―― ところで、監督は数ヵ月間キャストと一緒に実際にロケ地で19世紀の暮らしをしたと伺いました。そこまで拘ったのは何故ですか?また、そこまで拘って撮ったことによって、この映画にはどんな効果があったのでしょうか?そして、この映画が1:1.5というユニークな画角サイズだと思うのですが、それも監督の意図・拘りなのでしょうか?

映画『第三夫人と髪飾り』

アッシュ・メイフェア監督
アスペクト比は、この映画が水彩画に非常に影響を受けていて、どのフレームも水彩画のように見せたかったっていうのもあって、その水彩画っぽい感じを出すために色々試した結果、この画面比がいいなと思いました。
そしてリハーサルを実際のロケーションで行ったのは、それぞれの役者さんの経験値が全然違ったからです。ベテランの人もいればメイ役は全く初めてだし、ソン役の方も前に1本撮っただけでした。なので、キャストの人たちにいろんな経験をさせる意図もあったし、21世紀の暮らしから19世紀の暮らしに戻って欲しかったということもあります。実際には4週間になりますが、当時のコスチュームを着てもらい、私は召使の衣装を着て、ああいう家の習慣にのっとって、当時の食べ物を食べて、その中で即興してもらったんです。「あなた達が家族です、どういう風にやりますか?」って。即興をいろいろとやってもらって、そして、その当時の生活のペースとか、テンポを体で感じて理解してもらうようにしました。
非常に面白かったのは、ケータイも電化製品も禁止、日の出とともに起きて日の入りとともに寝るという生活をしていると、ボディランゲージが変わってくるんです。それからやり取りの質感みたいな、テクスチャみたいなものも変わってきます。
子供たちが物凄く変わったのが、ケータイがないと一緒によく遊ぶようになったことです。一緒に歌を歌ったり、ゲームを考えたり。実際、そこで歌っていた歌や一緒に作り上げたゲームをそのまま映画でも取り入れたんです。私が脚本に書いていたわけではなく、そうやって実際にリハーサルをして、そこに住んでもらったことで、脚本になかったいい場面が出来上がっていきました。

映画『第三夫人と髪飾り』

―― 監督から見たベトナム映画の強みとは何でしょうか?

映画『第三夫人と髪飾り』 アッシュ・メイフェア監督

アッシュ・メイフェア監督
今ベトナムでは、私が育ってきた頃より非常に映画館が増えて、映画を創ることに興味を持つ人も増えています。商業映画が沢山作られるようになり、とてもエキサイティングな時代だと思います。しかしながら、ほとんどが海外映画のリメイクだったり、クオリティがあまり良くないんです。あえて言うと50年前のタイのような感じです。つまり、ドンドン量産されている感覚です。
ですが、成長の余地はあると思っています。若いアートハウス系の映画監督たちは非常に大変なんです。なかなか政府もお金を出してくれないし、一般企業もお金を出してくれない。つまり、援助がない状態なんです。カンボジアやミャンマーと同じで、自分が思っているクリエイティブなアート的な映画を創るのがとても大変なんです。でも、そういう彼らに私もインスピレーションを受けていますし、願わくばこの映画が、若い人たちにインスピレーションを与えるきっかけになればいいなと思っています。

―― 最後に、第一夫人から第三夫人までそれぞれの女優さんについて監督からご紹介いただけますか?

映画『第三夫人と髪飾り』

アッシュ・メイフェア監督
皆さんそれぞれ経験値が全然違っていて、第一夫人を演じたトラン・ヌー・イエン・ケーさんは非常に経験豊富なベテランです。少し(のニュアンス)で全部を理解してしまうような方です。どのテイクも美しく演技してくれました。
第二夫人のマイ・トゥー・フオンさんは、あまり演技経験がなく、どちらかと言うと歌手の方なので、音楽性やシーンの動きが分かる人です。だから彼女に演出をする時は、ダンスを教えるみたいな感じでした。
第三夫人メイ役のグエン・フオン・チャー・ミーさんは、全く演技経験がなかったので、十分な時間とスペースを与えて、順撮りにして、彼女が感情的に役になっていける余地を作りました。非常にラッキーなことに、プロデューサーもチームもそういうことをする余裕を与えてくれました。
非常に即興的な自発的な部分と細かく指導した部分と両方の組み合わせでこの映画が演出できたわけですが、そういう経験ができてとてもラッキーだったと思います。

映画『第三夫人と髪飾り』 アッシュ・メイフェア監督

2019年10月11日(金)より
Bunkamuraル・シネマほか
全国順次ロードショー

■キャスト
トラン・ヌー・イエン・ケー
グエン・フオン・チャー・ミー
マイ・トゥー・フオン(Maya)
グエン・ニュー・クイン
レ・ヴー・ロン

■スタッフ
監督:アッシュ・メイフェア
撮影:チャナーナン・チョートルンロート
美術監修:トラン・アン・ユン

■公式サイト
http://crest-inter.co.jp/daisanfujin/

■コピーライト
© copyright Mayfair Pictures.

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