映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』末永賢監督インタビュー

映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』末永賢監督

映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』
末永賢監督インタビュー

ドキュメンタリー映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』が、2020年7月18日(土)より、新宿K’s cinemaにて公開です。

映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』

結成50周年を迎えた伝説的ロックバンド‟頭脳警察”(PANTA・TOSHI)が、新たにギター・澤竜次(黒猫チェルシー)、ベース・宮田岳(黒猫チェルシー)、ドラム・樋口素之助、キーボード・おおくぼけい(アーバンギャルド)といった若きミュージシャンを加え、‟頭脳警察50周年バンド”を始動!”頭脳警察”と同じ時代を歩んできた者、その背中を追ってきた者、あらゆる世代の表現者の証言とともに、変わらぬ熱量を保ち続ける‟頭脳警察”の現在と過去を追うもので、本作を観れば頭脳警察の音楽に惹かれ、人間性に憧れること間違いありません!

今回は、末永賢監督に頭脳警察の魅力、そして頭脳警察の生き様について語っていただきました。

映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』末永賢監督

末永賢監督

ミュージシャンの力

―――― 本作を観て、頭脳警察の音楽にハマりました!まず、監督と頭脳警察との出会いについてお聞かせください。

末永賢監督
元々ロックに詳しいわけではなくて、どちらかと言えばRCサクセションとか椎名林檎さんを聴いていたんです。頭脳警察、特にPANTAさんとの出会いは2015年に『いぬむこいり』という4時間の劇映画がありまして、スタッフとして参加した時が初対面でした。勿論、頭脳警察はもっと前から知っていましたが、その時は活動もされていなかったので、いわゆる伝説のバンドでした。

ミュージシャンの方は一つの場面を任されると圧倒的な力があるんです。『いぬむこいり』はPANTAさんと「勝手にしやがれ」というバンドの武藤昭平さんの2人だけが対峙する長い場面があって、普通に考えたら深刻な場面にミュージシャンだけ2人並べてどうするんだ!って思うんですけど、それが上手くいくんです。噺家や相撲取りもそうですが、一つの舞台を任されている人は違うんです。

映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』末永賢監督

―――― PANTAさんの声を聞いていると、非常に若々しく感じます。PANTAさんの声とバンドが持つリズム感、監督はどのように受け止めているのですか?

末永賢監督
確かに声は声量もそうですし、表現力として圧倒的な存在感を感じます。

―――― 伝わってくるものがあるんですよね。また、アルバム「乱破(らっぱ)」に収録されている「乱破者(らっぱもん)」のレコーディング風景が映し出されていて、その時PANTAさんは歌詞にある言葉を入念に確認されていました。

末永賢監督
「影が討つ」ですね。

濁音が続くので言葉として言い難いんです。「かげがうつ」「かげがさす」って日本語的に言うと「かげ」の「げ」は鼻濁音。「け」に濁点でなく「け゜」と丸がつくようなイメージで、尖らせない濁音です。続く「が」もそうなんです。「かけ゜か゜」って“丸まった音”だと、どうもPANTAさんとしては歌いづらいと。自分で歌詞書いてるんですけど(笑)。だからこれは完全な濁音にして「かげがうつ」、これはアナウンサーならきっとNGなんですけど、あえてそれを選択されて使っています。

―――― なぜか伝わってくる、その正体を知りたくて歌詞に秘密があるのかなと思ったんです。

末永賢監督
詩を作っている現場には立ち会うことは出来なかったのですが、リハーサルを繰り返していく中で少しずつ変わっているんです。例えば、30年前の曲でもちょっと歌詞が変わっている曲もありました。

―――― 想いや社会情勢、ロックやリズム感、これらが独特なんじゃないかとも思いました。素直な感情を表に出していく、理屈を超えて浸透してくるものがあり、聴けば聴くほどハマっていくんです。

末永賢監督
PANTAさんにお伝えしたいですね!!(笑)
感動されますよ、とてもいい表現だと思います。

映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』末永賢監督

時代を経て、音楽が残った

―――― 冒頭は激しい学生運動から始まりますが、解散を経て、頭脳警察の音楽を聴いていると歌詞のメッセージ性は勿論、音楽として今聴いても本当にいい曲ばかりでした。

末永賢監督
これはPANTAさんの言葉なのですが、「当時は政治的な文脈で捉えられがちだったんだけど、時代を経て、音楽の方が残った」と、まさにそういう事なんです。

映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』PANTA

―――― ライブ活動中心の道、いわゆる当時の“ミュージシャン”とは別の道を進んだというお話がありましたが、それはどういう理由が背景にあったのでしょうか?

末永賢監督
「少々“過激”とされるものであれば、なおさら多くの人に問いかけなければ意味がない。つまり“ポップ”でありたいんだ」とPANTAさんは言ってます。だけど、歌謡曲という大資本の中で人に飼われてやっていくこともまた違う。そのまま飼われてなるものかという時代があった。そこで完全にインディーズに進んでしまうのではなくて、自分たちなりの道を自分たちで見つけていったんだと思います。

70年代前半は“政治的”という部類に括られていたと思うのですが、それはマスメディアが非常に分かり易い言葉で表現しているわけです。それがマスメディアの仕事でもあるわけですから。でも、それをそのまま鵜呑みにする人が時代を追うごとにどんどん増えていて、その“括り”からちょっと外れると“分かりづらい”とされる。理解の外に置いてしまっている感じが僕はするんです。それが面白いものを見逃してしまうことになり、非常にもったいないと思います。

芸術活動とは?理不尽とは?

―――― 理不尽がある限り頭脳警察は生き続けていく。理不尽自体は時代によっても変わると思っていて、昔はイデオロギーとそれが及ぼす現実との闘いで、その間にドキュメンタリーや芸術活動があって繋いでいる、そういう構造だと思っています。監督が考える芸術活動とは何ですか?

末永賢監督
僕は正直映画を芸術だと思っていないんです。

工芸品ではないですけど、こういうものを作ってくれと言われて、発注者が求めていて、観る人もある程度喜んでくれるもの、かつ自分の納得がいくものを作っていけばいいと思っているので、芸術だとは思っていないんです。

理不尽に関しては、どんな社会であっても、人が存在すれば理不尽なことが必ずあると思うんです。物事と物事が必ずしも同一でない時に、現実にそこにある距離や違いを時代時代で取り逃がさずにいければいいかなと思います。

昨今のコロナ騒ぎでこれからどんな時代がくるのだろう?と皆が考えていると思いますが、2011年以降に「繋がろう、繋がろう」という事が盛んに言われたと思うんです。それに対して、「暑苦しい、息苦しい」という声もあって、それも矛盾ですし、理不尽ですよね。今は逆に距離を置こうとなって、ソーシャル・ディスタンスっていう変な言葉が流行していますが、フィジカル・ディスタンスですよね。それぞれが家にいても仕事が出来ることがここ数か月である程度は立証されました。何が何でも一緒にいないといけないということもないんです。

「心を一つにしよう」なんて言葉も未だにありますが、心は一つになる必要はないと思います。大人は皆分かることだと思いますが、思っていることが違っていても、仕事なら仕事をみんなでやり遂げることが社会的な行動だと思うので、結果が出せればいいわけで、思っていることはみんな違っていて良いと思います。

実際に僕はこの映画の監督ですが、プロデューサーとも意見が違うことはありますし、客観的に考えるとプロデューサーの考え方が面白いこともありました。

―――― 例えば、どんなことで食い違いがあったのですか?(笑)

末永賢監督
結構いっぱいありますよ(笑)

「監督+編集」という肩書きは、非常に作家的で濃密な空間がそこにあるかのように聞こえますが、考え方や物事の作り方がミクロになってしまうんです。客観的に物事を見られない。要するに、このワンカットワンカットをどう繋ぐか、もっと技術的に言えばこの1/30秒をこっちにするかどうかに一日中没頭してしまう。でも、それは監督の仕事じゃなくて編集助手の仕事です。監督としてはもっと俯瞰してみないといけないはずですが。

だけど、僕が100回くらい観たものをプロデューサーに見せると、「ここは上手くできているけど、ここは逆に繋げてもいいんじゃないの?」とか。僕としては、それは考えてなかったけど、ちょっとやってみようかなとか。

この作品においては、それぞれの場面にどの楽曲が出てくるか、それが一つ一つの“章”になっているんですけど、「第5章は第7章の後でもいいんじゃないの?」とかの切り替えは途中から客観的な意見も参考にしました。

―――― 意見の対立ではなく、見方の違い?でしょうか。

末永賢監督
対立でいいと思うんです。物事って対立しないと絶対に面白くならないので。近頃は対立することを忌避して、とにかくお互い仲良くやることだけが求められがちじゃないですか。もしかすると2011年以降なのかもしれませんが。中高生なんかと話していると非常にそういう事が多くて、こういうことを言うと誤解を招くから止めましょう、とにかく分かり易くやりましょうって。それによって面白いことがドンドンそぎ落とされてしまう。

―――― 劇中にPANTAさんの弾き語りで「悲しみよようこそ」が流れて、あの作品が監督の今のお話と重なるように感じます。

末永賢監督
あれも確かPANTAさんと橋本治さんという大作詞家の2人があえて共作にしたんです。お互いがそれぞれ作った方が速いけど、あえて面白いから一緒に作っているんです。

頭脳警察の生き様

―――― 理不尽さというのはどこにでも存在するわけなので、頭脳警察はあるべくして存在しているのですね。

末永賢監督
そうだと思います。

―――― そして、どういうわけか著名な方々がライブを聴いていて、頭脳警察の周りに人が集まっていますよね。

末永賢監督
PANTAさんが非常に社交的なこともありますし、ライブが終わると自分から楽屋を出て行って、ゲストたちと握手をしに行くんです。TOSHIさんは対照的に楽屋にいて、「あっ、そろそろ喫煙所空いたかな?行ってこよう」みたいな(笑)その2人の在り方が凄く素敵なんです。

映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』

―――― 2人の間には言葉ではないものが流れていますよね。

末永賢監督
根底で信用出来ているものがあるから、仲良くする必要がないんですよ。70歳を過ぎても友人というか同志というか仕事仲間というか、ああいう人がいるということは羨ましいですよね。

―――― そして、年齢を感じさせない、若さ、エネルギーに溢れています。

映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』PANTA

末永賢監督
90年代生まれの若者とあえて一緒にやったのもスゴイです。

そして、キーボードのおおくぼけい君(アーバンギャルド)のところへ聞きに行く場面があって、何かの拍子に敬語が出るんです。あれが素敵だなって。だってPANTAさんは大ベテランで、西部劇で言ったらジョン・ウェインです!それが若いガンマンのところへ行って、「この銃どう思う?」じゃなくて「どう思いますか?」って聞いちゃうんです(笑)。

お互いにミュージシャンとして凄く尊敬しているんです。あの場面はおおくぼ君というアレンジャーに“教え”を請いに行っているんです。その姿勢って素敵じゃないですか?普通だったらおおくぼ君が鍵盤を持って、PANTAさんの所へ行きますよ。逆ですから(笑)

映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』末永賢監督

今、本当に50代の男性って世の中で邪魔者にされているじゃないですか、扱い難いって。それはこちら側に反省することが多々あります。だってオジサマたちは30歳前後の若手に向かって中々素直になれないんじゃないですか?そして、大人がくだらない忖度をしてしまえば若者も間接的に染まっていく。世代を超えて伝染していますが、こと頭脳警察に関しては違いますね。

まさに、音楽のみならず生き方も学んで欲しいです。

末永監督から動画メッセージ!


キャスト

頭脳警察(PANTA、TOSHI、澤竜次、宮田岳、樋口素之助、おおくぼけい)

加藤登紀子(歌手)、植田芳暁(ミュージシャン)、岡田志郎(ミュージシャン)、山本直樹(漫画家)、仲野茂(ミュージシャン)、大槻ケンヂ(ミュージシャン)、佐渡山豊(ミュージシャン)、宮藤官九郎(脚本家)、ROLLY(ミュージシャン)、切通理作(評論家)、白井良明(ミュージシャン)、浦沢直樹(漫画家)、木村三浩(活動家)、うじきつよし(ミュージシャン)、桃山邑(演出家)、春風亭昇太(落語家)、鈴木邦男(活動家)、足立正生(映画監督)、石垣秀基(ミュージシャン)、アップアップガールズ(仮)(アイドル)、鈴木慶一(ミュージシャン)、髙嶋政宏(俳優)ほか<登場順>

監督・編集

末永賢

『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』作品情報
企画・製作プロダクション:ドッグシュガー
製作:ドッグシュガー、太秦
配給:太秦
[2020年/DCP/モノクロ・カラー/スタンダード・ビスタ/5.1ch/100分]
©2020 ZK PROJECT
公式サイト:http://www.dogsugar.co.jp/zk.html

PANTA、TOSHI両氏コメント到着!映画「zk/頭脳警察50 未来への鼓動」予告解禁

7月18日(土)より新宿K’s cinemaにて公開!

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