今泉力哉監督「芝居を見てから作っています」映画『mellow』【インタビュー】

mellow 今泉力哉監督

今泉力哉監督「芝居を見てから作っています」
映画『mellow』
【インタビュー】

パンとバスと2度目のハツコイ』『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』などオリジナリティ溢れる世界観でファンを魅了する恋愛映画の旗手、今泉力哉監督とドラマや映画はもちろんバラエティー番組でも大活躍中の田中圭さんが初タッグを組んだ話題作、映画『mellowが1月17日(金)より新宿バルト9、イオンシネマシアタス調布ほか全国公開中です。
今回は、今泉監督に本作制作の経緯から、映画作りで大切にしているポイントなど、たっぷりとお話を伺いました。

―――― 早速ですが、今回は映画『his』も同時期に公開ですし、ドラマ『時効警察はじめました』も昨年後半に放送されています。そんなご多忙の中での、本作『mellow』制作の経緯や想いをお聞かせいただけますか?

今泉力哉監督
まず、以前に同じ関西テレビさんと制作会社のダブさんと一緒に『パンとバスと2度目のハツコイ』という映画を作っています。その作品を作ったチームに「年末、今泉が空いてるらしいぞ」という話が届いて「じゃあ、オリジナルでもう一本映画をやりましょう」というオファーをいただきました。

ただ、自由な方が不自由というか、縛りがなく自由度が高かったので、例えば「主演はこの人で、原作はこれで」とか決められていれば縛りがあると言えるんですけど、あまりにフリーだったので最初は筆がメッチャ進まないというところから始まって(笑)。
でも、実際自分の知り合いにそれこそ値段もついていない花屋さんの人が実在していて、そのお店から着想していきました。

―――― 花屋さんの方とはどういったご関係なのですか?

今泉力哉監督
昔、映画館でバイトをしていた時のバイト仲間の旦那さんが花屋さんで、この作品に使われている花の監修も全部その方にお願いしています。

その方を全部丸々投影しているわけじゃないんですけど、店舗はそういう特殊なオシャレな花を置いていて、一見さんも来るしいいお店だけど少し入りにくいような雰囲気があったりして。デパートのディスプレイや結婚式のウエディング周りの花とかも土日にやっているので店舗の収入だけでなく、経営しているような花屋が存在するというのを知りました。

その方に、仕入れは何曜日にあるとか、どういうところに卸業者があるとか、色々な話を聞いたりして、実際に卸業者さんのシーンはないですけど、朝、花を大量に車から降ろしたりといった描写はその方に聞いて作っていきました。

―――― ご友人のお仕事から着想されて、しかもラーメン屋さんという組み合わせもユニークですよね。

mellow

今泉力哉監督
そうですね。その方の具体的な話というわけではないですけど、実際そのお店は外苑前というオシャレな場所にあるのですが、それがああいう下町にあって、その町の人たちと交流していて。一番ベタに考えると花屋さんは女性、ラーメン屋は男性みたいなところを逆にして、オシャレな部分と老舗じゃないですけど、古いお店の雰囲気で2人の話を作ることが出来ればな、というところから始まりました。

―――― ところで、田中圭さん演じる夏目がとても面白くて、世間の皆さんが見たいと思っている!?田中さんの困り顔を堪能することが出来ました。その引き出し役の一人がともさかりえさん演じる麻里子でありその旦那さんの青木夫婦じゃないかと思います。監督から田中圭さんへの演技指導、そして、ともさかさんの絶妙な演技、これをどういう風に演出されたのかを教えてください。

今泉力哉監督
海外の映画は笑いの種類が豊富にあると思うんですけど、日本映画のコメディって凄く少ないと思っていて。面白いことを役者さんがして「面白いでしょ?」っていう映画は多くあると思うんですけど、好みもありますが、私は中の人たち(話の渦中にある本人たち)は何も面白いと思っていなくて、本人たちは真剣だけど空回っていたり、言ってはいけないことを言ったりといったズレや気まずさで生まれる笑いの方が本当に面白くなると思っています。

あのシーンはまさに、登場人物は真剣で、ともさかさんも至って真剣に愛情を伝える構図になっているだけなのに、旦那さんも旦那さんでズレているので、その愛情ゆえに可笑しなことが起きているんです。で、そこに田中さんは巻き込まれている。当人たちはその場が面白いと思ってないというのが大事で、皆さん凄く理解のある方たちだから言わなくてもこっちがやろうとしていることを分かって演じてくださいました。

田中さんに限らず、人が困っていたり巻き込まれたりが好きで。主人公が行動していくのが映画になりやすいんですけど、今まで作っている映画も周りで色々起きるけど何かに背中を押されてしか動かない受け身な主人公を作ることが多いです。多分、自分自身が能動的な側の人間じゃないので、どこか弱さがあったり、不器用な人を主人公にしがちですかね、そういう人の方が魅力を感じるんです。

―――― 一方で、実は「花」がテーマなのではないかと思っていたんです。花はナルシストにはなれない、自己完結している。その花を好きな夏目は出しゃばり過ぎない。そういう彼だったからこそ、自己完結の中で岡崎さん演じる木帆との恋愛にもちょっと控え目だったのかなと感じました。

mellow 今泉力哉監督

今泉力哉監督

今泉力哉監督
この映画って一見すると告白を皆が言う、言わないの話。でも、恋愛だけじゃなくて岡崎さんがやりたいことをやるかとか、それを父親に言うかとか。
タイトルも撮影時は「メロウ」とつけていましたけど、カタカナが分かりにくいから、「花」という言葉を入れるとか、色んなアイディアの中で、初期段階で「間に合うか、間に合わないか」「告げるか、告げないか」とかが一つキーワードだなと思っていました。手紙にも「まだ間に合う」みたいな言葉がありますけど。

この作品では結構皆さんが伝えていて、伝えることが良いことのように言っていますけど、過去に知り合いの役者さんに「僕は好きって気持ちを伝えるのは絶対だとは思わない」と言われたことがあって、その時期に、伝えない人たちの話を1本作ったこともありました。『知らない、ふたり』という映画です。今回は伝えるけど上手くいかない、でも伝えることで作用する心の動きや温かさを描こうと思っていて。まさに「花」はどこかで田中さんと一体になっているかもしれないです。

―――― そして、やはりラストシーンが印象的でした。ネタバレにならないようにお話いただくとすれば、夏目の終わり方について監督の狙いをお話いただけますか。

melow

今泉力哉監督
結局、ラストシーンってたまたま映画のラストがそこになるだけで、いつも大事にしていることは、この人たちの人生がその後も続いていくように終わらせないといけないと思っています。ハッピーエンドでもいいし、映画の終わり方って凄く色んな方向があると思うんですけど「あの後どうなるんだろうね?」って思わせた方が映画ってその人物が生きると思っていて。

あのラストシーンを告白だと思う人もいるだろうし、ただ、頑張ってきてねという意味だと思う人もいるかもしれない。今後、二人の関係が、特に続いていかないと思う人もいるだろうし、手紙のやり取りくらいはするのかなとか、本当に恋人になると思う人もいると思いますし。それはやっぱり答えない方が想像が膨らんでいろんな話が生まれるかなと思うので、そういうところを意識しています。

―――― まさに監督の狙い通りですね!
監督としては、最後のシーンは何パターンか撮りたい衝動ってありませんか?

今泉力哉監督
パターンではないですけど、ラストの岡崎紗絵さんの台詞は現場の思いつきで入れました。その言葉は照れ隠しや可愛い行動にもつながりそうだし、実際海外に行くって話にもなるので。あれは切り返しだから使うか使わないかは編集で選べるじゃないですか、だからどっちも使えるようにはしつつ撮ったりとか、そういうのはたまにあります。

台詞を加えることで、役者さんの芝居がどんどん面白くなっていくこともあるし、次の展開が分かっていない方が自然なリアクションになったりもするので、片方(の役者)にだけ台詞を一言足して、もう片方のリアクションをなるべく不安定にするとか。

田中さんとともさかさんのあのシーンも、まず台本通り1回演ったんですけど、ともさかさんにもう1回か2回台本より多く「好きです」って言わせた方が面白いかなと(笑)。それはともさかさんも舞台とかもやっていて、映像の経験も豊富な方なので、確かにここはもう1回言ったほうが効くって説明しなくても分かってくださいました。お願いしたらすんなり「分かりました」と(笑)。

画像,mellow

―――― あのたたみかけに夏目も困っていて、最高でした(笑)。

今泉力哉監督
段取りを現場でやる時に、田中圭さんにも他の方にも基本的には細かく指示をせず、まず1回演ってもらうんです。自分が細かく指示すると答えが一つになって、自分が思ってるより面白いことが起きる可能性を閉ざしちゃうじゃないですか。演出って自分の頭にあるものに向かっていくことじゃないと思っているので。自分も楽しめるように「あっ、そんなことになるんだ!」みたいなものを見たいので。

逆に、過剰だったり自分の好みと違ったりは調整します。例えば、3人で揉めてるところで旦那さんが夏目に触れたり掴みかかる方法も1回試してもらったりしてるけど、やっぱり触らない方が面白いかもとか。そういうことはよくやっています。

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