スタジオジブリ広報部長が語る『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』の魅力【後編】

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スタジオジブリ広報部長が語る
『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』の魅力【後編】

三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーより 12 月 2 日(水)にブルーレイ/DVDで発売(同日、デジタル配信開始)されるアニメーション映画『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』の魅力について、スタジオジブリ広報部部長の西岡純一氏に語っていただきました。
インタビュー後編では、本作と日本のアニメーションとの違いなどを交えながら注目ポイントを教えていただきました。

前編はこちら

―――― 日本のアニメーション界としても『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』から学ぶべき点が多かったのではないかと思いますが、それはどんなところでしょうか?

西岡純一

高畑監督が最初に仰っていましたが「シンプルだけど気持ちのいいストーリー」という点です。

今の日本では、限られた作画枚数でアニメーションを作らねばならず、一枚一枚の絵に魅力を持たせるため、華美にキャラクターを飾ったり、カッコイイ構図で描いたり、そこに重点を置く傾向が強いと思います。

特に背景は写真を加工して使う技術も発達したせいか、リアルを極めていて、ほとんど写真と区別がつかなくなっています。それはそれで僕は好きですし、需要はあります。

一方で、アニメーション本来の「動かして生命を吹き込む」ことにこだわった作品があってもいいように思います。シンプルで描き込み過ぎていないキャラクターが「よく動く」作品が日本でもあってもいいんじゃないかと。そもそも「ジブリが描き込み始めたんじゃないか」とも言われていますが(笑)

宮崎監督もそれを感じていて動きにこだわった『崖の上のポニョ』を作ったりもしました。

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん

―――― お話を聞いていると、子どもたちが絵本を見る時にその優しいタッチに触れながら、絵に動きはないけれども自分の頭の中ではまるで動画のように一枚一枚しっかりと繋げていくような、それに似たイメージを受けました。

西岡純一

この作品はどのシーンをとっても絵本のようです。背景とキャラクターがしっかり馴染んでいて、全てのコマが一枚の絵になるように表現されているのだと思います。

―――― インタビューの【前編】では背景と馴染ませる技術について触れていただきましたが、白を背景としたアニメーションの制作は難しいのでしょうか?

西岡純一

難しいけれども、緻密な背景を描かないで済む分、楽かもしれません。だからアニメーションの中に雪のシーンはありがちですね。

ただ、本作で感心したのは、白に対して光の当て方によって立体感とか氷山や雪山の大きさとか、それを表現する手法が見事だと感じたからです。

雪や氷といっても真っ白ばかりじゃなく、オレンジもありますし、光が当たっていないと青くなったりもするんです。本作は本物の氷をちゃんと観察していると思います。

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん

―――― 改めて、技術的なところで本作にあって日本のアニメーションにはない点はどういうところでしょうか?

西岡純一

日本のアニメーションはキャラクターをいかに魅力的に描くかが大切で、行き過ぎると“萌えキャラ”になりますけど、ファンを惹き込むことが優先されます。この作品のサーシャにはそれはないですよね(笑)

でも、そんなキャラクターだから感情移入して応援したくなるんです。仕草や動作でキャラクターを魅力的に魅せることが、日本のアニメーションでは置き去りになっているのではないのかと感じます。

ストーリーは、普通の映画だったら海からクラーケンが出てきたり、クジラと遭遇したり、最後の白熊だってもっと襲いかかってきて死人が出たかもしれない。そういうのを一切排しているところがいいですね。主人公に寄り添うちょっとお馬鹿な小動物がいないところも(笑)。リアルで、グイグイ持っていかれる感じがします。

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん

―――― 質問は変わりますが、ジブリの作品に登場する数々のヒロインとの比較なのですが、似ているキャラクターは誰でしょうか?(笑)

西岡純一

ジブリのキャラクターをナウシカ(『風の谷のナウシカ』)から最新作のアーヤ(『アーヤと魔女』)まで考えたんですけど、なかなか似ているキャラクターはいませんね(笑)ナウシカ、サン、千尋、シータ…みんな違うなぁ…。

唯一、ジブリ作品ではなくジブリ美術館ライブラリーで取り上げた、ロシアの古いアニメーション『雪の女王』のヒロイン・ゲルダに似ているかなと思いました。

『雪の女王』は、若き日の宮崎駿監督が東映動画に入って面白くない仕事ばかりを担当して、アニメーションに失望しかけていた時期に見た作品で、「アニメーションにはまだまだやれることがある、もっと魅力的なヒロインを作れる」と改めてアニメーターとしてやっていく決心をした作品なんです。

だから、ゲルダとかサーシャのような一途な女の子への憧れは宮崎監督の心の中にあるんじゃないか、それはジブリ作品にも息づいているかもしれない、と思います。

―――― 最後に一番お気に入りのシーンについて教えてください。

西岡純一

エピソードでは、サーシャが酒場に辿り着いて、オルガと一カ月間暮らす。あそこの描き方がいいなと思いました。

朝も中々起きられなかったサーシャが段々とたくましく成長して、最後はオルガよりも早起きをしてご飯を作っている。あの一連のシーンに「これは上手だな」と思いました。あのシーンは是非観ていただきたいです。

―――― ありがとうございました!

発売&レンタル開始日

『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』
12月2日(水)ブルーレイ発売/デジタル配信開始

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん [Blu-ray]

© 2015 SACREBLEU PRODUCTIONS / MAYBE MOVIES / 2 MINUTES / FRANCE 3 CINEMA/ NØRLUM

発売/ウォルト・ディズニー・ジャパン

三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー

世界の優れたアニメーションを、ジブリ美術館がセレクトし広く紹介する活動として、2007年に発足。高畑勲監督・宮崎駿監督がおすすめする作品を中心に、まだまだ知られていない世界中の名作を取り上げています。

映画配給第一弾は、ロシアのアレクサンドル・ペトロフ監督作品「春のめざめ」、DVD化第一弾はフランスのポール・グリモー監督作品「王と鳥」。以後、世界のアニメーション作家やスタジオと協力し、美術館での展示やイベントにとどまらず、“映像”による作品紹介を念頭に、劇場公開(配給)とブルーレイ・DVD化を2本柱として活動を継続中です。

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