映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』細田善彦さん【インタビュー】

   
映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』細田善彦さん

映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』
細田善彦さん【インタビュー】

新型コロナウイルスの影響で公開延期となった映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱の公開が7月31日(金)に決定しました。

当初公開が予定されていた4月10日(金)、その一報が我々のもとに届きました。大林宣彦氏、逝去。残念ながら本作の公開の日を大林監督がこの世で迎えることは叶いませんでした。しかしながら、数々の大林監督作品は私たちの心の中に生き続けていきます。

大林宣彦監督が新しい世代へ託す力強くて優しい最期のメッセージ。誰も体験したことがないエンタテインメントの誕生です!

今回は、本作で団茂役を演じた細田善彦さんにお話を伺いました。細田さんにとっても全てが大切な経験となった本作の制作を振り返っていただきました。そして細田さんが大林監督から受け取った“”を打ち明けていただきました。

映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』細田善彦さん

団茂役の細田善彦さん

大林宣彦監督との出会い

―――― 映画『ピアまちをつなぐもの』では好青年の医師を演じていらっしゃいます。その細田さんのイメージが残っていたので、本作ではかなりエネルギッシュで、型破りな一面を楽しむことが出来ました。

細田善彦さん
そう言っていただけるととても嬉しいです。

―――― 179分の長編で見応えがありましたが、撮影自体も長期間に及んだのでしょうか?

細田善彦さん
2年前の夏だったんですけど、2ヶ月ぐらいでした。
広島県の福山市に滞在して、尾道へ行ったり福山で撮ったりしました。

―――― 作品の中の映画館は尾道に実在するんですか?

細田善彦さん
あれは倉庫にセットを造っているので実在はしないです。

―――― そうなのですね。ところで、オファーを受けた時はどの様に受け止めて作品に挑まれたのかお聞かせください。

細田善彦さん
監督との出会いがちょっと特殊でした。

そもそもこの映画自体が何年か前に撮影しようとしていたもので、色んな都合でズレてしまったようです。そのため、当初、メイン3人を予定していた方のスケジュールが合わず、それでオーディションが開かれたんです。その時に、うちの事務所のマネージャーさんにも相談があって、僕のプロフィールを見た監督が「細田に会いたい」みたいなことを仰って下さったんです。

オーディションを受けるつもりで監督に会いに行ってみたら、ものの5分ぐらいで「一緒に映画を撮ろう!」と握手してくださって、それで出演させていただくことになりました。

―――― 役のイメージにぴったりだったんでしょうね!

映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』細田善彦さん

細田善彦さん
いや、それが(笑)

馬場毬男(役:厚木拓郎さん)、鳥 鳳介(役:細山田隆人さん)、団茂(役:細田善彦さん)という3人の男が出てくるのですが、その中の誰かをということで、「他の2人とのバランスを見て、誰の役にするのかを決めさせてくれ」ってその時は言われたんです。

僕としては映画好きの毬男かな?と思ったりしてたんですけど(笑)
まさか自分が不良っぽい役とは思わず、「こっち?へぇー!」って思ったのが最初に役をいただいた時の印象でした。

海辺の映画館

大林宣彦ワールド!

―――― 団茂はヤクザへの憧れがある反面、優しい性格も持ち合わせています。さらに、父親がお坊さんなので継ぐか継がないかという話もありました。そんな団茂をどういう風に自分の中に取り込んで、演じていこうと思われたのですか?

細田善彦さん
そうですね。
衣装や髪型を、撮影に向かうまでの間に監督を含めて何度も試行錯誤をしながらキャラクターを一緒に創っていったんです。

例えば、冒頭で登場する花柄のスーツ。誰が想像したらあれになるんですか?っていう(笑)。衣装合わせの最初にあのスーツを着たんですけど、自分の想像が及ぶ範囲を超えたところを監督が求めてらっしゃるのがよく分かりました。

僕は、カッコつけたチンピラみたいな役だから、黒っぽいスーツかな?と、勝手に思っていたものが、まさかの花柄。その様に監督が外見から細かく演出してくださったのでそれに合わせて心も完成されていったのだと思います。

映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』細田善彦さん

―――― あの花柄の衣装も大林ワールドなんでしょうね。しかも、ヤクザを気取った型破りな感じが、あの雨に濡れたせいなのか見え方が変わってきます。

細田善彦さん
団茂は、雨にずぶ濡れになりながら登場してくるのですが、あのシーンは初めて観た時めちゃくちゃ嬉しかったですね。

監督とのエピソードは沢山あり過ぎて何から話して良いか分からないですけど、あの登場シーンだけでも色々あったんです。

団茂は下駄を履いている設定だったのですが(花柄のスーツに下駄)、撮影当日、僕は衣装合わせで決めた〝黒色の鼻緒″の下駄を履いてたんです。だけど監督が、「坊主の子だよなぁ。家の物をつっかけて来たとしたら坊さんは〝白の鼻緒”なんだ」と監督がおっしゃって、そしたら、スタッフが「探して来-い!」って。そこから鼻緒が白い下駄を誰かが見つけて来るまで待機になったんです。見つからなかったら今日の撮影は中止みたいな、そういう雰囲気。自分にとっての撮影も最初だったので凄い緊張しましたね。このまま見つからなかったら撮影出来ないのかな?と思いながら「誰か〝白い鼻緒″の下駄を見つけて!」って祈っていました(笑)

結局、尾道の方も協力してくださり、30分くらいで白い鼻緒の下駄は見つかったのですが、、、
今度は階段の幅が狭く、雨の中、下駄を履いたまま歩くのは難しいから、手で下駄を持って階段を降りてみようと。
その結果、完成した、僕の登場シーンです。撮影では1シーンごとにたくさんのドラマがありました。

―――― 撮影の中では色んな驚きがあったと思いますが、団茂の個性、結局どんなキャラクターだったかと思われますか?

細田善彦さん
派手な格好をしたり不良少年の様に振る舞っているけど、実は何にも染まっていないというか、登場人物の中で一番感受性が豊かな人間かなと思っているんです。
歴史好きの鳳介と映画好きの毬男は、割と最後まで変わらない、劇中で5本の映画を体験することになるのですが、無知だった分、一番色んなことを吸収して、それによって成長していくキャラクターなんじゃないかなと思っています。

映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』細田善彦さん

―――― 自分のなりたいものと現実とにギャップを抱えつつ、最終的には父への共感のようなものも見受けられ、茂の変化を感じることが出来ました。
ところで、共演者の方々ですが、まず成海璃子さん演じる斉藤一美と恋仲を演じています。成海さんも大林組初参加ですが、演じるに当たって何か会話はされましたか?

細田善彦さん
これから撮影するセリフやシーンに対しての話は一切してないです。

成海さんとは本当にたくさんの時間を共有させてもらいました。撮影以外でも他の共演者も含めて何度もご飯を食べに行ったりしましたね。「今日の監督の演出びっくりしたね」とか、その日に撮影現場で起きた話をつまみに飲んでました(笑)

映画の最初にタップダンスや傘を使って踊るシーンがあるので、出演者みんなで練習をしましたね。その部活のような体験がチームワークを良くしてくれたと思っています。

海辺の映画館

―――― 細山田さんや厚木さんの印象についてはいかがですか?

細田善彦さん
細山田さんには大変助けていただきました。大林監督の作品に多数参加されているので、監督のことや大林組の撮影現場のイロハについて教えていただきました。細山田さん自身はとても真面目な方で、年齢的にもお兄ちゃんでしたし、現場のまとめ役?いや、もはや世話役でしたね(笑)
僕、成海さん、山崎紘菜さんはふざけてばかりだったので、それをうまく細山田さんがまとめてくれてました(笑)。

厚木さんに関しては、不意に変な動きを始めるスイッチが入ったり、かなり自由な印象ですね。スーパー銭湯に行くのにハマってましたね。2ヶ月滞在していたのでそれぞれの暮らしがありました(笑)

―――― 毬男は愛に生きるというか、ずっと希子(のりこ)を守るみたいな役でした。ちなみに希子役の吉田玲(よしだれい)さんはオーディションで選ばれたのですよね?

海辺の映画館

細田善彦さん
それがオーディションじゃないんです。この話も大林監督らしさが詰まっていると思います(笑)。

監督が映画祭でご覧になった作品に吉田さんが参加していたのを鮮明に覚えていらしたみたいで、今回キャスティングする際に「あの映画祭で観た、あの映画の、主役の横にいたあの子だよ」って監督はおっしゃったらしいです(笑)。勿論、事務所に入っているわけじゃないので、「どの映画祭だ?どの映画だ?どの子だ??」みたいな感じでキャスティングチームは捜し始めて、監督に出会わせて「そうそう」みたいな感じだったみたいです(笑)。

※吉田玲さんは映画『隣人のゆくえ―あの夏の歌声―』(2017年、柴口勲監督が中高生40人と制作したミュージカル映画)に出演。

―――― 呼ばれた本人もビックリでしょうね。

細田善彦さん
ですよね(笑)
僕もビックリでした(笑)

希子役の吉田さんとは広島で初めてお会いしたんですが、それまで、写真すらなかったんです。
今の時代、大抵の共演者の方は名前を検索すれば写真が出てくるんですけど、ネットに載ってる子じゃないので、初めて会った時は「どうも…」みたいな感じでした(笑)

―――― 大林さんってやっぱりスゴイですね(笑)
演技指導で大林監督から“こういう風にしてくれ”とか“ああしてくれ”っという中で、一番記憶に残ってるのは、どんなシーンや指示だったですか?

細田善彦さん
沢山ありますけど、本番直前まで違う台詞を言っていたんですが、本番になって「ヨーイ、、、」ぐらいのタイミングで「やっぱりちょっと待って」って台詞を渡されて、台詞が変わることもありました。

芝居を練習してたりすると、練習するなじゃないけど、段取りを決めるな、と。つまり計算されたものって計算以上にならないんだと思うんです。僕なんかの計算って、誰にでも見破られちゃうから、もうお前は余計なことを考えるなってことだと思うんです(笑)
それは今スゴイ身に染みていて、僕が計算しても仕方ないなって思いました。

役者細田善彦を全面に!

―――― 自分の隠れた感性を引き出されるみたいで、かなりエネルギーを使うのではないでしょうか?

細田善彦さん
エネルギーを使った感覚はなかったのですが、監督の求めていたものって、団茂っていう役を通した上で細田善彦を全面にだすことだったのかもしれません。

でも、そのお陰で初めてこの映画を観た時に、自分が見たことのない自分が沢山そこに居たので、凄く感謝してますし、面白かったです。映画の中でどう役を演じるかじゃなくて、自分が映画の中でどう生きるかっていうことを教えていただいたと思います。

映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』細田善彦さん

―――― 大林監督とのお付き合いが自分の芸を深めてくれる、まさに大林組と言われる所以ですね。

細田善彦さん
その通りだと思います。

―――― 大林監督と言えば戦争3部作、そして尾道3部作です。尾道と監督との繋がりは随所に感じるところがありましたか?

細田善彦さん
この映画の本編で毬男の過去のシーンが出て来るんですが、それは、彼(厚木拓郎さん)が出演してる大林監督作品の「マヌケ先生」の映像なんですよね。
ちなみに、厚木さんのマヌケ先生での役柄は監督の子供時代の役だったんです。
あのシーンは台本に無かったので、厚木さんが一番ビックリしてました(笑)

「僕のお祖母ちゃんはね…」って一人映画館で毱男が語るシーンなど、撮影や編集が全部終わった後に追撮されたシーンもありました。
映画好きだった大林監督の役を彼(厚木さん)がやって、それが今度映画好きの青年の役として登場してるいるので繋がっているのかもしれません。

―――― 中原中也の詩も随所に散りばめられていて、表現手法として巧みだなと思いました。

細田善彦さん
あの詩も台本には載っていないんです。
ナレーションだったり、中原中也さんの詩だったりも全部編集の際に追加されたものなので、「そう編集されるのか!」って思いながら僕も観ていました。

海辺の映画館

ありがとうと愛に溢れた撮影現場

―――― 印象に残っているのは、戦争の酷さ理不尽さの中でも「人を愛する気持ちで物事を決める」といった台詞です。また、本作では戦争の最中でも常に恋愛物語が展開されていて、戦争中だけど人が愛し合っている現実があるよ、といった目線です。
愛をもって物事を見ていくことの重要性を受け止めさせていただきました。

映画「海辺の映画館-キネマの玉手箱」大林宣彦監督&常盤貴子さんほか豪華ゲスト! TIFF2019 東京国際映画祭

第32回東京国際映画祭レッドカーペット

細田善彦さん
今仰ったことって僕が大林監督と一緒にいると感じることだったりするんです。

大林組の撮影現場は「おはようございます」って監督と握手をして始まり、「お疲れ様でした」って握手をして終わるんですが、その時に監督は「お疲れ様。今日の撮影あそこ大変だったよね。」みたいな、ちょっとした感想と「今日もありがとうね。」と伝えてくださるんですよね。この〝ありがとう″っていう言葉がなんだか、不思議と暖かく、なんだか、恥ずかしくなるような、こんなに一人の人から「ありがとう」って言われた経験ないっていうぐらい監督に「ありがとう」って言っていただいたんです。

自分の周りの人に感謝し、愛情持って接するという、ついつい忘れてしまいがちなことを監督からたくさん学ばせていただきましたね。そういった、監督の愛情は画面越しに出てるんじゃないかなと思います。

―――― 人間として大切なことを大林監督から教えていただいたように感じます。
細田さん個人についてもお伺いしたいのですが、本作の経験を経てこれからどんな俳優を目指そうと思われているのか教えてください。

映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』細田善彦さん

細田善彦さん
大林監督との出会いもそうですし、どんな役と出会えるのかは運とタイミングでしかないと思うので、出会えた役にどんどん飛びついて行こうと思ってます。

実は2月にカンボジア映画に参加させていただいたんです。日本人は僕一人、カンボジアの方に囲まれて撮ってたんですけど、もう面白くてしょうがなくて。それも本当に運とタイミングで参加させてもらったんですけど、大林監督の作品も僕にとっては未知で物凄く良い経験になりましたし、そのカンボジアの映画も初めてのことだらけで本当に面白かったんです。

自分としては違う国でもいいですし、映画や映像というジャンルを通して、どんどん知らない世界、知らない国に飛び込んで行きたいです。

オファー待ってます!笑笑

本当にどこの国でもいいので中国でも、韓国でも、アフリカでも南米でも、もちろんハリウッドでも。知らない所でのモノ作りが本当に面白かったので、自分の体が丈夫なうちにいっぱい映画作りに参加したいです。

映画ファンへメッセージ!

―――― 花柄スーツもメチャメチャ似合っていましたし、どんどん色んな役に挑戦してください!最後に作品の見所を含めて映画ファンにメッセージをお願いします!

映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』細田善彦さん

細田善彦さん
正直、僕は最初観た時に“スゴイ!!”としか言えなかったんです。初めてこんな映画を観ました。
多分、観ていただいたら僕の気持ちが分かっていただけると思うんですが、、、

なんて形容していいのかわからないですが、監督のエネルギーが爆発している作品だと思います。
確実に観たことのないものを観ていただけると思いますので、是非劇場で極上の映画体験を味わっていただきたいと思います。

海辺の映画館

関連記事:大林宣彦監督最期のメッセージ『海辺の映画館―キネマの玉手箱』7月31日公開決定

細田善彦さんから公開決定について喜びのコメントが到着しました!!


映画『海辺の映画館—キネマの玉手箱』作品情報

監督
大林宣彦

キャスト
厚木拓郎 細山田隆人 細田善彦 吉田 玲(新人) 成海璃子 山崎紘菜 常盤貴子

製作:『海辺の映画館—キネマの玉手箱』製作委員会(吉本興業/TANAKA/バップ/アミューズメントメディア総合学院)
配給:アスミック・エース
製作プロダクション :PSC
©2020「海辺の映画館—キネマの玉手箱」製作委員会/PSC
公式HP umibenoeigakan.jp
公式Twitter @umibenoeigakan  #海辺の映画館

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