映画『エセルとアーネスト ふたりの物語』

イギリスの国民的絵本「スノーマン」で知られるレイモンド・ブリッグズ原作!
映画『エセルとアーネスト ふたりの物語』の舞台裏
配給チャイルド・フィルム
工藤雅子氏【インタビュー】

イギリスの国民的絵本「スノーマン」で知られるレイモンド・ブリッグズが自身の両親の半生を描いた原作をアニメーション映画化したエセルとアーネスト ふたりの物語が岩波ホールで上映中です。当時の暮らしを丁寧に再現し、手書きの優しいタッチで温かく表現している傑作アニメーションの制作、そして日本公開の舞台裏をチャイルド・フィルム代表取締役の工藤雅子氏に伺いました。

―― とても温かくて素晴らしい作品でした。今回この作品を配給作品に選ばれたポイントや他の作品との違いについて教えてください。

工藤氏:
実は面白い経緯で配給を決めました。映画の存在はマーケットから送られてくるメールで知っていて、絵のタッチでブリッグズの作品なんだなと分かっていました。ただ、彼の両親のお話でファンタジーでもないので、子どもが観る映画ではないのかなと。だから知っているけど積極的に動いてはいませんでした。
ところがある時、当社が以前配給した『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』のプロデューサー、ジェリー・シーレン氏から「僕の友達が作ったんだけど、きっと好きだと思うから観てくれない?」とメールで紹介されたのが、本作でした。
私はレイモンド・ブリッグズの初めての絵本「さむがりやのサンタ」を持っていました。その絵本の写真を撮って、本作のプロデューサーに送ったら「ここにもいた、レイモンド・ブリッグズのファンが!!」とすぐにオンラインで視聴させてもらい、素晴らしい作品だったので岩波ホールさんに紹介したところ、大変気に入ってくださったんです。岩波ホールさんは手書きの2Dアニメーションは初上映になるのですが、上映を決断してくださったことも後押しとなり配給に至りました。

この作品は企画から完成まで9年を要しました。実際の制作自体は1年程度なのですが、9年前に原作権を獲得して、英国映画協会からの助成金も得られたので、絵コンテまではスムーズに進んだそうです。絵コンテが出来ると、簡単な動画を見せながら資金を集めていくのですが、そこからは中々お金が集まらなかったそうです。
カートゥーン・サルーンのもう一人のプロデューサーであるポール・ヤング氏が「ルクセンブルクからお金を集めたらどうか」と提案・紹介して、イギリスとルクセンブルクの共同制作作品としてようやく映画を作ることが出来たそうです。

―― ごくありきたりな日常を描き、特別な何かが起こるわけではなく、人生の終わりまでを描いています。原作を忠実に再現すること、現実の力をとても感じました。その辺りについてどう感じますか?

映画『エセルとアーネスト ふたりの物語』

工藤氏:
この作品に参加されたアニメーターのポール・ウィリアムズさんが日本に住まわれているのですが、非常に興味深いお話を伺いました。実は、ご両親が亡くなった翌年に奥様のジーンさんも白血病で亡くなってしまいます。原作本で、ブリッグズさんはジーンさんの顔をどうしても、描けなかったそうです。原作をよくみると正面からジーンさんの顔が分かるように描かれているカットが1枚もありません。ちょっと髪で顔が隠れていたり、横顔だったり、後ろ姿だったり。
でもアニメーションにする時は顔がずっと映らないまま作ることは出来なくて、苦労したと伺いました。原作にただ忠実なだけでなく、アニメーションにするために、新たに書き加えたものがあるのです。

―― ご両親が亡くなり、少し病気は抱えているもののジーンさんとはずっと一緒に人生を歩まれたのかなと思いました。

工藤氏:
そうではなかったのです。
この映画の中でブリッグズさんが購入する家がありますよね。エセルが「こんな陰気臭い」とこぼすシーンがありますが、あの家は今もお持ちです。奥様が亡くなられてからもずっと。
ブリッグズさんは身近な人の死を看取ってきたので、人の死の描写にどこかで厳しさがあるのですが、厳しさの向こう側にある人間本来が持つ優しさを持っている人なのかなと思います。
作り手たちはブリッグズさんのことが凄く大好きで、尊敬しているので、彼の期待に応える作品を作らなくてはならないと相当なプレッシャーがあったそうです。残念ながらロジャー・メインウッド監督も昨年65歳で亡くなられてしまったんです。
ブリッグズさんは監督のことを「実際の年齢よりもずっと若く見えたね。すごくいい奴だった」と仰っていました。プロデューサーのカミーラさんに対してもまるで娘さんのように接していました。彼女もブリッグズさんを尊敬していて、すごくアットホームな制作チームだったのかなと伝わってきました。

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