坂本欣弘監督が地元富山県で描いた少女の成長物語!映画『もみの家』公開記念インタビュー

   
坂本欣弘監督が地元・富山県で描いた少女の成長物語!映画『もみの家』

坂本欣弘監督が地元富山県で描いた少女の成長物語!
映画『もみの家』
公開記念インタビュー

心に悩みを抱え不登校になってしまった16 歳の彩花(役:南沙良さん)が、若者たちの自立を支援する施設“もみの家”での出会いや経験をとおし、めぐる季節と共に成長していく等身大の姿が描かれる感動作、映画『もみの家』が3月20日(金・祝)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中です。

『真白の恋』で鮮烈なデビューを果たした坂本欣弘(さかもと よしひろ)監督は、自身の生まれ育った富山を舞台に選び、雄大な自然と少女の心が共鳴する、瑞々しく温かな物語を紡ぎ出してくださいました。今回は、坂本監督に作品作りの経緯から制作の中で大切にしたこと、悩みを抱える少女を見事に演じた南沙良さんや本作が遺作となった女優・佐々木すみ江さんとの思い出など、本作をより深く堪能していただけるお話をたっぷりと披露していただきました!

映画『もみの家』南沙良

南沙良さん(主人公の彩花役)と緒形直人さん(もみの家の主宰者/佐藤泰利役)

―――― 本作では引きこもりがちな女の子が主人公になっていますが、なぜこのテーマを選ばれたのか教えてください。

坂本欣弘監督
基本、映画を作る時には題材から入るタイプではないのですが、次回作のことを考え始めた時に、僕は富山県出身なので地元が題材の本を探していました。たまたま手に取った本が乃南アサさんの「ドラマチック チルドレン」でした。その本は富山市に実在する自立支援施設を追った本で、全国から不登校の生徒が集まって、民間で運営をしています。その施設の取り組みが、彼らに早寝早起きをさせて、農作業を中心とした生活を送り、地域と触れ合いながら自立を目指していくというものでした。本の時代設定は1990年代で、赤髪のヤンキーとかシンナーとか登場するので、時代設定としてこれはちょっと(題材にするには)厳しいな、と感じました。施設に足を運び、現在の不登校・引きこもりの子と会ったり、施設を運営している方とお話をしたら「これは映画になるな」と。それで企画をスタートさせました。

映画『もみの家』

―――― 前作に続き脚本家の北川亜矢子さんとタッグを組まれています。前回は知的障害を持つ方をテーマにされていますが、本作でお二人の意見が最も異なった部分、そして「ここだけは外せない」というポイントを教えてください。

坂本欣弘監督
それはこの映画で何を伝えたいか、その核の部分になります。

要するに、最後に彩花(役:南沙良さん)が学校へ行くのが正しいのか、正しくないのか。世の中にこれを問題提起として出した時に、どういう風に感じてもらうのがベストなのか。それについては常々、撮影中も話し合いながらやりました。お互いに納得できない部分があったりしつつ、学校へ行くのが正解かどうかに対してディスカッションをしました。それは北川さんとだけではなく、キャストにも委ねて「皆さん、どう思いますか?」と。

撮影をしていく上で、彩花の感情に寄り添ってもいいんじゃないかな、と。結局、学校へ行くことが良い事ではなく、何かを自分で決めるということが大事だという結論に至りました。つまり、学校に行かないという結論を出しても正解だった。そういう面も含めると、南沙良さん演じる彩花には実家に帰ってきて欲しいという親の気持ちもあるでしょうから、その辺りは母親役の渡辺真起子さんともディスカッションをしました。

多分正解は幾つも幾つもあって、正直、不登校・引きこもりを映画化するという時に、果たして「もみの家」に来ること自体が正解かどうかも論点になってきます。こういうこともある、こういう一歩もある、という複数の選択肢がある中で、最後を決めたのは僕とプロデューサーです。この映画が最後にどういう風に終わったら希望が見いだせるのか。北川さんとの相違をあえて挙げるならそういう部分だと思います。

―――― この映画を観ていて感じることは、ゆっくりと優しく、包み込むような感覚があります。一方で、人を育てる時には厳しさも必要だと思います。監督が考える、時には厳しい側面がこの映画の中にあるとすればどのシーンなのか、またそもそも厳しさが必要なのかどうかも含めて監督のお考えを教えてください。

映画『もみの家』

坂本欣弘監督
恐らく、時には厳しくという面に関しては、不登校の子たちがあの場所で生活することは厳しいことでしかないと思います。コミュニケーションも出来なかったり、心に悩みを抱えていたり、何かのトラウマを抱えてここに来ている分、朝早く起きるのも苦痛、人とコミュニケーションを取るのも苦痛、全てが苦痛なところからのスタートのような気がします。それは実際に僕が施設に通っていて感じたことだったと思います。

―――― お母さんが彩花を「もみの家」に送り込みます。そこまでしないとダメなのかな?といった感覚で観ていました。そもそもお母さんは厳しいのか?甘いのか?も含めて、本田家はどういう経緯で「もみの家」に彩花を入れることになったのかを教えていただけますか?

坂本欣弘監督
(もみの家に)行く選択肢は何の疑問もなくやりました。

映画には使ってないのですが、あの親子が、なぜギクシャクした関係になったのかの経緯を実は撮影で撮っています。要するに彩花が学校に行きたくなくなる前、まだ親とも仲が良かった、ちょっと喋れる関係性があったところから撮影はスタートしていたんです。
何かの掛け違いでどんどん娘は言えなくなり、親は親で普通の親なのでそれに気付かず、気が付いたらこうなっていたというスタートなのですが、自分たちも含めて納得出来るようにその部分のシナリオがあり、演じてもらって撮っていました。なので、すんなりと入っていけたのかなと。だから、彩花とのやりとりについて母役の渡辺さんと話したのは最後だけでした。

映画『もみの家』渡辺真起子

彩花の母役の渡辺真起子さん

―――― なるほど。個人的には、愛情不足ではなかったとしても、コミュニケーション不足やボタンの掛け違いなど、何かしら親子の問題が存在している中、色々な社会の価値観やそのスピードの波にのまれて、そのちょっとしたすれ違いが拡がり、結果として彩花の悩みを大きくしていたと捉えていました。
そして最後に学校へ行く彩花と母とのやり取りは、もみの家での様々な経験で成長した彩花による母への許しにも見えましたが、この辺りはどうお考えになられていたのですか?

坂本欣弘監督
難しいのですが、この映画は“親に捨てられた”と勘違いする少女が“親の有難みに気付く”ということだと思うんです。

なので最後は、正直、学校に行くこと自体がどこからのタイミングで彩花の中でも“行ける”と思っていた部分があると思います。でも、きっかけが足りなくて。出産に立ち会い、自分もお母さんからこうやって産まれてきたんだ、そこで感じたちょっとした感謝だったり、ちょっとした心の意地が解けていくみたいなことをそれで表現したいと思いました。そういう風な見解で描いていたつもりです。

映画『もみの家』田中美里

彩花は田中美里さん演じる恵さんの出産に立ち会う…

―――― 非常によく伝わってきます。恵さんも出産は「死ぬほど痛いわよ」なんて言っていましたけど、そういうことも彩花だからこそ真面目に受け止めていたし、その痛みを当然母も経験していたわけだから有難いと思うようになるんですね。

坂本欣弘監督
という風な気持ちで作っています。

―――― 続いて、南沙良さんについてお伺いしたいのですが、本読みの時にプロデューサーと目を合わせるくらいその声とその響きに惹かれたとありました。南沙良さんの女優として素晴らしい点を監督のお言葉でお伝えください。

映画『もみの家』南沙良

坂本欣弘監督
やっぱり何度やっても新鮮な芝居をするんです。

例えば、本番になるとベテランの役者さんはちょっとアドリブが入って、違うことをやったりするんですけど、それをまさにキャッチボールのごとく、その場で瞬時に受け答えをちゃんとやる、そこに感情が“ギュッ”と凝縮されているんです。演じるということなのですが、なりきる、ちゃんとその役になっている。毎回そんな感じを受けました。

あとは、現場に台本を持ってきていないので、本は常に頭の中にずっと入れています。僕は割とカットを変えて最初からシーンを撮り直すタイプで、「この台詞の後から撮り直しましょう」ではなく、「もう一度最初から角度を変えて撮ります」っていう撮り方をするんです。淳平(中村蒼さん)と夕日を見るシーンは5ページくらいあるので、5分くらいの尺になるんです。それを何度も何度も色んな角度で最初から撮るんですけど、夕日が沈む瞬間は2、3分しかなくて、「ここでミスったらどうしよう…」と思っても、(南さんは)バッチリやるので、本番にも強く、「いや、この子スゴイな!」って思いました。

映画『もみの家』中村蒼

もみの家OBの淳平役、中村蒼さん

―――― 何度か取材させていただいて、素晴らしい感性の持ち主だなと思っていました。そういう南さんに対して、監督からあえてこういう風にして欲しいとディレクションを行ったことがあれば教えてください。

坂本欣弘監督
例えば、「彩花が出産のシーンで涙する」という場面で、台本に書いていないところまで泣いたりするんです。逆に言うと、この映画を通して順撮りしていたので、南沙良さんには、今、どういう気持ちなのか?を確認しながらやったんです。彼女の気持ちは尊重していこうかなと思って。心の開く瞬間については間違っている、間違っていないを伝えるんですけど、「今、どういう気持ち?」「どこに座りたい?」という風に南さんとディスカッションをしながら、基本、間違いじゃない限りは尊重してやってもらっていました。

なぜ、それが出来たのかと言えば本読みの時の信頼感に尽きるかなと(笑)、思います。なので、行き過ぎたところで「少し抑えようか」とか、そのぐらいだと思います。感情がズレるということは一切なかったので、基本はほぼOKテイクしかないと思います。

映画『もみの家』南沙良

―――― 本読みの時の信頼関係ということですが、特別な本読みをされているわけではないと思いますが、特徴があるとすればどのような本読みをされるのですか?

坂本欣弘監督
正直、初対面の時の印象が「大丈夫かな?」って感じだったんです。
南沙良さん15歳で、シャイで、「この子芝居出来るのかな?」という感じ。

本読みは全体でやったのではなくて、南沙良さん、渡辺真起子さん、二階堂智さんの家族役だけでやったんですけど、電車に行くまでのシーンで、本物にしか見えなくて、もうこれは何も言わなくてもいけちゃうんじゃないかなと。役とマッチしている感じがずっとバァーっと出ていたので、彩花にしか見えなかったです。

本読みの前は全然違いますけど、本読みで声を聞くと何かが乗り移ったような感じでやっていたので、それはスゴイなぁと思っていましたし、それは自分の想像を超えていました。あとは現場で彼女の気持ちを尊重しつつ、間違っていたら指摘しようくらいです。
逆に、その他のメンバーの方が演出は大変だったイメージがあります。

―――― ありがとうございます。お話の中にあった夕日のシーンですが、富山県の某有名な場所なのだと思いますが、あの場所について教えてください。

坂本欣弘監督
砺波市(となみ)の山の方の展望台です。鉢伏山(はちぶせやま)です。
5月になると県外から300人くらいのカメラマンが集まるような有名なスポットです。そこでは撮影が出来ないので、実は裏山みたいな場所まで登って、木も切ってもらって撮影しました。

―――― 映画作りという意味で、監督の拠点が富山県にあり、舞台も富山県。地方のスタッフを中心に映画を作るということは、新しい映画の作り方、ひょっとすると地方発の映画作りが定着していくようにも見受けられますが、監督はどのようにお考えですか?

坂本欣弘監督
前作『真白の恋』で“なら国際映画祭”に参加した時に、河瀨直美監督が奈良でずっと撮っていることも聞いていて、ディスカッションをした時にも「今は地方でも映画を撮っていける」と。河瀨さんは奈良出身で奄美にルーツがあるようで、そちらでも撮っていますけど、そういう自分が生きてきたルーツを探りながら映画を撮ることは素敵なことだなと思いました。

富山の場合は、北陸新幹線も開通して、行こうと思えば2時間で東京に行ける距離です。渡辺真起子さんとも「東京にいないと出来ないというものではないですよね」という話になり、僕自身こうやって富山でやっていますけど、色んな人の助言だったり、アドバイスを受けて、自信を持って富山でやることが出来ている感覚です。正直、出来るとは思っていなかったです。

―――― 本当に素晴らしい作品で感動しました!
とても悲しいのですが、佐々木すみ江さんがお亡くなりになりました。監督の思い出があればお聞かせください。

映画『もみの家』佐々木すみ江

本作が遺作となった佐々木すみ江さん

坂本欣弘監督
すみ江さんとはクランクイン前から方言の資料を送ったり、何度もディスカッションをしていました。僕らは基本的には台本にある言葉を富山弁に起こして渡すのですが、本番に佐々木さんがアドリブで富山弁を話して、僕らが教えていないことを調べたのか、地元の方に聞いたのか分からないですけど、それが自然に出てきたので凄いなぁと思いました。

あとは、撮影中の休憩時間とか、それこそ初めてお会いした時とか、映画に限らず戦争の経験のことなどを僕に教えてくれました。実は、最初は僕の祖母の声で方言のテープを撮って、送ったりしていたんです。だから正直、自分のお祖母ちゃんと近い年齢だったりするので、うーん、自分のお祖母ちゃんが亡くなられたくらい、突然だったので色々と受け入れられないこともありますけど、色んなことを教えていただいたという感じです。

映画『もみの家』南沙良

―――― ありがとうございます。
また、ラストの音楽「明日は、」もこの物語にぴったりでした。羊毛とおはなの千葉はなさんが亡くなっていることを知らなかったのですが、以前から注目されていたのですか?

坂本欣弘監督
2008年に下北沢のヴィレッジヴァンガードでCDを聞いて、その後、羊毛とおはなさんが映画とかCMの音楽をやっていることを勿論知ることになりました。でも、富山出身だということは地元に帰ってきてから知りました。

この映画の音楽について色々な話をしていた時に、色々な候補がある中で決め手は「明日は、」を聞いたことです。この曲は知らなかったのですが、「なんてこの映画とぴったりなんだ!」と思って、これ以外ないのではないかということでお願いしました。

―――― 偶然の巡り合わせのようでいて、監督からお聞きすると必然のように感じます。

坂本欣弘監督
ありがとうございます(笑)。

―――― 親子の関係とはいえ、我々観客は第三者の目線で社会的な問題に向き合っているのだと思います。今の社会で引きこもりに関する問題があるとすれば、一言では表現し切れないと思いますが、どういう問題だとお考えでしょうか?

坂本欣弘監督
僕が取材をしてきた中で、よく言われるのは家庭環境です。いじめとかそういうことでなければ、家庭環境に問題を抱えている子がかなり多い。そう言われていたので、その雰囲気はこの映画に入れたいとずっと思っていました。(編集で)カットはしていますけど、それを想起させる台詞は色々と撮っていたのですが、自分の想いが強くなってしまうのでそこに行き過ぎるのもよくないと。引きこもりの子は家庭環境に問題を抱えているということはよく聞きます。

―――― 監督の映画の作り方にも興味がどんどん沸きました。最後に見所も含めてメッセージをお願いします。

映画『もみの家』

坂本欣弘監督
一年を通して富山の美しい四季を撮り、そこにいる温かい人々と、少女の成長を丁寧に描いた感動できる作品だと思います。是非、期待をしながら映画館で観ていただけたらと思います。

―――― ありがとうございました!!

3月20日(金・祝)より、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー!
2月28日(金)より、富山県で先行ロードショー!

予告動画

映画『もみの家』作品情報

主演:南沙良
出演:渡辺真起子 二階堂 智 菅原大吉 佐々木すみ江 島 丈明 上原一翔 二見 悠 金澤美穂 中田青渚 /  中村 蒼 / 田中美里 緒形直人
監督:坂本欣弘
脚本:北川亜矢子
音楽:未知瑠
製作:映画「もみの家」製作委員会
制作プロダクション:コトリ
配給:ビターズ・エンド

©「もみの家」製作委員会

www.mominoie.jp

もみの家

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