『ホテルローヤル』武正晴監督が絶賛する友近に込めた映画の醍醐味

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映画『ホテルローヤル』
武正晴監督インタビュー

直木賞作家・桜⽊紫乃さんの代表作を原作にした映画『ホテルローヤル』が11月13日(金)から全国公開中です。

本作は、北海道の釧路湿原を背に建つラブホテルを舞台に、ホテルと共に⼤⼈になっていく⼀⼈娘雅代(役:波瑠さん)の⽬線を主軸に、ホテルを訪れる⼈々や従業員、経営者家族それぞれが抱える⼈⽣の哀歓をやわらかく描いた珠⽟の⼈間ドラマ。

本作の公開を記念し、武正晴監督に原作との向き合い方や役者の皆さんの演技について振り返っていただきながら、『ホテルローヤル』という作品が持つ魅力、本を読むことの意義、そして「映画の醍醐味」と絶賛する友近さん演じる母親役に込めた想いなど、たっぷりと語っていただきました!

―――― それぞれのキャラクターがピッタリだと感じたのですが、監督から俳優部に対して、「こういう風に演じてほしい」とリクエストされたことがありましたら、教えていただけますでしょうか。

武正晴監督
『ホテルローヤル』は希望した人が一発でキャスティングできていることが大きくて、登場するキャラクターに近いように見える人たち。且つ、原作もありシナリオにもある程度キャラクターが書かれているので、月並みだけど「台本を読んでやりたいようにやってください」ということで、どう演じてくれとかそういうのはないですね。

僕らがそれをどう撮るかだから、環境をどう作れるか、例えば「やっぱり釧路でやった方が良いな」とか。もしくは、衣装や小道具とかで「主人公に眼鏡をかけた方がいい」とか、そういう悩みというか選別はするけど、あとはそれを得た俳優たちがそれを使って、出来る限りを尽くす。

演じるって難しいと思うんです。僕はやったことないけど、ちょっと普通の人には出来ない作業ですよ。だからこそやりやすくしてあげたい、少しでも役に近付けられるように、そこだけです。

ホテルローヤル,波瑠,画像

主人公・雅代役の波瑠さん

―――― 武監督がそう言ってくださるとチーム『ホテルローヤル』として皆さんやりやすかったのではないでしょうか。

武正晴監督
後は知っている俳優たちでやれているのはあると思います。

主演の波瑠さんは今回初めてでしたけど、主人公になる座長的な人がいたら、その周りを勝手知っている連中で固めて主人公を作り上げていくと僕的には楽だなって。主人公の雅代が難しい役だし、今回は群像劇なのでその辺は知ってる人とやれてやりやすかったです。

原作を読んだ時のイメージで思い浮かぶ顔の人たちにすぐ声をかけたら、大体その人達が出演してくれたので良かったです。

―――― 監督のイメージ通りに動いていただけたということですね。

武正晴監督
そうですね、イメージを超えたぐらいですよね。

―――― 素人目線ですが、落ち着いているところと感情が盛り上がるところの使い分けが上手くて、凄く心に触れてくる素敵な演技だなと思いました。
原作と本作とのギャップというか、監督や脚本家・清水さんのアレンジが入っていると思うのですけど、どういう風に原作と向き合って取り組んでいかれたのでしょうか?

武正晴監督
原作は面白かったです。

最近桜木先生と会って「これどういう形で書き始めたの?」って聞いたんですけど、「あー、なるほどな」と思ったのは、先生曰く、最初の頃は発表する場がないわけです。でも、エロが入っていると発表できる場がある。これから出てくる作家や我々もそうですけど、下世話な言い方をするとエロは商売になる。そのスケベが入っていたら後は何を書いてもいいというのは作家にとって大きい、どうやらそういうことらしいです。

その時に、自分がかつてホテルローヤルの娘だったという原風景を基にした普段発表できないような架空の小説を発表できた。それを順繰りに書いて、幾つかの短編として集めてアンソロジーとして、「ホテルローヤル」という一冊の本になったという話を聞いたんです。

映画でいうと各シーンをプロットとして繋げていった時に、オムニバスというよりも一つの映画なんです。でもこの小説を映画にするとオムニバスになってしまうので、何か一本繋げられるリンクを貼れるものはないかとなったら、タイトルの【ホテルローヤル】しかないんです。さらに、その【ホテルローヤル】の中でリンクを貼れるものがないかなと思ってもう一回小説をバラして、シナリオを作るために読んでいくと、どうやら【部屋】が全てキーになっている。心中する子たちもホテルローヤルに行ってはいないんだけど、裏ではそこで死体が発見されるわけだから、【部屋】というのが一つキーになる。

だからそこを舞台にして、【部屋】を狂言回しとして、『ホテルローヤル』という物語で主人公の雅代を描くと面白いと思ったんです。
実は、今回はやらなかったですけど、部屋がずっとナレーションで喋っている、そういうものはやってみたいと2、30年思っていたんです。それがようやくやれるんではなかろうか、そこからシナリオを構成していきました。

ホテルローヤル,波瑠,画像 ホテルローヤル,波瑠,画像

―――― そのシナリオに関してですが、「愛の形」が永遠であればそれに越したことはないわけですけど、雅代の両親は別れる形になります。しかし、親同士が愛していたことが事実であり、その真実の形が自分だと雅代は気付いていきます。「愛の形」は色々あるけれども、監督にとっての「愛の形」というのは、どう捉えていらっしゃいますか?

武正晴監督
「愛」って言われると、もっと大きな部分で地球を愛する、生物を愛する、自然を愛する…。それにたまたま人間が乗っかって「愛」って言っているだけかな、というのはありますかね。

人間という種族だけで考えたら人間は「家族」という「族」を作りました、社会規約で。実はそこに疑問を感じていて(笑)、「家族」という「族」に所属しないといけないの?って思っている。だから、「家族」という「族」から離れた人間を描いている、僕自身もそうですけど。10代の時に認識しましたから「家族を止める」って。そこにドラマが生まれるんじゃないかと思っている。

男と女を描く時には性愛は絶対に外せないわけで、性愛から始まって子供が生まれたり、家族という社会規約が生まれてきたり、結婚というのが出てきて、それを保つために昔の人はルールを作っていたんでしょうけど、意外と僕はそこに疑問を感じていて。

―――― なるほど。同時に両親が愛したことも事実だった、という感じでしょうか?

武正晴監督
愛するというよりも「気付く」っていうことですかね。自分がここにいるのは父親と母親が出会ったお陰だし。父親と母親がどういう出会いがあったんだろう?とか、そこにまつわって少しでも、「なーんだ、良かったじゃん」って思える話があればいいんでしょうけど、それをみんな知らずして終わっていくこともあるし。

でも、ある時このホテルってこういう事だったんじゃないかって主人公が気付く瞬間が素敵だなと思って。それがあるのかないのかでは大きな違いで、気付いた上で「じゃあ、いいや」って町と家族を捨てて出ていく。「積極的に逃げればいいじゃん、その感謝の気持ちを持ったまま「じゃあね」って親を捨てれば良いじゃん」って。桜木さんの小説はそこが良いんです。

厳しい話なんだけど小説だからどこか救いを持っている、僕らも映画を作る以上は、主人公に対しての救いをちゃんと作らないといけない。ホテルローヤルは全体的に厳しい話ですから。家族ってどうなの?って全部「?」(クエスチョン)が付いているアンソロジーなんで、それで雅代が「おお、やってくれたじゃん」って。ホテルが潰れて、行く場がないという現実的な捉え方もあるけど、彼女の中ではそうではなくて「よし、次だ」なので、縛られないですよね、だから捨てることって良いじゃんって。

ホテルローヤル,武正晴監督,画像

―――― 雅代がその「捨てる」行動をした時の唐突さは、何となく両親の「離別」とオーバーラップして見えました。

武正晴監督
見る人にとってどうか分からないですが、良識で考えると「親を捨てやがって」とか。

でも、こっちは良識を疑っている側なので、だから「全裸監督」とか作ってみんなに叱られるんですけど。映画作りには良識だけで括れないところがあって、そこにメスをピュッと入れていく小説家の鋭さ凄さ、「オメーら、こんなことできねーだろう!」っていう一行に「うわっ」て思います。敵わないです、僕らはそこまで描けないです。小説は一行で殺せるから。映画はあれもこれもやっちゃいけない制限があるから限界がある。だから大体みんな誤魔化しで適当なことやるんですけど、小説家はシュッって一撃くるんです、その一行でやられちゃう。小説家の凄さですし、「参りました」って思う。

そういう風に思っている作家がいることにさらにゾクッとするし、僕は男だから女の人が書いていることにもゾクッとする。男の内面的な部分や弱い部分が見え隠れするし、女性の本心とか内面的なものを小説の中でさりげなく描いている。「これを映画でどう表現するんだ??」と思うわけです、小説で良いじゃんって(笑)

だから、俳優たちには有難いなって思うんです。こんな難しいことを読み解いて、それを表現してくれる。観てくれる人がどこまで感じ取ってくれるか、そこに向けて僕らはどれだけできたのかは分からないです。小説を読んだ人が小説の方が良いって言うかもしれないし、逆に映画を観てから小説を読んだ人がいるかもしれないし、別物だとは思っていますけども、敵わないです。

―――― こうしてお話をお聞きしていると、監督も挑戦しているんだ、と感じます。

武正晴監督
チャレンジですよ!敵わないもん。
だから、普通のことをやっても敵わないから色々やれる限りのことやらないと。

―――― 大監督から「敵わない」なんて言葉がお聞きできるとは思ってもいなかったです(笑)

武正晴監督
映画なんて他人の褌(ふんどし)を盗んでばっかりなんです。
小説家は椅子に座って自分の身を削り書いているわけです。俺らは人の褌でああだこうだ言って、売れた売れないとか言っているわけで、傲慢なことです。

―――― 映画を観て小説を読む方もいますので、映画の果たす役割も大きいと思います。
脚本家の清水さんはとはどんな役割分担をされたのですか?

武正晴監督
僕がこうやってああだこうだ言っているのを書いてくれます。僕は書くことも読むこともできないので、何もできない、ああだこうだは言いますけど。女性なりの視点でちゃんと捉えてくれるので助かります。僕らは気付かないことばっかりなので。

―――― 監督として思いがけないシーンが撮れた、このシーンが好きだ、俳優部よくやりましたみたいなシーンがありましたら教えてください。

ホテルローヤル,友近,画像

母親役の友近さん

武正晴監督
友近さんの母親が良かったです。登場シーンは短いけど、一番働いているあの人に「働け働け」って言わせたかった。

最近は働かなくていい風潮があって、もちろん社会的に良いんでしょうけど、働かなくていい時代で良いのかな?って。うちらの母親父親が働いたおかげで今があると思うから、もっとみんな働いた方が良いんじゃないかな、日本人は…。

―――― 働かずしてお金を儲けるみたいなところにちょっと力点を置きすぎていますよね。

武正晴監督
最近よく「成功してる、成功しない」っていう言葉を聞くんですけどね。

あの「働け働け」は桜木さんの本を読んだ時に僕はこういうのちゃんと届けたい、そういえば働いている人の映画ばっかり撮っているなって。汗を流している人、弁当屋で弁当を作ったり、もの作りをしたり、ああいう汗を流す労働者で良いんじゃないかなって。パソコンの前に一日中いる人のことを描いてみたいとは思わない。何をしているのかも分からないし、想像がつかない。

北海道の地で自然をバックにお母さんがふっと立って、いざ芝居が始まったときに当時の働いている本物のお母さんのように見えて、やっぱり友近さんは働いているからその実感が出るんです。

―――― 友近さんの活動を詳しく把握はしていないのですけれど、友近さんは物凄く一生懸命働く方なのですね。

武正晴監督
だって芸に対する入れこみ方がスゴイです。

要するに人を楽しませたい人なので、そのためには日本中どこでも自分の生活なんか関係なしに舞台に立っていて。

今回ここに出ている俳優みんなそうだと思うんですけど、暦(こよみ)を捨てた人達、家族を止めた人間、芸能に生きるってそういうことだから、両立しないです。僕もそうだけど、あの人たちは暦を捨ててカレンダーも関係ないんだから。俳優さんたちは本当に自分の時間はないよね、でもその中で精いっぱい生きてさ、演技をしたりテレビに出たり歌を唄ったり、それが芸能の世界です。それで良いと思う。だからすごく有難いことです。日頃みんなが休んでいるときに働いているんだから。今回の自粛でも分かったけど、そういう人たちが世の中を面白くしたいって考えているんだから。

そういうことをホテルローヤルという24時間休みなく働くホテルの人たちの話で桜木さんが書いたんだよね。

朝、目が覚めて寝るまでが仕事、寝ながら仕事したっていいんだから。それをやっているのが作家の仕事だし、演者たちの仕事。それがホテルローヤルに集約するんじゃないかな。

日頃皆が楽しんでいる裏側でどういう人達がいるのか、そこが映画を描く醍醐味だよね。バックヤードが面白いのはそこだよね。そういう映画が誰かにちょっとでも届くと良いなって。今回世界中が騒ぎになって、みんなちょっと気付いたと思う。

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―――― 休みなく働くということと、ホテル営業も24時間だというところが繋がってくるんですね。

武正晴監督
だから、「働かなくてもいいよ」って声高に言うのはどうなの?って僕は思う。人それぞれだから「静かに言ってよ」って。世の中はそういうわけにはいかない。俺はそっち側でずっと描いてきたから。

―――― お金の対価としての労働ではなくて、働くこと自体に価値があるということですね。

武正晴監督
とは思いますよ。人間はやっぱり働くために生まれてきたんじゃないのって。なのでもう一回そういうところ見直した方が良いと思う。働くことは素晴らしい、生きているかいがある。

でも僕らの世代はダメですよ。50代はろくでもない(笑)生まれた時からなんでもあるんだもん。やっぱり焼け野原から一からやってきた人達は逞しい。生まれたとき何にもないんだもん。そこは敵わないです。俺たちがやることはダメだなって思う。

―――― 監督は10代で映画の世界に入られたと思いますが、監督が映画をやりたい、好きになったきっかけはどんなことなのですか?

武正晴監督
親の影響です。子供の時の原風景で決まるんです(笑)家に何があるか。それでいいんですよ、親のお陰だなって。

「じゃ、さようなら。あなたたちのおかけで気付けました。やりたいことがちゃんと分かりました」って、でも家にいたら出来ないですから、そこの厳しさですよね。

―――― 言葉にするのは簡単ですけど、大変なことですよね。

武正晴監督
そういうために本を読むのかもね。学校で教えてくれないことがあるから、「本を読め」ってそういうことです。

良識な人間たちが教えること以外のことを本がちゃんと教えてくれる。ホテルローヤルもそうです。良識な事だけで社会を形成しようとしているけど、そこからはみ出した人間のことはない。そのために本を読むのだと思っているし、映画もそうであったらいいけど映画はそこまで描けていないかもしれない。

でも、映画で人が救われることがあるかもしれない、僕も救われた。映画とか小説とか音楽ってそういうためにあるのかもしれない。だから桜木さんは良識を疑ったら?とか家族って壊れるもんだよっていう誰もが分かっているけど言い出さないことをエンターテインメントとして書くわけで、それは小説家の役割だと思います。それをずっと書いているわけだから。

普段はニコニコして素敵な方ですけど、筆を持ったら怖いですよね。だから読んでいて怖くて、面白かったです。僕は普段こういう本をあまり読まないから、こういうきっかけがないと読まないけど、桜木さんの本だけ読みたくなります。なんでもかんでも読めないですもんね。一つの作家を追いかけていくっていうのは読んでいて面白いし、一本筋が通っているのが桜木さんの小説だと思う。是非、おすすめします。

北海道のことがいっぱい書いてあるから、北海道に生きた人間にしか書けない文章でそこもオリジナルなのかもしれません。

―――― 監督に楽しみ方として原作と映画どっちを先にすれば良いかお聞きしようと思っていたのですが、これは両方ですね(笑)

武正晴監督
小説でも良いんじゃない。だって違うものだから面白いよ。小説から読んでも全然いい。読んでほしい、本当にスゴイですよ、面白い。
俺みたいに本を読むのが苦手な人は映画を観ればいいし、映画が苦手な人は本から入る、それで良いと思います。

―――― 有難うございました!

公式HP

hotelroyal

キャスト

波 瑠
松⼭ケンイチ
余 貴美⼦ 原 扶貴⼦ 伊藤沙莉 岡⼭天⾳
正名僕蔵 内⽥ 慈 冨⼿⿇妙 丞 威 稲葉 友
斎藤 歩 友 近 夏川結⾐
安⽥ 顕

作品情報

監督︓武 正晴
脚本︓清⽔友佳⼦
原作︓桜⽊紫乃「ホテルローヤル」(集英社⽂庫刊)

製作幹事︓メ〜テレ ファトム・フィルム
製作プロダクション︓ダブ
配給・宣伝︓ファントム・フィルム
©桜⽊紫乃/集英社 ©2020 映画「ホテルローヤル」製作委員会

11 ⽉ 13 ⽇(⾦)TOHO シネマズ ⽇⽐⾕ほか全国ロードショー

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