映画『東京不穏詩』主演・飯島珠奈さん【インタビュー】

映画『東京不穏詩』主演・飯島珠奈さん インタビュー

映画『東京不穏詩』
主演・飯島珠奈さん
【インタビュー】

「人は夢や愛があるうちはそれだけで生きていける気になるが、その両方に裏切られた時、どうなるのか?」。アンシュル・チョウハン監督の真摯な問いかけを極限まで突き詰めた衝撃作『東京不穏詩』が1月18日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開となります。

映画『東京不穏詩』主演・飯島珠奈さん

大阪アジアン映画祭 2018 など3つの映画祭で“最優秀女優賞”を受賞した飯島珠奈さん

今回は、夢と愛に支えられ、しかしそれらに心を蝕まれる主人公ジュンを圧倒的な演技で体現し、見事大阪アジアン映画祭 2018 など3つの映画祭で“最優秀女優賞”を受賞した飯島珠奈さんに監督からの演出や演技に対する考え、本作の見所などたっぷりとお話を伺いました。とても丁寧に明るく対応してくださった飯島さん。作中のジュンとのギャップもお楽しみください!

―――― アンシュル・チョウハン監督は日本在住とのことですが、監督との出会いについてお聞かせください。

映画『東京不穏詩』主演・飯島珠奈さん

飯島珠奈さん
本作品の少し前に監督の短編映画に出演したのですが、その際に直接メールをいただきました。『東京不穏詩』に出演している望月オーソンさんと川口高志さんは元々監督と一緒に作品をやられていて以前から知っている仲だったんですけど、私はその短編が初めてでした。

―――― 短編にお声がかかったのは、何かしらの繋がりやご紹介があったのでしょうか。

飯島珠奈さん
そうではないんです。
監督曰く、短編の前に違う作品に私が出演していて、その作品の監督が海外の方でして、編集をアンシュル監督に頼んだらしいんです。そこで多分初めて私を見て、それでメールをくださったようです。

―――― 監督もこの作品を創作するに当たっては色々な考えがあったと思いますが、圧倒的な演技力で3つの映画祭で最優秀女優賞を受賞されていて、これは飯島さんと監督の出会いこそ恋愛じゃないですけど、運命なのかなと思いました。

飯島珠奈さん
正直私にとって、とても幸運なことだったと思います。
最初のメールがなければこういうことも起きなかったわけですし、何かしら興味を持ってくださったというのは、役者ならば皆さん幸せに感じるのではないでしょうか。

―――― 演技力の原点はロンドン大学で学ばれた舞台演劇、特に身体表現を学ばれたそうですが、どのようなことを学ばれたのでしょうか。

映画『東京不穏詩』主演・飯島珠奈さん

飯島珠奈さん
イギリスは3年制の大学が多いのでロンドンのキングストン大学で3年間、その後大学院で1年間学びました。
元々はシェイクスピアとか古典的なものをやったんですけど、当時の私は英語がまだまだ下手でして、自分では喋れると思っていたんですけど、結局向こうでは全然通じない。そうすると先生からも言われて、さらに萎縮してなかなかコミュニケーションが取れなくなっていったんです。その時に、自然に身体表現という必ずしも言葉だけが表現の手段ではない、自分の身体を使って表現することに興味が湧いて。どんどん好きになり、たぶん合っていたので、身体表現の方に段々興味が移っていったんです。

―――― 圧倒的な表現を追求すると逆にリアルな表現とかけ離れていくと思うんです。それなのにこの映画は表現が豊かで且つリアル感を損なっていません。リアルさと身体表現の繋ぎ目というか、リアルさを追求していくうえでのポイントをお聞かせください。

画像,映画『東京不穏詩』

飯島珠奈さん
質問の答えとはズレてしまうかもしれませんが、私の中ではおそらく感情を出すことは難しくないと思うんです。出せるだけ出すというのは出来るんです。ただ、それをうまく抑える、またはコントロールするのは中々難しい部分がありまして。

監督からも「抑えること」は撮影の前から言われていました。本当は“ワァー”って溢れる感情があるのに、それを「抑えて、抑えて」と言われるままに抑えたので、その結果滲み出た。リアルな感情はみんな滲み出るものだと思うので、ここがポイントかどうかは分かりませんが、凝縮させることが必要なのかなと思います。それを引き出してくれたのは監督の演出力です。

―――― 監督から「抑えて」と言われると、どんな気持ちで入っていくことになるんでしょうか?リラックスは出来ましたか?

映画『東京不穏詩』主演・飯島珠奈さん

飯島珠奈さん
リラックスというよりは、そうですね、あまり言葉で説明するのが上手くないのですが、重くなると言いますか。抑えるとやっぱり凝縮するものなので、お腹が重くなるというか、そんな感じですかね。発散させると“パァーン”ですけど、抑えているのでもっと“ギュッギュッ”っていう気持ちになります。

―――― それだけ抑えていくと、なかなか体から「ジュン(ヒロイン)」が抜けていかないんじゃないですか。

飯島珠奈さん
役作りはほとんど監督と会話して作り上げた部分が強くて、その時間がとても濃かったので、やはり抜けるのには時間がかかりました。抜けるというか、今でも多分一部は残っている感じです。

―――― 経験であり体験になり、自身の栄養になっていくということでしょうか?

飯島珠奈さん
そうですね。必ずしもどうか分らないんですけど、多少はやっぱり影響されるので。今も引きずっているとか全くないんですけども、でもちょっと残ってますね、ジュンが。

―――― 今、対面している飯島さんとジュンは違い過ぎて、全く別人と話しているみたい。

飯島珠奈さん
恐らく、誰しも内面には色んな面があると思いす。私のイメージではありますが、表に出ている部分の裏で、無数の面が漂っていて、時々浮かんできたり、一生浮かんでこなかったりするのではないでしょうか。そういう部分が皆それぞれあると思うんです。多分ジュンも私の中のどこかにはあって、それを引っ張り出して出て来たのかなって。

―――― ところで、監督とのコミュニケーションで役者さんが一番大事にしなければいけないポイントはどういうところなんでしょうか?

飯島珠奈さん
信頼関係ですね。

脚本になくて撮影中に追加されたシーンもありますし、例えば「ちょっとそこら辺にいて」と言われて撮ったりとか。そういうことを考えると、もちろん限度はありますけど、大抵のことは信頼していれば結局何でもできてしまうし、本当に飛び込めてしまうんです。

あとこの作品でジュンを演じる場合は、監督の人柄を理解するのが私には凄い必要だったので、コミュニケーションを通して監督はどういう人で、何でこの作品を書いて、何でこういう人がキャラクターとして登場するのか、世界をどう見てるのかとかをお互いによく話しました。

コミュニケーションが一番の演出だったのかなと思います。

―――― 海外で学ばれた経験も踏まえて、女優さんとして日本人の演技に足りないものや必要なものってどんなことだと思われますか?

飯島珠奈さん
これはよく考えるんですけど、難しい質問でして。
映画を観た時、演技を観た時に、それは役者だけで出来るものではないと思っています。なので、役者に足りないもの、に答えるのは難しいですね。

―――― 演技としてリアルさを追求していくことと、作品に滲み出てくるリアルという観点ではどのようにお考えですか?

画像,映画『東京不穏詩』

飯島珠奈さん
作品全体に滲み出るリアルさで言いますと、もちろん作品の内容にもよりますが、例えば全てが「綺麗」な映画が多くある気がします。刑事でも全て綺麗なスーツを着て汚れもまったくないとか。女優さんは皆とても綺麗にお化粧をしていて、寝て起きたらお化粧してないよね?みたいなことが気になるときもあります。そういう意味では、もっと人間味を持たせるなら、もっと日常感を出したら良いのではないかと思います。そしてそれが魅力的に見えた時、私にとって、リアルで惹き込まれる映画になるのかなと個人的に思います。

今回の作品はメイクさんがいないんです。傷は全部監督が毎朝私にメイクしているんです。これは監督が言ってたんですけど、メイクするのには30~40分かかるので、その間にちょっと会話をしたりして、彼なりに私の状態を確かめていたらしいです。その他はスッピンだったり、ジュンがボロボロになる前のホステスとして働いてる時のメイクは私が自分でやっていたり。そういうところで、監督は役者たちの演技もそうですけど、作り上げる作品全体を「画」としてこだわっていると思うんです。

―――― 有難うございます。ストーリーに関してですが、やっぱりラストシーンが一番心に残っています。このラストシーンで伝えたいことについてはいかがでしょうか?

映画『東京不穏詩』主演・飯島珠奈さん

その後のストーリーを作ってくださった方もいて(笑)

飯島珠奈さん
皆さんそれぞれ受け止めてもらえたら、と思います。今までも色んな解釈を観客の方から聞いていまして、中には、その後のストーリーを作ってくださった方もいて(笑)。

それぞれの解釈を聞いて、色々なバージョンを聞いているとそれが映画なのかなと思います。恐らく私が何か言ってしまうと「あっ、これを伝えたいんだ」っていう風に「それが正解なんだ」って思われてしまうのも怖いので。

―――― 皆さんそれぞれに感じた正解があると。

飯島珠奈さん
そうですね。それぞれが、悪くても良いことでも。

悲しいとか本当に暗いなと思う人もいれば、これは希望に繋がっていると思う人もいます。受け止め方は色々で、映画はそういうもなのだと思います。それがどんな感情であれ、何かが見た人の心に残ってくれたら良いです。

―――― みんなでバーベキューをしているシーンではユウキと二人のシーンがあります。あの時のジュンはどんな気持ちだったのでしょうか?冷静な気持ちも、辛い気持ちもあったと思うので彼の優しさは嬉しかったんじゃないかなとも思いました。

画像,映画『東京不穏詩』

飯島珠奈さん
あの時は彼女自身がもうどこか違うところに頭がいってしまったというか、混乱でもないですけれども、どうしていいか分からない状態でもありました。ユウキの思いに嬉しさはありますが、それと同時にある種暴力的な衝動も強く持つ人なので、単純に受け取ることもできない、複雑な心境でした。

―――― ユウキを演じた川口さんの演技も素晴らしいですね?

画像,映画『東京不穏詩』

偶然再会した旧友ユウキとの邂逅に居所を見出すジュン

飯島珠奈さん
川口さんは人柄がとても温かい人なので、それが沢山滲み出ていたと思います。撮影中、私は心情的にいっぱいいっぱいでしたので、ある意味ジュンとしても私としても、凄く助けられました。

―――― 話は戻りますが、ヒロインは女優になる夢を持ち恋愛もしている。夢が叶わない瞬間もあるし、いっそのこと諦めてしまいたいけど諦められない。誰にでも経験があるような感情が描かれているようにも感じます。

飯島珠奈さん
私もそれは思います。どこの国でも、日本じゃなくてもいいですし、どこの国の誰にでも性別関係なく起きることだと本当に思います。

―――― 一言では表現出来ないと思いますが、ジュンはどんな女性だと考えますか?

画像,映画『東京不穏詩』

飯島珠奈さん
どんな女性か、、、
元々役作りを考えていた時に、なにかベースというか、必要だと思ったことが“怒り”です。色んなものに対する、社会でも自分の人生でも、周りの人に対しても何かしら“怒り”を持っている。全てに、世界に。

ちょっと大袈裟かもしれないですけど、そういう思いはあったので、ジュンの役柄を演じる時にはいつも“怒り”がベースにありました。
そして突き落とされてもひたすら立ち上がっては立ち向かって行く、人生をどうにかして生きようとするエネルギーのある人です。

―――― ユウキが「ジュンは強いからな」っていう一言がありましたね。

飯島珠奈さん
強いけど脆くて、不器用ですね。でも、多分愛とか熱情とかは人一倍強い人です。
ただ、愛し方とか、愛が分からない人でもあります。熱いものを持っているけど、どこに持って行けば良いのか分からない、とても不器用な人なんだろうなと思います。

―――― タカ役の望月オーソンさんも物腰が柔らかで、言葉遣いにしても包まれているような感じがします。共演されていて印象に残っているシーンはございますか?

画像,映画『東京不穏詩』

東京のクラブで働く三十歳のジュンと恋人のタカ

飯島珠奈さん
役柄と関係性上、そんなに優しい人の役ではないので、だからこそ、シーンが終わった後とかに、凄く私を気遣ってくれるんです。
例えば、直接的ではないけれども、彼のせいでジュンが顔に酷い傷を負ってしまうことも、彼本人は凄くショックだったんでしょうね。撮影後に申し訳ない気持ちがあったらしくて、凄く気遣ってくださいました。
本当に温かい人なので、どういう風にタカの役作りをしたのか私が直接インタビューをしたいくらいです(笑)。

映画『東京不穏詩』主演・飯島珠奈さん

どういう風にタカの役作りをしたのか私が直接インタビューをしたいくらいです(笑)

―――― プライベートなこともちょっと聞かせてください。息抜きや趣味はございますか?

飯島珠奈さん
本当に映画が好きなので、映画はひたすら観に行っています。

美術館へも行ったりしますが、やっぱり映画ですかね。特に映画祭の時は海外の作品を積極的に観たり、最近はアジア映画がとても好きなので、アジア映画をよく観ています。後はワイン買って家で飲んだりとかしますけど。

―――― 赤・白どちらがお好きですか?(笑)

映画『東京不穏詩』主演・飯島珠奈さん

飯島珠奈さん
白です(笑)。

海外旅行も行きたいんですけど、今年は釜山国際映画祭にあわせて釜山に行って来ました。私の出演作品はなかったんですけど、プラットフォーム釜山という映画関係者のシンポジウムに参加したり。海外は息抜きに行けるほど行ってはないですけど、好きです。

―――― 今日も黒で決まっていますが、海外行く時も黒で決めてらっしゃることが多いですか?

飯島珠奈さん
黒が多いですね。釜山も確かに黒を着て行ってました。気持ちが変わるというか、黒を着ると強くなれるのもありますし、なんか熱がこもります。

―――― 最後に本作の見所をお聞かせいただきながら、映画ファンにメッセージをお願いします。

飯島珠奈さん
それぞれのキャラクターがそれぞれ一生懸命やっているんです。それが人によっては他の人のため、または自分のためと理由は違うんですけど、必ずしも正解ではない道を選びながらも自分の人生を生きようともがいてるので、等身大の普遍的な人生を表していると思います。

それぞれがどういう選択をして生きているのかを見て欲しいです。加えて、カメラマンがエストニア出身の方なんですけど、本当に才能のある方でうまく切り取っているんです。そのカメラワークも含めて、それぞれのキャラクターの一瞬一瞬を見て欲しいです。そして、人生を感じ取っていただけたら嬉しいです。

映画『東京不穏詩』主演・飯島珠奈さん

―――― 素晴らしいお話をお聞きすることが出来ました。ありがとうございました!!


2020 年 1 月 18 日より
シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

予告動画

キャスト
飯島珠奈

映画『東京不穏詩』主演・飯島珠奈さん

望月オーソン 川口高志 真柴幸平 山田太一 ナナ・ブランク 古越健人

スタッフ
監督:アンシュル・チョウハン
撮影監督:マックス・ゴロミドフ
プロデューサー:アンシュル・チョウハン、茂木美那
制作マネージャー:ジップ・キング
音響:ロブ・メイズ
脚本:アンシュル・チョウハン、ランド・コルター
音楽:LO-SHI
制作:KOWATANDA FILMS
配給:太秦
公式HP:https://www.kowatanda.com/badpoetrytokyo

©2018 KOWATANDA FILMS. ALL RIGHTS RESERVED

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