城定秀夫監督のモットー!青春映画『アルプススタンドのはしの方』公開記念インタビュー

映画『アルプススタンドのはしの方』城定秀夫監督
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城定秀夫監督のモットー!
青春映画『アルプススタンドのはしの方』
公開記念インタビュー

全国高等学校演劇大会で最優秀賞の名作戯曲を映画化した『アルプススタンドのはしの方』が7月24日(金)よりシネマカリテほか全国順次公開です。

本作は高校野球・夏の甲子園の一回戦、スポットライトを浴びている選手たちを観客席の端っこで見つめる、冴えない高校生たちを描いた青春映画。

今回は公開を記念し、デビュー以来、数多くのVシネマ、ピンク映画、劇場映画を監督してきた城定秀夫監督に青春映画のオファーが届いた経緯から、城定監督が作品作りで心がけていること等たっぷりと語っていただきました。

アルプススタンドのはしの方、画像

映画との出会い、そして想いとは

―――― 監督と映画との出会い、そして映画監督を目指すに至ったきっかけを教えてください。

城定秀夫監督
映画を観始めたのは高校生の時です。当時は映画の2本立てを千円以内で観られる名画座があちこちにあって、学校終わりによく観に行ってました。高田馬場や池袋へ行ったり、銀座の並木座で古い映画を観たり。理系の学校に通っていたんですが、そういう環境の中で映画に触れていき進路を変更して映画の方に行きたいと思うようになりました。そんな中でロマンポルノと出会ったんです。大学に入ってからは意識的にピンク映画とかロマンポルノの方に行ってみたいなって気持ちで、まずはピンク映画の世界に入った感じです。

―――― 官能的なジャンルに対してどういった形での思い入れを抱かれたのですか?

城定秀夫監督
大作映画にはない、小さい世界の中で人間を描くことの面白さみたいな。当時はロマンポルノがなくて、まだピンク映画があって。瀬々敬久さんとかサトウトシキさんとかピンク映画の四天王が活躍していた頃。ピンク映画の世界が何かカッコイイなっていうのがあったんです。

映画『アルプススタンドのはしの方』城定秀夫監督

―――― 映し出されている世界だけじゃない、制作スタッフ陣に対する思いもあったのですね。

城定秀夫監督
大作映画はどうしていいか分からないっていうか、どうその世界に飛び込んでいいか分からない部分があって、ピンク映画ならある程度受け入れてもらえるのかなっていうのがあって、まずは職業として映画監督になりたい想いが強かったんです。

僕でいいの?青春映画オファーの裏話

―――― 今回は青春映画に挑戦されたわけですが、どんな経緯でオファーが届いたのでしょうか?

城定秀夫監督
高校演劇の舞台作品があり、それを浅草の商業演劇と映画の同時進行でメディアミックスをやりましょうという企画でした。僕のところに来たのはどうなんですかね。エロいのばっかり撮ってますから「えっ、僕でいいの?」みたいな気持ちが若干あったんですけど。

ただ、プロデューサーの直井さんとはデビュー当時から「いつか一緒に仕事しましょう」みたいなことで、仕掛けてくれた企画も何本もあったんですが、中々成立しなくて。今回もそういう中の1つかなって思ってたんです。ただ、いつもは企画をもらっても進められたら進めましょうという感じで、監督の自由にさせてもらえるみたいなところがあって、逆に言えば監督が動かないと企画が成立しないような感じなんです。僕はどちらかというと、小さい映画とかVシネとか食っていくための仕事が多いので、そっちが忙しいとウヤムヤになっちゃって、僕のせいもあって成立しないことが多かったんです。

今回は最初に資料をもらって、高校演劇の作品が凄く良かったんです。それで、今回こそは成立させましょうという事で、僕の方からも知り合いの制作会社に声をかけて、ちょっと退路を断つというか、背水の陣で、絶対やるってことで始めた感じです。

―――― 監督が物凄い意気込みで臨まれたんだなってことが伝わってきます。

城定秀夫監督
(笑)
そうですね。映画って立ち上がっても最後までいくのは何本かに1本なんです。企画が10本あったら3本とか、それぐらいしか成立しない感覚なんです。そんな中でそうならないようにしようみたいな部分がありました。

映画『アルプススタンドのはしの方』城定秀夫監督

―――― この作品のどの辺りに感動されたのでしょうか?

城定秀夫監督
最初は基となる高校演劇です。浅草の舞台よりももっと世界の狭い、廊下も一切出て来ない観客席だけで、先生も出て来ない4人だけの話。正直、ちょっとナメてたっていうか、直井さんがまた変な企画を持ってきたな(笑)ぐらいの気持ちで観たんです。打ち合わせがあるから観ておこうかなぐらいの感じで観たら、本当に泣いちゃって。何だろう?とか思って。そんなに特別なわけではないんです。想像通りの、コンセプト通りの作品だなと思ったんですけど、何でこんなに感動するんだろう?みたいなのがあって。ちょっと改めてもう一回観て、これは何か分からんが凄いなっていうのがあって、これは是非やりたいなって。

ただ、どこが凄いのか…。確かに話も凄く良く出来てるんですけど、あまり言葉じゃ説明出来ないところで、気持ちのコアな部分に触れてくる演劇だったんです。そこはどうやったら逃さないように出来るのかなみたいな。そこを色々変えちゃうとダメなんだけど、ここは変えちゃいけないっていうポイントがハッキリは分からないというか、多分色んな要素があった上で、ある意味色んな化学反応で、偶然的なものも多分あると思うんです。キャストのハマり具合とか、高校生が本気でやってる演劇の一生懸命さみたいなところも大きくあると思うんです。そこは商業映画にするとなくなっちゃう部分なんで、現役の高校生が商売と関係なくやってる部分がどうしてもなくなっちゃうんで、そこはプラスαの部分で補った上でという考えですかね。

映画と演劇の違い

―――― どちらかと言うと感覚的な世界の話だと思ったのですが、あえて映画と演劇の違い、映画にする上で一番難しかったところを教えてください。

城定秀夫監督
映画だからリアルにするところはリアルにしないといけません。高校演劇は登場人物は4人だけで、後はご想像にお任せですが、映画ではカメラの向きを変えたら奥側には人がいないといけないし、それをどこまで見せていいのかっていうところ。

球場はコンセプトとして見せないんですけど、それすら台本の最初の稿ではチョロッと見せていましたし、(バッターボックスに立つ)矢野君の後ろ姿があったり。例えば、茶道部の先生の回想として茶道部のシーンがあったり、そういう広げ方は映画だからいくらでも出来るんです。そういう事を取り入れた時に元の良さが損なわれるような気もして、どこで止めておくのかは悩みました。

スタンドだけ映せばいいと言っても、そこにも選択肢が山程あるし、エキストラが何人まで必要なのか、1,000人居れば良い画が撮れるのかと言えばそうでもない。プロデューサーとも揉めたのは、スコアボードを映すか映さないか。プロデューサーは映した方がいい、僕は映さない方がいいって。難しかった点は、そういうところの選択ですかね。結局、感覚的なものでしかないんです。人によってスコアボードはあった方がいいという人もいるし。

ただ、吹奏楽はコンセプトとしてやろうって。そこは音の演出が演劇とは違って、より立体的な、リアルな方向にしたかった感じです。

―――― 本作はラストにかけて音楽で盛り上がっていきますが、高校演劇ではブラスバンドの音は入っていないのですか?

城定秀夫監督
ブラスバンドの音は入ります。高校演劇も吹奏楽部部長の久住は居るので、人物として登場したのは映画が初ですけど。高校演劇も商業舞台も久住っていう人物は大きな存在として物語の中にいて、ただ彼女は映らなくて音だけが聞こえるような感じです。そこをちゃんと画にするのであれば、吹奏楽の演奏は物凄くこだわらなきゃいけない部分なんで。元々はある種、記号的な要素で演劇ではそれが良かったりもしたんですが、映画では戦略的にそこを肉付けしようと思いました。

アルプススタンドのはしの方、画像

―――― 作品全体を通じて監督が出演キャストの皆さんに求めたこと、演出を含めてどんなところをポイントにされたのでしょうか?

城定秀夫監督
当たり前に求めたのは、舞台から引き継いでいるので「映像の芝居にしてくれ」っていうこと。リアルにそこにいる、周りのモノもリアルに再現するので。ただ、どうしても音とかは現場では聞こえてこないわけなので、「聞こえているつもりで想像してやって欲しい、なるべくリアルな芝居をして欲しい」っていうようなことは当然のこととしては依頼しました。

その他はそんなに感情として難しいことを描こうとはしてないし、台本は難しい本ではないと思うんです。ただ、それを芝居でどうするかっていうのは個々人の役者の仕事なのでそこは信頼する。だから、今回は手取り足取りやった覚えはないですね。極力任せた部分もありつつ、どうしても画面構成上、必要最低限の動きは「じゃ、こうしてくれ」とか、それがやり辛そうな場合は「じゃ、変えましょうか」みたいなそういう感じです。

―――― キャストの皆さんにお任せした方がリアル感を持って対応してくれるということなんですね。

城定秀夫監督
映画のリアリティーも色々あると思うんですけど、この空気感の中でのリアルというか、クソリアルを目指したやつではないんで、ちょっと演劇っぽい部分も残ってはいると思うんです。それは必ずしも悪いことではないと思うんです。この映画のトータルの空気感として、有りのラインと無しのラインはやってくうちに多分皆共通して認識したと思います。

―――― 本来の高校生であれば、ひょっとすると喧嘩になったり、相手のことを無視したりするかもしれないところを、この4人はきちんと受け止めていて、よく出来た子たちだなとも感じました。それは作品だからこそ描けたのではないか、それ故にこの作品があるべきなのではないかと感じました。リアルとリアルではないところの狭間になるような気もします。

城定秀夫監督
そうですね。本当の今の高校生のリアルを描こうというコンセプトではないです。ただ、こういう子たちもいるだろうと。
その関係性をどう画面にしてみせていくのかは、セリフだけではなく表現していかなきゃいけない部分なので、ドキュメンタリータッチにとか、そういう意識はなかったですね。

―――― 女性陣の小野莉奈さん(役:安田あすは)、西本まりんさん(役:田宮ひかる)、中村守里さん(役:宮下恵)、黒木ひかりさん(役:久住智香)らの特徴を監督はどのように感じていましたか?

城定秀夫監督
キャラクターに関しては、女性陣は黒木さんを除いて演劇から参加しているので、1ヶ月も2ヶ月も稽古してる人たちなんで、僕よりも分かってる部分があるので、僕はそれをどう撮るかっていうことです。

繰り返しになりますが、芝居に関して何か言った記憶はそんなにないです。画面を作る上でこうして欲しいなど画面構成、離れていた人物が段々と話が進んでいくにつれて最終的には4人並ぶんですけど、そこにどう持っていくか。この子たちの感情を崩さないようにどう自然に動かすかみたいなところが今回の主な演出だと思います。それが舞台から広げた部分で、本物の球場を使うことにより必然的に変えなくてはいけない点でもありました。

アルプススタンドのはしの方、画像

―――― 平井亜門さん(役:藤野富士夫)は映画からの出演でしたが、特に戸惑うこともなく?

城定秀夫監督
凄く度胸がある。はじめは皆が演劇から引き継いでる中にポッと入って馴染めるかみたいな心配はありましたが、実際はそんな心配する必要は全くなかったです。むしろ、演劇をやってない分、直で映画の世界に入れたみたいなところは他の人よりあったかもしれないです。

城定秀夫監督が語る“しょうがない”

―――― “しょうがない”というキーワードがあります。何気なく使ってしまうネガティブワードだと思いますが、この4人にとっての“しょうがない”は、彼らにとって切実な想いです。“しょうがない”という言葉に監督はどんな世界を連想されますか?

城定秀夫監督
仰る通り、彼らにとっては凄く切実な“しょうがない”だと思います。

僕なんて本当にお金のない世界で映画をやってるんで、しょうがないだらけをいかにどうしようか?みたいな逆転の発想を狙ったり。そういう意味で、そこを正面突破していこうって考え方は実はあんまりないんですけど、そうなってくるとこの子たちの言ってることを否定しているような感じはあるんですけどね(笑)。

ただ、諦めて拗ねちゃってるような感じになったらダメだと思うし、世の中はしょうがないことは絶対的に起きますから。その時に、「じゃあ、どうしよう」みたいなところじゃないですか。僕はそういう考え方です。

―――― しょうがないだらけをやってきたということで、その良さも含めて作品創りは大変ですものね。

城定秀夫監督
この作品も途中で雨が降ってきて、「じゃあ、どうしようか」みたいな。「しょうがないね、こうしよう」みたいなのは、ネガティブな意味もポジティブな意味も含めてありました。

―――― 外の景色見ると木が揺れていて、風が強かったようですね。

城定秀夫監督
風が強い日もあれば弱い日もあるし、空が青い日もあれば曇って白い日もあるし、パラパラと雨が降っちゃった日もあるし。最後は大雨が降っちゃって、吹奏楽のシーンは2ヶ月ぐらい延びたんです。だから吹奏楽のシーンだけ景色が冬になっているんです。でも、冬晴れの日で空は真っ青でキレイな空になったんです(笑)。

―――― 話題が逸れますが、監督は野球お好きですか?

城定秀夫監督
野球は小学校ぐらいまでは無理矢理っていうか親にリトルリーグへ入らされてやってたんですけど。それも嫌々やってたんで好きじゃなくなっちゃった部分もあって、基本的にはプロ野球も観ないんです。

だから、この4人にかなり近いです。特に女性3人に非常に近い立ち位置で、今はそうでもないですけど、あんなことに一生懸命になってバカじゃないの?って思っていた時期もあったかもしれないです(笑)。

映画『アルプススタンドのはしの方』城定秀夫監督

モットーは芝居を邪魔しない

―――― 監督が映画を制作される際に、一貫して大事にされているポイントはございますか?

城定秀夫監督
やっぱり最終的に一番大事なものは芝居だと思うんです。それを邪魔しない演出をなるべく心がけてます。自分の作家性みたいなものを全面に出し過ぎると、結局役者の芝居を邪魔することがあると思うんです。なるべくそうならないようなカット割りやカメラアングルをそんなに無茶しない演出というか、ある程度役者が好きに動けるような環境を作ってあげたいみたいなところですかね。

やっぱり実際に画面の中で闘うのは役者で、こっちはその場を作ってあげることが仕事かなって。それをどう上手く見せていくかはそれの後の仕事かなって。一つの作品を作ろうとする中で、勿論、イメージはこちらにあるはあるんですけど、それをあまり押し付けないようにしています。

今回特徴的だったのは、実際に野球は見えないし、吹奏楽の音がどういう風に聴こえてるかは役者には分からない部分で、エアーで演じなきゃいけなかったことです。僕は事前に曲構成とか全部してたので、今ここで何の曲が流れて、向こうでどういうことが起こっているかっていうのは全部把握してるわけですから、それは逐一伝えた上で、後はあまり細かく「ああしろ、こうしろ」はさほど言わなかったです。

それもケース・バイ・ケースです。人によっては「3歩歩いて、笑って」みたいな演出をした方がいい人もいるし、今回はそういう風にしない方がいい人たちでした。

―――― 監督がこの作品の中で一番好きなカット、シーンを教えてください。

城定秀夫監督
やっぱり最後の盛り上がりですかね。

陽もいい感じに夕日が出てたりして、後ろでビカンと光ってるのはこっちで仕込んだ夕日というか、鏡なんですけど。実際そうなるといいなっていうスケジュール感でやったんですけど、なかなか当日どうなるかは分からない状況の中で、いい光に恵まれたのが最後のシーンです。

―――― ジーンときますよね。目に見えない世界で自分の気持をまとめてああいう風にして、しかも一体感とも違って、それぞれが自分のスタートラインに立つみたいな気持ちに変わっていく様が結構いいなと思いました。

城定秀夫監督
そういう意味でも作っていてもスリリングな部分があって、演劇とは違うし、実際外で撮るからいつ雨が降るか分からないみたいな部分もあるし。当初はそういう懸念もあるからバックは合成にして、全部作り込んでやるみたいな案もなくはなかったんです。現実的にナシなんですけど。でも映画は、そうじゃないもう少し水物感があっていいんじゃないかって思っています。

城定秀夫監督から動画メッセージ

7.24(金)シネマカリテほか全国順次ロードショー!

アルプススタンドのはしの方、画像

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