『沈黙-サイレンス-』の聖地

長崎市外海地区「遠藤周作文学館」

今月のおすすめ映画は『沈黙サイレンス-(2017年1月公開)です。巨匠マーティン・スコセッシ監督によって、遠藤周作氏の原作『沈黙』が映画化されました。(『沈黙サイレンス-公式サイトはこちら:http://chinmoku.jp/)上映時間162分の長編です。今回は、キリシタンの里として知られている長崎市外海地区にある「遠藤周作文学館」の学芸員川崎さんにお話を伺いました。
――『沈黙』の原点となる体験
遠藤『沈黙』を執筆する前に、二年余りに及ぶ肺結核再発による入院生活をしました。多くの苦しむ人々を見て、自分自身も死の恐怖と向き合う中で、「神は本当は存在しないのではないか」という不安も抱いたようです。一方で、この病床体験を通して遠藤は、他人の苦しみに共感する眼差し、苦しむ者に寄り添うイエス像を見出しました。そして、神はいつも傍にいてくれて、様々なものを通して語りかけてきてくれるということも感じたようです。
遠藤にとって神とは〈苦しみを共にしてくれる〉存在であり、自身も苦しみを通して神の存在に気づくことができたという経験がこの作品へと繋がっているのではないでしょうか。
――時代を超えて繋がる遠藤スコセッシ監督

(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

この映画の見所は、役者さんの迫真の演技や細かな自然描写など、たくさんありますが、原作の最終章にあたる「切支丹屋敷役人日記」が描かれた映画の終盤ではないでしょうか。切支丹屋敷とは17世紀半ばに井上筑後守の屋敷を改装して造られた宣教師の幽閉所のこと。そこでの彼らの様子を役人が記録したものが「査祅余録(さよう よろく)」という文書であり、遠藤はこれをもとにフィクションを交えて最終章をまとめ上げました。難解な文章のため読み飛ばされることが多いと遠藤も嘆いていた箇所ですが、ここでは踏絵を踏んだ後のロドリゴと、どこまでもロドリゴに付き従うキチジローの姿が描かれており、彼等が転んではまた立ち上がりながら信仰と共に生きたという真実が描かれています。それを紐解いたスコセッシ監督だからこそ、原作の中のエピソードに加え、ロドリゴが教会から離れた後も、「踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている」と語りかけてくれた母性的なキリストへの信仰を抱きながら生を全うしたことを暗示する最後の場面を付け加えたのだと思います。ネタバレになるのであまり言えませんが、遠藤スコセッシ監督の思いが重層的にかみあったとても重要な場面だと言えます。
また、映画では目を覆う数々の拷問のシーンが出てきますが、雲仙地獄での拷問や穴吊り、火あぶりなどは実際に行われていたようです。(参考:片岡弥吉「日本キリシタン殉教史」)


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