深川麻衣さん&熊澤尚人監督インタビュー 映画『おもいで写眞』

映画『おもいで写眞』深川麻衣さん 熊澤尚人監督

深川麻衣さん「登場する人達みんなが主役の映画」
熊澤尚人監督「予想外の出来事に満ち溢れているのが人の人生」

1 月 29 日(金)より公開中の映画『おもいで写眞』は、東京での仕事を失い大切な祖母も亡くして失意の中で故郷富山に戻ることを決意した深川麻衣さん演じる主人公の結子が、団地に暮らすお年寄りの写真を「おもいで写真」として撮影し、様々な境遇の人達との出会いを通じて自分自身と向き合っていく物語です。

今回は、主人公の結子役を演じた深川麻衣さんと熊澤尚人監督に、本作や結子の誕生裏話や見所についてお話を伺いました。

―――― 深川さん演じる結子は融通が利かない、嘘が嫌いな頑固者だと思います。当然、深川さんご自身の性格は違うと思いますが、役は演じ易かったですか?共感は出来ましたか?

深川麻衣さん
共感出来るところは沢山ありました。

地方から夢を持って上京したことや結子の設定が私と同い年の29歳だったことなど。台本上には描かれていませんが、東京で悔しい思いをして夢破れて富山に戻ってくることになった。そんな結子が一郎(役:高良健吾さん)とお酒を飲んで酔っ払って弱音をポロっと話すシーンの時に、お祖母ちゃんに対しての後悔とか、気付いたら自分は29歳になって仕事もクビになって何も出来ていないんじゃないかっていう焦りとか、そういう葛藤は仕事をしている上でも同性としても凄く共感できる部分でした。

映画『おもいで写眞』

―――― その居酒屋のシーンでは、一郎による結子への“イカ墨攻撃”もありました(笑)が、二人の距離感が分かるとてもいいやり取りでした。

深川麻衣さん
あのシーンは高良さんのアドリブです(笑)

―――― とても仲の良い二人に見えました(笑)
ただ、一郎の包み込むような笑顔を見ていると、普通なら結子の頑固さも角が取れてくると思うのですが、それに負けずに結子を演じ続けるのは大変だったのではないですか?

深川麻衣さん
そうですね。
今回に関しては、結子が怒りをぶつけるシーンも、脚本を読んで自分が想像していた以上に現場に入って監督から「もっと怒ってほしい、もっと感情を出してほしい」と演出を受けました。思っていた以上に結子が抱えていた思いとか、母親に対しての憎しみ、愛情と憎しみが裏表ですけど、抱えていたものが大きいんだなと感じましたね。

映画『おもいで写眞』深川麻衣さん

―――― 観ている方もその大きさがのしかかっているのは伝わりましたし、逆に一郎の存在が物凄く大きく見えました。

深川麻衣さん
ちょっと凸凹感というか、海のように心の広い一郎と白黒ハッキリさせないと許せない結子のバランスがイイ関係性だなって思いました。

映画『おもいで写眞』

―――― 一方で、吉行さんが演じる和子さんに対しては、素直に接しています。あの辺は深川さん自身が吉行さんと自然に演技が出来るようなコミュニケーションを取れていたのかなと思いますが、和子さんとのシーンはいかがでしたか?

深川麻衣さん
和子さんを通して見える吉行さんのお人柄の柔らかさとか、結子自身もお祖母ちゃんと和子さんを重ね合わせていて、和子さんからポロっともらう言葉で結子も変化していったり、恩返しをしたいという気持ちで「おもいで写真」に対するモチベーションもどんどんあがっていって。

和子さんが腕を怪我して老人ホームに入ることになったシーンで、確か台本にはないのですが、熊澤監督から「ここでちょっと涙が欲しい」というリクエストがあって、出来るかなぁってちょっと不安だったんです。だけど、向かい合って和子さんから「今までありがとね、嬉しかったよ」って声をかけてもらった時に、涙がバーッと出てきてしまって、和子さんの言葉がストンと心に落ちてくるというか、それは吉行さんのお人柄とかがあってこそだと思うんですけど、凄くナチュラルに難しいことは考えずに向かい合えたのかなと思います。

映画『おもいで写眞』

―――― 孫のように大切に思っている結子に、和子さんがこんな姿を見せたくないというシーンもありました。身近な人を思い出すようなリアルさがあり共感出来ました。熊澤監督は前作『ごっこ』もそうだったのですが、伏線の回収の仕方やサプライズの作り方が絶妙で、観ている側がまんまとハメられてしまいます。本作では温かいものを感じるようなサプライズがありましたが、監督は映画監督としてサプライズをどういった目的でこうして上手く使っていらっしゃるのか、教えていただけますか。

熊澤尚人監督
多分、意外性というかお客さんの想像力の及ばないところをいつもどんな映画を創る時も考えています。やっぱりある程度こうなるだろうなって思いながら皆さん映画を観ていらっしゃるじゃないですか。出来ればそれをいい意味で裏切りたいというか、想像以上のことが考えられるように努力はしているんですけど(笑)、なかなかうまくいかなくて苦戦することも多いんです。

根本的には人って思惑通り進まなかったり、見方によって予想外の出来事に満ち溢れているのが人の人生だと僕は思っていて、“想定外になりますよ”っていうのが逆に人生の楽しみみたいな(笑)、そういう風に思いながら僕自身も色んな人とお付き合いをしています。それはよく知っている間柄のつもりでも“意外だけどこうなるんだね”っとか。それが凄く楽しいというか、その人とお付き合いをしていても“こういう新しい面があるんだ”っていうのを大切にしながら人と付き合っていきたいと日頃から思っているのが、そういった所に出ちゃっているのかなって今、思いました(笑)

―――― 作品によるのかもしれませんが、監督のサプライズには単なる驚きだけではなく、幸せになれる方向に舵を切ってくれる安心感も感じます。そこが監督のファンになる所以です(笑)。ところで、監督は名古屋、深川さんは静岡のご出身ですが、今回はなぜ富山県を舞台にされたのでしょうか?

熊澤尚人監督
実は富山って、名古屋にいた時の天気予報で必ず同じ中部地方で流れていたんです(笑)厳密には北陸地方なので別ですが、当時から親近感がありました。

直接的な大きな理由としては、この物語が団地の話じゃないですか。僕も団地に住んでいたんですけど(笑)古い昭和40年代から造られたレトロな味のある団地に一人暮らしのお年寄りが沢山住んでいる。それは日本のリアルな状況なんです。今回の話の中では、そういうお年寄りのお家を結子が巡ってコミュニケーションを取っていくというのがベースです。その際に団地が凄く大切になりますよね。それこそ名古屋とか静岡の団地も見ているんですけど(笑)、富山の今回の団地は日本海側で最大規模のベッドタウンなんです。大きな広範囲に及ぶ団地って最近は中々残っていないんです。

ですから、撮影が可能な団地があり、なおかつ近くに写真館があって、地方の港町を舞台にしたかったので、この三つの要素が偶然重なったのが富山でした。

―――― 小さな写真館もなくなってしまっているそうですね。

熊澤尚人監督
そうですね。写真館経営は大変なので昔ながらの写真館は消えてしまっています。日本って古いものが全然残らないので(笑)取り壊されたり、リニューアルされたり。古い味というのは今回の『おもいで写眞』のビジュアル的な美術的な大切な要素だったので、凄く拘って富山の場所にさせていただきました。

―――― 本作は深川さんや高良さんが中心ですが、同時に和子さんなどご高齢の方々も主役だと思います。ご高齢の方々をステージにあげられたということは、社会から孤立している方々とのコミュニケーションの大切さなど、監督なりのお考えが根底にあるのでしょうか?

映画『おもいで写眞』

熊澤尚人監督
自分がこの物語を思いついたきっかけがそもそもデビュー作の『ニライカナイからの手紙』(2005年)です。沖縄県の竹富島が舞台だったのですが、撮影をした後に島の皆さんへの御礼で上映会をやったんです。そうしたら車いすや酸素ボンベをしている、普段は外に出ないお年寄りの方々が公民館に映画を観にきてくれたんです。帰りに出口で「今日はありがとうございました」と挨拶をしていたら逆に皆さんから手を握られて「ありがとうね」って言われたんです。それが2005年だったと思いますが、その経験がベースにあるんです。

その時に、地方の離島で不便なところで生活しているお年寄りって一体どういう気持ちで暮らされているんだろうなと凄く興味を持ったんです。それが原型として引っ掛かっていて、今回の物語を創りたいと思ったんじゃないかなと思います。

―――― 深川さんにご質問です。公式HPのコメントには「撮影の日々はとても刺激的で、苦しくもあり、あたたかくもあり」と書かれていますが、具体的にはどんな苦しみですか?漁港の寒さも大変だったのでは?(笑)

深川麻衣さん
(笑)
今までも喜怒哀楽が激しい役はあったのですが、今回は「怒」と「哀」にフォーカスして、自分の中では怒りの感情に向き合った作品でした。朝から晩までずっと作品のことを考えていて、特に前半は笑顔を封印して沸々と、後悔とか怒りとか誰に対してでもない行き場のない苦しみをずっと抱えていたので、ちょっとそっちの感情に引っ張られたりもして(笑)

映画『おもいで写眞』深川麻衣さん

―――― 『パンとバスと2度目のハツコイ』(2018年)に続く主演映画2作目ですが、そうすると新境地と言うか色々勉強になったこともあったのではないでしょうか?

深川麻衣さん
「パンバス」の時は初めての映画でどうやって撮るのか何も分からない状況で飛び込んで、分からないことは正直にお伝えして教えてもらおうという気持ちでした。

本作では吉行さんや古谷さんを見ていて、柔軟でいることと受け身でいることって違うな、もっと作品に積極的に参加するべきだな、と。

「パンバス」の時は監督が表現したいものを自分も表現したいし、監督が創りたいものを創りたいという気持ちが凄く強くて。監督の演出に対して100%で応えたいという気持ちがあって、それはそんなに変わってはいません。でも、それだけじゃなくて自分が思っていることを話し合ったり、時にはぶつかっていくこと、積極的に参加していくことの大切さを今回の現場を通して思いました。

映画『おもいで写眞』深川麻衣さん

―――― 結子を観ていると、段々苦しくなってきました。それは、深川さんの演じる結子が確かに存在したのだと思いました。
深川さんと熊澤監督はどのシーンがお好きですか?

深川麻衣さん
登場シーンは多くはないのですが、漁港のシーンが凄く好きです。結子が「おもいで写真」の仕事をする前に朝働いている市場でのシーンです。エキストラさんではなく、実際に漁港で働いている漁師の方々にご協力いただいて、少人数のスタッフさんとお邪魔して撮ったんです。最後の歩いているシーンはほぼアドリブに近い状況、何が起こるか分からないような状況で撮ったので、朝のリアルな富山の漁港の空気感が切り取られていると思うので気に入っているシーンです。

熊澤尚人監督
沢山あって選べないですね。魚市場のシーンも好きなんですけど、この作品の最後の展覧会で色んなお年寄りの写真が写っているじゃないですか。それって実は実際の富山の人達なんです。富山で「おもいで写眞を撮りませんか?」とお声がけして撮った写真なので、ある意味でドキュメンタリーのような俳優さんではなく本当の人たちの写真を使わせてもらっています。富山のロケ場所が素敵で富山で撮っていますけど、富山の話にしたくて変えていった部分も沢山あります。富山の皆さんに出演して頂き、富山の人たちに助けて頂けたから完成できた映画です。ですから本当の意味で富山の映画になったんじゃないかなと思っています。

―――― 最後に映画ファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

映画『おもいで写眞』深川麻衣さん

深川麻衣さん
この映画は、登場する人達みんなが主役の映画だと思っています。それぞれに人生のストーリーがあって、物語を感じられる映画です。

観てくださった方が、離れかけていた人との時間を久しぶりに取り戻してみようかなと思ったり、久しぶりに誰かに連絡を取ってみるきっかけになったら凄く嬉しいなと感じています。年齢問わず沢山の方に観ていただきたいです。

映画『おもいで写眞』熊澤尚人監督

熊澤尚人監督
虚実皮膜(きょじつひにく)という言葉があると思いますが、本当なのか嘘なのかその狭間にあるところに実は凄く大切なことがあったり、嘘なんだけどその中には実は凄く愛情が入っていたり、そうゆう事が描かれている映画だと思うんです。そういうことってフィクションだから出来たり、物語であるからこそ興味深く感じられるのだと思います。そういうフィクション性とか物語性というのは、今はコロナで大変な時期ですが、そういう時だからこそ凄く大切なものだと思うので、是非この映画を観てフィクションの面白さを楽しんでもらえればと思っています。

―――― 有難うございました!

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深川麻衣さん&熊澤尚人監督から動画メッセージ

(深川麻衣さん)
ヘアメイク:村上 綾
スタイリスト:原 未来

キャスト:深川麻衣 ⾼良健吾 ⾹⾥奈 井浦新 古⾕⼀⾏ 吉⾏和⼦
監督:熊澤尚人
原作:熊澤尚人「おもいで写眞」(幻冬舎文庫)
脚本:まなべゆきこ
主題歌:安田レイ「amber」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:イオンエンターテイメント
公式HP:http://omoide-movie.com
©「おもいで写眞」製作委員会

映画『おもいで写眞』2021 年 1 月 29 日(金)全国ロードショー

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