映画の可能性を信じて【渡辺紘文監督インタビュー後編】

異能・渡辺紘文監督特集
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映画の可能性を信じて
大田原愚豚舎
渡辺紘文監督
インタビュー【後編】

特集上映「異能・渡辺紘文監督特集 ー大田原愚豚舎の世界Vol.2ー」記念インタビュー後編。

後編では渡辺紘文監督が弟であり音楽監督を務めている渡辺雄司氏と共に熱を帯びて、映画を熱く語ります!

前編はこちら!!

―――― 今回の特集上映について全体としての流れや作風はお聞きしましたので、注目して観てもらいたい作品ですとか、毎年創られている中で山谷などがあればクローズアップしてご紹介お願いします。

渡辺紘文監督
昨年に続いての特集上映で今回は新たに東京国際映画祭の監督受賞作品『叫び声』と、ウディネ・ファーイースト映画祭でワールドプレミア上映した新作『わたしは元気』の2作品が加わりました。

2013年に旗上げして7年間で7本を創ってきて、どれも割と一生懸命創ってきた作品です(笑)見方によっては面白い作品だと思うので、観に来てほしいです。

異能・渡辺紘文監督特集-大田原愚豚舎の世界 VOL.2-「叫び声」を最後にお婆ちゃんが102歳で亡くなってしまって、一つの大きな区切りがついた作品だったんです。そして、「わたしは元気」は完全に新たなスタートを切った作品で、僕たちにとってはとても重要な作品です。今までの集大成的な部分と、新たな出発の第一歩を観ていただきたいです。

―――― 確かに「わたしは元気」を通じて、監督の作風を俯瞰出来るように感じます。

渡辺紘文監督
考えてみると『叫び声』はお婆ちゃんが死んだことに対する叫び声だったりして、『わたしは元気』は僕自身が“私は元気でありたい”という意味でも含めたタイトルでもあるんです。そういう意味で“元気”を使いたかったんです。

異能・渡辺紘文監督特集-大田原愚豚舎の世界 VOL.2-

―――― 監督の作品にどっぷりハマったファンなので、こうしてお話いただくとよく分かります。でも、初めて監督の作品を観る人の気持ちは分からないんです(笑)

渡辺紘文監督
「蒲田~」は結構初めて観た人が多くて、やっぱり伊藤沙莉さんと福田麻由子さんの共演を観に来た方が多かったようで、「最後に間違えて変な作品入ってたよ」って(笑)

世界最大のスミソニアン博物館で特集上映!

―――― あの作品があるから締まると思っているのですが。

渡辺紘文監督
でも、何の反応もないよりは、賛否が分れた方がいいなって思うんです。一番ヤバいのは何の意見も出ないことが恐ろしいので、僕たちの場合はハッキリ出ますね。

ちょうどアメリカのスミソニアン博物館でも特集上映をやっていただいて。なぜ選ばれたか分からないんですけど、急に「世界最大の博物館が上映したいと言ってる」と連絡が来て。

スミソニアンが選んだのは「わたしは元気」「普通は走り出す」「地球はお祭り騒ぎ」です。「今の大田原愚豚舎の最高傑作として選出しました」ということで特集上映を組んでくださいました。

―――― 一度だけ行ったことがあります。物凄く大きな博物館で、アポロの宇宙船ロケットも展示されていました。そこで上映されること自体凄いですよね。

渡辺紘文監督
ビックリでした。

聞いたら、他にも何本か単品の上映はあるんですけど、特集として上映されたのは2014年以降では黒澤明監督、鈴木清順監督、井上梅次監督だけ。しかも、近年減ってるらしくて「極めて珍しいことです」みたいなことは仰っていました。
 

 

異能・渡辺紘文監督特集

【写真左:渡辺紘文監督】
【写真右:渡辺雄司氏】

―――― もっと削ぎ落としてもっと繰り返してほしい、意外とそこに違いがあったり。ある意味で観てる人と制作側のコミュニケーションみたいな感じもするので、そこがファンになっちゃうところなのかなと感じます。
これを突き詰めていくことは、ひょっとすると映画って何なのか?をぶつけているような感じさえするんです。映画の存在、映画ってそもそも何なんですか?みたいなってところまで思考が進んでしまうんです。

渡辺紘文監督
僕たちも結構分からないというか、分からないからこそ考えるところはあったりします。映画って結局何なんだろう?というのは、弟と常にディスカッションしています。

映画の本質の部分で言うと、やっぱりちょっと商業的な映画だけが映画では絶対にないですし、特に最近は、当たらなきゃダメだとか、大嫌いな言葉が「お客さんが観ることによって映画は初めて完結する」みたいなこと言う人がいて、ブッ飛ばしてやるって(笑)

全然僕はそういう風に思って作ってないです。金にならなければ別にならなくても、映画を作るという生き方を選んでしまったので、僕の場合お客さんはそんなに来ないなら来なくても大丈夫ですよっていうスタンスではあったりはするんです。

そう考える一方で、ビックリさせたい、面白がらせたい、笑わせたいみたいなのはあったりするんで、結構純粋な欲望というか。

渡辺雄司音楽監督
商業的な映画の楽しみ方しか知らない人がどんどん増えていて、最終的に一人も観なくていいと思って作っても、どこかで自分と同じ線に引っかかる人がいれば面白いと思うんじゃないかって。

キャスティングについても、現実的には役者さんを呼んでしまうと製作資金も増えてしまうから出来ないというのもありつつ、そこで映画の作り方を見直してみると、必ずしもそういう作り方ばかりが映画じゃない。特に世界基準で見ていくとそれが当たり前になっています。

一方で、助成金をもらって作るのもいいとは思いますが、アート系=助成金だけというのも何だかなって感じもする。偏り過ぎというか、アートと商業の分け方が不健全な感じがするんです。その垣根をなくしつつ、自分が面白いと思うものを作って観客の方にも面白いと新しい発見をしてもらったり、こういう楽しみ方もあるなって思ってもらったり出来ればいいなと思います。

渡辺紘文監督
やっぱり色んな意見が出てこないと映画が良くならない。日本映画の感想を見てダメだと思うのは「(出演していた)〇〇が可愛い」っていうのは、僕からすると映画を観た感想ではないんです。全てがそうなってしまうと恐ろしい時代になると感じます。何かちょっと違うんじゃないか、映画にはもっと可能性があるものだって。

ジャン=リュック・ゴダールが好きなんですけど、彼は「映画はあらゆる可能性を残して死ぬ芸術だ」と言っていて、ゴダールの言う通りになったらマズイなって。映画の作り手は抵抗しなきゃいけないと思うんです。あらゆる可能性が出尽くしたように見えて、実はまだまだ出ていないという可能性を信じなきゃいけないと思うので。

だからこそ、批判された方が健全なくらいで、むしろ新しいことが出来ているんじゃないかって思ったりしてます。

渡辺雄司音楽監督
観る人にとってもつまらない経験をするのは重要だと思うんです(笑)

僕なんてフョードル・ドストエフスキーの小説を読んだ時に“難し過ぎて全然分からないな”って。でも、時間が経つと意外とスゴイんじゃないかって。夏目漱石を初めて読んだ時の感覚とか。何これ?と思っても、時間を置いて熟成させるって重要ですよね。思考は自分の年齢の変化とともに変わりますし。

そう考えると、『蒲田前奏曲』のようなオムニバス映画の最後に僕たちの作品を入れるってことも凄く意味があることだと思うんです。面白いと思った人も、あまり面白くないと思っている人にとっても自分の新しい可能性ですよね。

確か宮崎駿監督が「映画はどんなにつまらなくても2時間で終わっちゃう」と言ってたんですけど、本当にそうだなと思って、気楽な芸術ですね。「暗闇の中で2時間座って作品を見ることが許されてる唯一の芸術だ」みたいな。良いこと言うなと思って、確かにそういう経験は必要だなって。

昨今はスマホが流行っているから、映像とか音楽とかがブツ切りにどんどん出来ちゃう。30秒とかどんどん短いコンテンツに慣れちゃうと、ネットサーフィンじゃないけどどんどん次に移ってします。それはやっぱり良くないなって。腰を据えて2時間の映画をもっと観てもいいんじゃないのかなと思うんです。

異能・渡辺紘文監督特集

―――― 例えば、批判自体、その言葉の裏側では気になっているわけで、結局は頭に残っている証拠ですよね。
話題は変わりますが、昨年も東京国際映画祭では海外の監督やゲストが多く参加されていました。海外から「一緒にやらないか?」というようなお声がけもあったのではないでしょうか?

渡辺紘文監督
制作はないですが、作品をちゃんと観てくれる人はかなり多いです。日本人の感想は2、3行で終わらせちゃうものが多いですが、こんなに書いてくれるの!!みたいな。「叫び声」はアルベール・カミュの小説「シーシュポスの神話」に影響を受けて作っているんですけども、まさにそこに言及している記事が最近出ていてスゴイなって。日本でも段々増えてきている感覚はあるんです。

そもそも、僕たちの映画を観ると怒る人と途中退席する人がいるのは恒例行事みたいな。それも慣れちゃって、必ずいるので(笑)
『七日』が一番凄かったんです。お金を払っているのに客はこんな出ていくものかっていう驚愕の退出率。海外の人も怒ってました。でも、『七日』の復讐で『叫び声』を作ったら賞をくれたので、もう訳わかんない(笑)

異能・渡辺紘文監督特集-大田原愚豚舎の世界 VOL.2-


配給:SPOTTED PRODUCTIONS
©2018 FOOLISH PIGGIES FILMS

異能・渡辺紘文監督特集-大田原愚豚舎の世界 VOL.2-

10月30日(金)〜11月19日(木)
アップリンク吉祥寺ほか順次公開!

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