映画『テイクオーバーゾーン』内田慈さん&山嵜晋平監督【インタビュー】

映画『テイクオーバーゾーン』
内田慈さん&山嵜晋平監督
【インタビュー】
第32回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門に出品され、主演の吉名莉瑠さんが輝きを放った若手俳優に贈られる東京ジェムストーン賞を受賞したことでも話題となった映画『テイクオーバーゾーン』。
今回は、主人公・沙里(吉名莉瑠さん)の母親で今は離婚により離れて暮らす芙美役を演じた内田慈さんと、山嵜晋平監督にお話を伺いました。監督の助監督時代から現場で切磋琢磨されてきたお二人の息の合った掛け合いもお楽しみください。

内田慈さん(左)、山嵜晋平監督(右)
―――― ジュブナイル賞の脚本受賞から今回の映画化に至るまでの経緯について教えていただけますか?
山嵜監督
(プロデューサーの)山本さんのことはBSジャパンのドラマで知っていて、企画自体は山本さんが立ち上げてやっているので、それでどうしようか?って。
―――― 脚本を読まれた時の監督の印象はいかがでしたか?
山嵜監督
面白かったですけど難しかったです。ある意味フィクションって楽なんですけど、岩島朋未さんの脚本は、結構、経験則で、ご自身のことを一生懸命書いていらっしゃるので、触りにくいというか、凄い難しいなという気がしました。
一般的なフィクションだとやり易いんですけど、“バーッ”とか“ガーッ”とか“ウォーッ”とか(実体験とは)遠い話だけだったら、自分との距離感とか、観ている人の距離感とか、ただの憧れとか、感情移入の違うパターンになるわけですけど、近い所で傷を負った人とかに対しては感情移入(そのもの)が違うから怖いなと。
―――― 下手をしたら傷つけてしまうかもしれないということですね。
山嵜監督
そうですね、本当にそういう境遇におかれた人たちが何かしら感情を抱いているわけで、それに対して何か凄い近しいところでアプローチしていく作品なんで、それは何か変な難しさがあるなと思いました。
―――― 映像化の段階で重きを置いたポイントは何だったのでしょうか?
山嵜監督
内田さんの笑顔です(笑)
漠然とはしているんですが、大人という生き物と子供という生き物を漠然と分けた時に、子供は理がなくて意味がなくても、なんかこう、、、僕は成立する気がしていて、で、何となくだけど、ある程度純粋と言うと何か間違っているかもしれないけど、ある程度純粋な生き物で、大人って、結局何だかんだって言ってもゴチャゴチャ色んな嘘ついて生きているわけで、当然。
嘘がいいとか悪いとかじゃなくて、(大人には)嘘とか色んな事情とかがあって、だから内田さん(実母役)や川瀬さん(父親役)と話していた時に、身勝手な人であって欲しいっていう話をしていた気がします。確か、クランクインする前に内田さんと喫茶店で会って「どうしましょうか?」って話をした時に、そんな話をしたと思います。
その時に何かの映画の話をしていた気がして、、、そうそう『ラブレス』!(2018年/アンドレイ・ズビャギンツェフ監督/ロシア・フランス・ドイツ・ベルギー合作、第70回カンヌ国際映画祭審査員賞ほか数々の賞を受賞)それが、両親が離婚して子供がお母さんのところに引き取られるとかどうとかの最中に、両親は二人とも子供を引き取りたくないという話なんです。二人ともそれぞれ愛人がいて人生があるから再婚したいんだけど、子供がトイレで二人の話を聞いてしまうんです。
自分なんて存在は必要とされていないって、家出した後ずっと出て来ないんですよ。大人たちが子供を捜したり、徐々に関心をもっていったりするんですが、最後まで出て来ないんです。子供はどうなったんだろうって話で、大人たちが段々オロオロするんですけど、その大人たちが凄い面白くて、身勝手と言えば身勝手なんですよ、客観的に見れば。けれど、大人ってこんなもんだなと思いながら、今回の作品の大人たちも意外と、一見したら普通なんですけど、よく考えたら変なんですよ。だから、ちょっと変であって欲しいみたいなお願いをしました。
―――― 心に残ったシーンや想定外の演技など、監督が思ってもないような展開はありましたか?
山嵜監督
ほんとに内田さんが勝手にやってくれるって言ったらあれだけど(笑)、そうですね、(内田さんが)いっぱい走ったんですけど、あまり使わなかった(笑)
内田慈さん
それはそうでしたね(笑)
―――― 内田さんが走ってる、結構速い!と思いました。
山嵜監督
あるシーンを撮っている時に内田さんがメッチャ走って来るんですよ。面白いからそのまま(カメラを)回して、そうしたらずっと走ってて、メッチャ速いやん!って言ってたら、陸上部だったんですよね?
内田慈さん
面白いからって、他人事みたいに(笑)そうです、陸上やってました。でもそれほぼ使われてないんですよ!
川瀬さんと川沿いを(子供を)捜す、あれは軽い走りじゃないですか。もっとガチ走りのやつがあったんです。遅い時間に、駅前の人通りの多い大通りから始まって、そのうち監督が追加しようと言って下り坂でも撮ったんですよ、全力疾走で。ほぼ使ってないですけど。
山嵜監督
でも、楽しかったですもん(笑)。
内田慈さん
うん、街中を車と並走して走るって中々ない経験だし、楽しかった。
山嵜監督
メッチャほぼジョイナーみたいでしたもん(笑)
内田慈さん
盛り過ぎ(笑)
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