習うこともないですし、誰かが教えてくれるものでもないですよね。

河合勇人監督
一人一人が出来ることは限られていると思うのですが、なんかそこは難しいですよね。でも、相手に対して共感する、共感してあげるとかというのはいいなぁと思うんです。一緒に泣いてあげるとか、その人が悩んでいることに対して。なんかそういうのが好きだし、ジーンとくるんです。

―― 別の取材の際も、側にいてあげること共感してあげること、それが最大の愛情じゃないかという話を頂いたことがありました。

河合勇人監督
そういう意味で言えば映画『二十四の瞳』で大石先生役の高峰秀子さんが修学旅行に行けない子供に対して「先生は何もできないけど、一緒に泣いてあげる」と言って泣いてあげる。あれは凄く感動するんです。

―― 本作では甲本雅裕さんが演じたお父さんに近いものを感じます。

河合勇人監督
お父さんは裏で葛藤したと思うのですが、最後の行動でそれを全て表現しないといけない難しい役でした。

―― 子供には言い聞かせても判ってもらえないはずだし、目を合わせずにずっと抑えていて。お父さんは決して逃げているわけじゃないんですよね。

河合勇人監督
逃げているわけではないし、でも父親だからやっぱり息子の決断に対して「やっていい」とは言えないですよね。

―― 最後に、監督から映画ファンにメッセージをお願いします。

河合勇人監督
若い2人のSFラブストーリーなのですが、本当に色んな余白があって、観ていただいた人は考えることが沢山持ち帰れるような作品になっています。若い人はもちろん、色んな年齢層の人に深く届く作品になっていると思います。是非、観ていただきたいなと思います。

映画『初恋ロスタイム』河合勇人監督

■予告動画

■キャスト
板垣瑞生
吉柳咲良
石橋杏奈
甲本雅裕
竹内涼真

■スタッフ
監督:河合勇人
脚本:桑村さや香
原作:仁科裕貴「初恋ロスタイム」(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)
配給:KADOKAWA

■公開情報
2019年9月20日(金)全国ロードショー

■公式サイト
https://hatsukoi.jp/

■コピーライト
© 2019「初恋ロスタイム」製作委員会




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