
40年の時を経て、
伝説の映画がスクリーンに蘇る!
1992年、若者から熱狂的な支持を得た矢崎仁司監督による伝説の名作『三月のライオン』デジタル・リマスター版が2月26日(金)からアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、アップリンク京都ほか全国順次公開中です。
映画監督として今もなお挑戦を続けている矢崎監督から発せられた言葉は、「時間を使って生まれたものは素晴らしい」「無駄なものが大切」「分かり易さを排除する」、そして「感じてほしい、理解しなくていい」など、映画制作の現状に対する“抵抗”であり、映画作りを続けるご自身への“期待”でもあるのかもしれません。
さあ、映画館の暗闇の中で、全身で『三月のライオン』を感じましょう!!

矢崎仁司監督
―― 約40年前に映画作りを始められて『風たちの午後』でデビューし、昨年も『さくら』が公開されるなどご活躍中ですが、当時から現在に至るまでで、監督が感じた“映画の変化”についてお聞きかせいただけますか?当時のインタビューでは、「日本映画に対して不満を抱いていた」とも仰っていました(笑)
矢崎仁司監督
こんなこと言っていいのかどうかあれですけど、自分に対しても不満は相変わらずですね(笑)
多分、時間をかけて作った映画っていうのは良いなと、昔からずっと思ってたんですけどね。何を使うかということなんですけどね。お金を使うのか、時間を使うのかっていうことなんですけど、お金を使って時間を買うと何かを失くす気がします。お金がなくても時間を使って生まれたものは“やっぱり素晴らしいな”と思う。
例えば、富田克也監督の作品を観てもそう思うし、昨日観てきたんですけど坪川拓史監督の『モルエラニの霧の中』は撮影に5年ぐらいかかってるんですよね。時間を使って出来上がってくるものって、やっぱり素晴らしいものが多いなっていう気はしますね。
―― 時間枠の中に作品を押し込めるのではなく、表現として自分の最もこれだと思うものを拾える、その材料も増えてくるし、それだけ豊かなものに仕上がるってことなんでしょうね。
矢崎仁司監督
そうですよね。僕は特に「光」や「場所」を一番大切にして映画を作ってきたんですよ。
例えば、『三月のライオン』で言えば、外が晴れていないと室内シーンも撮らなかったみたいな。今だと両天のスケジュールになってしまうので、外が晴れてない時は「室内で撮りましょうか」っていう風になってしまうんですけどね。やっぱりここは全編晴れでいきたいっていうのは時間を使わないとできない部分もあるので(笑)
画を作るっていうことにもうちょっと時間をかけないとダメかなっていうのはずっと思ってることですね。
―― 効率性を求めて時間を短縮して出来るものに価値があるということと、監督が仰ったように大切にイイものを作るということ、相反する動きが社会では物凄く出てきているかもしれません。
矢崎仁司監督
多分、モノが生まれていく中には無駄なものが凄く大切で、その無駄なものを排除していく方向にずっと突き進んでいるような気がしますね。
―― 我々が生きていく上で、無駄なことはないということになりますよね。
矢崎仁司監督
基本そうなんですよ。でも、無駄の中に大切なものが含まれているような気がします。
―― 監督が大切にされてきた「場所」についてですが、鳥の羽が散乱している部屋に寝転がったり、壊される予定の建物に2ヶ月住むことにしたり。日常ではあり得ないところにロケーションを持っていく発想が監督の明確な狙いとしてあったような気がします。日常的にはないものを舞台にして映画を作ろうと思われた狙いは何だったのでしょうか?
矢崎仁司監督
「場所」っていうのは俳優にとって一番大切なもので。
僕はロケ場所のことを「リング」とか「遊び場」って呼んだりするんですけど。僕の出来ることは、素敵な「遊び場」に素敵な光を入れて、後は俳優がそこでどう反応するか、どう反射するか、共鳴するかっていう、その場所に立つ俳優を映し撮りたい。だから、俳優に思いっ切り遊んでもらう、闘える場所を探しますね。
まあ、場所移動が大変なので、移動時間を節約するために、メインロケセットの周辺でロケ場所を探すんですけど、『三月のライオン』では、二人が暮らす場所でも、階段と廊下は板橋区、室内は渋谷区、ベランダは国立市、屋上は新宿区とか、何ヶ所かで一つの空間を作っていましたね。
先ほど触れた富田監督や坪川監督は、きっとそうやって映画を撮っていると思います。この季節にこの場所で俳優を歩かせたいとか。
―― お金をかけないと良い作品が撮れないのか、『三月のライオン』を観た時に、そうじゃないという気持ちになり、映画作りには何が大切なのかを教えてくれているような感じもしました。映画作りに対する監督のお考えや大切なことについてはいかがですか?
矢崎仁司監督
何でしょうね。僕は出会ったスタッフや俳優一人一人のドキュメンタリーを撮りたいんだと思います。一緒に映画を作ろうって集まった人たちが、誰ひとり替えがきかない、世界中に一人しかいないんだから、他の誰かじゃなくて、その人でなきゃダメなんだって、出会った人と映画を作りたいですね。
撮影もそうですし、シナリオもそうですし、編集もそうなんですけど、多くの人に分かってもらえるかなっていうことを、一度そのスローガンを下げていけたら一番いいんですけどね。
―― 監督としてはこの作品の展開やストーリー性に対する軸は当然持たれている中で、最大限の分か難さを表現していくというイメージでしょうか?
矢崎仁司監督
いえ、分かり難さを表現しているのではなく、いかに感じてもらえるかってこと。分かるっていうことって、結構つまらないことなんですよね(笑)
本当は、作品を観た後で、何かどこか引っかかるものがあって、自分でも気づかない心の棘のようなものに引っかかる何か、でもとても大切なもののように残っているものが、作品との出会いだと思うんですけど。映画館の暗闇の中で、完結して理解するということはどうでもいいんじゃないかなって思うんですよね。
もちろん、否定はしないんです。分かり易い映画もあっていい。でも、感じる映画をもう少し増やさないと、映画を理解するという癖がついてしまった観客に、感じてほしいっていうこと、理解しなくていいんだよっていうことを、少し抵抗する作品をプツプツ プツプツ生んでいかないと大変なことになるなって、映画は終わるかなっていう気がします。
―― ありがとうございます。
キャスティングや本作に込めた監督の想いは動画インタビューへ
キャスト
趙方豪
由良宜子
奥村公延
芹明香
内藤剛志
伊藤清美
石井聰互(友情出演)
長崎俊一(友情出演)
山本政志(友情出演)
監督・脚本
矢崎仁司
配給・宣伝:アップリンク
(C) Film bandets
公式HP: https://uplink.co.jp/lion/
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