映画『佐々木、イン、マイマイン』内山拓也監督【インタビュー】

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映画『佐々木、イン、マイマイン』
内山拓也監督
【インタビュー】

2020年11月27日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開中の映画『佐々木、イン、マイマイン』の内山拓也監督に、映画監督になるまでの道のりや佐々木役を演じた細川岳さんの魅力など、たっぷりと語っていただきました!

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映画『佐々木、イン、マイマイン』の内山拓也監督

―――― 非常にいい映画で悠二と気持ちが重なって涙が出てきました。

内山拓也監督
光栄です。ありがとうございます。

―――― また、セリフ以上に俳優さんたちの顔の動きや感情、やり取りと言えば良いのか、見えない感情が飛び交っているような感じを受けました。
まず、監督ご自身についてお聞きしたかったのですが、スタイリストから映画に没頭されて監督業に辿り着かれたそうですが、映画に没頭したきっかけになった作品があったのか、なぜお気持ちが監督業の方に移られたのかを教えてください。

内山拓也監督
ちょっと長いのでかいつまみますが、文化服装学院のスタイリスト科に入って、いわゆる役者さんの取材時のスタイリングをやったり、ミュージックビデオとか雑誌のスタイリストを目指していました。2年制だったんですけど、入学翌日ぐらいからアシスタントについて、負けん気と言いますか、“絶対やるぞ!”みたいな気持ちだけは強くもって上京しました。自分で言うのも何ですけどがむしゃらに頑張ってやっていました。

スタイリストの仕事は現場が壮絶なもので、今は段々環境が良くなっていると思うんですけど、専門学校だからと簡単みたいに見られがちなのですが、文化服装学院はとっても大変で、課題が物凄く多いんです。17時ぐらいに学校が終わって、バイトをして、24時ぐらいに終わって、そこから課題をやると毎日夜中の2、3時だったんです。バイトがない時はアシスタントをしていたので、基本的にはずっと繋がっている生活を約2年間送りました。

その時に、寝たら皆と同じだから4時間ぐらい寝るところを毎日2時間ぐらいの睡眠が当たり前の身体になればスタイリストになることも辛くないだろう、だから毎日1、2時間しか寝なくても大丈夫な身体にしようと思ったんです。
課題が2、3時に終わって寝たらダメだから、手っ取り早く1日1本映画観ようと、映画を毎日観るノルマを課したんです。そうしたら面白くて、映画にどんどんハマっていきました。

映画監督の方々って“映画制作を学んだ”とか“親の影響”のような経験過程や慣れ親しんだ時間を経てなっていく方が多いんですが、僕の場合はそう言ったことが一切なく、睡眠時間を削ることがきっかけで映画を漁り始めたのが19歳ぐらい。映画の道を真剣に考えていたわけではなかったのですが、2年生になったぐらいのタイミングで初めて映画の現場に行って、ひたすらアイロンがけをしていたら、撮影現場そのものが凄く面白そうで“映画ってこうやって撮るんだ。カメラってこうやってやるんだ”みたいな。“あの人たちになりたい”と思って、卒業してちょっとしたら“スタイリストは辞める”と決めて、スタイリストから徐々にフリーターになる道を目指して(笑)、とりあえずスタイリストを辞めることを目標にスタイリストやっていたみたいな状況でした。

1年間で1,200本の映画を2年間ぐらい観続けていましたが、映画の歴史は途方もないほど奥が深いです。

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きっかけは、文化服装学院は直接映画には関係ないんですけど、カルチャーの勉強もする学校だったので、文化史みたいな授業があって、そこでソフィア・コッポラ親子のこととか色んな変遷も学んだりとかして“なるほど・・・”と思った時と、同時期に『時計じかけのオレンジ』(スタンリー・キューブリック監督)を友達に薦められながら授業で観て、初めて観たら“凄い”と思って、良い意味で言い方が悪いですけど“狂ってるな”と。怖いというよりは“映画ってこんな表現方法があるんだ”と感じて。あれが、映画少年にならせてもらったきっかけです。後は、卒業する時に『幕末太陽傳』に出会ったんですけど、キューブリック川島雄三、この2本で映画の奥深さを感じて。

(卒業後は)ずっとフリーターをすることになるんですけど、会う人会う人に「映画の現場にいきたい」と言い続けて。僕はずっとそういうタイプで、スタイリストの時もそうでした。でも、その時はまだ“映画”の事をワードでしか理解していなかったので、監督のこと自体もあんまり知らなかったんです。映画館でバイトもして、それは映画館の魅力に気付いたり映画の力を感じたこととが重なって。映画館で働いていると色んな人が一つの映画に関わっていることも知るんです。配給さんとかも覚えるし、この映画の担当者はあの人だ、とか。その方にお茶を出したり直接接しているとし、結構近くに感じたり、監督もいっぱい来られるから覚えたりして。卒業してから2年ぐらいフリーターをして22、23歳ですかね、今は新宿武蔵野館の番組編成をやっている方に、「2週間か3週間ぐらい大変だと思うけどスタッフを探してる監督がいるけど行く?」って紹介してもらい「行きます!」と。雑用というか助監督というか、自分が何をしているのか分からないぐらい様々なことを経験して、そこでいろんな人に繋がって、「ウッチー、次も来る?」と誘ってもらったりしました。

その時にシネマカリテで「カリコレ」(「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション」)があって、中野量太監督が武蔵野館で『チチを撮りに』を上映されていて。僕は初めて中野さんの作品を観させてもらったのですが、とても感銘を受けて。“この監督面白いな”と。その話を当時の人たちにして、中野さんが来られると聞いたので履歴書を持っていったんです。カリコレ終わりに中野さんに渡して、そうしたら「ありがとう」って。でも、監督は履歴書をもらってもそう簡単に何も出来ないことは今では分かるんですけど、「ありがとう。でも、何もしてあげられない」と言われて。中野さんは『チチを撮りに』を撮った後も苦労人だったので、「何もないんだよね」と。それで、その時は一旦終わって、この話で大丈夫ですか?(笑)

―――― 大丈夫です!凄く面白いです。

内山拓也監督
中野さんに履歴書を渡してからしばらく経って、変わらない日々に“どうしようかな”と思ってたら、中野さんがFacebookの誰かと繋がっていたのが(タイムラインに)上がってきて、新宿のゴールデン街に中野さんがよく行く店があって、そこで1日店長をする企画があって、“いる!”って思ったんですよ。だから、友達に「申し訳ないんだけど、ゴールデン街って行ったことないんだけど、一緒について来てくれない?」って言ってゴールデン街に行ったら、ここかなぁ?みたいな。入れないな…と思いながら一応開けて覗いたら「あー、ごめんね。いま入れないです」って言われたのですが「中野さん!」って僕が言って。中野さんもいきなり履歴書をもらっただけなので覚えていなくて「履歴書渡した、、」と伝えたら「あー!来な来な」みたいになって、そこで飲んで中野さんの知り合いの人たちもいたので、Facebook交換させてもらったりして、ちょこちょこ2、3日ぐらいしか行ってないんですけど現場をちょっとだけ見させてもらいました。1年後も僕は何もないただのフリーターで、変わらず映画館でバイトして映画を目指してる人でした。

その間、中野さんとは企画の話はしていました。「この企画、今こういう感じなんだよね」とか「脚本ってどうやって書くんですか?」とか「誰に出てもらいたいんだよね」とか。それが『湯を沸かすほどの熱い愛』があの形になるまでずっと横にただ居させてもらいました。作り方を学んだわけではないんですけど、作っていくまでの中野さんの人生を横で見させてもらった経験が、確かに自分にはあったということです。

役者の友達と脚本を書きたいと思ってる大学生の友達と「自主映画撮ろう」みたいな話をしたのが春で、2015年の12月に自主映画「ヴァニタス」を撮って、3月に完成してぴあに応募しました。応募はしましたが、反応はすぐにはないものなので。夏ぐらいにいくつか応募した映画祭には落選して、“ダメかもな”と心境は落ち込んでいきました。「助監督やらないか?」と誘ってくれる方はそれでもいらっしゃいましたが、全てお断りさせて頂いてひたすらアルバイトをする日々しかありませんでした。そんな下向きな日々の中で、気持ちが外部に対して拒絶してしまっていたために連絡をずっと無視していた番号があって“またかかってきた…”みたいに思ってしまっていて。当時無印良品でアルバイトをしていたのですが、休憩中に出たら「PFF事務局の荒木です。明日までに電話に出なかったら申し訳ないんですけど、期限が過ぎて落選させることしか出来なかったんです。けど、今日電話に出られたので、やっとお話が出来るんですけど、内山さんが良ければPFF入選に選んでもいいですか?」っていう電話で。“出て良かったぁ”と思って(笑)1週間ぐらい無視してたんですよ、多分。

救いの電話だったんですよね。そこから2016年のPFFで賞をいただいて、海外の映画祭にも招待していただきました。そこから簡単に人生は変わりませんでしたし好転する日々ではなかったですが、ミュージックビデオを撮ってはいましたが、『佐々木、イン、マイマイン』は、(細川)岳と「一旗揚げて、これでダメだったらやめるぐらいの覚悟で自分も臨む」って2017年からきて、今ですね。

長かったですね(笑)

―――― でも、このストーリーも応援する人とそれを受ける人、自覚する人っていう意味で言うと、監督の今のお話って結構作品にも繋がっているような感じはしますね。

内山拓也監督
そうですね。僕自身も、やっぱりその当時は思えないんですよ。渦中にいるので。ただ、自分は人の繋がりのお陰で生きていると思っていますし、人に出会う才能だけはあるというか、そのような自負はあります。

―――― 小さな繋がりや言葉を自分にとって重要だと思えるのは、それまでの自分の作り方と相手との関係性があるじゃないですか。そこで初めてストーリーって結果が出来るわけなんで、今のお話を聞いていると、映画そのもののような気が凄くしてきました。

内山拓也監督
そのようなことも詰め込んでいると思います。

―――― 監督が細川さんからこの話をお聞きになられた時に、何かが心の中で共感したとか共鳴したって思うところまでには何かが反応したと思うんです。反応した気持ちとか感情とか記憶っていうのはどんなところなのですか?

内山拓也監督
誰かと企画をしようとか、それこそ役者からやろうみたいな話って、割と同世代の仲間が多いので、持ちかけられたり、やろうみたいになることは多いんですけど、今回もくすぶってるのは分かってて、僕と同じように。だから岳もそういうことを話すんだな、とは思っていたんですけど、(作品)資料には“居酒屋で喋った”と書いてあると思うんですけど、その話が形容し難いんです、とにかく高揚しました。彼が大阪人で、そもそも人間としても喋りも面白いっていうのもあるんですけど。『佐々木』で心が動いたのは、突拍子もないことを言っている面白さよりは、突拍子もなくて訳が分からない中に、“全部分かる”っていうか“自分事”というか、身近に感じられる要素の中で出来てるんですよ、『佐々木』は。

だから、表面的なものではなく裏の感情みたいなものが“俺、凄く分かるかも”とか“俺、経験したことあるかも”とか“ちょっと違うけど、俺もあいつと同じ気持ちかも”みたいな、とても他人事の話を聞かされてるようには思えなくて。僕は新潟出身なんですけど、聞きながら新潟の原風景とか、友達の名前とか顔とかがもうフラッシュバックして、それと重なりながら『佐々木』の話を聞いて、もう岳くんの友達の話を聞かされてる気持ちでは全くなくて、僕の話を岳の想いというものに重ねて、僕のためにしてくれてるみたいな気持ちが凄くありました。

この感覚をちゃんと映画にしたら、皆、自分に刺さるものがある、これはきっと面白いものに出来るかもしれないって直感的に凄く感じたんです。

映画,佐々木、イン、マイマイン, 画像

―――― 確かにおっしゃる通りですね!自分の知っている誰かに当てはまったり、シチュエーションが当てはまったりしてくるので、とても共感して観ることが出来ました。
細川岳さんが映画『ガンバレとかうるせぇ』で部長役をやってた時に、佐藤監督にはインタビューさせていただきました。「部長役の細川さんも凄いですね」と話していたんです。感情が臨界点に達した時の切れ味っていうか爆発力がある人だなって。今回はその役とはだいぶ違うと思いますが、監督から見た細川岳さんを教えて頂けますか?

内山拓也監督
これも難しいですけど『ヴァニタス』をやる時から出会ってるんです。だけど正直、毎日連絡を取るような友達ではないんです。今でも業務連絡は毎日するんですけど、ちょっと疲れたから飲もようとか、今日何してるの?っていう間柄ではそんなになくて、そういう友達ではないんですよ。『ヴァニタス』をやった後も、定期的にお互い下向きというか、くすぶってるんで、3ヶ月に1回飲んだりはしてたんですけど、皆さんが思うような友達の感じとは違うのかもしれないって思っています。

どういう人?って言われると凄く難しいんですけど、この人のお芝居っていうのは、皆さん基本的には『佐々木』でしか見てない人が多いと思うんですけど、僕はずっと上手い人だなと思ってて。とにかくお芝居が良くて上手で、何か動いてもらったり本読みとか、喋らせることをやるととにかく芝居が良い。身体性がとてもあるんですよ。アフレコも上手いんですけど、動作というか、芝居が良いってなかなか形容しずらいんですけど、『佐々木』に限って言うと、息使いとか苦しい気持ちとか、「うっ!」ってなるとか、何かを持ったりしつつ動きながら発する、みたいな複雑なことを台詞じゃないことに見せるというか、あたかも自分から出てるような息使いだったり、連動してるんですね。顔の表情と言葉の吐き方と息の吸い方と出し方と歩き方が全部混合しているのが人間のリアルだと思うんですけど、その身体性の芝居がとにかく上手いし、自分の中から出てくるものでは無いことを自分のもののように理解しながら出すことは中々簡単には出来ないですよね。でも、自分を理解させようとする能力や相手を納得させる力がとても高いと思っていて、分かんないことを分かんないからやりませんとは絶対言わない人だし、分かんなかったとしても自分なりに分かろうとする景色を見せてくれようとするんですね。

僕はこういうナチュラルな方が好きなんです。人間として魅力があると思ってるんですけど、その人間の魅力を役にも反映させられることが出来る人かなとは思います。

―――― 自分が話す台詞と相手との間合いが自然だし、ゼロコンマ何秒か、他の人と違ったタイミングや速さがあるのかもしれないですね。

内山拓也監督
AとBの会話をするのが上手いというか、攻めの芝居はしないですね。『佐々木』も基本的に自分から行く風に見えるので、勝手にやっている風にも見えるかもしれないですが、受けの芝居がとっても上手で。自分の台詞を出すために、周りがどのようになっているかということを受けてから考えたり変えたりが出来るから、勝手なことを突拍子もなくやるってことは一つもないっていうのが語弊のないように皆さんにお伝えしたいなとは思いますね。
映画,佐々木、イン、マイマイン, 内山拓也監督,画像

―――― お話をお聞きすればするほど作品の魅力が伝わってきます。そして本作を観れば、みんなそれぞれの佐々木に出会えるのだと思います!内山監督、インタビュー有難うございました!!

内山監督から動画メッセージ!!



映画,佐々木、イン、マイマイン, 画像

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キャスト

藤原 季節 細川 岳
萩原 みのり 遊屋 慎太郎 森 優作

小西 桜子 河合 優実 井口 理(King Gnu)
鈴木 卓爾 村上 虹郎

監督

内山 拓也

配給:パルコ
公式サイト:https://sasaki-in-my-mind.com/
© 「佐々木、イン、マイマイン」

新宿武蔵野館ほか全国公開中

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