素敵なダイナマイトスキャンダル監督インタビュー
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「芸術は爆発だったりすることもあるのだが、僕の場合、お母さんが爆発だった―」
名編集長と知られる末井昭(すえいあきら)氏が自身の半生を書き、1982年に刊行されて以来、さまざまな出版社から文庫化されるなど、永らく愛されてきた自伝的名エッセイ「素敵なダイナマイトスキャンダル」を、『ローリング』『南瓜とマヨネーズ』の冨永昌敬(とみながまさのり)監督が遂に映画化。今回は、冨永監督に末井さんの魅力や名場面の解説などたっぷりお話を伺いました!
末井さんのあの部下になりたかった!

―― バブル絶頂期の末井さんを通じて、感じたことがあれば教えて下さい。

時代を映し出すことを狙った映画ではありません。描こうとしたのは末井昭さんという人物であって、70〜80年代の世相風俗は、主人公の背景として映り込んでいるだけだと思います。僕がもう少し早く生まれていたら、末井さんの部下になって一緒に雑誌を作りたかったと思いますけども。

末井さんにはアイディアやヒントが沢山!

―― 監督は末井さんの行動・表現をどう捉えているのですか?

末井さんはエロ雑誌という環境の中で、出来る限りの面白いこと、しょうもないこと、立派ではないことを実験していたと思います。そういうことはどんな分野であっても、いつでもできると僕は思いますから、「昔は良かったね」みたいな感想ばかり出てきてしまうと、あまり嬉しくないですね。若い方からすると何のノスタルジーもないでしょうから、自分とは全く無関係の昔話として面白がってもらいたいです。

拡大解釈する力!
たとえば警察がエロ雑誌を猥褻物として取り締まるのを、嫌がってもしょうがないじゃないですか。だから、そういう警察に誠意を持って対応するフリをしつつ、毎号きわどいヌード写真を載せるのを末井さんはやめませんでした。壁にぶつかったとき、誰しも諦めるよりも先に抜け道を探すと思うんです。しかしどうしても抜け道が見つからなかった場合にどうするか。その壁を自分にとって邪魔なものとして忌み嫌っても仕方がないから、いっそのこと壁を利用する手段を考える。末井さんは、自分の欲望や仕事を拡大解釈して、いわば壁と自分との関係までも商品化したんだと思います。

続いて、映画の名場面を冨永監督に解説してもらいました!

警視庁の刑事 諸橋(もろはし)役の松重豊さんのシーン

警察に対しては一応緊張感はあったはずです。叱られるわけですから。ただ、警察の風紀係の方も色々な雑誌関係者を呼び出して警告をしていたので、飽きていたと思います。ルーティンで、一回一回が勝負ではない。やりとり自体は警察もお決まりの文句を言うだけです。雑誌関係者も「すみません。もうしません」と大人しく謝る。それを毎月繰り返すわけで、末井さんはそのやりとりを楽しんでいたようです。映画では、可笑しなやりとりがあった風に描いていますが、実際はさっさと帰りたかったでしょうね。つまり、警察は友達ではないし、何回も行けば怖くはなくなると思いますが、長居はしたくないですよね(笑)

映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』予告動画キャストとあらすじやストーリーネタバレ「評判・レビュー」

モデルかすみ役(瑞乃サリーさん)のヌード撮影シーン

モデルのかすみを撮影するシーンも、はじめは「脱ぐなんて聞いていない」と嫌がります。しかし、“芸術だから”という魔法の言葉?で一度納得させられてしまうと、恥ずかしくなくなって、逆に楽しんでしまうような。「彼氏に観られたら何て言えばいいの?」は正に本音だと思いますが、「私じゃないって言えばいいんだよ!」と言ったり、そういう風にありとあらゆるハッタリを重ねてその気にさせて撮ってしまう。あと、女性が悲壮に見えるベッドシーンというのも好きではないですね。あまりにも男性目線的で。そういう場面は過去にも撮ってないですけども。

母・富子(とみこ)役 尾野真千子さんが登場するラストシーン

ラスト・シーンはお母さんが主人公ですね。主人公の回想ではなく客観的事実として撮っています。つまり、結核が進行し、医者からも匙を投げられている。それでも悲惨な死に際とは思いたくないんだと思います。末井さんもお母さんに対する熱い気持ちはあるでしょうけど、可哀想とばかりは思いたくないはずです。だからこそ鼻歌を歌わせながら山に消えてゆくことにしました。登場するシーンこそ多くはありませんが、この映画にとって重要な役である母・富子を尾野さんが見事に演じてくれました。

冨永昌敬監督プロフィール
1975年生まれ、愛媛県出身。映画監督。おもな劇映画作品は『亀虫』(03)、『パビリオン山椒魚』(06)、『コンナオトナノオンナノコ』(07)、『シャーリーの転落人生』(08)、『パンドラの匣』(09)、『乱暴と待機』(10)、『ローリング』(15)、『南瓜とマヨネーズ』(17)。ほかにドキュメンタリー、オムニバス、ドラマ、MVなど監督作品多数。
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<編集部より>
自身が置かれた境遇に不満を持つことは誰しもあるのではないでしょうか。その状況を変えるのは周りではなく、自分自身。そのために必要なことが“拡大解釈する力”なのかもしれません。強烈なシーンの数々に笑い、衝撃を受ける本作品には単に楽しむだけではなく、楽しく生きるヒントが隠されているように感じます。そんなことを“軽く”吸収できることが大切かもしれません。冨永監督ありがとうございました!
映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』は3月17日(土)より全国公開です!

■ 予告編

■ 公開表記
3月17日(土)テアトル新宿、池袋シネマ・ロサほか全国ロードショー

■ クレジット
(C)2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

■ 公式HP
http://dynamitemovie.jp/

■ 出演
柄本 佑
前田敦子
三浦透子
峯田和伸
松重 豊
村上 淳
尾野真千子

監督・脚本:冨永昌敬
原作:末井 昭「素敵なダイナマイトスキャンダル」ちくま文庫刊
音楽:菊地成孔 小田朋美  
配給:東京テアトル

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