小野花梨さん「変えるのは自分。他人を変えようと思うこと自体がナンセンス。でもそう願うのは自由」映画『プリテンダーズ』インタビュー

プリテンダーズ,小野花梨,画像

映画『プリテンダーズ』
主演 小野花梨さんインタビュー

渋谷・ユーロスペースほか全国順次公開中の映画『プリテンダーズは、“Pretend”=フリをすることで、世界を変えようと抗うふたりの17歳の物語。

今回は本作で主人公の花田花梨役を演じた小野花梨さんに、どのような気持ちで演じられたのか、そして花田花梨と小野花梨さんの見分けがつかないような本物感を、熊坂出監督や相方の風子役・見上愛さんとどのように作っていかれたのか、小野花梨さんのPretendではない迫真の演技に迫りました!

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花田花梨役の小野花梨さん

【フォト】小野花梨さん(全9枚)

小野花梨さんから動画メッセージ

―― まず演技の素晴らしさが凄くストレートに伝わってきました。まさに、迫真の演技!この花田花梨というキャラクターですが、小野花梨さんと見分けがつかないですし、たまに憎たらしく見えてきて、、、

小野花梨さん(以下、小野さん)
正解です。正しい見方だと思います(笑)

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―― まずは、花田花梨はどんな女の子なのか。小野さんとしてはどういう風に受け止めて、花田像を演じていたのかお聞かせください。

小野さん
私が高校一年生の時、16歳ぐらいの時に初めて監督に出会いまして、そこから花梨をイメージして書いてくださった作品、ほぼ当て書きしていただいたので、花田花梨と小野花梨の見分けがつかないのは、大正解と言いますか、仰る通りでございまして、私そのものであるなって。

“ちょっと、これは乱暴だろう”というのは勿論ありましたけど、根本の物事の見方とか、感じ方は正直そのものでした。だから、大きな役作りもほとんど要らずに、思ったようにやらせていただいたんです。

プリテンダーズ

花田花梨はどういう子か、、、難しいな…。

今ある当たり前とされていることに疑問を持っているということですよね。皆が当たり前に「前にならえ!」って言われてやっているけど、「何?前にならえって?何これ?」って、そういうことから始まっているじゃないですか。

それは私も小学生の頃からずっと思っていて。“どうしてワイシャツの一番上のボタンを閉めないとこんなに先生に怒られるんだろう?”とか、校則で靴下にワンポイントが付いていたらダメとか、色は黒じゃなきゃダメとか、意味が分からなかったんです。“意味ある?”って。

それに対して、何で大人が半狂乱になって怒っているのかも分らなくて、それが苦しくて、学校が苦手だったんです。行けなかったんですよね。高校もあと1コマ休んだら卒業出来ないぐらいの感じで、ギリギリ卒業したんです。

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―― 監督とはそういったお話はされたのですか?

小野さん
していないんです。でも何となく話している上で“おや、おや?”って思ったんでしょうね(笑)それが台本を読んだ時に、本当に流石だなというか、スゴイなと思ったんです。

―― そして、お父さん役の古舘寛治さんに対しては、迫ったり、悪態をつきます。現場の古舘さんの姿を想像すると、可愛そうだなって(笑)

小野さん
(笑)

―― 小野さんも自身のお気持ちの部分で難しくありませんでしたか?

小野さん
そうですね。ただ、古舘さんは言わずもがなプロなので、凄く助けていただいて。「もっとこうした方がその気持が伝わるんじゃないか」とか、そういう話もしてくださって。

何回も何回もお付き合いしてくださって、本当に大きく助けられたので、お父さんが古舘さんで本当に良かったと思いますし、お芝居の先輩としてこういう関わり方をしていただけたのは、ありがたかったなと今でも思っています。

プリテンダーズ

―― 手を上げた状態で叩かないですよね。娘としても叩かないこと分かっているので親をなめきっているような態度を取ります。あの辺も本当の親子のようでした。
小野さんにとって「演技とは?」をお伺いしたいのですが、子役の時から活躍されていて、『無限ファンデーション』や『Bittersand』でも演技を拝見させていただきました。演技をしていく上で、何を軸に演じていらっしゃるのか教えていただけますか?

小野さん
自分の中にない要素は出来ないと思っているタイプです。だから、普段の生き方が大事だなって思っているんです。

色んな事を思う、色んな人を知る。“私はこう思うけど、こう思う人もいるんだ”とか。そうやってちょっとずつ取り入れていくのがベース。

その上で、この役はきっとこういう要素が強いから、私のこの部分が普段は1しかないけど100にして派生させていくとか、普段私はこれを100で思っているけど、この人はそんな人じゃないから2ぐらいにして、他の要素を普段は30だけど70にしてとか、そういう感じでやっているイメージです。

だから、パーセンテージの違いはあれど、どれも私と言ったら私だし、どれも私じゃないと言ったら私じゃない。

それを監督と相談したり、本を読んだりする中で、パーセンテージの微調整をしていくみたいなイメージかなって思いますね。

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―― この作品の中で、風子と渋谷のスクランブル交差点でのシーンがありました。感情が溢れていたので涙も出てきたと思うのですが、周りに一般の方もいらっしゃたような気がします。見上さんと「どうする?」みたいな会話をされたのではないですか?

プリテンダーズ

小野さん
あんな撮影は一生に一回しか出来ない。監督と事前に話し合って、「1回しかやりません」ってやったんですけど、結局3回やりました(笑)

正直、凄く辛かったし、怖かったですし、一般の方に「気持ち悪い」とか「ナニッ?」とか、言われるんですよね。そういうのを真正面から受けつつ、お芝居をしないといけない。

“これは仕方がない!やるしかない!”って感じでやりましたね、ギリギリで。

―― あの一般の方々の雰囲気ってまるで素ですもんね(笑)

小野さん
まるでどころか素ですから!もう生ですね。

意外とそうなんだと思ったのが、見ないんですよね。実は見られない。

感じているんだけど、あんまり見ないようにしていて、それが“意外と見ないんだぁ”ってちょっと勉強になったんですけど。

―― 例えば、舞台の場合は舞台を見に来るために人が集まってわけですから、交差点のシーンは見ようと思って皆さんあそこに居るわけではありませんよね。

小野さん
そうですし、カメラマンの方が一人で手持ちで遠くから撮っていたりするから、これが撮影だって認識されていないです。

本当に頭がおかしくなっちゃった女の子2人が、急に大声出して騒ぎ始めたって思ってらっしゃるんです(笑)普通にそう思っているから、あれこそ生!

―― 貴重な経験ですね。

小野さん
貴重な経験でしたね。もうやりたくないです、もう嫌ですけど(笑)まさに貴重な体験だったと思います。

―― 見上さんとはどんな会話があったんですか?

小野さん
意見がぶつかり合うシーンで、そのシーンの前も会話がされていないすれ違いのシーンなので、逆に何も喋らなかったと思います。

―― 2人がそれぞれの世界で?

小野さん
そうですね。監督とはおしゃべりするけど、見上さんとは喋らなかったと思います。ぶつかり合うシーンだから、各々が準備して。

―― 理解し合っちゃいけないんですものね。

小野さん
そうなんです。理解出来ないシーンだから、何も聞かず淡々と時間が進んで。

―― 自分の世界をその他大勢の世界になるから緊張もするし。

小野さん
本当そうですよね。失敗も出来ない緊張感もあって、その直前は淡々と進んでいったイメージでした。

―― ストーリーについて質問させてください。
予告編には「リアルにフィクションの力で人を変える、世界を変える」とありますが、人を変えようとか世界を変えようって、【変える】という動詞を対人、対世界に使うこと自体がひょっとしてナンセンスなのではないかと思いました。

小野さん
そうですね。私もそう思います。

―― 自分とその他の世界とのパイプを作った時に、目の前にどんな障害があるのか。そこをきちんと認識してアクセスしていく、その行為がラストシーンに繋がっているような気がするんです。
【変える】というよりも、世界は色んな要因の【結果として変わる】だけで、やっぱり変えようとして変えられるのは自分自身だけ。「私は自分を変えたい」という交差点での発言にも繋がっていく。
そういう意味で、何が若者にとって息苦しい社会なのか?というところですが、どの様にストーリーを受け止められたのか、その辺りをお聞きしたいです。

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小野さん
私もまったく同じ意見で、人を変えるっていうのはとても下品な発想だなと思いますし、今でもそう思う。

変えるのは自分であって人ではないし、そもそも他人を変えようと思うこと自体がナンセンスですよね。ちょっと違うと思う。ただ、そう願うのは自由というか、そういう自由もある。

生き辛い社会、正義が時に悪魔になったりとか、暴走したりとか。正しいことが、今私が思っている正しさって、見方を変えたら全然正しくなかったりとか、するじゃないですか?

そういう世の中を生きていて、やっぱ生き辛いとか、あんなの絶対間違っているとか、絶対こうなった方がいいのにとか、そういうのはきっと誰しもが思っていることだと思うんです。

表現の仕方はどうであれ、どこかで皆さん花田花梨みたいな尖った思想と言いますか、共感してくれるんじゃないかなってっていう風に思うから。

試写を観てくださった方の意見の中で「花田花梨に嫌悪感を抱いた」とか「受け入れられなくて大嫌いになりました」とか。でもそれも分かるじゃないですか(笑)

そういう人もいるけど、同じぐらい「私もそう思っていた」とか、「凄く共感した」とかそういう人もいて、、、難しいですけど。

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―― SNSでも「いいね」が押されると肯定感が自分の中で生まれて、周りが自分に従うものにだと勘違いしてしまう。お父さんと風子が味方だったのに敵になり、また味方になる。“やっぱり見守ってくれていたんだ”ということで、周りの存在も大事なのだと感じさせてくれます。自分事として真に迫るリアル感を感じさせてくれた作品であり、演技でした!
花田さん、、、いやいや小野花梨さん!ありがとうございました!!


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キャスト

小野花梨、見上 愛、古舘寛治
奥野瑛太、吉村界人、柳ゆり菜、佐藤 玲、加藤 諒、浅香航大
村上虹郎、津田寛治、渡辺 哲、銀粉蝶

主題歌:踊ってばかりの国「ghost」 

監督・脚本・編集

熊坂 出

音楽:YURI SHIBUICHI 
制作プロダクション:テレビマンユニオン  
配給・宣伝:gaie 
配給協力:Mou Pro.
公式HP:pretenders-film.jp
©︎2021「プリテンダーズ」製作委員会

渋谷ユーロスペースほかにて
全国順次公開中

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