『草間彌生∞INFINITY』が伝えるユニバーサルメッセージ!ヘザー・レンズ監督&出野圭太氏【インタビュー】

『草間彌生∞INFINITY』 ヘザー・レンズ監督&出野圭太氏

『草間彌生∞INFINITY』が伝えるユニバーサルメッセージ!
ヘザー・レンズ監督&出野圭太氏
【インタビュー】

2016年にTIMES誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出された草間彌生氏の知られざる過去が映し出されたドキュメンタリー映画『草間彌生∞INFINITY』が本日11月22日(金)より、渋谷PARCO8F WHITE CINE QUINTO 他全国ロードショーを迎えました。

幼少期の芸術への目覚めから、アメリカへ移住するまでの日々、ニューヨークで苦悩しながら行った創作活動と当時それらの作品が国内外でどのように評価されたのか。記録映像や関係者へのインタビュー、そして草間彌生本人への取材を通じて、日本人にもほとんど知られていない草間彌生氏の素顔が今明らかになります。

今回は、監督兼脚本のへザー・レンズ監督と脚本の出野圭太さんにお話を伺いました。

―――― 監督が最初に出会った草間彌生の作品を教えて下さい。

『草間彌生∞INFINITY』 ヘザー・レンズ監督&出野圭太氏

ヘザー・レンズ監督

へザー・レンズ監督

初めて見た作品は、“ソフトスカルプチャー”という写真の作品でした。当時、私は大学で、美術史とファインアートを専攻していました。時代は1990年代の頭で、現在ほど草間彌生を知っている人はいない時期でした。

当時の美術史教科書は何百ページもあるとても分厚いものでしたが、女性アーティストは5人ほどしかフィーチャーされていませんでした。草間さんの名前はそこにはなく、別で受講していた彫刻の授業で初めて出会いました。

―――― 初めて“ソフトスカルプチャー”を見た時、どんな感情を抱きましたか?

画像,草間彌生∞INFINITY

Peter Moore, Photo of Yayoi Kusama with “My Flower Bed” in her NYC studio, c. 1965 © 2018 Barbara Moore / Licensed by VAGA at Artists Rights Society (ARS), NY, Courtesy Paula Cooper Gallery, New York.

へザー・レンズ監督

記憶しているのは、「とにかく気に入った、好きだなと思った」ということです。また、とても魅かれる部分がありました。

今から考えると想像しにくいのですが、当時のアメリカでは草間さんに関係するカタログは一冊しか出回っていませんでした。彼女のことを知り、アメリカの美術界への彼女の貢献というのが、正しく認識・理解されていないと感じました。

その後、USC(南カリフォルニア大学)の大学院で映画を学び、映画を創るなら彼女を題材にしたいと思ったのです。当初の目的は、彼女のアメリカ美術界への貢献をきちんと皆さんに知って欲しいというところから始まりました。

―――― 私も「ソフトスカルプチャー」を見ましたが、全然古さを感じなくて面白い作品だと感じました。

へザー・レンズ監督

全くその通りだと思います。やはり、時代に先んじているアーティストというのは、作品自体が、時間の流れをものともしないのです。

―――― この映画を創るにあたって、1番表現が難しいと監督が感じた部分を教えていただけないでしょうか。

へザー・レンズ監督

インディペンデントな映画ですから、世界中を飛行機で飛び回るようなことは中々難しく、制約がある中で、パリやロンドンなどにいる彼女を追いかけるのが大変でした。

それと「物語をどう終わらせるか?」をすごく悩みました。
というのも、1番最近の作品で終わらせたくはありませんでした。なぜかというと、そこでその話が終わってしまうとこの映画を見ていただく頃には、彼女は先に進んでしまっているわけです。草間さんといえば多作ですし、常に新しい作品を創っている存在だから古くなってしまうのです。

『草間彌生∞INFINITY』 ヘザー・レンズ監督&出野圭太氏

そこで、私としては「ホームタウン・エンディング」で話を終わらせることを考えました。そうするとことで、普遍的な終わりになると考えたのです。

つまり、ストーリーとしては、時代に先んじている彼女が当時の日本のアート界のものづくりとシンクロ出来ず、問題を日本に置いてニューヨークに向かうわけです。もちろんニューヨークでも様々な問題に直面して、そこでも戦っています。そんな彼女が日本に戻ってからは、時代も変わっているので、日本のアート界もそして彼女の故郷である松本でも受け入れられた。

他にもそういう方は沢山いて、あまりにも自分が進歩すぎて、その時は受け入れられないけれども時間が経過し、受け入れられるようになる。そういった意味では、普遍的なエンディングになったと思います。

―――― とても素晴らしいエンディングでした。

へザー・レンズ監督

ありがとうございます!

―――― 一方で、今回の撮影を通して、草間さんの意外な一面を発見したとすれば、それはなんですか?

へザー・レンズ監督

ないんじゃないかな(笑)

何年にも渡って膨大なリサーチをしていたからですかね。手に入れられる資料はすべて読んで準備をしていたし、他のキュレーターのインタビューも終えていました。

―――― 確かに膨大な情報量で凝縮されているので、とても理解ができました。
「自分の芸術を完成させよう」という言葉が出て来ましたが、彼女の制作への執念や原動力について監督はどう思われますか?

『草間彌生∞INFINITY』 ヘザー・レンズ監督&出野圭太氏

へザー・レンズ監督

彼女の、アートに対する献身的な向き合い方とかアーティストになる夢を叶えようという思いには感服します。

しかし、彼女のモチベーションは何なのか?については本人にしか分からない事なので、私たちには仮定することしかできません。

撮影では、彼女に自分の言葉で自分の物語を語って欲しいと思っていましたので、私たちからこういうことを言って欲しいというお願いはもちろんしていません。

彼女の気持ちを理解できるような気がするのは、もちろん、それぞれ違いがあるので、自分を彼女と比べることは出来ませんが、私たちはこの映画を創るために、2004年から14年間の歳月をかけています。それは、彼女がアメリカで革新的なアートを創っていた15年の滞在期間と近いわけです。この映画を創るのも、制作費を集めるのも苦労しましたし、ご存知の通りインディーズですから、制作も困難でした。

特に制作を始めた当初は、この作品自体の企画が時代に先んじていて、アメリカの出資者には理解されず、出資してもらえませんでした。そのため、彼女の気持ちは凄く分かるし、彼女の粘り強さも理解出来る気がします。

―――― 芸術に対する執念がある一方で、売り込んで成功させたい!というビジネスウーマンの側面も見受けられました。“芸術”と“商売”が草間さんの中でどういう風に捉えられていたと思いますか?

画像,草間彌生∞INFINITY

Portrait of Yayoi Kusama in her studio. Image © Yayoi Kusama. Courtesy of David Zwirner, New York; Ota Fine Arts, Tokyo/Singapore/Shanghai; Victoria Miro, London; YAYOI KUSAMA Inc.

へザー・レンズ監督

私も同感です。彼女には賢明なビジネスウーマンの側面がありました。

ご家庭が種(たね)の生産をしていたので、もしかしたらそこから商売の勘みたいなものが引き継いでいたのかなと推測します。いずれにしても、ビジネス的なセンスを持っていたことは間違いないです。

今ではデジカメであれば誰にでも簡単に使えるため、セルフプロモーションが誰にでも出来るわけです。しかし、まだ1950年代後半ですから、アートはもちろんのこと、セルフプロモーションに関しても彼女は時代の先を行っていたんじゃないかと思います。写真も沢山撮っていて、自分の作品作りの写真であったり、ギャラリーやアトリエなどで試作しているところだったり、作品と一緒に自分が写りこんでいる写真も撮っていました。

ビジネスウーマンとしての野心的なところは持っていたし、もちろん見てハッとするようなビジュアルも持っていました。幸いなことに、様々な記録映像を通じて、彼女が先んじていた事を見つけることが出来たので、この映画でお伝えすることが出来ました。

―――― 劇中で「彼女は寂しかったんじゃないか?」という証言がありました。色々な仲間はいたと思うのですが、彼女は孤独だったのでしょうか?

へザー・レンズ監督

自分の考えをあたかも彼女が思っているかのように言いたくはないのですが、色々と集めた情報から察するには、孤独を抱えていたと思います。

今の時代だって、若い方、特に女性が言葉も通じない、誰も知らない状況で、自分の夢を追うために1人で海外に行くとなれば、勇敢な方だと思われると思います。
それがあの時代ですし、実際にすごく勇敢であったし、やっぱり自分のものづくりやアートに対して献身的な姿勢を持っていたのだと思います。

社交する仲間は周りにいたけれど、究極的にアートに関しては、自分の中で1番だったわけで、それほど自分の芸と向き合うことはある意味孤独なことだと思います。

―――― 映像の中で、極貧の頃を思い出して草間さんが涙をポロリと流していました。その涙が色々なことを物語っていたように感じます。

『草間彌生∞INFINITY』 ヘザー・レンズ監督&出野圭太氏

へザー・レンズ監督

それは出野圭太さんに感謝しているところです。

というのは、この作品は日本と米国での取材が必要なので、バイリンガルな方が必要なのですが、才能があって日本語と英語が出来る方はハリウッドにそんなにいないんです。また、カツカツの制作費で創っているため、時には専門の方がいない状態で、日本語のインタビューを英語に起こし、英語の状態で編集をしようとしていました。そうすると、日本語で見たときに文法がグチャグチャになっていたりするのです。

その中で、出野さんが参加してくれて、日本語のインタビューをチェックして間違いを指摘してくれました。例えば「このシーンは涙を抑えているよ」という風に彼が言ってくれたことを覚えています。「えっ、そんなことあった?」と見ているはずなのに思ったのは、インタビューを起こした紙には英語の言葉が書かれているので、そこからは読み取れないものが沢山あるのです。

その感情の機微であったり、ニュアンスであったり、そして日本人だからこそわかる文脈を出野さんが私に伝えてくれました。そのような隠れた宝物を彼が沢山見つけてくれたのです。

―――― その瞬間を見られた時、出野さん自身も気持ちを動かされたんじゃないですか?

出野圭太さん

そうですね。やっぱり外国人で海外に生活する孤独というのは、ユニバーサルな感情だと思うんです。「草間さんは寂しかったんじゃないか?」という言葉は、外から見ると草間さんはちょっと寂しかったのかな?と思うかもしれないんですけど、アーティストとしてそれを選んだ草間さんがいて、でもその感情は、海外に行ったときの孤独とアーティストとして孤独を選んだ時の感情の涙だったような気がしました。

それを映画では最初の方に草間さんの感情を表現しているんですけど、そこで草間さんの本当の感情をセットアップして、最後に、飯沼さんの「本当の草間さんは寂しかったんじゃないか?」という言葉に繋げているんです。それは絶対にユニバーサルメッセージだなということで、(作品の中に)入れないといけないと思いました。

―――― 芸術家としては孤独を覚悟として受け入れなければいけないものなんですね。

出野圭太さん

そうですね。寂しかっただろうけど、彼女はそれを選んで、一人で作品を創るわけですから、それはもう避けられないんです。

―――― ある映画監督も同じことを仰っていました。制作時は売れるかどうか分からないので、とても孤独な闘いだったと。

『草間彌生∞INFINITY』 ヘザー・レンズ監督&出野圭太氏

出野圭太さん
加えて、レンズ監督にも白人社会のハリウッド映画業界において、女性監督としての闘いがあったのだと思います。これが草間さんの話と凄くリンクしていて、制作中に何回も問題にブチ当たる度に「あれ?ちょっと待って、この話知ってる!あっ、これ草間さんと一緒やん!」という場面が結構ありました。

―――― なるほど。だからこそ、映画自体が生き生きしているのですね!

出野圭太さん
その通りだと思います!

へザー・レンズ監督

才能があるだけではなくて、出野さんは倫理観を持っています。
ハリウッドは、そういった倫理観を持っていない方も沢山いる場所なので、出野さんとは次の作品や、その先もずっと一緒にお仕事をお願いしたいですし、もしスケジュールが空いていなかったらどうしようと思っています(笑)
これから先ハリウッドで活躍する方は、出野さんと同じような礼儀正しさを身に着けるべく、是非、出野さんのご両親に育てて欲しいです(笑)

―――― 最後に「草間さんは監督から見てこういう人物だ」ということも含めて映画ファンにメッセージをお願いします。

へザー・レンズ監督

今、草間さんの事をご存知の若い世代の方、例えばSNSの写真とかを通してご存知の方、例えば「Infinity Mirrored Room」などのエキシビションを通してご存知の方が多くて、「人間・草間彌生」をあまりご存知でないと思うんです。

彼女が夢を叶えるためにどんな苦労を抱えて、どんな事を乗り越えてきたのか?

ですから、この映画を見て、彼女の物語をより知っていただきたいという気持ちがあります。きっと驚くと思うし、感動していただけると思います。

同時に、彼女の作品はもちろん素晴らしいですが、私にとってそれだけではない、人間として自分に訴えかけるものがあります。順風満帆な人生であったならば、そこまで関心を持たなかったかもしれないけど、色んな事があったからこその彼女なのです。

私にとって先駆者であり、アーティストとしてのパイオニアである彼女をこの映画を通じて観た方にもインスピレーションと勇気を与えてくださると思うので、是非観ていただきたいです。

そしてクリエイティブであろうと科学の道であろうと何であろうと夢を叶えるためには色々なことを乗り越えなくてはいけない。決してギブアップしない気持ちを受け取ってもらえたらなと思います。

 

2019年11月22日(金)より、渋谷PARCO8F WHITE CINE QUINTO 他全国ロードショー

■予告映像

■作品情報
公式サイト:http://kusamayayoi-movie.jp/
監督:ヘザー・レンズ
脚本:へザー・レンズ、出野圭太
出演:草間彌生ほか
原題『KUSAMA: INFINITY』/2018年/アメリカ/76分/カラー/音声:5.1ch
© 2018 TOKYO LEE PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:kusamayayoi-movie.jp
配給:パルコ
宣伝:ライトフィルム 宣伝協力:ブラウニー、プレイタイム

Theatrical one-sheet for KUSAMA – INFINITY, a Magnolia Pictures release. Photo courtesy of Magnolia Pictures.

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