吉沢亮&若葉竜也がたった一言で表現した破壊力抜群のシーンとは?

映画『AWAKE』山田篤宏監督
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映画『AWAKE』公開記念
山田篤宏監督インタビュー

プロになる夢が敗れた清田英一(役:吉沢亮さん)は、数年後最強将棋ソフト【AWAKE】開発者としてプロとして活躍するかつてのライバル・浅川陸(役:若葉竜也さん)と対局することに。コンピュータ対棋士による世紀の一戦を巡る英一や陸の葛藤や成長を描いた映画『AWAKE』が本日12月25日(金)より公開中です。

今回は、ニューヨークで映画を学び本作で商業映画監督デビューを飾った山田篤宏監督に、“勝負”を超越した人間の葛藤について感じていること、英一をはじめ個性的なキャラクターに込めた想いをうかがいました。

映画AWAKE,山田篤宏監督,画像

映画『AWAKE』山田篤宏監督

―――― 将棋の世界の魅力は勿論ですが、その世界を通して繰り広げられる人間模様にとても興味をひかれました。元々、監督は将棋がお好きなのですか?

山田篤宏監督
はい、大好きです。

元々ではなくて、2015年の電王戦の直前ぐらいに将棋アプリ「将棋ウォーズ」を勧められて、久しぶりにやったら面白かったんです。将棋ってどうやって強くなるんだろう?って色々調べていてちょっとハマりかけた頃に電王戦が始まって。人間とコンピュータが戦っているらしいっていうのは聞いたことがあったんで、見始めたらこういう顛末が全部あって。色々なことが好タイミングで重なった感じですね。

そこから本当にどっぷり将棋が好きになりまして、そこからの2、3年は将棋のことばっかり考えるぐらい将棋が好きでした。

―――― 2015年の将棋電王戦FINAL第5局、コンピュータと棋士の対局の裏側は調べていくと本作と似たエピソードがあったのでしょうか?

映画AWAKE,画像

山田篤宏監督
根本は全く変わってないんですけど、結構オリジナル要素をあれよあれよと追加していきまして、エピソードとしては8割以上がオリジナルですね。

―――― コンセプト的な話なんですが、本作は“勝負”の世界にスポットを当てています。このストーリーは“勝負”の終わらせ方が特殊だと思いました。勝った負けたで大騒ぎしているような観客目線ではなく、“勝負”の向こう側で繰り広げられている当事者目線への橋渡し的な作品であり、“勝負”に対する視野が広がりました。
将棋に限らず、監督は“勝負”に対してどういうイメージをお持ちなのでしょうか?

映画AWAKE,山田篤宏監督,画像

山田篤宏監督
宣伝期間中もスタッフと話をして、【AWAKE】の対局を見てまず似てると思うのが、ロス五輪柔道の山下vsラシュワン戦で、怪我をしていた山下の足を狙うのをラシュワンが避けたと話題になったこと。もっと分かりやすいところで例を挙げると、星稜高校時代の松井秀喜に対する5打席連続敬遠。

“勝負”の勝ち負けが面白いかどうかは、スポーツもエンターテイメントなので当然あると思うんですけど、いずれも勝ち負けを越えたところに葛藤が起こっている。単純な勝ち負けだけだとここまで興味を引かれたか分からないんですけど、その先にどっちも間違ってないし、正解が出ないところにこそ非常にドラマが生まれるなと思って、とても興味を引かれたところがありますね。

―――― 同時に、お互いが勝ちにこだわったからこそ、勝敗は決しても、人間性も含め二人が高みを越えていったような印象を受けました。“AWAKE対人間”とか“AWAKEの開発物語”にならなかったのは、監督が、電王戦での勝負の舞台裏に触れ、勝負事の本質に関心が行ったので、この作品が誕生したということですね。

山田篤宏監督
そうですね。主人公の英一も、心の中では“ずっと自分は将棋を指す将棋指しだ”というのはあるので、最終的に彼の成長と言っていいのか分からないですけど、ターニングポイントが最後の勝負で訪れるっていうのはあるのかなと思いますね。

あと、英一の人間的な成長がコンピュータを育てる、一見真反対のことで成されていくっていうのは非常に皮肉で面白いなって脚本を書いている段階から思ってました。

映画AWAKE,画像

―――― 英一が一言AWAKEに向かって「強くなったな」と言ってました。あれは監督の言葉を借りると“育ててる”ってことになるわけですね。

山田篤宏監督
彼は全然人とのコミュニケーションが取れなかったような人間ですけど、コンピュータプログラムを作ることで磯野という仲間も出来ますし、そういったものを描ければなと思ってやりました。

―――― 英一の家ではお父さんしか登場してこないので、家庭環境も影響して、コミュニケーションが苦手で、将棋にしか関心を持てなかったのかなとも感じました。

山田篤宏監督
それもありますね。

―――― 公式HPに「挫折が人生の結末ではないこと、自分が信じるものや好きなことと真摯に向き合えばいつかきっと道が拓ける」と書かれています。そのメッセージは、本作からとてもストレートに伝わってきました。監督はニューヨーク大学で映画を学ばれたそうですが、監督の人生の中でも同じような経験があるのですか?

山田篤宏監督
そんなにないんですよね。ハッキリとした挫折はなくて、帰国して就活が大変だった時に一瞬挫折を感じたくらいで。

―――― なぜ、ニューヨークに行こうと思われたのですか?

山田篤宏監督
ニューヨークは映画を勉強したいから行きました。
僕が行った大学がNYUなんですけど、多分今でも御三家と言われているぐらい映画学科は有名なところで、スパイク・リーとかがいるところでした。僕も何度か彼を見かけました。

―――― そこに至るまでには色々な葛藤もあったのではないですか?

山田篤宏監督
そうですね、日本の大学へ行って辞めてニューヨークに行っているんで。

―――― そうだったのですね。色々なものを乗り越えて、今、まさに本作にたどり着いたのですね。

山田篤宏監督
時間はかかりましたけど(笑)

―――― 海外では個性を伸ばすような教育、エッジの効いた人材を育てようとするので、ある意味で好きなものに向き合えというスタンス。日本は好きなものがあっても、これをやってからやりなさいという傾向があると思うんです。教育については監督の持論はございますか?

映画AWAKE,山田篤宏監督,画像

山田篤宏監督
持論ってほどではなく、日本で映画を勉強したわけではないので比較対象を持ってないんですけど、(NYUでは)作品の出来に関しては全く何も言わないです。評価基準は期日までに上げたかどうか、レポートを出したかどうかのみ。作品の善し悪しの評価に絶対というのは誰にもないって分っているというか。

あとは基本的に褒めて伸ばす姿勢というか、悪かったところを指摘するというよりも、どこが良かったのかを言って伸ばすというのが、多分アメリカで共通してるんじゃないですかね。だから、会話をしていても、本当は嫌いな場合にも「私はここが好きだった。だけど、ここはどうかと思う」って言い方を絶対するんです、アメリカ人って。逆に言うと、「好きだった」って聞くとこれからけなされると思って構えたりするんですけど(笑)それは多分文化だと思うんですね。

あとは、アメリカは映画が産業として確立しているんです。日本で映画を目指したいって言うと「ちゃんと地道な職業で働きなさいよ」って話になりがちですけど、アメリカは「頑張りなさい!」って言うっぽいんですよ。これは(アメリカへ)行ってから僕も気付きました。

―――― 面白い違いですね。
ストーリーに話を戻させていただきます。個人的には、対局後に二人のすれ違いざまに陸が英一に声をかけるシーンがありますが、その時にこみ上げてくるものがありました。言葉を多く交わすでもない二人が、たった「あの一言」で全てが通じ合うような、あのシーンはどういう想いを込めて撮るに至ったのかお聞かせいただけますか?

山田篤宏監督
あれは、脚本に書いてあったのでその段階から決めてはいたんですけど、よくよく考えると、二人がちゃんと会話するのってあそこしかないんですよ。子ども時代はまだあるんですけど、成人した二人が喋るっていうのは全くなくて。なので、そこに全てがこもると思ったのと、当初書いていた台詞はちょっとニュアンスが違ってたというか「あの一言」ではあるんですけど、その言い方が出来るかどうかっていうのが、結構早い段階から若葉くんから言われまして、割と議論をして「あの一言」で終わらせたんです。

そんなに違うかな?と思ったらやっぱり違うから、一言を交わすだけだけど、その全てで英一も報われるところがあるし、破壊力のあるシーンですよね。言葉のチョイスをした若葉くんも素晴らしいですし、その後の受け取った吉沢くんのリアクションがこれまた素晴らしいなと思って。

―――― 若葉さんと会話されたということですが、吉沢さんともあのシーンについてはお話されました?

山田篤宏監督
あそこで吉沢くんがどうリアクションするかは現場で珍しく話しました。
「どうすればよりいいだろうね。それじゃまだ弱いよね」とか。「このシーンで映画終わっていいじゃん」って意見もたまにあったんですけど、僕は絶対にあのラストを撮りたかった(笑)

―――― そんな最後のシーンですけれども、特に英一の表情が暗いトンネルから抜け出してきたような表情、憑き物が取れたような感じでしたよね。あそこも共感しました。

山田篤宏監督
(吉沢くんは)流石でしたね。
あそこで最後に笑顔を見せるために、「ずっと(笑顔は)とっといて」って話はしていますね。途中磯野と開発中の時に、笑顔を見せそうで見せないっていうあれも絶品の顔なんですけど(笑)そのシーンでは「今はまだ」って話をしました。

―――― 英一にとっては自分を認めてくれる唯一の存在として、磯野との心の通わせ方の段階も面白かったです。磯野が「今日は飲みに行くんだよ」って言った時とか。

山田篤宏監督
磯野も実はいい奴っていうのが脚本段階でスゴイ人気のキャラではありました。

―――― しかも、落合さんの演技が最初はちょっと嫌な奴から始まって、終盤では行き過ぎる英一を身体を張って止めています。あの時に磯野は一般的な常識があり、コミュニケーションが取れる人だということが一気に伝わってきました。味方してくれていたんだということが凄く伝わってきました。

山田篤宏監督
落合くんには、最初に彼が想像してたよりもちょっとオーバーめに演じてもらったんです。動かない二人の分も動いてもらって、台詞も大変だったんです。

映画AWAKE,画像

―――― そして奨励会の山崎先生(役:川島潤哉さん)が見守ってくれていました。この先生って監督じゃないかと思ったんですよ(笑)

山田篤宏監督
どうなんでしょう?(笑)

将棋関係の面倒くさい話というか、知識として知っておかなければこの話の微妙な機微は分からないですよっていうのは、山崎先生の台詞に混ぜ込んだので、そういう意味では他とは異質なキャラですかね。

―――― 先生と新聞記者・中島役の寛 一 郎さんとの会話も印象的です。勝負の世界は厳しい、だけど、本来楽しむものであることも忘れないで欲しい、と。一方で、電王戦のように対局があること自体も色んな人を育てていく上で重要なんだろうってことも同時に伝わってきます。

山田篤宏監督
あそこは僕の願望もあって書いたところはあるんです。試写会などで棋士の先生にも観ていただくと、プロとして対局を生業にされてると、どうしても楽しいという気持ちがなくなっていくこともあるようで、あそこを観てハッパかけられたみたいなご意見も、有難いことに頂いたりもしています。それはこちらとしても本当に嬉しいです。

―――― 藤井聡太さんは実際にソフトを使って練習していると公言されていますし、実際の【AWAKE】の開発者も「未来の棋士が【AWAKE】みたいなソフトを使い、より良くなっていくことを望んでいます」と仰っています。科学の進み方と、実際の人間の頭脳との戦いみたいな部分にフォーカスした場合、どういう棲み分け方を監督は考えていらっしゃるのですか?

山田篤宏監督
今日に至るまで似たような質問はいただいてきて、それによって考えが変わったところがあるんです。先日、今年の世界コンピュータ将棋選手権で優勝した将棋ソフト【水匠2】開発者の方と対談させていただきまして、今は完全に共存の時がきているらしいです。

つまり、プロもコンピュータを使って研究をして、それを対局で指すような形になってまして、【AWAKE】の時は人間と勝負の時代だったけど、今はもうそうではなくなって一緒に将棋を指すではないですけど、そういったことで使われているそうです。僕としてはコンピュータでも人間でも、そもそも将棋が好きなんで“将棋楽しいよな”っていうのがあって、あんまりそこに深いこだわりはないです。

―――― 昔から培われた指し手というか決まり手がある一方で、コンピュータが融合すると新しい段階に進んでいく。そういう発見も、もしかしたら現代では起きていて、それを吸収する時代になっているのかなって。

山田篤宏監督
それもありますけど、将棋の詳しい話になっちゃうんですけど、逆にコンピュータが登場したことで、古くから指されていて、もうそれは有効じゃないと思われていた指し方が見直されたりもしてて、そういう意味では広がってるんだろうなっていう気はします。

―――― より面白くもなり、また勝負としては厳しくなる。

山田篤宏監督
勝負としては棋士の方がきついのは間違いないと思います(笑)。

―――― 本作の中で監督の好きなシーンを教えてください。

山田篤宏監督
いっぱいありますけど、吉沢くんの表情で言うと、最後のシーンとか定番のところはもちろんですけど、僕があえて挙げるなら、先ほどもあった磯野に「飲みに行こう」と誘われて、笑うようで笑わないあのシーンのあの表情がとても好きですね(笑)

―――― 撮影現場での吉沢さんとのエピソードで印象に残っていることはありましたか?

山田篤宏監督
事前にリハーサルを一度しましたし、キャラクターにはほとんど差異がなかったので、意外とスムーズにいったな、と。「人工知能研究会」の部屋も理想的に美術もハマったこともあって、見てるこっちとしても“吉沢くん、ノッてるな”って感じは凄くありました。

映画AWAKE,画像

―――― 英一が最初に登場した時は、一瞬吉沢さんだと分らなかったです(笑)

山田篤宏監督
僕も撮影中に吉沢くんがカッコイイということを忘れてたって言ってますけど、本当にそうで、編集でまとめてある程度出来た映像を撮影に来てない人に観せた時に「吉沢さんカッコイイですね」って言われて、エッ?って。すっかり忘れてる(笑)

映画AWAKE,画像

―――― 最後に監督から映画ファンにメッセージをお願いします。

山田篤宏監督
エンタメ映画として将棋が全く分からなくても絶対大丈夫なように作りました。そこは安心して観ていただきたいです。

将棋ファンの僕として許せないことは全くしてないので、将棋が好きな方にもご安心して観ていただけると思います。内容も将棋ではありますけど、同時に素晴らしい青春映画にもなってますので、年末年始に観ていただいて気分が盛り上がっていただければなと思ってます。

―――― 有難うございました!!

映画『AWAKE』


2020年12月25日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開中

出演:吉沢亮 若葉竜也/落合モトキ 寛 一 郎
監督・脚本:山田篤宏
配給:キノフィルムズ
©2019『AWAKE』フィルムパートナーズ

公式HP:https://awake-film.com/

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