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Q.最後の方で、ウジが湧き朽ち果てる母の姿と身寄りのない子供をすずさんが引き取ります。監督がこのシーンに込めた想いを教えて下さい。

すずさんは‟右手で”晴美ちゃんと手をつないでいて、そのことを悔いていましたが、最後の方に出て来るお母さんは‟左手で”娘と手をつないでいてね、それはすずさんがあの時自分は左手で晴美ちゃんと手をつないでいたら、どんなに何かが違っていただろうと思っていた姿そのものでもあるわけですね。

と同時に、すずさん自身が「自分がここに居て良いのだろうか?」あるいは「主婦としてはあんまりうまくやって行けそうになくなってしまったんだけど、ここに居てよいのだろうか?」「お荷物のまま居ていいのだろうか?」という迷いから脱した瞬間にあの子が出て来るんですね。「私は呉に残ります」っていう話を、すずさんがしていた時に現れる。なんというか大事なことではないかと思います。そう思った瞬間に彼女が横に現れて「あ、これこそ今私が心に決めたことなんだ」って思う。あの子の存在がすずさんのその先の道として見い出されていく。

――突然子供が現れたということではなくて、彼女自身の考え方によって導かれたと言ったら良いのでしょうか?

すずさん自身が思っている時に、彼女(子供)がちょうどよいタイミングで、横にいたという事ですね。

Q.監督は若い方々にアニメを教えていらっしゃいます。芸術作品を創る上で、若い人たちに監督が期待することとは何でしょうか?

やっぱりね、自分も若い頃そうだったと思うんですけど、分からないですよね、人間ってどんなものなのか。短い時間しか生きて来てない経験の中では、どうしても自分中心でものを考えてしまいがちになりますし、じゃ、どうやったらそうじゃなくてもっと幅広い目で自分だけでない人間を見れるようになるのだろうか? なんてなかなか考えられない。

同世代のもの、同世代がいたものばかり見る、あるいは同世代の登場人物だけが登場するような映画を創ろうとしてしまう。そうではなくて、もっと広い目で見てみれば、人間って沢山の広い世代にわたって存在しているわけですよね。自分の中にそうした他人たちの置き場所を見つけていけるというか、そういう風になって欲しいなと思うわけです。

難しいですよね、自分はまだ20代そこそこでありながら、例えばお年寄りの心境を理解するとか、なかなか難しいことだと思うんですよ。でも、どこにそういう方面の足掛かりになるものがあるのだろう? とか、見つけていってもらえればいいんじゃないかなと思います。

最初の方で述べた「目の前にいる人の気持ちを想像するのが、想像力のもう一つの使い方」みたいなことと同じことなのかもしれないですね。

そうやって、若い人が人間というものに対しての感受性をもっと広げていった時に、若いなりのエネルギーをもって、いろんな作品とかが生まれてくるかもしれないですし、それを喜んで観る人たちの中にも‟活気づく感じ”とかも生まれてくるかもしれないし。非常に大事なことになってくるんじゃないかなと思います。

――「想像力の使い方」に焦点を当てただけでも解決の道筋が見えてくるのですね。

とにかく、自分以外の世代の人についてきちんと考えられる気持ちの広さとか目を持つことが大事じゃないかなと思いますね。例えば自分の親でもいいですしね。

親も自分と同じなんだなっていう所をどこで感じ取れるかとか、あるいは自分もこの様な親になっていくんだろうな、ということを感じられるかどうかですよね。

世代的なものが出て来ると、まあ、年齢的なものって言ってもいいかもしれないんですけど、自分が経験してない所に踏み込まなければいけないんですね、若い人って未経験のことばかりだから。だからこそ難しいんですね。

それが故に、実は文学とか映画とかそういうものがあって、「こういう風にすれば理解できるかもしれないよ」と、実はずっとずっと先回りしてたくさんの人生について語り続けてきたのかもしれないんですね。そういうものにどんどん触れていかれたらいいんじゃないかなと思います。

――いろんなメッセージを残してくれた映画ログ会員向けにメッセージをお願いします!

『この世界の片隅に』というのは一つの作品というだけじゃなくて、映画ってこういう風にあると良いだろうなという、いろんな可能性についてのものでもある気がするんですね。いろんな映画の可能性が秘められているんだな、って思って観ていただくことが出来るのならば嬉しいな思いますし、そこから新しい道が色々と開けていくことにも期待したいと思います。皆さんもそんな風にあっていただけると有難いかなと思います。


<編集部より>

世代というものに切り口をいれてみたり、人間なら誰しも働かせたことのある‟想像力”を使い方次第で魔法に変えることができるんだと教えていただきました。全ての言葉や映像が、映画のあり方を問い続けてきた片渕監督自身が創り出してきた姿勢であり言葉だと思いました。
『この世界の片隅に』の完全版という話もありますが、監督によると「作業中です!」とのことでした。全く新しい作品も既に考えていらっしゃるそうですので、どういう作品が出てくるのか待ちきれない思いです。
色々なことに気付かせてくれてありがとうございます!片渕監督の今後の益々のご活躍を楽しみにしております!!
予告編

■キャスト
のん
細谷佳正
小野大輔
尾身美詞
稲葉菜月
■スタッフ
監督:片渕須直
原作:こうの史代
脚本:片渕須直
企画:丸山正雄
プロデューサー:真木太郎
■公開日
2016年11月12日
■公式サイト
http://konosekai.jp
コピーライト

(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会


映画ログ会員の評価・感想・ネタバレ※

平均評価 : 4.5 点

・最近本当にいい映画に出合えていなかったので、この作品との出会いは衝撃的だった。映画が総合芸術であるという事を再認識させてくれた作品。(kuniyanさん)
・予想をはるかに超えた素晴らしい作品でした。後半では何度も何度も号泣してしまいました。(備忘録さん)
・この映画だけでも良いので、評価点、10まで許してください! って言いたくなる映画です。監督のたんたんの積み重ねた努力、原作が持つ、ひたすらに真摯な視線。この映画にクラウドファンディング参加していただいた、すべての方にありがとう。(smzmskさん)
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