女優・福田麻由子さんが映画『グッドバイ』で演じた“普通の女性”の魅力!

映画グッドバイ,福田麻由子,画像

映画『グッドバイ』さくら役・福田麻由子さん【インタビュー】

渋谷ユーロスペースほか全国順次公開中の映画『グッドバイで主人公さくら役を演じた福田麻由子さんにお話を伺いました。本作に溢れる“普通の女性”の魅力や意味深なラストシーン、さらに福田さんお気に入りのシーンも教えていただきました。さらに、女優としての“夢”や“目標”も明かしてくださいました。

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映画『グッドバイ』で主人公さくら役を演じた福田麻由子さん

『グッドバイ』に溢れる“普通の女性”の魅力!

―― さくらはごく普通の女性だと思うのですが、普通を演じるって難しいのではないでしょうか。演技する上でポイントにされたところがあったら教えてください。

グッドバイ

福田麻由子さん
私が特に映画で魅力的だなと思うのが、日常だと“普通の女性”として通り過ぎてしまうような女性も、ここまで近寄ったらこれだけの“広い世界”があったり、ある意味で“沼”のような部分があったり(笑)多分誰もがこのぐらいの宇宙みたいな世界を持っていて、そこに映画だからこそ近寄れるっていうのが映画の魅力だと思っていて。その魅力に溢れた作品というか、特別なことは起きないですし、特別な人間でもないけれど、ここまでの世界が見えるというのがこの作品の魅力なんじゃないかなと思っています。

宮崎監督は「さくらはこういう人である」とか「このシーンはこういうシーンである」みたいな言語化をしない方でした。でもそれって監督の中で何かが曖昧だからではなくて、あえて言語化しないことを選んでいるんだなっていうのは最初から伝わってきていたので、正直「えっ、これって何でこうなの?」みたいに思うところもありましたし(笑)、たまには質問もしましたけど、宮崎監督の見ている世界に乗っかろうというか、あまり自分で考え過ぎず、言語化せずに進む監督について行こうという意識が強かったです。

とはいえ、質問しないと先に進めなくなることもあったので、どこまでを言葉にして質問するかは凄く私自身も悩んだし、監督もそれにどこまで言葉で答えるかということに多分凄く悩まれている感じは伝わってきて、そこはお互いどこまでというせめぎ合いだったように思います(笑)

―― 宮崎監督へのインタビューでは色々と言葉でお話して下さいました。現場ではお二人の間の信頼関係や安心感があったので言語化が必要なかったのかもしれませんね(笑)

福田麻由子さん
そうだといいですね(笑)

■関連記事:解釈無限大!映画『グッドバイ』宮崎彩監督ワールドを大解剖!

―― 逆に掘り下げたシーンや印象に残るような監督とのエピソードはありましたか?

福田麻由子さん
脚本の文字だけで見ると、過去に何があったのかがほとんど書かれていないので、事実として過去に何があったのか、何があったとさくらは思っているのか、というところは曖昧にしてしまうと、見える世界も曖昧になってしまうので、そこはなるべく丁寧にお話を聞きました。

浴室でイメージ映像のように子どもがちょっと走っている昔の映像がパッ、パッ、パッって出るところがありますが、脚本にはほとんど書かれていなくて。映像になるとあの少しの映像でもイメージが膨らんで分かり易かったけど、そういうのも脚本には書かれていなかったので、あの短い映像に詰まっているようなことを色々と話し合ったりはしました。

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逆に、新藤(役:池上幸平さん)とお父さん(役:吉家章人さん)への想いっていうのが宮崎監督と私が通じ合った部分というか一つのキーだとは思うんですけど、そこに関しては私もあまり疑問を持つことがなくて。言葉にするのは凄く難しい恋愛とも何とも言い難い揺らぎがあるんですけど、そのちょっとした惹かれる気持ちだったり、お父さんとの最後のシーンだったりは本当にすんなり入れたし、監督も撮る時に本当に一番迷いがなかったというか(笑)、撮影も一番スムーズに、新藤とお父さんのところは進んだ記憶があって。そこは我々の解り合えた部分だったと思うので、良かったなと思いました。ラストのお父さんとのシーンも最初はどうなるのかなと思っていたんですけど、一番スムーズに進んだんじゃないかっていうぐらい(笑)

監督と私だけじゃなくて、現場のカメラマンさんやチーム全体があのラストシーンは、凄く「こうだよね」っていうのがギュッと集まったようなシーンでした。あのシーンは撮っていて静かに感動したというか、良かったというか、凄く皆の気持ちが一つになったようなシーンでした。

意味深なラストシーンを直撃!!

―― ラストシーンは光も差し込んできて、凄く良かったと思います。
色々な解釈が出来る作品になっていると思うのですが、その中でもラストシーンのお父さんへの言葉、どんな気持ちで演じられたのかネタバレにならないように(笑)、教えてください。

福田麻由子さん
最後の台詞に関しては、そもそも脚本上でも「?」マークだったので、単純に疑問形というのはあるんですけど。あそこのシーンはそれこそ凄く言葉にするのは難しいんです…

お父さんと話している時のさくらが、今のさくらであり、恋愛の気持ちを知ったちょっと大人なさくらでもあり、昔のお父さんを覚えている子どものさくらでもありっていう、凄く変な状態、不思議な状態、自分の立っているところが定まらないような。ちょっと違うかもしれないけど、小学校の同級生に今急に会った時とかって、大人なんだけど、でも子どもの時の記憶しかないしみたいな(笑)、あのちょっと浮足立った感じ。ちょっと違うけど、似たような時間がズレるような感覚があのシーンにあったかなと思って。

とにかく話すことが別にないわけです。でも、話したい気持ちはあるし、話すことがないからと言って遠い人かといえばやっぱりそんなことはなくて、どうしても凄く近く感じるっていう時に、食べ物が美味しいか?みたいな話って、一番誰とでも出来て、でも凄く親密で…。そういう台詞だと思っています。食事シーンが生活であったり、生きている人間と凄く結びついていて、ある意味ちょっとセクシーだったり、私も撮っている時はそこまで意識していなかったんですけど、映画を観て、食事シーンの色んな意味での生々しさっていうが、この映画の一つの肝になってるかもしれないっていうのは思いました。

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―― さくらがサラダを噛んでいる音がはっきりと聞こえてきました(笑)
ところで、お母さんに対して「あの時、お母さんどこにいたの?」と聞くシーンがありますが、何故か意味深に聞こえてしまうのですが?

福田麻由子さん
これも単純にお母さんが数日間家を空けてた時期があったのは事実としてあり、新藤家のお母さんは分かりやすい理由があり、そことダブらせたような描き方です。あいちゃんと同じぐらいの年齢の時に、さくらにもお母さんがいない時があった。本当にその時に何があったのかは私も監督に聞いてなくて、いなかった時があったというだけ。

結構子どもの時の親のことって意外と知らないことがいっぱいある(笑)家族だからこそ別に大したことじゃないかもしれないけど、聞けないことっていっぱいあるじゃないですか。だからこの映画でも、家族だからといってむしろ知らないんだっていうリアリティを演じる時に忘れたくないと思って、何でもかんでも監督に聞き過ぎない。私も別にお母さんのこと知らないし、みたいな(笑)居なかったこと以外は知らないっていうのが凄くリアルかなと思って。

―― 母親役の小林麻子さんの演技が怪しさを纏っているというか…(笑)

福田麻由子さん
もう、大好き小林さん!(笑)小林さんとのシーンは凄くスムーズで。

特に何もディスカッションとかすることはなかったんですけど、本当に親子の空気感、距離が凄く近いようでむしろ凄く遠いような。あの感じが本当にスッと小林さんとの間には生まれたので。意外とお母さんとのシーンが多いから楽しかったですね。一番芝居でコミュニケーションを取ったのは多分小林さんなんじゃないかな。

グッドバイ,画像

―― 小林さんとの面白いエピソードはありましたか?(笑)

福田麻由子さん
小林さん普段は凄くハツラツとされた方で、ご飯とかも「これ美味しいね!」とか(笑)
カメラが回ると自然にあの空気感になって。独特で凄く素敵な方でした。

―― 作中では、離婚をされたのかなって思うような、どこか上手くいってない感みたいなオーラが漂ってきて、その辺の空気感が面白いですよね。

福田麻由子さん
本当にお母さんこそ物凄い宇宙が広がってるんだろうなって感じでしたよね(笑)

福田さんお気に入りの保育園シーン!

―― さくらを軸に走りつつも、裏ではお母さんが何か?しているような、つい深く考えてしまいました(笑)一方で、井桁さんと保育園で働くシーンもありました。

福田麻由子さん
保育園での撮影は、4、5日間ぐらい行きました。あいちゃんは役者さんですけど、他の子どもたちは本当の園児たちで、実際に園が活動されている時にお邪魔させていただいて、遊び時間に入れてもらって撮ったみたいな(笑)

だから、私と井桁さんが「さくら先生です」とかって言うと、本当に臨時の先生だと思われて。「○○くんが蹴った~」って子どもから言われるので、「蹴るのは良くないね~。ハイ、本番!!」みたいな雰囲気(笑)だからある意味凄くリアルに撮っていただいたなっていう感じです。

子どもたちの表情が凄くリアルに、ご飯のシーンとかも撮られてて、これってなかなかエキストラさんだと難しい感じで。あくまで子どもたちの世界に、私達が入れてもらった感じ。子どもたちの世界の大きさみたいなのが映ってるなと思って、だからあのシーンは凄く私は好きなんです。映画の世界の中に子どもたちが押し込められてるのではなくて、子どもたちの世界に映画でありさくらが入って行ったっていうのが本当にリアルに映っているなと思って、私は凄くお気に入りなシーンです。

グッドバイ,画像

―― ドキュメンタリー映画のようなシーンでしたし、確かに、あいちゃんがコンビニのパンをかじってる時に写ったさくらは子どもたちの奥にいました。

福田麻由子さん
大好きあのシーン!可愛すぎる!!

―― 子どもが「これって本当に映画なの?」みたいに言って現場の皆さんが凍りついたともお聞きました(笑)

福田麻由子さん
「シーッ!」みたいな(笑)
「まだやるのー?さっきもやった~」って。「もう一回お願い」とか言いながら(笑)

「スカーレット」の感動をもう一度、福田麻由子さんの“夢”

―― ちなみに福田さんご自身は子役としては勿論のこと、『マイマイ新子と千年の魔法』では声優さんとして主役で活躍されたり、NHK連続テレビ小説「スカーレット」、映画『蒲田前奏曲』にも出演されるなど幅広く活躍されていますが、今後はどんなジャンルに挑戦されたいですか?

福田麻由子さん
一つはやっぱり舞台がやりたいです。何度かやらせていただいたことはあるんですけど、どちらかと言えば映像の方が多くて。舞台に立った時って一番自分の身の丈を知るというか、本当に生でお客様の前に立つので、自分のエネルギーの天井が見えるんです。

映像の場合は、私のエネルギーがあったとして、それにどんどん、どんどん色んなエネルギーがプラスされたものがお客様に届くので。自分の意識を研ぎ澄ましてないと、自分のエネルギーがどこまでだったのかが分からないんですけど、舞台はそこが顕著なので。目の前にお客さんがいる状態は、定期的に経験するべきものだなって。

映像もお客さんに届けるものではあるんですけど、なかなかそこが段々と分からなくなってしまったりするので、映画の舞台挨拶も凄くありがたい場所です。そういう風に実際にお客様の前に立つ時間はやっぱり定期的には必要かなって思います。

―― 根っからの女優さんなんですね。私たち一般人は、舞台上で役者さんが叫びにも近いような表現をされると、ただただ感極まって感動してしまうんです。その舞台に立つなんて想像もつきません(笑)

福田麻由子さん
いつも本番一週間前とかも無理、無理、無理みたいな感じになってますけど(笑)

後は昨年「スカーレット」で初めて朝ドラに出演させていただいて、一人の人間を何十年分演じる経験は初めてで、こんなに感動的な経験があるのかっていう風に、本当に心から感動しました。13歳から40歳まで演じたんですけど、なかなかないですよね。そういう人の一生とまでは言わないまでも半生を演じるっていうのは、この仕事してて“こんな喜びって中々ないな”って思ったので、またそういう機会に巡り会えたらというのは一つの“夢”であり“目標”です。

特に朝ドラとかこの歳になって中学生とかやれるっていうのは単純にちょっと楽しかった(笑)朝ドラ以外ではちょっと出来ないじゃないですか。結構力技だなって(笑)

実際に中学生の方が演じる方が勿論リアルですけど、その年齢を通り過ぎてきたからこそ見えるものとか、その時の私の気持ちみたいなものがあったりして、なかなか面白いものだなという風に思ったので。

もう13歳は無理かもしれないけど(笑)、次は15、16歳ぐらいをやってみたいなと思います(笑)

“希望”、届け!!!

―― 最後に「グッドバイ」の見所を含めて、映画ファンの皆さんにメッセージをお願いします!

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福田麻由子さん
この作品は3年前に撮った作品で、当時私が23歳、宮崎監督が22歳、周りのチームもほとんど20代前半のチームが集まって、本当にゼロから公開も何も決まっていないような状態から作った映画です。なので同世代の方に観ていただきたいなって。“私たちの世代で頑張ったよ”っていうような気持ちを届けられたらなと思います。

監督が本当に一番ですけど、熱い思いだけで作ったと言ってもいいような、衣装も皆の私服を集めてみたいな(笑)これからどこまで沢山の人に届くか分からないですけど、ユーロスペースまで辿り着いて、少し何かの“希望”みたいなものを私はこの事実から凄く感じているので、同世代の人にも何か届けばいいなって思います。

さくらも会社を辞めるところから始まりますけど、この時はコロナもなかったですし、世の中の状況も少しは違うけど、今は特に世の中で、“この働き方でこのままでいいんだろうか?”って感じてる方が多いと思うんです。特に同世代の人でそういう空気を感じるんです。今まで社会的に良しとされてきた生き方、“果たしてそれが何だっていうんだろう”みたいな空気…。そこから小さな一歩ですけど踏み出してもがいてる主人公がさくらなので、そういう風に自分の世界を見ようともがいてる方に届いたらいいなって思います。

20代ぐらいの世代は私も含めて、何となく良しとされて何となく目の前にあるものを何となく手に取るみたいな、そういう生き方を多分もう終わりにしなきゃいけないって凄く感じているんじゃないかな。コロナは一つのきっかけだとは思いますけど、別に今に始まったことでもないし、今の時期に公開されるのはそれを狙っていたわけではないけど、少し運命的なものも感じています。

―― ありがとうございます!!

『グッドバイ』予告編映像

キャスト

福田麻由子
小林麻子
池上幸平
井桁弘恵
佐倉星
彩衣
吉家章人

監督・脚本・編集

宮崎彩

配給:ムービー・アクト・プロジェクト
公式HP:www.goodbye-film.com
©️AyaMIYAZAKI

渋谷ユーロスペースほか全国順次公開中

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