映画『甘いお酒でうがい』大九明子監督インタビュー!

映画『甘いお酒でうがい』大九明子監督

映画『甘いお酒でうがい』
大九明子監督インタビュー!

『勝手にふるえてろ』や『美人が婚活してみたら』など、世渡りベタな女性を繊細かつユーモアに描いてきた大九明子監督の最新映画『甘いお酒でうがい』が、9月25日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル新宿ほかにて公開されます。

原作は、2014年に第7回キングオブコントで王者に輝いたお笑い芸人シソンヌじろうが、ネタの中で長年演じてきた代表的キャラクターである“川嶋佳子(かわしまよしこ)”がもし日記を書いたら…と執筆された同名小説「甘いお酒でうがい」。

キングオブコントが生み出した独特のキャラクターをなんとスター女優・松雪泰子さんがこれまでのイメージを覆す熱演で応えます。大九監督に本作の制作裏話やキャスト・スタッフで共有した“川嶋佳子”像についてなどたっぷりとお話を伺いました。

映画『甘いお酒でうがい』大九明子監督

大九明子(おおく あきこ)監督

―――― 『美人が婚活してみたら』に続き、今回もじろうさんが脚本を担当され、2作品目のタッグとなりました。本作のオファーを振り返ってみての感想をお聞かせください。

大九明子監督
『美人が婚活してみたら』を撮ったのは2018年の2月なのですが、2017年の12月に突然連絡があり、「実は2ヶ月後に撮影する案件です」とご案内いただいて、“間に合うのかなぁ”と思いましたが、じろうさんとご一緒できることが凄くモチベーションになり、「是非!」とお受けしました。

お互い時間との闘いの中での作業となり、原作も最初から決まっていました。30代の女性の色んなテーマが盛り込まれた原作だったので、面白く読ませていただきましたが、じろうさんも私も得意分野ではなかったんです。勉強しながら、どうしたら面白くなっていくか、必死で取り組みました。

それが終わって、2018年の5月ぐらいに、吉本興業さんとテレビ朝日さんから、弊社の方に連絡をいただいて、「今年もまたお願いします」と。撮影2か月前に依頼があった前回と比べるとだいぶ余裕があるので、「じっくり何を撮るか考えたいですね」って。じろうさんと私のコンビということ以外は、わりと緩かったので、それならばせっかくだからじろうさんが書いたもので撮りたいと思い、私がだいぶ強く希望してこの原作「甘いお酒でうがい」になりました。

―――― じろうさんとは以前から面識があったのでしょうか?

大九明子監督
シソンヌの一ファンです。やっぱりキングオブコントだし(笑)。
「コントの王様だぁ…」って気持ちです。

映画『甘いお酒でうがい』大九明子監督

―――― お笑いがとてもお好きでいらっしゃるのですね。
意外と淡々とした日常を一つ一つ、一コマずつ丁寧に撮られています。そうなると波がなく、撮影自体が難しかったんじゃないかなと思います。撮影や編集も含めて、この作品を制作する上で監督が難しかったポイントはどの辺りになるのでしょうか?

大九明子監督
難しいとすると「これで良いのだ」と突っ走ることの難しさだったかもしれません。

脚本の打ち合わせでは、佳子さんが実家に彼を連れて挨拶に来てもらうとか、1回恋愛が成就したけど別れて大失恋を描くとか、物語に対して色々な案も出たんです。映画として何か起承転結というか波を設けるというか。でも、それをしたらこの原作は違うなと思っていて、そういうことを一切排除して、川嶋佳子を丁寧に撮ることだけを心がけよう、波を設けることを我慢することが一番苦労した点かもしれないです。

でも、皆が原作のどのエピソードがいいかについて話をしている時に、私の中でラストシーンにしているところがツボで、物語に波を設けた方がいいんじゃないかとか色んな意見が出ている中で、「でもさ、(映画でラストシーンにしている)このシーンとか、十分に感動しない?」とか言いながら私が泣いちゃったんです(笑)。

そうしたら、じろうさんが爆笑して。「私はむしろこれがラストシーンでもいいぐらいだと思っています。日常でその中に佳子さんが何かハッとするものを発見する、そういうことに寄り添う映画にするべきなんじゃないかな」って言ったら、じろうさんも、「確かにそういうことで作っていったら、もしかしたらメチャクチャ面白くなるような気がする」ってのってくれて、「じゃ、ラストシーンはこれにする!」って決まったんです。

なので大きな激しいドラマや大移動とか旅行みたいなこともないし、そういうことにしてみようかなという“覚悟”ですかね。

映画『甘いお酒でうがい』大九明子監督

―――― なるほど、凄くストレートに伝わってきます。
そして、なんといっても川嶋佳子役の松雪泰子さんのキャスティングについてお聞かせください。ドハマりと言いますか、非常にリアル感も伝わってきました。このキャスティングにあたってはどんなことを考えられたのでしょうか?

大九明子監督
陰りがあって、湿度があって、そういう人がいいなと思っていたんです。40代後半もしくは50代前半の女優さんでどういう方がいいんだろうなって思っていて、“松雪さんみたいな方がやってくれたらいいなぁ”くらいに、“まさかね”くらいに思っていたんです。

一方でこの企画は、元々が吉本の沖縄国際映画祭に向けた映画で、予算が決まっている。その代わり、吉本さんの一社単独出資なので、吉本さんさえOKを出してくれれば撮れるという企画なんです。

というわけで、かなりなローバジェットの映画ですし、そういう形だと短期集中で撮らなきゃいけなくて、そういった作品にスターである松雪さんが首を縦に振るんだろうか??って思いましたし、プロデューサーも「大丈夫かな??」とか言いながら、ドキドキしながらオファーをしていましたけど、まんまと(笑)

ご出演いただけることになって、大変光栄でした。

画像,甘いお酒でうがい

―――― 松雪さんの服装が毎日変わっていて、真似したい女子も多いと思うような洋服や靴が次々に登場していました。選ぶだけでも大変だなと思ったんですけど。

大九明子監督
そうですね。チームといいますか、ここ何年もご一緒しているカメラマン、助監督、衣装、録音、照明、美術もみんなチームになっているんです。予算の中でやれる色々な表現をそれぞれのパート、部門が考えてくれて、このような形にはなっているけど「普通は無理よ」って衣装の宮本茉莉さんは仰っていました。

―――― そうですよね、素晴らしい衣装でした。

大九明子監督
普通は無理なところを一肌脱いでくださって、色々とやってくださいました。

―――― 佳子さんを囲む黒木華さんと清水尋也さんも素晴らしいお2人がキャスティングされています。まず、佳子さんの職場の後輩としての黒木さん演じる若林ちゃん、ギャグも絶妙で行き過ぎてないですし、とても自然でした。

大九明子監督
脚本の打ち合わせ段階で何気なく、「若林ちゃんってどういう役かな?“天使”の役だよね?」って言っていて、可愛い綺麗な女優さんはいっぱいいるけど、“天使”って誰なんだろうって。色々な方の名前も出ていた時に、じろうさんが「華ちゃん、友達だよ」だったかな?何か親しいニュアンスの表現をしたんです。その場ですぐLINEを出しちゃって、原作を黒木華さんもとっくにお読みになっていて、その、じろうさんのLINEの段階で「出るって」って。流石にプロデューサー達も慌てて、事務所を飛び越えてしまうと色々問題になるから、一度ペンディングの状態にしつつ、「正規ルートで交渉します」ということになったんです。だからラッキーでした。じろうさんのお陰で黒木華さんという素晴らしい女優さんと初めてご一緒できたので、感謝しています。

画像,甘いお酒でうがい

―――― 佳子さんと若林ちゃんの凄くいい関係が見られて良かったです。清水さんも本当に年齢が離れているものの、ちょうどイイ感じでした。

大九明子監督
そうなんです。難しかったですね、あそこのポジション。どうすればちゃんとしたカップルとして見えるのか、素敵な若い男性って誰なの?と思って。

―――― 4回のキスシーンがあり、もっと違和感があるのかなと思いきや、でした。

大九明子監督
そうなんです、台本では「キスをした」というモノローグだけだったんです。あまりにも空気感がいいからevery time kissだと思って、チュッチュ チュッチュさせちゃったんです(笑)。

私が「これはするぞぉ~」と思って(笑)。それで佳子さんだったらきっと回数も日記に書いちゃうだろうなって、ちょっと台本から変えたんです。

画像,甘いお酒でうがい

―――― もう、部屋に入って即効キスしていましたけど、元々の設定はそうではなかったけど雰囲気から?

大九明子監督
そうですね、本当はソファに座って1回のはずだったんです。それを段取りの段階で動きをつけていく時に「この2人だったらしちゃうな」みたいな。

確かあのシーンは順撮りしたので、踏切のシーンの撮影は終了していたのですが、久しぶりに会っただけのことであんなに感情が高まってしまう二人なんだから、人目がなくなったらすぐチューするだろうな。なにかとチューしちゃうだろうって(笑)。

1回目はまず佳子さんからしたとして、次は一緒に料理をしていたら彼の方からするだろうな、とか。段々そういう風になっちゃって。

―――― 踏切のシーンの松雪さんの演技は圧巻でした。

大九明子監督
当たり前のことなのかもしれないですけど、やっぱりベテランの俳優さんであるということの経験値と表現力は本当に素晴らしくて、凄く魅了されました。

画像,甘いお酒でうがい

―――― 色んな松雪さんの魅力が溢れていて、ベランダの後ろ姿もキレイでした。

大九明子監督
どの角度から撮ってもキレイでした。とにかく佳子さんは美人だと思って撮影をしていました。一方、家でお酒を飲んでいる時は無防備な佳子さんでいてほしくて、真冬なのに薄着をしてもらいました。

―――― 佳子さんの人物像についてですが、全体を通して健気とも違いますし、自分の殻の中に閉じこもっているようでもあり、最終的には“天使”(若林ちゃん)に出会い、海と空が青かったので開放されたようにも見えましたが、佳子さんはどんな女性なのでしょうか?

大九明子監督
佳子さんは、同世代の女性の中ではかなりアグレッシブな人だと私は思います。

一夜をさらっと共にしてしまったり、自分でも「イライラする」と言っていますけどすぐ好きになっちゃったり、後ろ向きと言いながら内向的というよりは後ろ向きに我道を行っている人、そういう魅力のある人だと思います。

だから松雪泰子さんともお話しましたけど、その一夜のシーンの時も佳子さんにとっては、大好きな岡本くんと付き合い始めて寝るのとは全く意味が違うんです。佳子さんは男性の前で守らないというか、無防備だと思ったんです。そういう佳子さんの姿を撮りましょうねっていうことでああいう形にしたんです。コトの後にコソコソしないし、何かをまとわないし。全裸のままで「何が?」って顔をしている。そういう人なんでしょうね、と。松雪さんも、そうですよねって。佳子さんにとっては「した」ってだけのことですよねって。そこに愛情とかが伴っているわけではない。そういったことを大胆に、自分の感情に正直に無理せず生きている人が川嶋佳子って人なのかなと思って作っていきました。

―――― だから浴衣を着た男女を見た時に、「一緒になっちゃいなさいよ」って?

大九明子監督
そうなんです、アグレッシブな人なんです。

―――― そういう意味では若林ちゃんとの友情は外側の世界との懸け橋にも観えたのですが、そうではないわけですね?

大九明子監督
というか、若林ちゃんって私も欲しいです。誰にとっても天使ではないでしょうか。こういう友達がとにかく欲しいというか。

―――― そういう若林ちゃんに対する共感というか、ありがとうって気持ちが本当に湧き出てきた瞬間があのラストシーンだったということですね。

大九明子監督
誰もが自分の本当の顔は分からない。自分の顔を見ようとして見ている鏡の顔と、普通はなかなか出会えないですけど、たまたま誰かといる時の顔とか、ふと発見してしまう瞬間とか。それをラストシーンにしましょうと言った時に、地味な出来事ではあるかもしれないですけど、物凄い映画的だと私は思ったんです。

映画『甘いお酒でうがい』台湾公開決定&大九明子監督からコメント!

―――― 確かに、偶然見えるという意味では天使もそういう存在ですよね。
若林ちゃんのメガネ越しの表情もたまらなくて、とても感動したんですけど、監督の中でもイメージ通りだったのですか?

大九明子監督
イメージ通りでした。というか、イメージ以上に素晴らしかったです。

ただ、衣装合わせをし、色んな話をしている時から、黒木さんも「嫌だ~、私も泣いちゃうかも」みたいなこと仰っていたから、ああいう方向の感情になっていくだろうなとは思ってました。

―――― 資料に書いてあるのですが、寝坊してしまった佳子さんと若林ちゃんのやり取りのシーンの「生きてるよ」という佳子さんの台詞はアドリブだったんですか?

大九明子監督
確かそうでした。「生きてますか?死んでませんか?」とメッセージが入ってきて、それをリアルに読んで会話しちゃっているので、「生きてるよ」ってツッコミを入れている感じでした。

現場では、録音部が拾っているマイクの音をFMラジオで飛ばして聞いてるんですけど、もう全然聞こえなくて「今なんて言ったの?」みたいな(笑)。

誰かに届けようというよりは、佳子さんとして生きてくれていたので凄く嬉しかったです。録音技師の小宮元さんも「ちゃんと撮れてるんで、大丈夫ですよ」って。「今、佳子さん囁いていたけどなんだった?」みたいな確認はよくしました。

―――― 録音も衣装もかなり腕の立つ方々が集結されているのですね。

大九明子監督
全員本当にプロフェッショナルなので、私のやりたいことと俳優の繊細な表現を余すことなく拾ってくれて有難いです。

―――― 松雪さんが前髪を下ろしている姿もこれまでのイメージになくて、とても魅力的でしたが、監督からお願いしたのですか?

画像,甘いお酒でうがい

大九明子監督
いえ、ご本人がやる気まんまんで!

原作の表紙はオガワミホさんが描かれたおかっぱ頭の素敵な女性のイラストなんですけど、それを参考になさって、「これですね」みたいなことを最初から仰っていました。役作りという言い方が正しいのか分からないですけど、松雪さんは準備をきちんと整えて真面目に取り組まれる方だな、と。

なので、「じろうさんのコントを見たい、川嶋佳子を見たいです」と言われれば、じろうさんも私も「絶対に見ないでください!それとは違うんです」と(笑)。

原作の日記が本当に美しい日記文学だから、その日記から作ったのがこの映画。じろうさんがやるコントの川嶋佳子もちょっと泣けますし、面白い中にホロっとさせる部分があったりとか、そういう素敵な川嶋佳子像ですけど、映画ではまた違う川嶋佳子像にしたかったので、「そこは予習しないでください」とお伝えしました。

―――― 原作のお話もありましたが、じろうさんが書かれる佳子さんの日記。凄く女性の気持ちを理解されていて、よくぞ男性のじろうさんが、、、凄くないですか?

大九明子監督
そうなんですよ。じろうさんも自分の中に女がいるとしか思えないと仰っています。

ただ、原作が絶版になっていて電子書籍しか手に入らない状況なんです。クランクイン前にスタッフが買おうとして、「高くてもいいから」ってオークションで入手したりしました。

―――― 通常、男性には理解することが出来ない微妙で繊細な女性の気持ちがとても伝わってきました。女性も当然共感するでしょうし、男性も非常に興味深く楽しむことが出来ると思います。最後に見所も含めてメッセージをお願いします。

映画『甘いお酒でうがい』大九明子監督

大九明子監督
主人公は40代の女性ですが、凄く普遍的な人間を描いたつもりです。

お母さんでもない、奥さんでもない“川嶋佳子さん”という女性。彼女を丁寧に撮っていったら意外と普遍的な“人間の喜びって何だろう?”みたいなことが撮れた気がしています。老若男女色んな方にご覧いただけたら嬉しいです。

―――― 監督の『勝手にふるえてろ』も大好きな作品で、渡辺大知さんやほかの方々も今回出演されていました。

大九明子監督
そうなんです。『勝手にふるえてろ』からは渡辺大知さんと前野朋哉さんと古舘寛治さんにご出演いただきました。ワンシーンだけとか、大変贅沢な形で出ていただきました。

スタッフも俳優も色々な人たちの力を借りて、小さな映画なのに不思議と可愛がられる映画になりました。お陰様で海外の映画祭も、台湾やイタリア、オーストリア、アメリカなどにお招きいただきました。台湾での劇場公開も決まっています。世界中で愛していただけたらいいなと思っています。

―――― ありがとうございます!


9月25日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル新宿ほか全国ロードショー

『甘いお酒でうがい』作品情報

出演キャスト:
松雪泰子
黒木華  清水尋也
古舘寛治 前野朋哉 渡辺大知 RG(レイザーラモン)
佐藤貢三 中原和宏 小磯勝弥 坂本慶介 鈴木もぐら(空気階段)

監督:大九明子
脚本:じろう(シソンヌ)
原作:川嶋佳子(シソンヌじろう)『甘いお酒でうがい』(KADOKAWA 刊)

製作・配給:吉本興業
©2019 吉本興業

2019/カラー/日本/107 分/アメリカンビスタ/5.1ch

公式ウェブサイト:https://amasake-ugai.official-movie.com

 

甘いお酒でうがい

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