「女性であることが苦手だった」『タイトル、拒絶』山田佳奈監督

タイトル、拒絶,画像
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「女性であることが苦手だった」
映画『タイトル、拒絶』
山田佳奈監督インタビュー

2013 年に山田佳奈監督自身により初演された同名舞台の映画化で、長編初監督作品となった映画『タイトル、拒絶』が13日(金)から公開中です。

今回は、それぞれが抱える事情に抗いながらも力強く生きようと進むセックスワーカーの女たちの物語を山田監督が制作された経緯、7年が経ち感じている変化、そして監督が美しいと感じることや自らを現実主義者だと表現する監督が希望を感じる瞬間など語っていただきました。

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―――― 作品を観ていると「ここでこうなるのかな?」というイメージが浮かんだ時に、意外とあっさりと予測を裏切ってくれるようなシーンが幾つかありました。

山田佳奈監督
自分では分からないので、教えてください(笑)

―――― 例えば、リョウタ(田中俊介)がキョウコ(森田想)に酷い言葉を浴びせて街中の道路に置き捨てるので、まさか…と思ったのですが。

山田佳奈監督
(キョウコは)元気に生きていきますね(笑)

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―――― また、屋上でマヒル(恒松祐里)の妹(モトーラ世理奈)がお姉ちゃんに向かって酷いことを言って、場所が場所だけにこのまま死んでしまうかと思いました。

山田佳奈監督
あのシーンは片岡礼子さんに言われました。

マヒルがどんどん上に登って行く時に「死なないで!死なないで!!と思って観ていた」と仰っていました。自殺する風に見えるんだなって。確かに私も狙っていたんでしょうけど、自分でも忘れました(笑)

タイトル、拒絶,画像

―――― 本作は舞台からスタートされたということですが、どのような経緯で舞台が誕生し、今回の映画化に至ったのでしょうか?

山田佳奈監督
経緯としては、自分が女性であることが苦手だったんです。女性であることが好きになれなかったというか、女性であることに上手く馴染めなかったんです。

10代からチヤホヤされるタイプではなかったですし、会社員になってレコード会社の宣伝部にいたんですけど、宣伝部は花形の部署なので大きいメーカーさんは容姿がいい人、スタイルがいい人を当て込んでくるんです。なぜなら人が仕事を取ってくる仕事なので。そうすると私のいた会社の宣伝部は皆お笑い担当、いわゆる盛り上げ役みたいな先輩がずっといるような部署で、そういう姿を見ちゃうと自ずとそこにいっちゃうんです。

例えば、バラエティー番組でも女優さんは前に座っているけど女性芸人は後ろに座って盛り上げるというか、同じ女性なのにこんなに差があるんだな、男の人から見たらって。輝いている女性たちに対して大きな差を感じていたんです。

仕事をする上ではジェンダーなんて関係ないと思うけれども、やっぱり日本の社会が男性優位なんです。体力の部分も勿論そうですし、業界的に女性より男性の方が人数も多いし、そうなった時に自分自身が女の人にも男の人にも勝てないと思ったんです。それがやっぱり大きなきっかけだった気がします。

女性であることに対して物凄く鬱屈としたものがあった時に、自分が女性であることを別の角度で鬱屈としている人たちって誰なんだろう?と思った時に、真逆のセックスワーカーの人たちと繋がるのではないかと思ったんです。

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―――― 女性を武器にしている方々ということですね?

山田佳奈監督
そうですね、逆手に取って商売をされている方々。

でも、様々な理由があると思うんです。貧困でご飯を食べるいくためとか、遊ぶためのお金が欲しいとか、本当に様々な方がいらっしゃると思うので、それが不幸か幸せかは全く私には分かりません。なぜなら、決めつけてはいけないから。だって仕事としては変わらないし。

セックスワーカーは男性で言うところの肉体労働ですよね。でも、女性が自分の体を売ること、秘められていることを商売にしているのでもてはやされてしまうし、不幸なカテゴライズにされてしまう。けれども、そうではないんじゃないかなって。自分に女性性嫌悪みたいな気持ちがあった中で、彼女たちのことを描いてみたいと思ったことが大きかったです。

よく聞かれるので先に言ってしまうと、取材はしていません(笑)

当時は演劇3年目くらいでわざわざアポイントを取って会って話を聞く術もなかったし、それこそこの映画のような大きな規模になればセッティングもしてもらえますけど。身近な人でセックスワーカーの方がいらっしゃったのでそういう方の話は聞きましたけど、対面してどなたかに会う機会は中々なかったです。

代わりにアメーバブログは興味を持ってかなりの数を読んでいました。今でこそSNSがあって誰でも芸能人になれるというか、自分のプロモーションで書いてる方も多いですけど、当時の一般人の方のブログはそういう形ではなく、誰かに見ては欲しいけど匿名の日記帳みたいなイメージだったんです。そこには自分の幼少期の話やお客さんの話、お客さんのことを嘲笑っているものもあれば、可哀想だというか男性を受け入れる過程とかも書かれていたり、本当に色々ありました。それを読んでいるうちに自分の女性性嫌悪と繋がったんです。だから、この「拒絶」というのが一本の話になったのかなと思っています。

タイトル、拒絶,画像

―――― 彼女たちの当時の表現というか、そもそも書いている意識が今のSNSとは違ったのですね。

山田佳奈監督
ブログにアップしているのは当然見てほしいからだと思いますが、芸能人意識のないまま書いて見てほしいのと、芸能人意識で書いて見てほしいのはちょっと違いますよね。

今の時代は芸能人意識というか物凄く見られることを意識している。見られる前提で言葉をチョイスしている。でも、当時は逆だった気がするんです。自分の書きたいことが優位というか。だから、嘘偽りがないことが多かったんです。

こういう題材を扱う意味でも、取材していないのは今考えるとあり得ないんですけど、結果的には変な書籍を読んだり、心を開いてない相手と対面して無理やり引き出すよりも良かったと思います。今回は映画化する上で、新たに男性側の意見も取り入れるためにディスカッションもしたので自信を持って出せました。

―――― 新人のヤヨイ(役:大河原歩さん)が初めて出勤する時に山下(役:般若さん)が「何かされたら噛んじゃえばいいんだから!」と伝えるシーンで私は思わず笑ってしまいましたが、ヤヨイの周りにいた彼女たちは全く笑っていなくて、その時にハッと感じました。

タイトル、拒絶,画像

山田佳奈監督
仰る通りだと思います。

人間というのは育てられ方の過程も色々あると思うんですけど、呪いのように女の子である、男の子である、自分はこうであるみたいなのがあると思うんです。だから、どうしても対等であるとか、ジェンダーが関係ないと言っても男の人は男の人、女の人は女の人の刷り込みが多少あると思っていて、だからこそ感じ方は女性側、男性側でどうしても分かれると思っているんです。

男性のお客さんに「山田さんの作品は、an・anの袋とじを開けて中を見るような感覚です」って言われたことがあるんです。週刊誌のちょっとエッチな袋とじを切るのは全然平気なんだけど、女性ファッション誌の袋とじは何があるか分からないから怖い、その感覚に近いって。

それをスナックで働く女性の物語を作った時に言われました。スナックのほとんどの女性が一人の男性と関係を持っていた設定で、一人の女性が「手を挙げなさいよ!」ってなって女の人が全員手を挙げるシーンがあったんです。男の人だけドカンドカン笑うんです。

男の人は笑いで自己防衛をしているというか、男性的なコミュニケーションってあるじゃないですか。冗談で案外センシティブなところを言ってしまうとか。でも、女性はそういうコミュニケーションの取り方よりも物理的に「やだーっっ!!」みたいな(笑)手と手を合わせるみたいなハグ・コミュニケーションですかね。その差みたいなものがあるのかなって。

だから笑いどころが違うみたいな感想を聞くとシメシメって思います。

―――― 劇中にマヒルが部屋でテレビを観ているシーンが何度かあり、終盤のテレビを観ながら笑っている彼女の横顔には苦しい状況ながらどこか前向きな気持ちを感じてキレイだなって思いました。パンフレットに「自分自身の理想に進めていないとか、葛藤してる人間に私は美しさを感じるんです」というコメントをされていますが、監督にとって「美しい」というのはどういうものなのでしょうか?

山田佳奈監督
キツイことにキツイと分かっていて抗おうとする様ですかね。

物理的なことで言うとブルーワーカーの方が作業着で汗をバーバーかいてることとか、喧嘩して「クソッ!」って言ってる姿とか、生々しいことですかね。自分の置かれている立場に逆らおうとしている瞬間ですかね。

立場、タイミング、時間、希望、夢とか色々あると思うのですが、人生ってそんな上手くいかないと思うんです。確実に積み上げることで可能性は濃くなっていくけど、そんなに今日明日で夢なんか叶うわけないし、私自身が物凄くドライスティック、現実主義なんです。
高校の時に演劇部だったので「日大芸術学部の推薦を出す」と言われたけど断ったんです。演劇を勉強したくなかったのもありますし、演劇・俳優でご飯を食べられるはずないと思っていたんです。だったら好きな音楽で会社員として就職したいから専門の就職コースに進学したんです。物凄く現実主義者なんです。

今も、少女が持つ一過性の尊さとか儚さみたいなものは美しいとは思うけど、自分にはもう描けないし、気質的に無理なんです。

―――― ちなみに、カノウ(役:伊藤沙莉さん)が買い物へ行く度にトイレットペーパーを沢山買い込んでいますが、なぜですか?

タイトル、拒絶,画像

山田佳奈監督
あれは日常を描きたかったんです。女性はトイレットペーパーをメッチャ使うじゃないですか。男性は分からないでしょ?(笑)女性はメッチャ使うんです。あれだけの女性がいたら多分トイレットペーパーもすぐになくなります。

―――― そうなのですね。毎回買いに行っているから不思議に思っていました。

山田佳奈監督
これだけ女性がいたら1ロールなんて2,3日だろと思って、リアルを考えた時に買いに行かせちゃっても全く問題ないと思ったんです。

やっぱり生活をするというのを描かないとこの映画はセックスワーカーの方々に失礼になると思ったんです。だって、彼女たちは生活する上で働いてるし、この控室も生活の一部だからトイレも行くし、食事もするし、タバコも吸う。ご飯を食べるシーンは入れられなくて“あたりめ”になりましたけど。コンビニのラザニアとか食べるシーンがあっても良かったのかもしれないですね。

タイトル、拒絶,画像そういう生活が描かれている映画が好きだからかもしれないですけど、人の生活の延長線で抗ったりチャレンジしたりする、さっきの美しいと感じる瞬間の話に近いんですけど、それに凄く魅力を感じますし、その先に希望を感じる。なぜならば、自分自身もそうだから。当たり前に生活をしていて、こうなりたい自分もあるけれども、すぐにはなれなくて体はどんどん衰えていくし、毎回チャレンジしても中々自分が思っている理想には到着しない。でも、着実に身の回りには味方が増えてきて、自分の中で許されていくものが増えていく。

例えば、映画化するために7年前の脚本も久々に読みましたが、ほとんど覚えていないんです。それって自分の中で鬱屈としていた女性性嫌悪がなくなっているからなんです。私が女性であっても別に仕方がないというか、今は性別として受け入れています。

色々な考え方の人がいるから難しい発言になるんですけど、女性だったら女性を利用した方が良いと思っているんです。対等であると主張しているくせに利用出来る時だけ利用するってズルいんだけど、それで生きていく上で楽しくなって、誰も傷つけてないんだったらいいんじゃないって。受け入れる時は、相手に対して押し付けなければいいんじゃないって。

今、色んな人が揉めたり正義をかざしているけど、それぞれにとって正義だから皆声を大きくして言っていて、誰も間違えていないんです。だから、ややこしくて。同じ国の同じ肌の色の人同士がそれぞれの正義で「同じ正義感だろ!」って戦っている気がするんです。でも、生きてきた過程とか考え方や好みによって正義なんて全然違うから、それは言葉にしてコミュニケーションを取らないと誰とも通じ合わないんだけど、正義の色が違っても「正義」は一緒だからこそ戦ってしまうというか、難しい時代だと思います。

でも、女性性の話に戻ると、他者を守るためや自分がより楽しめるならそれでいいかなと今は思えたんです。昔の私は「女性性」という一つの色に対して凄く嫌悪していた。楽になっちゃったんです。

―――― 有難うございました。最後に映画ファンに動画メッセージをお願いします!

山田佳奈監督から動画メッセージ!

山田佳奈監督、小説家デビュー!

されど家族、あらがえど家族、だから家族は
2020/10/21から発売中!

公式HP

lifeuntitled.info / twitter

キャスト

伊藤沙莉
恒松祐里
佐津川愛美
片岡礼子
でんでん
森田想
円井わん
行平あい佳
野崎智子
大川原歩
モトーラ世理奈
池田大
田中俊介
般若

監督・脚本:山田佳奈
劇中歌:女王蜂「燃える海」(Sony Music Labels Inc.)
プロデューサー:内田英治 / 藤井宏二
配給:アークエンタテインメント
(C)DirectorsBox

2020年11月13日(金)より
新宿シネマカリテほか全国公開中

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