異能・渡辺紘文監督特集
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渡辺紘文監督
インタビュー【前編】

昨年に続き、特集上映「異能・渡辺紘文監督特集 ー大田原愚豚舎の世界Vol.2ー」が東京・UPLINK吉祥寺ほかで上映中です。

拠点は大田原、白黒、台詞少な目、キャストは無名など独特なスタイルで映画制作を続ける渡辺紘文監督。当初は予算の関係から選択した白黒映画も今となっては監督作品の特徴であり、監督自身“色”への挑戦にその狙いも変化しているそうです。

今回は作品を観るごとにどんどんハマる渡辺監督作品について、たまりにたまった推測をストレートにぶつけさせていただきました!

―――― 昨年の東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞の受賞、本当におめでとうございます!
最新作『わたしは元気』を拝見して感じた渡辺監督の作風、狙いをズバリ勝手ながら想像でぶつけさせていただきたいと思っています。
まず、白黒なので色があるものに対して色を抜いてる。それと、台詞が少ないので、台詞があるということに対して台詞を抜いている。さらに、有名な役者さんはあまり多く起用されていない。
要するに水墨画ではないですが、作品の中に本来無意識的にあると思っているものを全部取り除いて、抜けるところ全部除いた上で、「さあ、楽しめるものって残っていますか?」という挑戦をされている気がします。その辺については、どういう制作のスタンスで臨まれているのかお聞かせください。

渡辺紘文監督
まず、白黒映像に関しては、最初は予算的な問題がありました。

最初からずっと一緒にやっているカメラマンの方又玹とカメラテストをしている時に、「美術部と衣装部が居ない中でカラーの作品はあまりにも厳しい」という話になり、そこで白黒にしたのがスタートです。

元々、僕たちはクラシカルな映画に取り憑かれて映画を作り始めた人間なんで、やっぱり白黒は映画が持っている本質的な美であるという意識が自分たちの中にはありました。白黒でどういう世界観の映画を突き詰めていけるのかということはずっと挑戦してきたというか、今になってようやく白黒に挑戦しようという意識が芽生えてきた感じです。

異能・渡辺紘文監督特集-大田原愚豚舎の世界 VOL.2-

―――― 白黒にすると世界観が広がるというか、色んな設定を自由に実現出来る気がします。日本人がSFの映画作るとどうもしっくりきませんが、白黒なら出来るかもしれないと感じます。
確かウルトセブンは6畳1間で宇宙人とちゃぶ台を介して会話するんですけど、あのレトロ感とSFがぴったりマッチした作品はあれ以来感じることが出来ないんです。ひょっとすると白黒の世界の中に、SFに限らずそういう日本人だから出来なかったような作品を込めることが出来るんじゃないかと可能性を感じています。白黒の世界観の広がりに関してはいかがでしょうか?

渡辺紘文監督
“色”が、映画という芸術の中で意味を持ち過ぎると感じています。

最初から白黒でしたが、最近はカラーで撮ったものを白黒に変換するようなこともしています。多分、映画を観ている人は全く意識してないんですけど、実は“色”は凄く意味を持ち過ぎています。恐らく無意識的な部分なんですけど、白黒にすると想像力が掻き立てられるというのは必ずあると思います。

先程仰った「ウルトラセブン」は僕と弟が子どもの頃から狂ったように何度も観ていて、最も影響を受けた作品と言っても過言ではありません。「ウルトラマン」と「ゴジラ」から入ったような人間なので(笑)

実相寺昭雄監督とかあのレベルの人たちはカラーでもこちらの想像力を掻き立ててくれる映像を撮れると思います。でも、今自分の力量を鑑みるとまだカラーに挑戦するのは環境的にも難しいかなって感じています。

―――― 例えば、刑事役と犯人役がテレビドラマに綺麗な服を着て登場する。ウルトラマンも進化し続けて怪獣にせよヒーローにせよ綺麗過ぎる気がします。それを逆に白黒にすることによって綺麗さと汚さを同じ土俵に乗せることが出来るので、白黒の技術を極めていくとスゴイものになる気がして、まさに監督の狙い通りになっていくのではないでしょうか?

異能・渡辺紘文監督特集

渡辺紘文監督「まだまだ色んな可能性がある」

渡辺紘文監督
まだまだ色んな可能性があると思いますし、僕たちは継続的に白黒をやってきたことで見えてきた世界があります。今後カラーをやらないわけではないですが、白黒も突き詰めていきたいです。

役者さんに関しても、商業的という表現が良いか分からないですけど、あまりにもタレントを並べ過ぎると映画がタレントにしか見えない。むしろ僕たちの映画は自主映画ということもあり、基本的に主人公は誰も知らない人にしたいというこだわりがあります。素人というか、芝居を知らない人とか映画を知らない人の方がむしろイイ。タレントさんを観に行くお客さんがあまりにも多すぎる感じがして、そこが映画の本質とは違うんじゃないか、そこは僕たちの映画作りで最近は特に考えていることです。

渡辺雄司音楽監督
ハリウッド映画は新人抜擢がありますよね。

例えば、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で主人公レイ役を演じたデイジー・リドリーはあの作品で知りました。知らない人が出るからこそ世界観に入れる。ハリウッドは有名な役者さんが脇にまわるという映画の作り方をしている風に感じています。

渡辺紘文監督
印象がつかない人の方がいいなって。

台詞に関しても、まさに今僕らが考えていることがそれなんです。『そして泥船はゆく』は、きちんとんとした物語を作ろうという狙いがあったので、台詞もきちんとした手続きを踏んで物語を構築してやりました。一方、今回相当な賛否を呼んでいる『シーカランスどこへ行く』(オムニバス『蒲田前奏曲』の一作品)に関しては、全てのシーンと台詞を無意味なものにしようという大きな狙いがありました。劇中の僕が喋っている言葉は、何か言っているように見えて実は何もない(笑)

プラカードに掲げるような言葉を台詞として言ってしまうのは、日本映画に散見されるなって。例えば、「お前のことが好きだ」なんてことを言う必要もないし、「お前を殺してやる」とか全部説明する(笑)。やっぱり映画という表現はそういう表現でやるものではないと思って、むしろ最近考えているのは、何か喋っていても実は意味があまりなかったりするのを狙っています。

―――― 実体とか行動と乖離しているところがありますよね。

渡辺紘文監督
そうなんです。だから『わたしは元気』の子どもたちが言っている言葉は映画の物語を説明する上では本当に意味がない台詞。そもそも、彼女たちも映画をいいものにしようとは別に考えてないですし(笑)

―――― それがまざまざと見えてきて、「君たちが未来を背負って立っていくんだ」と言って去って行くけど、心が全くこもってないなって(笑)
『わたしは元気』でお伺いしたいのが、家族3人で食事をしているシーンです。「学校で何か面白いことあった?」というようにお母さんが振るじゃないですか。あれは何気なく出た言葉なのか、お母さんに聞いてくださいとお願いされたのか、あの時はどうような演出をされていたのですか?

渡辺紘文監督
あそこはですね、僕は今観ても奇跡的なカットになったと思っています。

最初に、「お父さんの帰りが遅い」と「学校で何があったか」という言葉を会話の中に入れてくださいとお願いして「よーい、スタート」で始めたんです。多分、2カット目だったと思うんですけど、会話が止まらなくなるぐらいずっと続いて、こっちがカットをかけられなくなるぐらい自然な会話になったカットでした。

―――― 「何も楽しいことないんだもん」って笑うじゃないですか。その瞬間、タイトル「わたしは元気」は最初から決まっていたのか、後々つけられたのか、どっちなんだろう?って疑問を抱きました。

渡辺紘文監督
タイトルは、幾つかの候補があった中の一つではありました。「ある日のこと」とか、そういう候補もありました。最終的には子どもだけの世界っていうことにしたくて、お母さんも背中しか映さない。僕はダメな大人の代表として出て来ますけど(笑)

「子どもたちは大人に関係なく元気なんだよ」という意味でこういうタイトルにしたんです。最終的にはこの言葉が一番しっくりくるかなって。

―――― 監督の作品は削ぎ落とされてるので余計なものがないんですよね。人間が本来そこにいることで元気であることの存在証明みたいなものを、言葉にすると陳腐なものになってしまいますが、作品を通じて感じられる。ゴチャゴチャしてないと言いますか、こちら側から価値のあるものを勝手に拾っていける作品。監督の作品の中にそういう余裕を感じていて、他の作品とは一線を画しているように捉えています。『わたしは元気』で余計にそれを感じました。

異能・渡辺紘文監督特集-大田原愚豚舎の世界 VOL.2-

渡辺紘文監督
主人公の子どもは、元々弟のピアノ教室の生徒さんだったんです。最初は人見知りの子で、お母さんの影に隠れたりしてたんです。「僕の映画出る?」って冗談みたいな感じで聞いてたら「うん、出る」って答えてきて、以来結構出てるんです。『地球はお祭り騒ぎ』から『普通は走り出す』『叫び声』と出演しているんです。

『普通は走り出す』の時に女優さんのリストがあって「どの人が主役なのかな?」みたいな会話になった時に「私、主役がいいんだけど」って璃子ちゃんが言ったんです。それで主役の映画も考えてみようかなって。自然体で凄く面白い子です。

―――― 『シーカランスどこへ行く』の存在感は凄かったです!
引き受けるにあたっては、松林うららさんの悲痛な訴えというか強いお気持ちがあったと思います。物語はどのように着想されたのですか?

渡辺紘文監督
元々、それぞれの監督にテーマが与えられて、僕は「東京中心主義批判にして欲しい」と言われたんです。最初は松林さんが大田原出身で東京から帰省して、僕は松林さんの従兄弟でその娘が璃子ちゃんで、松林さんのお母さん役の人も登場し、ちょっとした交流があって対立もあって、人情喜劇的な物語を書いていたんです。でも、途中で読んでいたら飽きちゃって(笑)

これ普通の映画だなって。普通に面白くなっちゃったら面白くないってすぐに思っちゃう。人情小話みたいなのはウンザリだから止めようって。そこで、松林さんを使わない方が実験的にいいんじゃないみたいな。

変化球とは言われるんですけど、あの形になりました。

―――― 益々可能性を感じるのでSFも観てみたいですし、期待が膨らみます!

後編へ続く!!

配給:SPOTTED PRODUCTIONS
©2018 FOOLISH PIGGIES FILMS

異能・渡辺紘文監督特集-大田原愚豚舎の世界 VOL.2-

10月30日(金)〜11月19日(木)
アップリンク吉祥寺ほか順次公開!

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