グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~

小池栄子、コメディ、元ネタが映画化の決め手!
映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』
成島出監督【インタビュー】

グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~

太宰治の未完の遺作が、大泉洋さんと小池栄子さんW主演の喜劇として生まれ変わった、映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~が2月14日(金)より新宿ピカデリーほかにて公開されます。
今回は、鬼才・ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏が独自の視点で完成させた戯曲「グッドバイ」の映画化という超難題に挑戦された成島出(なるしま いずる)監督に、本作挑戦の経緯から、映画版のポイント、さらには監督が現代社会に感じている疑問など、たっぷりとお話を伺いました。

―――― 監督の感性で色々な小説や舞台の映画化を手掛けていらっしゃると思いますが、作品を決める時のポイントを教えていただけますか?

成島出監督
それは作品毎に一本一本違いますが、基本は勿論元のネタ、今回の場合は舞台と原作ですけど、それが面白かったことが一つ。
後は、ラブコメというかコメディをやりたいとずっと思っていたんです。“笑える映画を撮りたい”と。デビュー作『油断大敵』(2004年公開、役所広司&柄本明共演)がちょっとコメディなんですけど、それ以来いわゆるその手の作品をやっていなくて、どちらかと言えば深刻というか重い映画が多かったので、軽いものをやりたいという意識がずっとありって、本作脚本の奥寺佐渡子さんともずっと「コメディをやりたいね」って話してたんです。

それと小池栄子さんには何本か映画に出演してもらっていて、今、脂が乗りきって一番いいタイミング。でも、日本の映画界は中々そういう時に女優が主演を出来ない現実がある。ドンドン若い娘が起用されていく。だから、何か小池栄子さんが主役の映画が出来ないかなと思っていた時に、たまたまこの舞台を観て、(舞台で小池栄子さんが演じた)キヌ子が凄く良かった。
この3つの要素が揃ったということが本作の動機です。

画像,グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~

―――― そもそも舞台を観劇されたきっかけは、小池さんが出演されていることだったのでしょうか?

成島出監督
そうですね。それと、元々僕も太宰治が好きなので、太宰のあの作品をどうやって最後まで持っていったんだろうという興味。それとケラさん(舞台の脚本・演出を担当したケラリーノ・サンドロヴィッチ氏)の舞台も好きでファンでもあるので、ケラさんが未完の作品をどういう風にするんだろうと思って観たんです。

その前にも、本作にも出演している水川あさみさんがキヌ子を演じたテレビドラマがあったり、蒼井優さんの舞台もあったりして、いろんな人が太宰の「グッド・バイ」を原作に結構それなりのことはやっているんです。それぞれ違いがあるんですが、このケラさんの舞台は凄く自分の中でハマった感じです。

グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~

―――― 実際に舞台を映画化することは技術的にも難しいことがあるのではないかと思います。監督にとって難しかった点、気をつけた点があったら教えてください。

成島出監督
基本的に舞台の映画化はすごく難しいんです。
ただ、これは舞台原作ではあるんだけど、その前に太宰の原作があって、一人の男が一人の女、鴉(カラス)声の女を連れて、愛人達に別れを告げに行くという物語なので、そこは映画的なシチュエーションになるかなと思いました。舞台ではあるけど映画としての流れにも出来るかなという風に思ったので。勿論、何度か面白い舞台は観てきましたけど、映画にしたいと思ったのは、初めてと言えば初めてですかね。

―――― 舞台の映画化は難しいというお話がありましたが、逆に監督から見た舞台の魅力とはどういうところにあると思いますか?

成島出監督
やっぱり「生」ということ。
肉体と生で(観れる)というのは凄い力ですよね。舞台中継になると「あれ、あんなに面白かったのに舞台中継で見ると、あれ?こんなのだっけ?」ってあるじゃないですか。それだけ映像になると距離ができてしまうというか。そこはやっぱり映画にした時に舞台の生で見た感じは中々伝わりにくいというか、大変だと思います。

―――― 小池栄子さんの演技力がキーとなって、生の感覚を感じることが出来ました。また、キヌ子を語る上で、やはりあの鴉声の話になるんですが、小池さんには1カラス、2カラス、3カラス、4カラスと段階をつけてもらったそうですが、この「鴉声」はどのように生まれたのでしょうか?

成島出監督
原作にも一行、鴉声の女で、声がひどいということが書いてあります。でも、その原作を忘れて舞台を観た時にあの声で喋っていて、それが笑えたし、物凄いキャラクターになっていました。「あの声、どうしたの?」って聞いたら、原作に鴉声って書いてあり、それを作り上げるのに最終的に開演の2日前まで粘ってあの声に至ったと。すごく良かったので、「あの声で最後まで持つかねえ、大変だね」って話をしたんです。
映画を作ることになり、あの声は映画にするとちょっとやり過ぎで、難しいかなというのもあって、本読みの時に一回全部鴉声じゃない普通の声で読んだりもしたんですが、やっぱり全然キヌ子のイメージじゃなくなるんです、不思議なことに。ただ、舞台でやった通りにやると強烈過ぎちゃうんです。だけど、小池栄子さんは映画の経験が多いからよく分かっていて、鴉声は使うことにするけどシーンによってそれをコントロールする。ここは1、次は2、こっちは3とか。シーンの中でも3、次は4、それで1に落とすとか。そういうことでやっていきました。

―――― その辺のバランスが難しいのだろうなと想像していました。

成島出監督
だから、俺と小池さんの台本は音符が書かれたみたいになっています(笑)。高さも強さも含めて。
グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~

―――― 当時の舞台ではキヌ子の相手役は仲村トオルさんでした。今回は相手役として大泉さんを選ばれています。キャスティングの経緯・ポイントを教えていただけないでしょうか?

グッドバイ

成島出監督
この物語の、特に映画版のミソで、物凄く大事なことは、女たちが全員自立していることなんです。
あの時代にキヌ子は、親の顔も知らない孤児で、物凄い貧乏だし孤児院で育っています。劇中にそういう部分は全然出てこなくて、一言だけ「親の顔も知らない」というセリフがあるだけなんですけど。そういう女性で、なおかつ美貌もあるから夜の街に立てばお金を稼げるし、当時は米兵の女になるとか、もしくはカフェとか夜のクラブ、キャバレーとか、要するに女性を、女の性を売り物にして生き延びた人が多かったと思うんです。

だけど、戦後復興で日本人の男も少しずつお金を持ってそういうお店が繁盛する中で、担ぎ屋の時代は終わっていくんだけど、キヌ子は最後までそれをやるんです。男に媚びを売るのではなく、自分の身体で稼いで、自分のためにオシャレをして、自分のためだけにデートでもなく映画を観にいくわけです。彼女はあの歳で男を知らないのですが、それでも幸せなんです。「一人だって捨てたもんじゃないわよ」って言うけど、それはやっぱり彼女の強さというか。他の女性の登場人物たちもみんな自立していて、この時代に働いている人ばかりです。仕事をしている職業婦人ということで。この女性陣には誰ひとり専業主婦がいないのがこの話のミソです。

グッドバイ

グッドバイ

画像,グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~

この話は強い女たちにグッドバイを言いに行ったら、逆にグッドバイを言われてボコボコにされる男の話なので、ジャック・レモン的なちょっと三枚目というか、昔の名優に例えるとそういうイメージだったんです。映画版の場合はそういう風にしたいなと。

こんな酷い傲慢な男なんだけど、どこかで憎みきれないっていう、昔のハリウッド映画にはそういうのがあったじゃないですか、エルンスト・ルビッチの映画とかビリー・ワイルダーの映画とか。そういうものになればいいなと思った時に、じゃあ、日本で誰がいいだろうと思った時に大泉洋くんだったら出来るかもしれないと思って、台本を送ったら本人も「やりたい!」と言ってくれた、そんな経緯でした。
色々と考えた末に、映画の場合は今回の選択に至ったということです。
画像,グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~

―――― 大泉さん演じる田島のリアルさと憎めなさは同時に伝わってきて、監督の言うように知らず知らずのうちに女の人の強さと、対比したひ弱さに繋がっているように感じました。
監督ご自身は戦後生まれの世代になると思いますが、戦時中に多くの男性が亡くなって残された女性たちが多く存在したと思います。そんな時代を描いていく上での心構えというか苦労されたところはありましたか。

成島出監督
やはりお金はかかります、現代劇に比べると(笑)。
当時の服は売ってないから全部作ることになりますし、建物もなかなか日本の場合は当時のものが残っていないから探すのも大変だし、セットを作ればそれなりにお金はかかる。大変ではあるんだけど、戦後3年はとても面白いというか、劇中でも「東京ブギウギ」がかかるんですが、戦後の焼け跡から一気に復興していった、日本のあの時のパワーの凄さは本当に世界でも稀有だと思うんです。何であんなことが出来たのか本当に不思議で、それを検証したいという思いはずっとありました。

例えば、『仁義なき戦い』という名作がありますが、あれもやっぱり戦後の闇市から始まって、なんかパワフルというか、今の時代に欠けているものがこの時代やこの時代の人々にはあった気がします。便利なものは何もないし、iPhoneもないんですけど、その代わり何かあったような気がするんです。それを捕まえられないかなと思いました。

―――― 田島のような仰天人生も当時は本当にあったのだろうと思いますし、当時だからこそ受け入れられますよね。

成島出監督
今だったら、ふざけるな!ですよね(笑)。

グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~―――― そのパワフルな時代のコメディをやると決断されたその裏側には、監督は今の時代に対してどのような感情を抱いていらっしゃるのでしょうか?

成島出監督
今の時代に観てもらいたいというのはあります。
女性の「MeToo」とか、ジェンダーの問題とか、香港の動きであるとか、日本からなくなってしまっているもの、日本がダメになってしまっているもの。
日本って本当に去勢されているというか、何でこんなことになっちゃったのか。別に僕は思想として、右とか左とかそういうのはないですけど、そういう怒りも含めてパワーダウンしてるような気がして、政治に対しても何も言わないし、何ですかね…。

仮に今の日本が諸外国から攻撃され東京が撃ち込まれた時に、そこから復興するのにどのぐらいかかるか、このパワーでは多分出来ないと思うんです。そうすると、我々は何を失ったんだろうかと思うんです。何が足りないのか、それが取り戻せるものなのか、もう無理なものなのか。それはモノを創る人間として凄く考えます。日本人論みたいな学問的なことではなくて、映画を描く時の実感として。

グッドバイ

キヌ子にしても現代の設定に置いて、このパワフルさで描けるかというと中々難しいんです。それは何なのかなって。このドラマを現代にしてはめても中々同じものにはならない。でも、それは江戸時代の時代劇とはまたちょっと違う何かがあるような雰囲気がするんです。
この失ってしまったというか、分からないけど内に隠れただけかもしれないけど、“休火山”であればいいなと思うけど、この時にあったパワーが今ないっていうのは何なのかな。
でも、このパワーで今笑ってもらいたい、このパワーがベースになったドラマで、コメディを観て、劇場で笑ってもらいたい。笑ってもらって、絶対に観て元気になれるはずなので、元気になって帰ってもらえればいいかなと思うんです。

コメディはなかなか興行が難しいので、企画を出すと「いやぁ、コメディはちょっと」って言われてしまう。この映画は有難いことに撮れましたけど、次を撮るためにも観てもらわないと、ヒットさせないといけない。
たまにコメディをやると、普段の稽古場よりも多幸感があったと対談した時にケラさんも仰っていて、この映画もそのまま引き継いで、やっぱりみんなが楽しそうなんです。重い映画だとどうしても現場も重くなるから。

―――― 監督のお話を聞いてると特に若い人にも観てもらいたいですよね。監督が思い出に残っているシーンはございましたか?

画像,グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~

成島出監督
水原家でのドタバタですかね。
最初の花屋さんのシーンでは笑いがクスクスと起こり、キヌ子の家での出来事でその笑いがちょっと声になる。そして、水原家で劇場がドッと沸いてくれればいいなと思ったんです。
だから水原家の芝居は固まるまでに結構な時間がかかっています。人が空から降ってくるからワイヤーで吊れるようにして、雨降りのシーンだから普通はセットに屋根は作らないんですけど屋根を見せるために全部屋根を作って。あの短いカットのために、お金がかかった(笑)。

この水原家で笑えるか、お客様がノッてくれるかどうかが勝負だと思ったんです。そこまでは、どう観たらいいんだろうみたいな感覚もあると思うんです。でも、あそこから「あっ、ゲラゲラ笑っていいんだ」って思ってもらうための仕掛けが大きかったんです。あのシーンの最後のカットにOKを言った時は、これでちょっといけたかなというか、ちょっとホッとしました。
グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~

―――― 監督の狙い通りだと思います!
最後に、監督にとってコメディ・喜劇がどういうものかを語っていただきながら、映画ファンへのメッセージを頂けたらと思います。

成島出監督
やっぱり映画として、喜劇・コメディは必要なのだと思います。健全な娯楽映画の中の一本として、勿論泣ける映画、青春の映画、凄い深刻な映画、色々な作品があっていいんだけど、「今日はコメディを食べたい」というか、ご飯で言えば色んなお店があって、その時々に好きなものを食べられるというのが一番贅沢じゃないですか。映画を観に行こうとなった時に「今、何の映画やってる?」って、「軽いもの、蕎麦がいいな。でも蕎麦がないな」みたいな。コメディが蕎麦かどうかは分からないけど(笑)。

やっぱりまずは作品があって欲しいなと思いますし、それが健全に常にお店に並ぶためには、コメディがある程度採算が取れてないとお店から消えていくので。潜在的なニーズはあると思うんです、だってテレビにはずっと吉本の芸人さんが出ているわけだから。笑いが全部テレビに行っちゃってるのかもしれない。だから劇場でそんなに大笑いをする必要はないのかなって。新宿末廣亭も私が若い頃よりは結構空いてますもんね。ドラマはテレビがちょっと衰退して映画館に戻っているんだけど、笑いはテレビに行ったまま中々戻って来ない。笑いもテレビから劇場に戻したいなと。やっぱり劇場でみんなと大声で笑うのは単純に楽しいですよ。それはあり続けて欲しいなって。入ってくれればみんなが創ろうとするから、良い循環になってくると思います。

―――― 昨今は応援上映も盛り上がっていますし、大泉洋さんの“爆笑”舞台挨拶、そして劇場に“笑い”が溢れる日を待ち望みたいと思います。成島監督ありがとうございました!!


2月14日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

予告編映像

作品情報

『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』
【出演】大泉洋 小池栄子/水川あさみ 橋本愛 緒川たまき 木村多江/皆川猿時 田中要次 池谷のぶえ 犬山イヌコ 水澤紳吾/戸田恵子・濱田岳/松重豊
【監督】成島出(『八日目の蟬』『ソロモンの偽証』)
【原作】ケラリーノ・サンドロヴィッチ(太宰治「グッド・バイ」より)
【音楽】安川午朗
【脚本】奥寺佐渡子
【製作】木下グループ
【配給】キノフィルムズ
【制作プロダクション】キノフィルムズ 松竹撮影所
【2019 年/日本/日本語/カラー・モノクロ/シネマスコープ/5.1ch/106 分/映倫区分:一般】
©2019『グッドバイ』フィルムパートナーズ
公式サイト:good-bye-movie.jp
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