ベトナム映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督【来日インタビュー】

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督
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ベトナム映画『ソン・ランの響き』
主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督【来日インタビュー】

ベトナムの伝統芸能<カイルオン>を主題に、孤独な2人(ユンとフン)の刹那的な出会いを描き、第31回東京国際映画祭「アジアの未来」部門に選出され日本でも話題となった映画『ソン・ランの響き』が22日(土)より新宿K’s cinemaほかで上映中です。

今回は本作の日本公開を記念して来日された主人公ユン役のリエン・ビン・ファットさんレオン・レ監督にお話を伺いました。

【なお、本インタビュー記事には一部ラストシーンへの言及がございます】

―― 本作では伝統歌舞劇<カイルオン>、ベトナムの政治的な変遷そして文化など、色んな要素が友情、愛情、理解など一つの軸にまとまっています。
監督が本作品の制作を思い立ったきっかけ、そしてなぜ<カイルオン>を題材に選んだのか、お聞かせください。

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

レオン・レ監督

レオン・レ監督
この映画を作るに当たって<カイルオン>が出発点になっています。

私自身、<カイルオン>には特別な想いがあり、だから<カイルオン>をメインにした映画を作りたくなったのです。<カイルオン>は知らない人は知らないのですが、<カイルオン>自体が実際の生活や人々を材料として<カイルオン>の中に取り入れています。映画も政治とか愛情とか色々なものがまとまっているんですけど、つまりそれらはバラバラではなく繋がっているものだと思います。

―― 民族楽器<ソン・ラン>には、2人の男という意味があると聞いています。全てのモノに意味があり、また全ての人には縁があり、監督は映画の中に複雑にそれらを散りばめていると感じました。この仕掛けは本作において必要だったのか、監督は全ての作品においてクオリティーを高めるためにそういう細かい仕掛けを考えているのか、いかがでしょうか?

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

レオン・レ監督
この作品には様々な仕掛けを入れましたが、実際私は映画を作るに当たってはどんな方式で挑めば皆さんから高い評価を得られるのかは全く考えずに、出発点はまず感情でした。フィーリングです。その時にどう感じているのか、作品はその時々の感情に合わせて作っていきます。一つの決まった方法ではなく、その時の感情次第だと思っています。

ソン・ランの響き

―― 作品を作りながら関連性を考えていくような作業をされたのでしょうか。

レオン・レ監督
元々私は俳優出身ですので、監督として歩んできたわけではないので、方法も自分の俳優の経験から今のやり方になっているんです。作りながら行くべき道を探しながらやっているので、入れたい要素があったらその時に関連させようとしたんです。でも、やっぱりどうしても合わない時は止めて、そうするとまた別の扉が開いていくので常に試行錯誤をしながら進めています。

―― ファットさんお待たせしました!
監督はフィーリングを大切にされたと仰っていますが、監督からの演出として、どの辺りがポイントとなり、意識して欲しいという指示があったのでしょうか。

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

主人公ユン役のリエン・ビン・ファットさん

リエン・ビン・ファットさん
この作品の私の演技は本当に全部監督のご指導のお陰と言っても過言ではありません。この作品がデビュー作ですので、全然経験がありません。だから、基礎がある他の俳優さんと違って、感情表現の仕方や演技の仕方も全て監督に提案していただいて、それを自分なりに考えて演じていきました。

―― 監督から指示をもらったけど、表現が難しくて悩んだシーンなどはありましたか?

ソン・ランの響き

リエン・ビン・ファットさん
そうですね、内心を表現するシーンが一番難しくて、ワンテイクで上手く撮れるシーンはほぼなくて、何回も何回もやり直さなければならなかったんです。

その中でも一番難しく感じたのは、このポスタービジュアルにもなっているシーンです。主人公2人が窓際のところでコーヒーを渡しながら短い会話をしたんですけど、27回も撮り直さなければならなかったんです(笑)。

監督も表現の仕方について全然ハッキリとは言わずに「もうちょっと良くやって」って(笑)。どうすれば良くなるのか、どうすればしっかり演じたことになるのか全く理解が出来なくて、何回もやり直さなければならなかったんです。

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

―― 窓際のシーンは作品の中でちょうど中間で、心情も一番微妙なシーンだったのではないかと思います。まさにターニングポイントとなるシーンで、難しいことは想像出来ますが、まさかの27テイクには驚きました(笑)。

リエン・ビン・ファットさん
(笑)

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

―― “雷のユン兄貴”と恐れられていた借金の取り立て屋である主人公のユンは“雷”で寂しさを隠していたのではないかと思います。ファットさんは雷の状態にあるユンをどんな気持ちで演じられたのでしょうか。

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

リエン・ビン・ファットさん
ユンは寂しさを隠しながら、自分の周りにトゲトゲの壁を作り周りには心を見せないようにしている主人公です。撮影する1ヶ月前からこの内心を表現するために監督から色々な指導をしていただきました。先ほどもお伝えした通り、自分には経験がないので、どうやって表現するのか、どんなやり方なら寂しさを表現できるのか全く分かりませんでした。

撮影する1ヶ月前に監督からの指示で、「この1ヶ月間は友達とも家族ともコミュニケーションを取らずに、一人で引きこもって、家の中でもSNSとかを使わずに孤独な自分を作って欲しい」という指示がありました。それがステップとなり、撮影の時には演じようとせずとも自然にそういう寂しさを抱えた状態になっていました。

―― フンの代わりに借金を返してあげた後に涙を流していました。あそこで寂しさが爆発して本当の自分が顔を出してきたんだ、ということが凄く伝わってきました。

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

リエン・ビン・ファットさん
脚本を読む時もそのシーンに対しては自分も空っぽの気持ちになっていて、罪悪感を持ちながらこれから新しい道を切り拓いていくんだなとか、色々な気持ちになっていて実際に脚本を読んだ時は泣きそうになりました。

―― ラストシーンについてご質問です。あの瞬間にユンはこれまで自分がやってきたことへの罪の意識もあるし、一方でフンに対して愛情も含めて色々な感情を抱いてもいただろうと思います。ユンはあの瞬間に何を思ったのでしょうか?

リエン・ビン・ファットさん
痛い!!!(笑)
本当に痛かったんです(笑)。

脚本を読んだ時から簡単なシーンではないと思いました。色んな映画にあのようなシーンはあると思いますが、シンプルに倒れて終わるものもあるのですが、今回は監督にそうではなくて、主人公の内側からの痛みを表現しなければならないと言われました。目のところに痛みを伝えなければならなかったので、なかなか出来なくて、後ろからスタッフにツネってもらったから凄く痛かったです。

(爆笑)

それが目の痛みに伝わったのかなと思います。

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

―― それは観客には伝えない方がいいかもしれないですね(笑)。
ところで、ユンとフンは本来だったら<カイルオン>奏者になるべき運命の人がならずに、元々憧れていたけど家庭環境からすれば縁遠い子が俳優になった。2人の運命が全く逆で、最後に糸がほぐれていくような感じがしました。重要な設定だと思いますが、構想当初からこの設定は決まっていたのでしょうか。

ソン・ランの響き

レオン・レ監督
主人公の描き方、設定には色々な変遷がありました。

最初(の設定)はこれと全く違いましたので、やりながらこういう人物になりました。でも、やっぱりこの2人も<ソン・ラン>という楽器と同じように、<カイルオン>の中では<ソン・ラン>がリズムを取るための役割ですけど、この2人も人生の中で<ソン・ラン>がなかったら2人の人生が成り立たないという存在ですので、人物は違う描き方ですけど、元々お互いの役割を大切に考えていました。

ソン・ランの響き

―― ユンの肉体美も凄かったですが、これも監督が想定されていたのですか?(笑)

レオン・レ監督
(爆笑)
そうですね、(キャスティングの)第一条件でした!

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

―― ファットさんは昔からずっと身体を鍛えているのですか?

リエン・ビン・ファットさん
そうですね、スポーツもやっていましたし、ジムにも通って昔から鍛えていました。

ソン・ランの響き

―― ちなみに、ベトナムを代表する女優のゴ・タイン・バンさんがプロデューサーをされていますが、ゴ・タイン・バンさんとは事前にどんな会話をし、どのような要求やポイントが伝えられたのでしょうか。

レオン・レ監督
ゴ・タイン・バンさんがプロデューサーになっていて、最初の契約の時にゴ・タイン・バンさんと締結する時の第一条件は、「私の脚本に口を出さない」ということになっていました。それでゴ・タイン・バンさんと一緒にやることになりました。

でも、いざスタートすると劇場の興行収入に繋げていくために彼女からも色々な要求がありました。例えば、ユンとフンはもう少しはっきり、肉体の関係を持つシーンがあった方がお客さんの興味を引けるだろうという要求がありました。恋愛的なシーンをもうちょっと増やして欲しいという要求です。私はどうしてもそれには同意できなくて、色々な相談をしたり、喧嘩をしたり、一番大変でした。でも、最終的にはゴ・タイン・バンさんも私の意見が正しいと同意していただき、この映画になりました。

―― 作品を観て、監督の意図が伝わりましたし、二人の気持ちに感じ入り易かったですし、そういう余地を与えてくれているので素晴らしかったと思います。

ソン・ランの響き

レオン・レ監督
そうですね、ありがとうございます!

―― ファットさんは東京国際映画祭で「ジェムストーン賞」を獲得していますが、ゴ・タイン・バンさんから来日前に「絶対に獲りなさい!」という指令はなかったですか?(笑)

リエン・ビン・ファットさん
そんな高級な要求はなかったです(笑)。
新人ですので自分らしく、努力してやっていけばOKだと。映画館で初めて上映される時は、私も初めて作品として観たので、観客の皆さんと一緒にドキドキしながら観ました。

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

―― 台詞も勿論ですが、グッと感情を堪えている表情がとても印象に残っています。
監督からみたファットさんの魅力や監督が一番印象に残ってるファットさんの演技を教えてください。

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

レオン・レ監督
ファットさんの演技で一番魅力を感じたのは、窓際で2人が会話をしているシーンだったと思います。ここは、2人のこれまでの人生とこれからの人生が全部まとめられたシーンで、フンがユンに「その日もし私が来なかったら、あなたはガソリンで全部服を燃やしますか?」という質問します。その時にユンは「間に合ったよ」って答えたんです。“間に合った”というのは、あなたが来てくれて私の“人生が間に合った”という意味で、その時にグッときました。(※日本語訳は異なります)

あなたが丁度あのタイミングに来てくれたから、私の人生はこれから新しいステップに行けるんじゃないか。あなたが丁度来てくれたお陰で、今までのことは全てなしにしてこれからもうちょっと綺麗な、美しい人生が送れるとユンは思ったんです。

加えて、フンとユンが初めて出会ったのは、ユンが劇団に借金を取り立てに来た時だと(フンは)思ったんですけど、ユンはその時じゃなくて、もっと前に私たちの出会いはもっと美しいところ、劇場だった。小さい頃に2人が初めてあそこで会ったと言うんです。
なぜそういう事を言ったかというと、この時に初めてユンがフンに対して好意を持ったので、自分が好意を持っている相手には、やっぱり自分の汚い様子や自分の格好良くない姿は見せたくないんです。だから、初めて出会ったのは借金取りの場所ではなくて、劇場の時で、美しい光景の中で2人が出会ったよって。告白のような意味合いも含まれているので、とても素敵なシーンでした。(※当該シーンは日本ではカットされています)

幼い時に劇場で2人が出会ったシーンではフンがユンに対して「お兄さん、誰を探していますか?」って聞いたんですけど、まさにそれが、今、自分が探しているユンに対して答えを導いてくる人(フン)が現れた瞬間だったのではないかと思います。

映画『ソン・ランの響き』主演リエン・ビン・ファットさん&レオン・レ監督

―― それに、ラストシーンの直前に舞台の方では「敵に見つかったぞ」って言いますね。これは“ユンを敵が見つけた”とリンクしています。今のお話もそうですし、様々なところで沢山の伏線を回収していて、とても深い映画だと感じました。素晴らしい作品をありがとうございました!

ソン・ランの響き

『ソン・ランの響き』作品情報

【ストーリー】
80年代のサイゴン(現・ホーチミン市)。借金の取り立て屋ユンは、ベトナムの伝統歌舞劇<カイルオン>の花形役者リン・フンと運命的な出会いを果たす。初めは反発し合っていたふたりだったが、停電の夜にリン・フンがユンの家に泊まったことをきっかけに心を通わせていく。実はユンはかつて<カイルオン>には欠かせない民族楽器<ソン・ラン>の奏者を志した事があり、楽器を大切に持っていたのだった。

一見対照的だが共に悲しい過去を持つふたりは、孤独を埋めるように響き合い、結ばれる。やがてこれまで感じたことの無い気持ちを抱き始めたふたりは、翌日の再会を約束し別れる。しかし、ユンが過去に犯したある出来事をきっかけに、ふたりの物語は悲劇的な結末へと突き進んでいく――

予告映像

■キャスト
リエン・ビン・ファット
アイザック
スアン・ヒエップ

■スタッフ
監督:レオン・レ

©2018 STUDIO68

公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/songlang/

2020年2月22日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開中!

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