中条あやみに託した変化とは?映画『水上のフライト』兼重淳監督【インタビュー】

映画『水上のフライト』 兼重淳監督

中条あやみに託した変化とは?
映画『水上のフライト』
兼重淳監督【インタビュー】

 

11月13日(金)から絶賛公開中の映画『水上のフライト』は、自分の実力に絶対の自信を持つ高慢な主人公・藤堂遥役を演じた中条あやみさんが「どんな人にも前を向くチャンスは平等に与えられている!」と脚本に感銘を受け、川の中に何度も落ちる過酷な撮影をものともせず体当たりで挑んだ奇跡の復活劇です。

今回は、本作を手掛けた兼重淳監督にキャスティングの経緯から遥のキャラクターに込めた想い、作品制作のこだわり等たっぷりと語っていただきました!

映画『水上のフライト』 兼重淳監督

映画『水上のフライト』 兼重淳監督

―――― 作品を観て元気をいただき、しかもホロリと感動しました。

兼重淳監督
あー、良かった!嬉しいです。

―――― 「まるでお姉ちゃん(遥)空を飛んでるみたい」という台詞のある湖上のシーンがタイトル『水上のフライト』を物語っているようでした。カメラに収めようと思って監督の頭の中でイメージされていたのでしょうか?

兼重淳監督
最初に土橋さんの台本を読ませていただいた時に浮かびました。
デジタルの力は少し借りていますけど撮影の向後さんが何度もロケ場所に通って、太陽の向きや何時から何時までならああいう風になるって確かめてくださって撮ることが出来ました。

水上をフライトするって言わないですよね、フライトは空を飛ぶものですから。でも、テーマの一つとして空を飛びたいというのもあるので、湖面に空が反射してその上を飛んでいるみたいにいくと空と水の融合になるかなというのが初めに浮かんだイメージでした。

水上のフライト,画像

―――― とても綺麗でピッタリでした!場所はどちらですか?

兼重淳監督
山中湖です。

―――― 藤堂遥役の中条あやみさんは、くじけずに負けん気の強い性格を見事に演技されていました。中条さんの運動神経の良さについても事前に分かっていてキャスティングされたのでしょうか?

兼重淳監督
それはあります。あと走り高跳びの選手は小柄な人があまりいないので、長身でスタイルが良くて、運動神経も良いとなると段々絞られていきまして(笑)

水上のフライト,画像

―――― 走り高跳びをする時の立ち姿もスタイルが良い方というよりはアスリートに近い感覚を受けました。

兼重淳監督
立ち姿とかもそうなんですけど、彼女のイメージに健全性みたいなものがあるじゃないですか。それがこの作品に凄く合っていると思ってお願いしたところもあるんです。運動神経的なことは撮り方と編集でどうにかなるんです。

ちょっと女性っぽすぎてもダメだし、そういう意味では中条あやみさんが本当にベストマッチでした。

―――― 物語の一つのテーマに「努力」があったと思います。遥は、人一倍努力することの大切さや、それ故に崇高な存在でいられることを経験上知っているし、また一人で戦っていたけど周りのサポートがあることにも気づいた。気の強い反面で大切なことも吸収できる柔軟性も感じました。当然、事故の影響もあると思いますが監督から中条さんへはどういった演技指導をされたのでしょうか?

兼重淳監督
最初に中条さんとお会いした時に「強い女性でいいんですね?」と聞かれたので「実は遥は強くないよ」って言ったんです。気の強さは“自分が弱いことを知っていて、努力をしたから自信がある”その強さだと思っています。

中盤から後半になって社会との関わり方が変わって、お母さんを含め仲間にもサポートされてきたんだって、今の自分を受け入れて弱さをさらけ出す。つまり、「自分は弱い人間なんです」と言い切れるのも一つの強さなので、「強さというものが彼女の中で変わっていくように演じましょう」というお願いをしました。

映画『水上のフライト』 兼重淳監督

―――― 冒頭と終盤では遥に接していた記者の反応も変化していましたものね。
車いすが物としての存在から、人と人とが支え合うという意味を持つ存在に変わっていくのを感じました。陸上部の面々と再会したシーンで、遥が握りしめた車いすの持ち手は、まさに「私を支えてくれている人たち」なのだという遥の気持ちが凄く伝わってきました。

兼重淳監督
ありがとうございます。
小澤さんがあのシーンが大好きで、ご自分が出ていないのに「あのシーンが一番好きだ」と仰っていました(笑)

―――― そんな小澤さんの話なのですが、この作品で大好きになりました(笑)。軽快なテンポ、相手の雰囲気とペースにのまれないような口調、小澤さんのキャスティングは台本を読んだ時にすぐ決まったのですか?

兼重淳監督
はい。とにかく小澤さんにお願いしたくて、というのは私が是枝裕和監督や犬童一心監督にずっとついて来たんですけど、助監督として両方の監督の下で小澤さんと一緒にやっていたんです。

この話をいただいた時にプロデューサーに「宮本役は小澤さんにお願いしたいです」とその段階でオファーしてもらったんです。小澤さんから返答があって「ちょっと台本に関して話したい」ということで、お会いして、書き直しもして快諾していただき出演してもらいました。

小澤征悦の真骨頂みたいなことがありますよね。会話の途中で表情が急にクッと変わって「誰でもひっくり返る」と言ったり、「俺もお前のオリンピックに出場する姿を夢見てた」とか。一方で「お前は変わらねーな」ってちょっと軽妙な感じとか。

台本を読んだ段階から宮本浩役は小澤さんしか考えていなかったので、それを小澤さんが汲んでくれました。それは大塚さん、中条さん、杉野さんも同じで皆で話し合いながら作っていった役なので、俳優さんに助けられていますし、俳優さんご自身が納得して演じてくださっていると僕は思っています。

水上のフライト,画像

―――― 宮本は応援する立場ですけど、単純に頑張った人を応援するのではなく、色んな事情を抱えています。母親からも頼まれ、旧友が遥の父親で、色んな想いを全部一身に背負いながらもあの態度です。宮本の気持ちを代弁する言葉が中々見つかりません。

兼重淳監督
そうなんですよね。
家庭もある設定なんです。結婚指輪もしてなくて今だ親友の娘とお母さんに会っているとちょっと下心があるようで嫌な感じがしちゃうじゃないですか(笑)

彼が友情をとっているというのは、ネグレクトにあってる子どもたちも含めて、旧友との友情を優先して仕事もしていて、それでサポート出来るっていう風にしたかったんです。ちゃんとそこに生きてる人間にしたかったので。そういう設定は小澤さんと話して、デスクワークの仕事もちゃんとして、子どもたちのために仲間とスクールを立ち上げて、ちゃんと家族もいる。彼の家族は出さないけど(笑)

―――― エネルギッシュですし、疲れているような姿も見せません。むしろ子どもたちに助けられているという話もしていました。応援という観点で作品や小澤さんを通じて、何か新しい発見や考え方が変わられたところはございましたか?

兼重淳監督
全員が作品の中で輝いてリアルで、それぞれのバックボーンがちゃんとあるという風に考えただけで、宮本に特化してというのはないですかね。

ただ、いつも考えるのはスピンオフが出来るぐらいちゃんとそれぞれのキャラクターのバックボーンを作っていこうとは思っています。みちる(役:高月彩良さん)の物語も出来ますし、藤堂遥と加賀颯太が今後一緒になるのかならないのか、なった時にどうなのかという物語も出来るし、小澤さんと話しているのは「海外ロケ行こうぜ」って(笑)「パート2が出来た時には本場のヨーロッパでパラカヌーをやろう」みたいな話もあります。

大切にしているのは登場するキャラクターそれぞれのバックボーンを描く、是枝さんや犬童さんに教えていただいたので大事にしていることです。なので、宮本を描いたからこの作品で何か見方が変わることはないです。

―――― もう一つ「パラリンピック」についてご質問したいのですが、障がいを持った方々がその可能性を確認する場であり、障がいの有無に限らず様々な人々が交流する場でもあり、勿論競技として競い合う場でもあると思います。監督は「パラリンピック」についてはどういう風に見ていらっしゃいますか?

兼重淳監督
オリンピックは出場することに意義がある、みたいな言葉もあるのでパラリンピックもそういうところがあるんだろうなって思っていたんです。

しかし、この作品をいただいて調べていたら病状の進行によって4年後はこの世にいない方とか、来年にパラリンピックが延期したことで4割から6割の代表選手が変わると言われているわけです。それはやっぱり考えましたし、そういう人々の思いもあるので賞はもちろん獲ってほしいです。どんなドラマを作ってもスポーツはその上を行くので、努力してきた人たちは報われてほしいと思うんですけど、努力をしてきた人が出場するだけでも凄いことなんだよって僕は思いたい。

パラリンピックの見方としては、この作品をやらせていただいたからこそ、以前よりもさらにパラリンピックに出ている選手たちを本当に尊敬します。

映画『水上のフライト』 兼重淳監督

―――― だからこそ、朝比奈麗香と遥の握手があったわけですね。

兼重淳監督
そうですよね。もしかしたら朝比奈麗香は病気で来年はいないかもしれないですから。
「私もあなたに負けないように努力する」って。

―――― その努力は競技を一生懸命するだけではなく、選手生命が長引くように体調管理も含めてあらゆる努力をすることなのですね。

兼重淳監督
しかも、朝比奈麗香は圧倒的な強さを誇っていたわけです。今まで国内無敵だったけど、ちょっと脅威となるライバルの存在が現れて、自分がさらにやる気が出る感じの表現が出来ると嬉しいなと思いました。

―――― まさにスピンオフが誕生しそうですね(笑)
本作では子どもたちもとても良い演技をしていました。遥の本音を引き出す上でも重要な存在だったと思うのですが、子どもたちについては監督として何らかの狙いがあったのでしょうか?

兼重淳監督
是枝監督にずっとついて来たので、オーディションのやり方を参考にしました。
台詞とか読ませないので、キャラクターで選ぶというか。あとは順応力とか対応力。当然、見た目も含めて選んでキャラクター付けをしていったんですけど、それぞれの中に設定があるわけです。経済的にこれぐらいの子でネグレクトにあってるとか、登校拒否であるとか。それを作っていってそのシーンの時に口で伝えていきます、是枝さんの真似をして(笑)
「君はどう思うの?」「ここはこういうものだからこういう風に思うでしょ?だからこうしてね」みたいに作っていく感じです。

―――― 意外と大人に物怖じせずハッキリ言うので、大人だなって感じるところもありました。子どもだからこそ遥も自分が言いたいことを言える、そんな風にも見えました。

兼重淳監督
その通りですよね。大人にならざるを得なかったんですよね。大人の顔色を見て育ってきているから自分が精神的に成長するしかなくてあそこにいる感じ、という設定ですよね。

―――― それぞれの人物像が浮かび上がってきますね。
ところで、遥がカヌーの練習中にひっくり返ってプールや川に落ちているのですが、中条さんご本人なのですか?

兼重淳監督
落ちてますよ!
マネージャーさんも呼んで「この汚い川に落ちますけど大丈夫ですね?」って確認して、ご本人も「やります!」って言って、ジョボン、ジョボンです。「臭い!!」と言いながら水から上がってきてました(笑)

荒川の支流で東京湾の際ぐらいなのでボラとかもいるし、昨年台風が多かったので増水して臭いもいろいろ…。「嫌だ!私やらない」って言う人かもしれないから聞きましょうって、プロデューサーが「ここに落ちますからね」って前もって言いました(笑)
でも、普通に「分かりました。やります」みたいな感じで。中条あやみさんは流石でした!

水上のフライト,画像

―――― 各キャラクターの人物設定も勿論ですけど、そういう撮影のリアルさもあるからこそ、グッと感動に繋がったのだと、お聞きしていて感じました。

兼重淳監督
僕も未だにグッときます。今朝も取材があるのでもう一回作品を観直してきたんですけど、いい映画だなぁと思いながら(笑)

―――― 遥の追っかけの記者が意外とギャグっぽいことをやられていますが、あれは脚本の土橋さんのアイディアですか?

兼重淳監督
土橋さんですけど、少しマイルドにしました(笑)
ああいう記者たちがいっぱいいたんです。それこそ陸上部員の女の子たちのキャラクターとかもいろいろあって…。

―――― 例えば、どんなキャラクターがあったのですか?

兼重淳監督
遥派とみちる派みたいなのもありましたし、取り巻きの中でデコボコがあったり、そこが土橋さんの台本の素晴らしいところでもあるんです。
今回は分量の問題でちょっとやり過ぎちゃうと収まらないので、陸上部の女の子たちは抑えていきました。どちらかといえば子どもたちにキャラクターを持たせた方がいいので。

面白いと思うのは、観てくださった女性の多くは気付くんですけど男性のほとんどが気付かないところがあるんです。競技場の表に車いすの遥が現れた時に、最初に遥に気付く女子の陸上部員がいるんです。実はその子が遥に電話をした設定なんです。先輩である遥に向かって一礼する子がいるんですけど、それにはほとんどの男性は気付かないんです。

―――― 見事に気付きませんでした(笑)

兼重淳監督
あれは誰が電話して、どういう内容の話をしたのかを分からせるためのカットなんです。私が女性脳なのかもしれないんですけど、男性はそういうところを見ずに流せるみたいですけど、女性は凄くそこに気付いてくれるんです。

―――― みちるや監督の方に目線が行っていました。

兼重淳監督
皆が周りにいてくれていたから余計に泣けるという女性評が多いんですけど、男性は気付いてくれないんですよね(笑)でも、そこら辺は観る方が判断してくだされば。
自分で作っておいてなんですが、大好きな映画です!

―――― 遥から沢山の勇気をもらうことが出来ました!有難うございました!!

 

『水上のフライト』予告編映像

あらすじ

自分の実力に絶対の自信を持つ高慢な遥は、走高跳で世界を目指し、有望スポーツ選手として活躍していた。だがある日、不慮の事故に合い、命は助かったものの二度と歩くことができなくなってしまう。将来の夢を絶たれた遥は、心を閉ざし自暴自棄になるが、周囲の人々に支えられカヌーという新たな夢を見つける―。
きらめく水面を背景に、母の愛、淡い恋心、恩師との約束・・・そして、大切な人の想いを乗せて、どん底から道を切り開いていく。中条あやみがカヌーなどの難演技に挑む、実話から着想を得た感動作。

キャスト

中条あやみ
杉野遥亮
高月彩良
冨手麻妙
大塚寧々
小澤征悦

監督

兼重淳『キセキ ―あの日のソビト―』

主題歌

「ひとりで生きていたならば」SUPER BEAVER

スタッフ

企画:土橋章宏
脚本:土橋章宏『超高速!参勤交代』・兼重淳

『水上のフライト』作品情報

製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
配給:KADOKAWA
宣伝協力:シンカ
TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2017 審査員特別賞受賞作品
Ⓒ2020 映画「水上のフライト」製作委員会

絶賛公開中

『水上のフライト』画像

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