西川美和最新作映画『すばらしき世界』「リリーさん」役・桜木梨奈インタビュー

すばらしき世界,リリーさん,桜木梨奈,画像

役名に“さん”が付いているのは?

「映画館にまた灯りは戻るのか?」

そんな不安さえ現実味をもって押し寄せた2020年を、私たちは何とか乗り越えた。

季節は変わらず巡る中、私たちの生活は想像を遥かに越えて一変し、人を想うからこそ離れていないといけない……こんな心と反する行動を求められる日々に、社会との隔たりや、孤独を感じた人は決して少なくない筈だ。

依然、混沌としていた2021年2月に公開を迎えた映画こそが、西川美和監督最新作『すばらしき世界だ。主演は役所広司。直木賞作家の佐木隆三が実在の人物をモデルに書いた小説「身分帳」を、舞台を現代に書き換え映画化。人生の長い時間を裏社会と刑務所で過ごした男が、息苦しさ、生きづらさの真正面に立ち、人に触れ、再生してゆく姿を描く傑作だ。

すばらしき世界

「今」だからこそ、私たちは主人公・三上を自らの近くに感じたのではあるまいか。まさに感じている“生きづらさ”や“孤独”を、佇む三上の背中に重ねたのではないか。スクリーンに辿り着くタイミングまでもが映画的で必然。物語に身を預け心を鷲掴みにされながら、私はそう感じた。

この「すばらしき世界」の中で、短い登場シーンながらも優しく鮮やかな色を残したキャラクターが居た。

それが、ソープランドで三上が出逢う“リリーさん”だ。三上はリリーさんの温かさと包容力に触れ、彼女に生き別れた母親の姿をダブらせる。

その“リリーさん”を演じたのが、桜木梨奈(さくらぎりな)だ。

すばらしき世界,リリーさん,桜木梨奈,画像

2012年『耳をかく女』で初映画・初主演でキャリアをスタートさせ、その後は映画・テレビ・舞台にCMと縦横無尽の活躍を見せる桜木が、「やっと辿り着いた場所」と表現するのが、この『すばらしき世界』のリリーさんだった。SNSなどでもこの『リリーさん』が話題になっている。早速、記者は彼女にインタビューをしてみた。

―― 「リリーさん」として西川組に参加することになった経緯を教えて下さい。

(桜木)リリーさんの為のオーディションで決まりました。

最初から、西川美和監督の作品であることと、主演が役所広司さんであること、その役所さん演じる三上が訪れたある場所で出逢う女性である「リリーさん」という役であることは分かっていました。勿論、役柄上必要性があるセンシティブなシーンがあることも事前に丁寧に知らされた上でのオーディションでしたね。

すばらしき世界,画像

―― ある特定の役のオーディションを受ける際に、その作品の脚本全編を予め読めることは少ないと思います。手探りの中受けた『すばらしき世界』のオーディションは、一体どんな内容だったのでしょうか?

(桜木)オーディションって、基本的にはどこかピリっとした空気が流れている場所であることが多いのですが、西川組は「自由に演じてみてね」「何をやってもいいよ」っていう、温かい雰囲気を作って下さいました。オーディションでは特に大きな演出も受けませんでしたね。なので、役者にとって“何をやっても間違いではない”と先に肯定して貰った上で自由に演じられるというのは……本当にありがたかったです。

オーディションの様子は後の選考の為に撮影をされるのですが、私の前髪が何度か顔に掛かって表情を隠してしまっていたみたいで……そしたら西川監督自ら「桜木さんの顔が隠れちゃうから~」ってヘアピンを留めに来て下さったり。役者ひとりひとりの“表情”だったり“空気感”をしっかり見て下さっているんだな、と感じました。なので、演技に入ったら全く緊張しなかったです。

凄く緊張したのは自己紹介だけでした(笑)!

―― 実は西川美和監督に強烈な憧れを抱いていたそうですね(笑)?

(桜木)そうなんです(笑)!!私、西川監督の作品の中で、特に『夢売るふたり』が凄く大好きで!劇場公開当時、私自身「本気でこの(女優の)道を進もう!」と覚悟を決めたタイミングだったことも相まって、『夢売るふたり』で観た松たか子さんが……もう……かつて観た事のない松たか子さんの姿だったんです。それ以来私の中では憧れの監督になりました。

そんな西川組のオーディションに行ってしまったものですから嬉しさが先行し過ぎて、受かるとか落ちるとか、そんなこと私の中では……ハッキリ言ってどうでも良かったんです(笑)。

「西川監督愛してます!感動をくれてありがとうございます!!」を伝えられればそれで良い!くらいに考えてました。

―― リリーさんを演じるにあたり、どんなアプローチ方法で準備をしたのでしょうか?

(桜木)西川監督が、この役柄の参考となった方に製作段階で取材したというお話は先に聞かされていました。「その方に会って、お話ししてみたいですか?」という提案を、衣装合わせの段階で頂き、私も実際色んなお話を直接させて頂くことが出来ました。

今回参加してみて、西川監督は様々な“職業”に対して深い敬意を払われる監督なんだと、強く感じましたね。私たちが、“よく知りもしないのに勝手に持ってる偏見”って意外と多いと思うんです。それに対して西川監督はとても敏感なんだと感じます。

リリーさんと三上のシーン自体、決して長いシーンではありません。二人共、一歩外に出れば偏見を持たれ易い立場なのかも知れませんが、三上はリリーさんと触れ合うことで、自分の母親に対する気持ちと向き合うことが出来た……刹那であれ、互いがとても大切な存在だと思うんです。

実は、役名も「リリー」ではなく「リリーさん」なんです。
役名に敬称が付いています。私たちは母親のことを「お母さん」と多くの人が呼びますよね?だから、「リリーさん」にも、「お母さん」と呼ぶ時に似た“音の優しさ”を残してくれたのだと思います。

―― では、監督から実際の演出を受けたのは、読み合わせ以降だったのでしょうか?

(桜木)本読みでも現場でも、西川監督から言われたことは、「オーディションで演ってくれた通りに演じて欲しい」ということでした。でも……役者の性(さが)なんだと思いますが、本読みから現場までの間に私なりに取材をし、役作りをしてしまったが為に、現場に入った時にリリーさんのキャラクターに少し余計な色が付いてしまっていた様なんです。「この役はもしかしたらこうなんじゃないか」「この時はこうなんじゃないか」って、充分だった所に“足す作業”をしてしまっていたんですね(苦笑)。

結局、現場では西川監督から引き算の演出を受けることになりました。
最終的には、自分の中の母性だけで満たした器を、この作品に捧げられたんじゃないかと思っています。

映画の出演俳優は、劇場公開の数か月前に行われる「試写」で初めてその映画の全貌と対面することになる。現場で共に戦った多くの共演者・スタッフと肩を並べて観るわけだが……これがなかなかツライ時間だと口にする俳優も少なくはない。スクリーンの中の自分演技、表現等をどうしても客観視出来ないからだ。桜木も例外ではない。
「殆どの試写では、自分のシーンが終わっても、そのシーンのことばかり考えてしまうんです。こうするべきだった~!とか、他のシーンになってもあーだこーだずっと考えてます(笑)!」と。
しかし、桜木にとってこの『すばらしき世界』は違った様だ。

―― 試写直後はどんなことを感じましたか?

映画『すばらしき世界』,画像

(桜木)「凄いものが出来上がってしまっている」っていうのが、試写で感じた素直なことです。私、観ている間ずっと涙が止まらなくて……。

もちろん、ただの観客ではなく出演者でもありますから、自分が出ているシーンに関しては完全に客観視をするというのは難しいのですが、自分の出演シーン以外は自分の出演作品だということも忘れて、ただただ『すばらしき世界』という作品に没入していました。

観ていて、自分の中がどんどんえぐられていくし、気付けば三上を応援しているし……もしかしたら、それはリリーさんの視点で観てしまっているから三上を愛してしまうのかも知れませんが。

もし自分に子供が居たら、家に飛んで帰って抱き締めてあげたい、そんな気持ちにすらなりました。今考えても、凄い作品と出逢えてしまったと思うし、私がそんな作品の一部になれていることが信じられないんです。

―― 作品の公開時期も、社会全体が“生きづらさ”を実感していて、偶然と必然の両方を感じる公開となりましたね。

(桜木)昭和の作品が原作だし、撮影をしていた2019年当時は、すぐ後に世界中が未曾有の事態に陥るなんて誰も想像していませんでした……こんな状況下での公開でなくても、多くの人に“刺さる”作品だと思うんです。
でも実際の現実世界がこんな状況になってしまった……。

誰もが悲観してしまう部分もあると思うんですが、ある意味、この状況下だからこそ共感しあえる優しさが、この作品にはあると思うんです。多くの人が実際に切羽詰まってはいるけど、“自分はひとりじゃない”って、感じられるんじゃないかと。

観た人の人生観すら変えてしまう様な、強烈な力を持つ作品であり、“今”だからこそ、伝わる深度が高い作品なんだと思います。

すばらしき世界,リリーさん,桜木梨奈,画像

時折、言葉をゆっくり選んで噛みしめるように話す桜木。
ふっと愛くるしい笑顔を見せたかと思いきや、次の瞬間には憂いを帯びた瞳の色になる。
彼女の女優としてのレンジはとてつもなく広い。
多くの女優が二の足を踏むような役にも、彼女は何の迷いもなく挑む。

「だってその作品と役に私が惚れちゃったんですから(笑)」と。

インタビューでは、この『すばらしき世界』に辿り着くまでの軌跡を、桜木本人に聞かせて貰うことにした。

―― 今までのキャリアの中で、特に際立って印象深い作品、または自分が葛藤した作品があれば教えて下さい。

(桜木)惚れに惚れて「その世界に入りたい!!」っていう熱望と渇望を感じさせてくれたのが、石井隆監督の「フィギュアなあなた(2013)」でした。「石井隆の画(え)中に私も入れて!!」って。その役がどんな見た目だろうと、服を着てよう着ていまいとそんなのどうでもいい!!って(笑)。

宏美という役だったのですが、監督面接で石井監督は「僕の映画に出て(露出シーンが多いので)大丈夫なの?」みたいなことを仰るんですが(笑)、私はただ自分を捧げたい!の一心(笑)。役者としてのキャリアが始まったばかりで憧れの石井組に参加出来たことは、本当に恵まれていると今でも感じます。

演技のえの字も分からない様な状態だったけど、“惚れて惚れて身を捧げる”という経験が出来た。私の原点になっていると思える作品ですね。

桜木梨奈,画像

桜木梨奈,画像

あと……「これは正直辛かった!」と思うのは……石川均監督の「LAST LOVE(2014)」。
演らせて頂いたユミという役が、双極性障害を抱えているダンサーで、時間の経過と共に自我を失っていくというキャラクターだったんですが……やっぱり、辛かったですね。

何ならその時の記憶があまりないんです(笑)!

桜木梨奈,画像

桜木梨奈,画像

今なら、違う役へのアプローチで挑んだと思うんですが、その当時は役作りそのものが完全に手探りだったんです。正解があるわけでも無ければ、教えてくれる先生が居るわけでもなく。結局その病気の症状に近い状態まで自分を追い込む……実際に近付く、というアプローチ方法を選んでしまい、結果、記憶力が低下して台本の文字が頭に入って来なかったり…。

一番試行錯誤した役でした。

―― 演じる上でチャレンジングな作品としては『花と蛇 ZERO(2014)』も挙げられると思います。

(桜木)私は、石井隆監督の『花と蛇(2004)』も観ていて大好きな作品でしたので、オーディションの話が来た時には、「是非演りたい!」と二つ返事で答えました。

役の上で脱ぐことにも抵抗は無かったですし、緊縛というものもアートだし、本当に美しいと感じていたので、気が引ける理由なんて何ひとつとしてありませんでした。撮影現場もとても楽しくて!

……でも、その頃からですかね。まるで色物みたいな偏見を感じることが多くなったんです。「そんな役ばかりしていたら仕事無くなるよ」って直接言われたこともありました。そんなことばかり言われてると、「作品に惚れて自分を捧げるだけじゃダメのか」とか、その時は……凄く悩みました。

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その後暫くは、ヌードになることだけではなく「演じることを楽しんでること自体いけないことなんじゃないかな」など、表現そのものに自信が持てなくなってしまいました。

余りにも悩み過ぎて、『花と蛇 ZERO』の橋本一監督に「私あの時どうでしたか?」って訊いたくらいです、しかも何年も後に(笑)!そしたら「良い意味で、凄くワガママだったよ!何も臆することなく演じてくれて。その大胆さが桜木梨奈の魅力だと思うよ」って言って下さったんです。

女優として「自分の身体を惜しげもなくスクリーンに晒す」という潔い決断の先に必ずと言っていい程待ち受けるのが、「脱げる女優」という皮肉と偏見が混じったの言葉の刃だ。
桜木も例外ではなく、自分の表現に対し悩み、苦しんだという。

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―― 一度はヌードシーンに対して抱いた嫌悪感を、どのように払拭することが出来たのでしょうか?

(桜木)勝手な思い込みで、「脱げるから私を使ってくれるんでしょ!?」みたいな自己否定の気持ちがなかなか拭えませんでした(苦笑)。完全に卑屈になってしまっていて。

今になれば、そんな理由だけでキャスティングされたんじゃなかったと思えますが、当時は思い込んでしまってるので、ヌードシーンが本当に嫌になってしまった時期だったんですね。

必要なシーンでヌードになって演じることに関しては、もともと全く抵抗は無いんです。こちらとしては、その作品に、その役に惚れて挑んでいるわけですから。
でも、作品公開に向けての取材などで「脱ぎっぷりが凄いですね!」っていうことばかり、毎回毎回言われるわけですよ(苦笑)!

「またそこ!?」って(笑)。「他に褒めるところ無かったんでしょ!」って、当時卑屈な心の中でそう叫んでました(笑)! 完全にひねくれてましたね。で……事務所にも「もう脱ぐの嫌です!」って言ったんです。

―― その時、どんな答えが返ってきましたか?

事務所の社長が言ってくれた言葉が、「そんな意見はとらわれるものではないし、役として必要だからシーンがある。女優にとっての素肌は、衣裳のうちなのよ。何も恥じることはないし、自分の強みとすれば良いのよ」って。そして「本当に嫌なら、もちろん無理はさせない」って言って下さって……凄く救われました。

―― ヌードシーンに挑戦することに迷いを感じてるほかの女優さんたちから、相談なんかも受けますか?

(桜木)ありますね(笑)!自分で散々色んな役を演っておいてこう言うのも変なんですが……「無理に脱がなくていいと思う」って答えています(笑)。

迷ってるなら止めておいた方が賢明だと思うんです。その作品の監督だったり脚本だったり、役だったりにゾッコンの時には、脱ぐ脱がないに関して“迷い”は生まれないと思うんです。何がなんでもその役を演じたい!ってなりますから。

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―― ヌードになるという表現に関しても、なかなかここまで心中隠さず話しをする女優さんは居ないと思います(笑)。その意志の強さは、現場を通して培われてきたのでしょうか?

(桜木)実は、私は自分で意志が強いとは感じたことが実はないんです(苦笑)。

元来「器でありたい」みたいなことをどこかで思っていて……。その作品にとっての器でありたいってずっと思ってきたんですが……自分が無さ過ぎたことに気付いたんですね(苦笑)。それもあって、作品の素敵さに自分が追い付かなくなって、表現が乏しくなっていた時期があったように思います。

映画『すばらしき世界』,画像

現場で素敵な俳優さん、『すばらしき世界』なら役所広司さんとご一緒した時も感じたことなんですが、役ではなくその人自身の“個”がちゃんと見えるんですよね、現場での佇まいに。ちゃんと自分で自分のペースというものがあるのに、周りにも温かい気配りをされていて……それらを呼吸する様にごく自然にされているんです。

自分が自分として軸を持って生きて来た人生が、役を通して明確に透けて見えるんだなって、役所さんを見ていて強烈に感じました。スクリーンで「わあ!この俳優さん素敵だな!」って感じた方といざ現場でご一緒すると、やっぱりその人自身に厚みであったり深みを感じるんです。それって“ちゃんと自分と向き合っている証拠”なんじゃないかなって。そう感じさせる人たちに出会うようになったことで、「もしかして、私は自分を随分疎かにしてしまっていたのかも」って、やっと思えるようになりました。

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―― 素の桜木梨奈と、女優・桜木梨奈は重なる部分が多くありますか?それとも乖離(かいり)していると感じるのでしょうか?

(桜木)最初は乖離(かいり)してました(笑)。

よくある話だと思うんですけど、自分が嫌いで根本マイナス思考で(笑)、そんな自分から離れたくて女優・桜木梨奈になったので…。
だから……最初は『女優・桜木梨奈』のキャラクターを作ってました(笑)!!

当時の私は、“愛されたい願望”が凄く強かったと思うんです。でもそれって、自分のことが嫌いで、自分が自分のことを愛してあげられないから……代わりに誰か私を愛して!っていう、愛されキャラの桜木梨奈を作りあげようとしていたんですね。

―― それは意外です(笑)。どこの時点でそんな自分に息苦しさを感じたんでしょうか?

(桜木)撮影に参加している最中は、素の私でも無く、愛されたい桜木梨奈でもなく、その役として映画の組に居るのでまだ良いのですが(苦笑)……時間が経って公開時期ともなると、素の私でもなく、役の私でもなく、言葉の端々に「愛されたい!」が出てる桜木梨奈になってたりしたんですよ(笑)。

自分でも思うわけです、「あれ?こんな言葉遣い普段しないな?」とかって…。

自分も愛されたいし、その作品も愛して欲しいのは本心だから、来て下さったお客様に「よろしくお願いします!」とか言ってるのに……。自分で自分に感じる“居心地の悪さ”が拭えなくなりました。

―― その乖離をどうやって埋める作業をしたのですか?

(桜木)「結局どれも私だったんだな」と、受け入れることにしました。

愛されたい気持ちも変わらないし、それは受け止めようって。更に、年齢を重ねる中で20代後半からは、次は自然に「愛したい」という想いが先に湧くようになってきたんです。

「愛されたいなら愛しなさい」みたいな名文句も存在しますが(苦笑)、愛情を注げる対象があって、そこに愛を注ぐことで自分が肯定出来るんじゃないかと。そう考えるようになってから……人として前より優しくなれた気がします、

私、本来が“普通”なんだと思います。だから「女優とはこうでなければならない」みたいな偶像に自分を寄せていってたのかも知れないです。……本当は特別である必要なんてなにもないのに。“特別なモノになろうとしていた”んだと思います。

特別じゃなくてもいいんだってことが実感出来るようになったタイミングで『すばらしき世界』のリリーさんに出逢い……まだ通過地点ではありますが、自分自身へのアンサーになったと感じています。

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―― 女優という仕事は、カメラ前のアウトプットと同じくらいに、インプットの時間が大切だと言われます。今現在、どんなことに興味を持ったりしているのでしょうか?

(桜木)最近は人の自叙伝を読んだり、歴史に興味が湧いて来ました。

昔の私は自分が得意としていること……当時ならダンスや空手といった、他人からある程度の評価を頂けているものだけが、私の価値だと考えていたところがあったんです。

でも歳を重ねて「あ、私これ好きかも」とか「これは苦手だな~」とか自分の心に素直に反応することで、自分で自分の輪郭がゆっくりですが見えて来た気がします。

それはコロナでの自粛期間で、もっと明確になりましたね。今は“人が伝えてくれているもの”を積極的に摂取していますね。
歳を重ねて、新たに色んなことを知っていって……どんどん大人になっていくって、めちゃくちゃ楽しいなって感じています(笑)!堪らなく楽しい!!

―― 未来なんて誰にも予測出来ないことを、私たちは思い知ることになる時代の渦中に居ます。桜木梨奈というひとりの人間は、これからどう在りたいと考えていますか?

(桜木)嘘偽りなく居たいんです。

自分の心が大切だと感じたことを看過せずに、疎かにせずに、生きていきたい。
そう心に決めています。

その明るさと優しさは、多くの挑戦と苦悩に裏打ちされたものだった。
桜木は決して歩みを止めない。慣れ親しんだ場所と表現に留まることが女優にとってどれ程危険なことかを彼女の本能が知っているから。

またひとつ「リリーさん」という大切な存在にその体温を残して、
桜木梨奈は前に進んでいく。

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桜木梨奈(さくらぎりな)公式プロフィール

1990年4月11日生まれ。岐阜県出身。映画、ドラマ、CM、などで活躍中の女優。
キネマ旬報『オールタイム・ベスト日本映画男優・女優100』上位ランキング。
▽主な主演・メイン出演作映画
カンヌ公式上映『鼻歌』、日仏合作『眼球の夢』、『フィギュアなあなた』『LAST LOVE』『花と蛇ZERO』ベルギー映画『『BIRDSONG』等
▽テレビドラマ/「2020年1月1日OA相棒SP」「ウルトラマンジード」等
▽CM/味の素、銀のさら、小林製薬等
公式HP a-selection-pro.jp/actress/sakuragi.html
桜木梨奈Twitter @rina_sakuragi

(取材・文 屋敷紘子)
女優・ライター
主な出演作品に、石井隆監督「甘い鞭」「GONINサーガ」、ジョン・ウー監督「マンハント」など。映画雑誌への寄稿や、映画パンフレット、映画製作会社の公式サイトやブログ等でライターとしても幅広くに活動している。

映画『すばらしき世界』大ヒット公開中

出演:役所広司 仲野太賀 橋爪功 梶芽衣子 六角精児 北村有起哉 白竜 キムラ緑子 長澤まさみ 安田成美
脚本・監督:西川美和
原案:佐木隆三著「身分帳」(講談社文庫刊)
配給:ワーナー・ブラザース映画
©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会
公式HP:subarashikisekai-movie.jp

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