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3月10日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開となるブラジル映画『彼の見つめる先に』の主人公レオナルドは、いまだ社会でタブーとされる面がある盲目かつ同性愛という特殊なキャラクター。しかし、この映画はそれをメインテーマとせず、初恋、初めての欲望、そして青年期におけるあらゆる出来事を経験することにスポットを当て、年齢や性別に関係なく、誰もが自身を重ね合わせることができる普遍的な映画として見事に表現されています。今回は1月に来日したダニエル・ヒベイロ監督に単独インタビューを行いました。映画の魅力から、人を好きになること、そして監督が考える人間として大切なことなどたっぷりと語って頂きました。
『自立心』が強い少年 レオナルド

主人公のレオナルドは、特定の誰かをモデルにしたわけではないのですが、敢えて言えば、僕自身の10代の頃を投影している部分はあると思います。当時の私は自立したいという気持ちがとても強かったので、それが主人公を通して表現されて、盲目であるという部分も含めて、彼の在り方・キャラクターを形作っています。
特に盲目であるが故に、自分のことは自分でできるという事を示したい、やってみたいという気持ちは標準の若者以上に強いのかもれしません。けれども、10代の頃というのは根源的に反抗心、親なんていらないという気持ちが芽生えてきますよね。そういった点全てを彼(レオナルド役のジュレルメ・ロボ)が一心に引き受け、同時に彼に託しています。
リハーサルの時にも色々と試しましたが、ディテールを加えることで、より複雑な人間像が浮かび上がりますよね。すごく簡略化した、わかりやすいキャラクターにしてしまっては主人公としての特別感や深みが出てきません。また、レオナルドだけでなくジョヴァンナ、ガブリエル全員がそれぞれにすごく特別な個性をもっています
友情と恋愛のはざまに立つジョヴァンナ

ディテールを加える中で、彼女は少し面白い子にしようと考えました。好かれるタイプにしたかった。レオとガブリエルの間で板挟みになって、下手をすれば苦しんで、邪魔になる嫌な子になりかねない部分があったし、一方で同情心だけを集める子にもなって欲しくなかったのです。彼女の気持ちがレオに届かない「もどかしさ」がありながらも、それでも三人は意識したことに共感ができる。三人それぞれ応援したくなるようなキャラクターにしたかったのです。恋愛もうまくいってほしいし、でも友情も壊したくない。それって、リアルの世界でよくあることではないでしょうか。
さらにレオが盲目であることで、映画的には面白い仕掛けができたと思います。ジョヴァンナとガブリエルには見えているので、視線を交わすことで語らずとも心の機微が伝わってきますし、それを通して人格や性格を表現しています。
思春期の友人内で起きるパワーシフト

これはラブストーリーではあるけれど、同時に友情を描いた映画です。既に形成されたグループの中に新しい子が入って来ると、そこでグループのバランスが崩れることがよくありますよね。そうしたパワーシフトというものがあって、必ずしも恋愛的な嫉妬でなくとも、ジョヴァンナにとっては親友を失うという怖さ、それが起きる葛藤、それを受け入れるということが大きいと思います。

僕自身(ダニエル監督)、早熟なところがあって、しかも周囲にすごく気を遣い過ぎな部分もありました。そこがこの三人にも反映されていて、「何を考えているのだろう?」と常に気にし合っていますよね。
大人が観ても共感しやすいストーリー
この作品は、実は十代の子に向けて創ったのですが、世界中の大人達にも受け入れられています。この三人にすごく成熟した一面がある点が大きいと思います。
十代でも、自分の気持ちに向き合ったり、気配りができたり、共感力が高い子は結構いると思います。何といっても身体がすごく成長しますが、それだけじゃなくて彼らなりに、学校の中にいても社会の縮図やルールなど人間関係を学ぶ時期でもありますよね。だから、十代の時期は自分に問いかけをしたり哲学的に考えたりする時期であって、それがまさに同時進行しているということだと思います。
揺れ動く心の決着の仕方とは

ジョヴァンナからすれば、レオは別の新しい友達が必要なのかなという立場とレオをとられてしまうような危機感もあるわけですよね。でも何が起きているかわからない。それが恋愛だろうが、友達だろうが、少しレオを他の人と分け合う、シェアすることが必要で、彼女はその用意ができたのだと思います。レオとガブリエルが一緒になろうが必要、不必要ということではないということがわかってきた。
好きになるということ
目が見えることによって、つまり視覚が全てを「とりしきっている」「優勢である」「強い」と思いがちですが、実はそうではなくて、そこに注意がそがれているだけで、他の感性も動員して私たちは色々なことを認識していますよね。

例えば、私たちは視覚的な記憶よりも、恋人の香水をどこかで嗅いだり、一緒にいた当時の音楽を聴くとその時の気持ちが甦ってきたりします。この映画には、レオの場合は視覚以外の感覚が研ぎ澄まされていることを描くと同時に、私たちにも色々な感覚というのが備わっているんだよということをリマインドするようなところがあります。

この映画は雄弁で色々なセリフが結構あるのですが、語られていない部分で語っていることもかなりあります。同時に、嘘をつくという人間の習性も面白くて、ジョヴァンナはキャンプ場でガブリエルが見えているのに、レオからガブリエルの所在を聞かれた時に『いないわよ』と言いますよね。彼女のちょっとした嘘が、すごく色々なことを語っています。

第六感というのもありますね。相手を好きになるという点で、実はすごく大きいと思いますね。誰かを好きになった時に説明できるものではない部分は非常に多いですよね。相手のことを同時に想っていたり、同じことを考えていたりすると、電話がかかってくるとか、そういう以心伝心って必ずありますよね。お互いの間に見えない心の波が伝わっていると思っています。
恋愛も大事だけど、人として大切なこと

やっぱり大切なことは「繋がり」だと思っています。友人であったり、恋愛であったり、街でふれあう交流であったり、その一瞬であっても世界を分かち合っている、その共感というもの。この映画ではそれが象徴的に表現されています。
見えている人と同じように経験したい

やってみることによって、知ることができるし、人間何でも出来るわけではないので限界を知るという意味もあると思います。
例えばレオの交換留学の件ですが、行きたい理由は交換留学の経験をしたいということではなく、単に家族から離れたいという現実逃避かもしれません。何かをすることでよりよく自分を理解できることもあれば、何かを欲しいと思ってやってみると案外これじゃなかったってこともあるし、できないことによってフラストレーションがたまるけど経験によって解消されることもある。そういった色々なことが経験には含まれていると思います。
劇中にもあった月食のシーンですが、今日は日本の月食です。時差があって眠いですが、経験してみたいですね(笑)。
日本について
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭(http://www.skipcity-dcf.jp/)で初めて日本に来てこの映画を上映しました。その時に観客の方々が非常に静かに観ているので心配したのですが、Q&Aの時に皆同じことを感じて理解してくれたんだと安心しました。映画の見方一つとってみても違いがあると思います。この映画に関しては、文化にとらわれない普遍的なテーマを扱っているので、通じたのだなと思います。例えば、日本の街を歩いていると、日本人同士、人と人とを気にし合っていますが、サンパウロはもっと混沌としています。サンパウロは日系の方も多いのですが、彼らはもうブラジル人で日本の感覚とは違いますね。


個人的には街歩きは楽しいです。私はシティボーイで自然の中で静かな場所にいると落ち着かないので(笑)、人と人とが関わる部分が多い場所の方が好きです。
また、日本食ではお寿司は好きで特にマグロやサーモンが好きです!サンパウロにも日本食レストランが沢山あるんですよ。


~編集部より~
全盲のレオにとって異性とはどんな意味を持っているのか?また、レオはどんなフラストレーションを心に秘め、何を求めているのか?思春期に心が羽を伸ばす瞬間、レオ自身がその答えを見つけ出します。同時に、恋愛、友情、嫉妬、ハンディキャップ、LGBTなど、ある意味普遍的なテーマが絡み合いながらも、感情をコントロールして認め合う若者たちの姿もみることが出来ます。
ダニエル監督の見つめる先には、共感する意味を深く理解する若者たちがきっと見えているのだと思いました!
ダニエル・ヒベイロ監督プロフィール
1982年ブラジル・サンパウロ生まれ。サンパウロの映画学校を卒業後、監督やWeb制作など多岐に活躍。本作は長編映画第一作目で、第64回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で上映。FIPRESCI(国際批判家連盟賞)及びテディ賞をW受賞。日本でもSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014で脚本賞を受賞。ブラジル映画界が注目する新たな才能が、本作でついに日本本格上陸。
■ 予告編




■ 監督・脚本
ダニエル・ヒベイロ
■ キャスト
ジュレルメ・ロボ
ファビオ・アウディ
テス・アモリン
ルシア・ホマノ
エウシー・デ・ソウザ
セウマ・エグレイ
■ 配給
配給:デジタルSKIPステーション/アーク・フィルムズ
■ 2018年3月10日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次公開!!
【STORY】
目の見えない少年レオは、ちょっと過保護な両親と、優しいおばあちゃん、いつもそばにいてくれる幼なじみのジョヴァンナに囲まれて、 はじめてのキスと留学を夢見るごく普通の高校生。でも何にでも心配ばかりしてくる両親が最近ちょっと鬱陶しい。ある日、クラスに転校生のガブリエルがやってきた。レオとジョヴァンナは、目が見えないことをからかったりしない彼と自然に親しくなっていく。レオはガブリエルと一緒に過ごす時間の中で、映画館に行ったり自転車に乗ってみたり、今まで経験したことのない新しい世界を知っていくのだが、やがてレオとガブリエル、ジョヴァンナ、それぞれの気持ちに変化がやってきて…。

<2014年/ブラジル/96分/英題:The Way He Looks/原題:Hoje Eu Quero Voltar Sozinho/PG12>
■ 公式ホームページ
http://www.mitsumeru-movie.com/
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『子どもが教えてくれたこと』

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