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Q.映画ログのレビューに「この世界の片隅に」というタイトルに全てが集約されていたと感じた(されっくさん)」「あの時代を、この世界の片隅に生きていた人々をこれほどまでに細かく丁寧に描いた作品を私は未だかつて知りません(ayumi veveさん)」といった記録がありました。「ありがとう‟この世界の片隅に”うちを見つけてくれて」というフレーズに込められたこうのさんや監督、制作者の方々の想いが心に響きました。

色んなものが違っているけれど、今の我々が生きていて普段感じていることと何が同じなのか? 戦争中という時代であっても、それを見つけていくということです。こうのさんは、普段戦前や戦時中を描くときに触れられていないような所から描いていて、そのためもあってすごく親近感を持ってすずさんに感じることができるわけです。すずさんは当時生きていた人の一代表、片隅にいる一人であって、世界というのはそうした沢山の片隅がたくさん集まることによってできていますから。すずさんという人がいる片隅を想像できるのであれば、もっと別の片隅に対しても心を向けていくことができるんじゃないかとも思います。

Q.政治なりの体制について真剣に考えようというようなことではなく、一人一人を見つめることで全体像が見えてくる、ということですね?

すごく素朴にその時代を受け止めて欲しい。自分とは異質のものだと考えないで受け止めて欲しい。その先にどう思うのか、そこから先は皆さんがご自分で考えたり感じていったりしてほしい。そこから先、という部分に関してはかなり置いてきぼり、突き放している感じの作品になっているのではないでしょうか。僕はそれでいいのだと考えています。

Q.受け止める人によって幅広い解釈ができる作品ということですね?

幅広いというよりも、まず戦争というものについてもああいう風に描けば、誰が観ても戦争っていけないと感じる。そういう意味では誰でもが同じ出発点に立てるのだろうと思います。
様々な主義や主張の方がいらっしゃるし、例えば今でも軍隊が必要であろうと思う方が仮にいて、一方では正反対の主張をされる方がいるわけです。でも、ああいう風にすずさんが痛めつけられた戦争を自らのことのように体験できるのであれば「戦争をしたらいけないよね」という意味でみんなが同じ土俵に立つことができるわけです。もし議論があるとするならば、そこから先の話として行われるべきじゃないかと思います。

Q.『父と暮らせば(井上ひさし)』では、「私が幸せになるなんて、死んだ人に申し訳なさすぎる」と話す娘に、幽霊となった父が諭す場面があります。この時代にこういう想いをした人がいたんだと思うだけでせつなくて、似たような思いが伝わってきました。

多くの場合、戦争で痛ましことになった人は、自分自身戦争の被害者でありながら、心の中に「自分があの時もっとこうしていたら、あの人を助けられたかもしれない」、そういう罪悪感を植え付けられてしまうのです。でも、今、普通に生活している感覚からはそうした心境をリアルなものと思うところへ、いきなりは辿りつけないと思うんです。まずは、そうした人達も毎日ご飯を食べていただろう、ごく普通に日常の生活がそこにあったんだろう、そこの理解・共感から始めるのが良いんじゃないかと思ったんです。

その先を描くことに走ってしまい、映画を観ている人と映画の中で描かれている人の何かが共有されるより前に、すなわち出発点を持つより前に、こんなに人間は傷つけられてしまうということを、先走って描いてしまわないように、と思いました。昭和20年の8月15日ってお昼に玉音放送が流れるけど、あの人たちはあの日のお昼ごはんはいつ食べていたんだろうとか、ふと自分の方に照らし合わせるようなことがあって、何かを感じられるのであれば、もっとその時代にいた人が良く理解できるんじゃないのかなと思ったんです。

Q.監督にそうおっしゃられると、もっと気付かなくては、と改めて思います。

『この世界の片隅に』を通じて、いったんそういう見方が心に入ってくれば、それまでに観てきた戦争のことを描いている物語や映画だってあらためて新しいものを感じ取り直せるようになれるのかもしれません。そういう意味で言うならば、『この世界の片隅に』という物語は、ああした、少し遠くにある世界を覗くための戸口、窓口になれれば、と思って作りました。この窓口を通してもう一度あの時代を描いたものにアプローチしてもらうと、捉え方も変わってくるのではないでしょうか。


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